今日、彼を見かけた。
同じ空間にいても接触すらしない

目線も声も ほかの人に向けてる

その気配を
私は後輩と大きめな声で話ながら
自分に纏わりつかないように
聞き耳を立てないように
かきけすのだ


会釈をかわすだけ。
なんて他人行儀なんだろうと可笑しくなる

こんなにも
全身の毛穴で
彼を感じようとしてるのに




彼を見たあと
彼と触れたあと

いつも思うことがある

ほんとに夢だったんじゃないかと
ほんとにまぼろしだったんじゃないかって

いくら髪に香りが残っていても
いくら頬に感触が残っていても


実体のつかめない
まぼろし



実は本当に幻だったりして。

だとしたら、
私は一体誰に愛して欲しかったのだろう
誰を愛したかったのだろう