先日田舎の村に両親の生存確認に行ってまいりました。
90歳と87歳、耳の遠い者同士の天然漫才を聴いて安堵。
母の生き甲斐は10m四方の僅かな畑での野菜作り。
私たち家族も少し頂戴しますが、殆んどは自家消費とご近所さんに配っているようです。
今は種蒔きに向けて土作りの時期です。
私の袖を掴んでで朽ちそうな納屋に引っ張っていく母。
ホンダの小型耕運機「こまめちゃん」で畑を耕せと言っているのです。
高齢の両親は農機具を使えない、まさかご近所さんに頼むことも出来まい。
私が顔を見せた時に働かせようと、スケジュールは綿密に組まれている。
一年ぶりの野良仕事はキャブレターのオーバーホールから始まる。
毎年繰り返していることなのです、こまめちゃんは軽快はエンジン音を山に響かせました。
田んぼが少し有るけれどそれは人頼みです、今年はやってくれる人を見つけるのに苦労たようです。
限界集落の村では働き手が急速に減少しています。
今まで頼んでいた人も高齢で足腰が弱ってしまいました。
他の人に頼んでみたけど田んぼをみて条件の悪さに断られたのです。
草ボウボウにして時々私に草刈りをさせようと決意したとき救世主(私にとって)は現れたようです。
作付けの早い村ではもうすっかり田植えの準備をしています。
以前はGWに田植えを行うのが主流で、普段サラリーマンをしている村人が一番忙しい時期でした。
行楽気分でGWに田舎に行くと、忙しく働き回る村人を見ては居づらかったのですが今はそうでは有りません。
最近はあぜ塗り機械まで有るらしく、業者が80円/mで請け負うそうです。
一反(1000平米)で一万円ほどです。
水田から水が漏れないようにあぜに土を塗り固めるのは昔から鋤くわを使っての人力仕事でした。
どんな風に行うのか見たかったのですが、その日はやっていませんでした。
こまめちゃんの操作に慣れてきたたころに耕し仕事は終わりました。
母の生きがいの場所は今年も確保されました。
私がキャブレターのガソリンを抜き忘れたのは例年と同じです。
来年も又、母の生き甲斐は私のキャブレターオーバーホールから始まるようです。
長生きをしてほしいと思っています。
でも確実に死期が近づいているのは事実であり覚悟は出来ているのでしょう。
美味しい野菜を作ろうと思っては毎年その出来栄えに不満な母なのです。
来年こそは、来年こそは、
いつか思い通りの成功作に出会える日を願っているのです。
「死期を悟りながらもいまだ成功作を欲するのか」
女房殿に話す。
「生物の生殖本能かしら?」
「・・・なるほど」