感染の評価をするには何らかの数値が必要になるのだが、その数値について意味の無いものを使っていては本質が見えない。初期に感染の傾向を見るため地域別感染者数を発表していたことがいまだに踏襲されている。人口の多いところに感染者が多いのは当たり前のことで東京都が多くなるのは至って自然なこと。感染率が本来重要になる数値であり、それが治療薬開発のヒントにもなる。次のように人口100万人あたりの数値、で語るのが正しい。

以下日経ニュースより引用

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、日本が検査で後れをとっている。検査数は1日2千件を切っており、100万人あたりの検査数はドイツの17分の1だ。感染の実態を正確につかみ、きちんとした対応策を打ち出すには、検査の拡充が欠かせない。

 

英オックスフォード大学の研究者らでつくるグループが3月20日までの各国の検査件数をまとめた。人口100万人あたりでは韓国やオーストラリア、ドイツなどが多く、ドイツは2023人(15日時点)と日本の117人(19日時点)を大きく上回った。

安倍晋三首相は3月中に国内の検査能力を1日あたり8千件に高める考えを示していたが、実際の検査数(PCR検査)は1日2千件を超えることはなく、29日時点で合計5万4千件だ。一方、ドイツは15日時点で16万7千件に達していた。

両国とも検査を受けるかどうかは医師が判断しているが、ドイツは感染していても無症状なら自宅待機とする対応をすでに取っている。一方、日本では検査で感染が確認されれば無症状や軽症でも原則入院させている。感染症法の規定によるもので、患者を事実上隔離し感染拡大を防ぐ意味がある。

厚生労働省は検査の網を広げすぎると、誤判定も含めて入院患者が急増して病院が機能不全に陥り、医療崩壊につながると警戒していた。

厚労省は3月1日、都道府県などに対し、感染拡大で入院患者が増え重症者の受け入れが難しくなる場合、検査で陽性でも軽症なら自宅療養を原則とする方針を示した。

その後1カ月経過したが、厚労省はそうした状況に達したとの判断や具体的な基準は示しておらず、入院を原則としてきた現場の対応は進んでいない。この結果、東京都ではすでにベッド数は逼迫し、「状況はぎりぎり」(小池百合子知事)と危機感を強めている。

日本国内は新型コロナによる死者数こそ低水準にとどまるが、感染拡大の勢いは止まらない。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月16日の記者会見で「テスト、テスト、テスト。これは深刻な病気だ」と語り、検査の重要性を強調した。事務局長の上級顧問を務める渋谷健司・英キングス・カレッジ・ロンドン教授は「全数調査は意味がないものの、疑わしい場合には迅速に検査できる体制を拡充すべきだ」と主張する。

都市部などでは感染経路が分からない患者も急増しており、検査の網を広げて感染拡大を抑える必要がある。

海外では時間のかかるPCR検査とは異なる簡易な検査法が広がり、韓国や米国はドライブスルー方式により病院外で大量の検査を効率的にできるようにしている。愛知県は軽症者向けの施設を病院以外で100室確保する方針だ。検査を受けるニーズに応えつつ、医療体制を維持するために打つべき手は多い。

世界保健機関(WHO)で事務局長の上級顧問を務める渋谷健司・英キングス・カレッジ・ロンドン教授(国際保健)の話 パンデミック(世界的大流行)への対応の大原則は「検査と隔離」だ。各国が新型コロナウイルスに対し、大原則を十分に実施しなかったことが今回のパンデミックの大きな要因の一つといえる。
 これまで日本が感染者数を抑えることができたのはクラスター(感染者の集団)対策を徹底した尽力が大きい。だが今回のウイルスは無症状や軽症の人が感染を拡大させている可能性が高く、すでに日本国内でも感染がある程度広がっているとみられる。
 そのため全数調査は意味がないものの疑わしい場合には迅速に検査できる体制を拡充し、陽性ならば感染リスクが下がるまで自宅か代わりとなる施設で過ごせるようにして感染拡大を防ぐ対策をとるべきだ。医療崩壊が起きないように国全体の感染者数を抑え、感染のピークを遅らせるため対応を急ぐ必要がある。