福島県三春町にある、動物保護団体、(社)「にゃんだーガード」で12月7日から第3回TNR(犬猫を保護して、避妊去勢手術を施し、同じ場所へ放して一代限りの命を全うさせる)が行われています。私は8日のみの参加で、飯舘村の捕獲班のドライバーとして採用されました。今回は東京から参加の「むんち」さんと一緒。「むんち」は亡くなった愛猫の名前だそうで、私の「ぽこ」と同じですね。動物ボランティアに来る人は、そんなハンドルネームが多いです。
 
 ところで、「むんち」さんによると、東京では福島のこと、まして動物のことは本当に知られていないし、たとえ福島の動物に興味があっても「かわいそう」というだけで、募金したりボランティアしたりという行動に移す人はいないそうです。中には、
「人間を助けないで犬猫のボランティアなんておかしい」
と強調する人もいるとのことです。
 たしかに人間優先はわかりますが震災直後と違って危機的状況ではないし、犬猫だって被災しています。また、ペットを助けることは飼い主を助けることにも通じるのに。
 
 
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▲とある民家の親子猫。右の母猫はTNR済の耳カットがありましたが、子供と思われる猫が! 避妊手術前に産んでいたのでしょうか? もう十分に大きくなっているので、保護。もちろん、手ではつかまらないので、捕獲器をかけておいたら、まんまと子供のほうだけ入っていました。
 
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▲(左)捕獲したら、チェキで猫の写真を撮り、それと一緒に保護した旨を書いた紙を貼っておきます。
▲(右)飯舘村の旧役場前にある線量計。昨年9月は2.89あったので、かなり低くなっていますが、コンクリートの上だし、たぶん除染もされているせいか、0.64と低い数値です。
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▲飯舘村のメイン道路、県道12号にて。福島市内から南相馬への最短路とあって、震災後、村民は避難して住んでいないのに交通量は増えています。作業の車がものすごいスピードで走っていくので危ないです。が、この猫ちゃん、交通事故ではないようです。ガリガリに痩せていて目玉もありませんでした。餓死してカラスに食べられたのか…。飯舘村は警戒区域と違って自由に出入りできるため、比較的多く(そうでもないかな)の動物ボランティアさんが給餌に回っているのですが、食べ物にありつけない、こんな子も少なくなりません。
 
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▲第一回目からTNRのとりまとめをしてくれているTOKUさん。英語の通訳をしているバリバリのキャリアウーマン。もともと千葉で動物ボランティアをしていて忙しいのに、毎週福島まで通って尽力してくれています。
 
 福島の方々、動物ボランティアの我々を、団体から給料をもらっている職員、はたまた宗教活動のようなものと勘違いしているフシがありますが、みんな他に仕事を持って、プライベートな時間に自分のお金を使って、福島の犬猫のために来てくれているんです。私は県民として、申し訳なく思っているので参加していますが、そうでない方も、もっとご協力お願いします。
 
 ところで、飯舘村では、地元の方ともいろいろ話をしました。
 
自宅に居ついたノラ猫に餌をあげにきている、という男性によると、
 
 「東電や国はまだまだ何か隠している」
 
 とのことです。松川町の借り上げ住宅に避難しているAさんによると、村と話し合いを持ったとき、「聞かれたことに対しては答えます」という態度で、都合の悪い事実は自分たちから話さないのだそうです。住民側がしっかり情報収集しないと、向こうの都合のいいように丸め込まれてしまう構図なんですね。
 
 また、原発を造る際にも、爆発したら飯舘村方向が汚染される、という事実は統計的にわかっていた上で、あの場所に建てたのだとか。
 
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▲とある民家の猫。家主は来ていませんが、ちゃんとボランティアが餌をやり、避妊去勢もして世話をしています。
 
