碓氷峠から枝道に入る。
雑把な地図に載ってた温泉マークが頼りの突発行動。
私はラッタッタ、相方は猿。
暫く登ると道路工事。
おっちゃんに尋ねる。
「この先に温泉宿ある?」
「有るよ、東京から若い娘がよく来てるね」
ほいほい。
更に登り行く。
道が極端に悪い。
非力なバイクを押し歩く。
異変に気付く。
道沿いに電柱が無い。
人家の有る山道の条件が欠けている。
この先に電気はない!
電気も無い所に温泉宿の在るはずがない。
おっちゃんにからかわれたのかと思い始めた、
会話のニュアンスを思い返してみる、
次第に性悪説の方が勝ち始める。
しかし深入りし過ぎていた。
戻る燃料が無い。
真っ暗闇を特攻する以外に選択肢がない。
ラッタッタと猿の心許無いヘッドランプが暗闇に浸食されていく。
十中八九、山で一晩木の実をかじることを覚悟した。
うそー
煌々とした明かりに若き嬌声・・秘境温泉出現。
ジーゼル発電機の頼もしい音。
喜びの一夜は実在した。
ジープから分けて頂いた燃料での帰り道、
心の中で工事のおっちゃんに詫びた。