中学1年生の頃。身長138cm小柄な高橋少年。
小学3年生の頃からバスケットボールをやっていて、中学に入ってからも迷わずバスケ部に入部。小学校から共にバスケをやっていた友達もいて、初めての縦社会を経験しながら、小さいながらに頑張っていた。
理由はわからない。ある日突然始まった。
中学1年生の冬とかだったと思う。前日の放課後の練習を私用で休み、翌日朝練に行くとみんなの様子が変わっていた。先輩達は今まで通り。でも、同級生の部員の様子が変なのだ。挨拶は返ってこない。パスも回ってこない。目も合わせてくれない。自分が悪いこと何かしたか思い出してみても、何も思い浮かばない。その日からそんな日々が続いた。最初の方は自分は今まで通り振る舞った。部活の帰り道自分だけ巻かれてみんなに先に帰られたりした。わざと聞こえるように悪口を言われたりした。その中に小学校の頃から特に仲が良かった男の子がいた。彼もまた、そっち側の人間だった。
悔しくて泣きながら1人で帰ったりした。両親に心配かけまいと、家では普通に過ごした。部活は辞めたりしなかった。悔しさの方が大きくて。土曜日の部活の後、同級生は相手にしてくれないから、先輩を捕まえて一緒に居残りで練習してもらったりした。学校にも、部活にも、行くのが嫌な日だって、そりゃああった。でも、両親には心配かけたくなかった。自分自身も負けたくなかった。
救いだったのは、唯一1人だけ同級生の部員の中で、小学校の頃から、なにも変わらず接してくれる男の子がいたことと、部活以外の大半の日常を過ごすクラスにまでそれが波及していなかったことだった。
その唯一の1人は小学生のバスケクラブのキャプテンであり、身長も小学校6年生にして170cm。バスケも上手で、多分喧嘩も強い。そんな男の子だった。そいつはなにも気にせず、バスケにだけ打ち込んでいた。僕がそんな状況だったのを知っていたかはわからないが、僕は彼がバスケに熱心に取り組む姿と、僕に対してなにも変わっていない心に救われた。特別仲が良かったかと聞かれるとわからないが。
そして、もう一つ。クラスメイトとの関係は良好だった。くだらないことで笑ったり、明日にはどうせ忘れてしまう話を沢山したりして、過ごした。でも、部活での悩みは言えなかった。というか、言いたくなかった。みんなに知れ渡って、同じことになるのも嫌だった。
野球部、サッカー部、バスケ部の男子はよく群れていた。トイレに集まったり、更衣室に集まったり。バスケ部以外のみんなとは仲が良かった。それでもその群れに入っていこうとは、なんだか思えなかった。何がそんなに楽しくて群れてるんだと思っていた。自分を守るためのヘイトだったのかもしれないが。
ある日の朝練の時同級生の部員の態度がころっと変わった。中学校2年生になって春も過ぎようかくらいかと思う。みんな何事もなかったかのように、挨拶をし、笑いかけてきた。僕はそれが気持ち悪くて仕方なかった。
バスケもそこそこできたし、勉強もそこそこできた。僕をいじめてきた奴らよりはよっぽど色んなことが優等生だったと思う。それをひけらかしたりはしないが、その現状もまた心の支えだった。お前らそんな感じ出してるけど俺の方がバスケ上手いし、頭いいからなと心では思っていたから、もはやくだらない、いじめのような事は気にならなかった。心の中でファックと中指立てていたから。今思えばメンタル強いなと思う。
何故今になってこんなに態度を変えてきたのがその日の放課後わかった。
練習終わり呼び止められ、そのグループの中心人物であろう男に言われた。
アイツが気に入らないから一緒に無視をしよう。
アイツとは小学校の頃から仲の良かった男の子だった。
僕は断った。僕はあいつと友達だし、やりたきゃお好きにどうぞと。その日は久しぶりにアイツと帰った。どこかぎこちなく笑っていた彼は少しだけ罪悪感を感じていたのかもしれない。
