双極カピパラパパです。
うちの長女は誰が見ても、間違いなく正統的な美女に属すであろう。
長女はADHDである。
長女は女優の長澤まさみさんに似ている。
いや、長澤まさみさんをADHDぽい顔にしたら、うちの娘になると言った方が正解だ。
俺は、長い間発達障害のワークショップを手伝っていた。
だからADHDの顔つきというのがあるのがわかる。
俺の能力かも知れない。
一方、次女の方は、可愛らしいと言えば可愛らしいが、かなりユニークな顔である。
どこにもない顔をしている。
ひどい下膨れ顔で、平安時代に生まれたら小野小町に似た美女と京の町で噂になるかもしれない。
自分で自分のことを女座敷わらしと言う。
だから、座敷わらしって、こんな顔なのだろうと俺の中では定着した。
話がそれた。長女の初恋の話である。
よく納得できるところだけど、あれほどの美貌を持ちながら娘には彼氏ができたことがない。
娘は2時間かけて遠くの美術科のある高校に通った。
誰も同じ中学校の子はいない。
そういう学校を選んだ。
学校が始まって、めずらしくある級友の名前を連呼し始めた。
神楽君という。
家で毎日、神楽君の話ばかりした。
娘が級友の名前を呼ぶことは極めて珍しいことだ。
神楽君は、学校で休み時間でも、授業中でもよくしゃべるらしい。
授業中にしゃべるので、先生からよく怒られるらしい。
プリキュアが好きで、「歴代のプリキュアの中で、あなたはどれが好き?あなたはどっち派?」
と生徒や先生の区別なく毎日聞いて回った。
神楽君と娘だけが偶然、同じ方面のホームにいることが多かった。
娘は、紙に歴代のプリキュアの絵を描き、神楽君に手渡した。
超コミュ障な娘が、男子に対し、こんな行動に出るのは極めて異例なことである。
神楽君はひとしきりフムフムと娘の絵を観て、カバンに丁寧にしまい込み、天高く指をさして「後日!」とひとことだけ言って、ホームの反対側にスタスタ歩いて行ったらしい。
神楽君は変わった子で、曼荼羅について造詣が深かった。
娘は家で、東寺の両界曼荼羅と胎蔵曼荼羅を模写していた。
神楽君にプレゼントするらしい。
神楽君は大の家系図マニアで、社会の先生と授業が始まる時、5分くらい藤原摂関家や徳川家の家系図で盛り上がった。
担任の先生からはその件で怒られた。
娘はどこかの芸能人の華麗なファミリーヒストリーをきれいにまとめていた。
神楽君にプレゼントするらしい。
神楽君は好きな子がいて、休み時間はその子にべったりだった。
神楽君は英語が得意でいつもクラスで一番だった。
娘も英語を一生懸命勉強した。
ある日、神楽君に養護の先生がべったりつくようになった。
神楽君は発達障害らしかった。
娘は大変驚いた。「私より100倍マシなのに。なんで養護の先生が?」
俺は神楽君に一度会ったことがある。
娘の学校の展覧会に娘と一緒に向かう途中、「おはようございます!」という声がしたのだ。
娘は一言も発せず、上半身を180度ピョコンと折り曲げておじぎした。
なんかのおもちゃみたいだ。
その男の子は結構、男前だった。
俺は何となく神楽君だとわかった。
娘に、あれが神楽君だろ?
おまえ好きなんだろ?
よし、俺が言って来てやる。
と言って、おい君!と神楽君を呼びかけた。
俺は娘に腕をつかまれて、体じゅうパンチされた。