猿は電気柵の通電が切れる日の出頃にやってきたようだ。

柵に近いトウモロコシを金網の目から引っ張り出して一本試食したようだ。

食べるには未だ時期尚早と判断したのか、その一本は一口かじっただけで地べたに捨てられていた。

猿はもうトウモロコシを確保出来たつもりでいる、次に襲う日をメモ帳に記して悠々と引き上げていったのだろう。

ヨシ!、想定内の出来事だ、最後の作戦の時が訪れた。

どうしても猿には電撃をくらって懲りてもらわなければならない。

猿が手を忍ばせた高さまで電気柵を張り巡らし通電時間を昼夜連続に切り替えた。

どうだ猿君、

君はメモ帳に記した日の早朝、家族を伴ってGoToトラベル、「トウモロコシ食い放題ツアー」にやってくる。

そして、この間は簡単に掠め盗れたトウモロコシに手を伸ばした瞬間に感電するのだ。

怒った君はそのたぐいまれなる運動能力で天井の網から進入しようと一気に飛び上がるだろう。

するとどうなるか?

天井にも電線が張り巡らされていたのだ。

飛び上がって着地したところが君の地獄となるのだ。

何度も何度も電撃をくらって、悲鳴は集落中に響き渡るだろう。

運良く生きて地べたに生還できた君は家族共々ほうほうの体で山へ逃げ帰るであろう。

君一族の家訓にはこう書き加えられるはずだ。

「二度とあの畑には近づくな」

 

花子、「猿知恵に終わらないことを祈ってるわ」

 

もうすぐ食べ頃。

 

 

 

 

 

 

 

花器                         銘:砲弾

Kenichi Museum