その1週間後、また、僕のターンになった。アイツはみんなと今まで通り楽しく過ごしていた。
そしてまた、アイツも僕を無視し始めた。
学校から少し離れた体育館へ自転車でみんなで向かうことななった。アイツは少しだけ僕のことを待っていてくれた気がした。けれども仲間に呼ばれ、僕を置いてみんなと一緒に走り去っていった。あの時の彼の背中は今でも覚えている。
その日初めて家で泣いた。いつもなら帰り道で心の整理をつけ、家では普通に過ごせていたが。
その日は帰宅するとすぐ部屋に行った。やはり自分がなにか悪いのかと錯覚するほど落ち込んだ。
しばらくすると、ノックの音がして母が入ってきた。何も言わずにこれを読みなさいと、書籍を置いていった。
いじは いじめている人が 100%、1000%悪い。いじめられている人が悪いなんてことは絶対にない。
自分を苦しめている人の幸せすら願ってあげなさい。
そんな様なことが書かれていた。
母はどうしてわかったのだろう。いつから、バレていたのだろう。母もずっと心配していてくれたのだろうか。そう思ったらまた泣けてきた。
そして、その言葉を心に負けずと学校生活を送った。
そこからしばらく経って、土曜日の部活。その日は今までで1番といっていいくらい酷かった。シュート練習でもまともにパスしてくれない、重い練習用のボールをわざとぶつけてくる、チーム内練習試合でもまともになにもさせてもらえなかった。流石の高橋少年もムカついてきてしまい、気づいたらボールを床に叩きつけていた。そしていじめグループに向かいゆっくりと歩いて行った。身長差がなんぼのもんじゃい。胸ぐらを掴みボコボコにしたるわくらいの意気込みではあった。そんな時僕より先に、そのグループに大きな声で怒っている人がいた。それが唯一なにも変わらずに接してくれていた170cmの彼だった。
お前らさっきからなんなんだよ!練習にならない!コイツはなんかしたのかよ!ぐたらねぇいじめみたいなことやってんだったらお前らもう来るな!!そう怒ってくれた。そしてそのいじめの中心人物が何か言い返そうとした途端ソイツを掴み、裏に連れて行き、しばらくしたらやつれたソイツと170cmの彼が帰ってきた。
その日からいじめはなくなった。
部活終わり彼にお礼を言った。高橋は何も悪くないよ。アイツらどうかしてると、そう言って去って行った。カッコ良かった。僕を特に慰めることもしなかった。ただ何も変わらない彼のまま、彼の正義のもと動いた結果が、1人の少年を救ったのだった。
はいじゃあ今日から仲直り、友達ね、マイメーンみたいになれるわけもなく、僕も変わらず今通り過ごした。挨拶をされたら、返す。話しかけられたら、話す。そうやって過ごした。別に自分から嫌悪感を露わにもしなかったが、何かを求めたりもしなかった。
本当の意味での楽しさみたいなものを言われたら、そりゃあ違うかもしれないが、僕からしたらちゃんとパスしてくれることだけでも嬉しかったのだ。
そうして僕に対する陰湿ないじめは終わった。
今でもあの日々を忘れたことはない。僕をいじめてきていた奴らのことも忘れたことはない。
でも、共に過ごしてくれたクラスメイトのことも、あの時の母のことも、支えてくれた言葉も、何より170cmの彼への感謝も忘れてはない。
むしろそっちの方が僕の心には深く残っている。僕はラッキーだったと思う。
僕をいじめてきていた奴らは今何をしているのかななんて、本当にたまに思う。幸せだったら、それはそれでいいかなと思う。そうあってほしいとも思える。
170cmの彼のことはよく思い出す。バスケをしている姿や声、笑い方、日常でふっと思い出す。
今ある僕という人間はこの経験からも形成されている。
それについてはまた後日。
おやすみ。
