私達の仕事はゼネコン相手であることが多かった。
ゼネコンとは総合請負者であって総合建設業者では無い。
建設業は日本の主たる産業であり狭い国土を掘っては埋め掘っては埋めしている。
業界はピラミッド構造になっており裾野にいる膨大な数の個人事業主から頂点にいる一握りのスーパーゼネコンまで多層構造で利益の分配はその数とは逆になっている。
一般のゼネコンとスーパーゼネコンとでは対応を切り替える必要が有る。
こんなことが有った。
ある大手電機工場にエレベーターを納めたとき、どう考えても逆立ちしても納まるはずのない突貫工程であった。
建築工事は施主に引き渡す前に各種法定検査がある。
正直にその旨をスーパーゼネコンの現地事業所に伝えた。
すると予期せぬ返答が、
「すまない。解っている。貴社のペースでやってくれれば良い」
そう言われても困る。
うちはコンプライアンス遵守であり違法なことは出来ない。
死ぬ気の突貫工事でなんとかエレベーター工事を完成させ法定検査の日を迎えた。
すると、
検査官はエレベーターに近寄って来なかった。
そして検査合格証だけが発行された。
それがスーパーゼネコンである。
紳士的で且つ絶大な力をもっている。
良くも悪くも。
