先日自家用車の車検を受けた、

新型コロナの影響を考慮して国交省は何回か車検期限の延長措置を繰り返している。

私の車も対象となる期間内に有効期限を迎えた為、その恩恵を受けられたのだが、私のスケジュールの都合から例年通りの時期に車検を受けた。

この車は妻の名義で言わば妻の形見である、が今は私の名義に変わっている。

今、私の個人データから妻の名前はほぼ消え去ってきた。

妻の名前は戸籍と墓石に残るだけだ。

妻を支えてきた多くの資格者証、認定証、受給者証、保険証の類はすべて役所に返した。

預金通帳は三匹の猫に渡り、マンションの権利書は私に渡った。

唯一遅くまで妻の名前が残っていたのが車検証である。

5回目の車検になる。

思い出せば11年前に妻が買ってきたポルシェだ。

私はその頃車には一切乗らずだった為に新車に変わっているのを発見したのは1ヶ月後だった。

始めて乗ってみてマニュアルミッションだったことに驚いた。

よくぞ今時ミッション車が有ったものだと感心した覚えがある。

昔ブイブイ言わせていた妻の運転はオンかオフのスイッチみたいな操作であった。

アクセル開度に中間域は存在しない。

止まるときはブレーキで止まる。

靴底の減らない私は、

「ブレーキを掛けずに止まれよ」と言うと、「バカじゃないの」と意味を解さなかった。

そんな乗り方をする妻であったが、長くは乗り続けられず、やがて私が代って運転することになった。

私はアクセルも踏まずブレーキも掛けないので消耗するものは少ない。

タイヤも妻が乗っていた頃に一度替えたままだ。

それでも時間の経過は作用していたようだ。

・バッテリーもうダメですね・・・2万

・ヘッドライト球切れてますよ・・・1万

・パッド限界近いですね・・・2万

・エアクリーナーどうします?・・・1万

・冷却水は?

・ラジエーターサーモは?

・オイル?

もう好きにして。

社内清掃サービスしときますね。

予想した金額より倍になってしまった。

こんなに車検で金払ったのは独身時代以来だ。

今暫く乗り続けることになった妻の形見の車で有る。

 

 

 

 

 

湯呑み茶碗         銘:喜寿

Kenichi Museum