黒いコード


ここは太平洋も遠く外れた絶海の孤島。

おれは、ソロモン諸島もさらに南に来たところで、現地語のわかる通訳を雇った。そして目立たないがエンジンが比較的新しいモーターボートを借りた。

そのボートでさらに2時間ほど南下してたどり着いた絶海の孤島。近くの島から連れてきた道案内の現地人と3人で到着した頃にはすでに太陽は南中していた。


宝島の地図。戦前、軍部が作成したとされる、その地図をおれは5年ほど前に手に入れたのだ。5年かけた研究の結果、島はここに間違いないと確信してやってきた。

ただし盗掘者妨げるようにいくつかの仕掛けがしてあった。大きな島でもないので目指す古い要塞跡にたどり着くこと自体は容易だった。しかし、その要塞跡の入口には扉がいくつかあり、白い扉をまず開けて、開け放したまま赤い扉から中に入ることとなっていた。この順序を正しく行わないと爆弾が爆発したり扉の下の地面が割れたりして人が落ちるといった仕掛けがあるのだろう。そうした仕掛けをいくつか通り抜けた後、最後に大型の金庫のようなものが目の前に現れた。

お約束のように、色の違うコードが3本、金庫の扉の前にむき出しになっている。


左から、赤色、青色、黒色だった。注意深くもう一度地図に書いてある説明をよく読んでおく必要がある。黒いコードを切断すればロックが解除されると言う解説だ。


通訳を通じて現地人に指示をした。

「黒いコードをハサミで切断してくれ。」


現地人は答えた。

「すべてですか。」


通訳を通じて現地人に再び指示をした。

「黒いコードを切断してくれ。」


現地人は迷うことなく真ん中の青いコードをつかんだ。そしてそれが私の最後の記憶だった。。。。現地のヴェローナ語では、青色と黒色は同じ単語で表現されるという話を思い出しながら。