ここに１枚の音盤がある

Tony Conrad with Faust / Outside the dream syndicate ALIVE

Velvet Undergroundがいくら評価されてもどれほど多く語られてもこのアルバムは誰にも評価されずそして語られることも無い

Sunn O)))やEarthなら知ってるけどTony Conrad？は？それ誰？

というわけでここに僕が語り記すことにしようと思う

たとえばLou ReedのMetal Machine Musicが今の若いひとたちに退屈でしかないのだとすればこれもまた同じだと言えるのであるが

しかしここにはまぎれもなくロックのアヴァンギャルドな部分およびきわめてハードな要素が少ない音数のなかに凝縮されている

追随者が多く世に出ることによってそれが認知されるということはよくあることでありまたそれが音楽の傾向の本流として広がりをみせるのが常である

ほんとうの意味で最初の一歩をその時代に刻み込んだものはそのほとんどが時の潮流にのみこまれ溺れ死んでしまう

それを避けるためにはある程度の期間が必要であった

成熟するための期間が

そもそもはあらゆるものに開かれていながらもそっとひそやかに提示されて誰もそれを真に聞こうとしなかったあるいはできなかったものそれが

Tony Conrad with Faust / Outside the dream syndicate

1972年録音で1973年発表のこれこそが始まりであり40年以上もの年月を鈍い光ではありながらも重く確かな輝きを失うことなく様々な音楽の動向にもその足元をゆるがせることなく存在し続けた一枚

ヴァイオリンの持続音がすべてを支配しそれに耐えられないものはそこから逃避せざるをえないという強靭な意志の世界をまざまざと現出せしめたこのアルバムはまさに生きてゆくということが同じ調べの単調なる日々の繰り返しでありそれこそがなしくずしの死であるという現実を否応なしに教えてくれる

以降20年以上の時を経て再びこの世界に奏でられたもの、それが冒頭の1枚である

ヴァイオリンの持続する一音一音に同調するベースとドラムスがやがて終盤耐え切れず暴発し自爆するとき

それはまさに現世への抗いであり死が宿命付けられた生に対する輝かしい反逆である

たとえその先に待っているものがあらかじめ定められわかっているのだとしても

候☆