次なるドキュメント

 私はこの時期に求職活動をしていた。

いや、働けるはずはないのだから本当のところは求職活動のフリをしていた。

退職してから収入が途絶えたため、僅かな失業給付でも受給しておかないと余計に落ち込む。

失業給付受給=就活することでもある、事情が有れば1年先延ばし出来るが私の場合先延ばししても働ける状況には遠いだろう。

働ける状況にないのに適当に求職票を書いてはハローワークに行った。

私は当然の権利行使だと思いながらも何かしら後ろめたい気持ちもあって職員の目が気になった。

妻は最後の職が知的障害者の就労支援であったからハローワークに知り合いが多い。

そんな中で私に応対してくれた担当官に正直に家庭の事情を話した。

担当官は妻の病名を聞いた途端私を労わってくれる言葉を発し直ぐに承認印を押した。そして、

「給付期間の延長が受けられるかも知れませんから該当窓口で相談されよ」とアドバイスをしてくれた。

さすがに給付延長までの条件には相当しなかったが。

その担当官が妻のことを知っていたのかどうかは分からないが、以降私に応対してくれるのは決まってその担当官であった。

同じころ年金事務所から妻の国民年金未納額を支払えと催促状が来た。

私が退職してから妻は国民年金の対象者となったが障害年金の受給者でもあった。

そりゃおかしくないかい?と年金事務所に確認するとその場で支払い免除となった。

組織に属していると代行される手続きも個人になって自身で行うと面倒なことが多い。

でも、

深い泥に埋まって身動きできないような日常の中には、そんな予期せぬ挑戦状に微かに闘志が涌いたりした。

 妻の介護で頻繁に訪れる看護師のIさんは私を泥の中から救い出そうと1枚のチラシを置いていった。

そのチラシがきっかけとなって私は抜け出せないと思っていた泥沼の沈鬱から浮かび上がれたようだ。

アルコールを断つ試練は始まった。