現在進行形

 出発前に介護ベッドが壊れた。

背上げ上がったまま下がらない。

3日前の納入だから、たぶん不良品だったのだろう。

このままでは父は今晩寝られない。

ただでさえ不眠症の父がベッドに座った姿勢で壁を見続けて眠れるはずはない。

ケアマネを通じて業者に今日中の修理を依頼する。

父は今から病院に行かなければならない私が連れていくのだ。

すると家に訳の分かる者が居なくなる訳だ。

母一人のところへ業者が来た場合を想定して、その場合の”厄介さ加減”を説明しておいたら良く効いたらしい。

伝えておいた私の帰宅時間を過ぎたころに業者はやってきてベッドを取り替えていった。

まあ、介護関連のプロだから認知症の者が一人留守番してる所にわざわざ飛び込んではこないわな。

母の認知症は挨拶を交わす程度では相手にそれと分からない、近所の人も母が認知症だと知らない人は多い。

しかし濃密にコンタクトしようとすると、相手に入り込んだことへの後悔をもたらすだけで得られるものがない。

父と母の会話を聞いていると不毛の土地に種を蒔いているような空しさを覚える。

私は口を開くのも億劫で無口にならざるを得ない。