 生まれ育った飯舘村の家の敷地内に素敵な家を建てたばかりで、ローンもまだ4年目。東電からの保証はまだ示されず、ひたすら払い続けているだけ。木材会社を経営していて、会社機能は川俣町に移したけれど、作業現場は飯舘村。被爆を覚悟しながら飯舘村の山林で作業をしているそうです。
 
 ログハウス風のご自宅の線量は家の中で0.7μシーベルト/h、外は1.5~2.0μシーベルト/h。これでも飯舘村の中では比較的線量が低い。
 眺めのいい高台の家には、5歳の末娘が遊べるように造った、きれいな芝生もあるし、吹き抜けのリビングには薪ストーブもあって、新築してから2年、ようやく住み慣れたところだったのに、「夢は壊れた」。
 
 こんな状態で、あと1年半後には避難指示が解除されてしまう。保証などもそれまでだろう、と言う。
 
 「でも、いいこともあったんだ。長女が震災当時、20歳だったんだけど、親とあまり話をしてくれなくなって、こっちが『おはよう』と挨拶しても無視されたりしてたのに、今は借り上げアパートで一緒に暮らすようになって会話が増えたんだ。大体は次女の話題なんだけどね」
 
 
 福島で動物ボランティアをしていると、住民の方々の正直な生の声をたくさん聞けるし、福島の被災地の現状を実際に見ることができます。
 現状もあまり知らずにいきなり取材にくる県外のメディアやジャーナリストなどには、きっと語らないだろう本音だと思います。
 
 いきなりブラリと来ても、たぶん見えてこないことが、こうしたボランティア活動を通してわかってきます。今の福島を見てみたいというみなさん、観光を兼ねてでもいいので、ぜひボランティアに参加してみてください。
 
 ちなみに、三春町にシェルターを持つ「にゃんだーガード」は、もとビジネス旅館なのでボランティア用の宿泊設備が充実、人間用部屋数部屋のほか、猫部屋で猫まみれになって寝ることもOK。宿泊費は無料で、食事は協力して得意な人が作ります(朝100円、昼300円、夕400円負担)。
 
 朝は食事、ミーティングのあと、8時くらいから犬の散歩、猫たちの世話、大工仕事、荷物の仕分け、掃除などをこなして昼食。その後、適宜仕事したり休憩。午後3時ころ、お茶タイム。3時30分くらいから犬の散歩、猫の世話、夕食のあとは入浴タイム。近くの温泉へみんなで入りに行くこともあります。年齢層も幅広く、19歳の若者もいれば、70歳のシルバーもいて、各自できることをやればいいし、スタッフの方がいろいろ指示してくれます。
 
 犬猫を飼ったことがなくても、ボランティア初心者でも、いろんな仕事がありますし、直前の申し込みでも、短時間でもOK。私もフラリと行って散歩だけ手伝うということもあります。特にお近くの方、冬の間だけでも、ぜひぜひ~。(私は11日から国外逃亡してしまうので、その代わりに、どなたか!)
 
 
 ということで、飯舘村を後にし、川俣町で猫親子を引き取ってシェルターに戻りましたら、協力獣医さんが到着していました。
 
 この日はシエルターにいる子たちの血液検査、ワクチン、避妊去勢手術が4件。撮影係として見学させてもらうことに。
 
 
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▲ぶたまる隊長の指示をあおぐTNR要員たち。メンバーには人間の脳外科医もいます。右は雄猫のタマタマの毛をむしっているところ。
 
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去勢手術後、麻酔が効いている間に爪切りをする、スタッフのまりかさん。右は「早い、安い、上手い」、山口獣医と助手の先生。避妊手術中。
 
 
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▲「にゃんだーガード」のぶたまる隊長も、お手伝い。この手術室も「にゃんだーガード」内にあります。
 
第3回TNR、本日も継続中。リリースも含めて12日まで続きます。
 
  今回は貴重な体験をさせていただきました。TOKUさん、みなさん、ありがとうございます。
  私はしばらく日本を留守にしてしまいますが、みなさん、福島の動物たちをよろしくお願いします。