淹れたてのブラックコーヒーに、ミルクをそっとたらして、
混ぜないまま、そっと動向を見守る、幸せなとき。


細くて真っ白な糸のように表面をたゆたっているミルクに、
下から湧き上がるようにして、淡くクリーム色になったコーヒーが合流する。
熱いから、対流で自然と混ざるのだけど、ミルクを飲み込んでいく渦は一つじゃない。
いくつもいくつも、周りと関わりながら、不安定に影響を及ぼし合って、打ち消し合って増幅し合ってくるくるくる。

くるくるくるくる。



そして、徐々に。
徐々に、徐々に、一つの色へ。
一つの濃さへ。

完璧な存在になっていく。


完成したコーヒーを、未完成の私が、ほくそ笑みながら完璧に飲み干して、

ああ、世界で一番幸せなのは私だ。







熱を出したときは、思考が上滑りする。

特に根拠もないことがつらつらと繋がって、まるで氷の上にいるみたいに。


ふらふらしながらご飯を作ると

なんだか面白いことをしているみたいな気分。

混ぜたり暖めたりするだけで、こんなものができちゃうなんて

なかなか人の手は捨てたもんじゃないね。


熱に浮かされて、くすくす笑いながらケーキを焼いて、

甘いにおいの中で おやすみなさいおやすみなさい







汗をかく充足感も好きです。

地響きのような音の中を、一体になって、一心に腕を振る。皮と木がぶつかる。
エネルギーのひとつの塊になって、ただただ突き進む。途切れそうに細い集中した神経を、綱渡りで、全力で。なにも考える必要はない、身体が全身で覚えているから。


我に返ると、熱ですべてがすっかり馴染んでいる。
同じ温度だから、そこにいるかも分からなくなるけど、まるでその隅々まで感覚を持っているかのような。


ぐったりした身体は、しばらく水しか受け付けなくなる。
それが心地良い。