初めての鼻血。なんてほろ罪深い感覚。「ヤマトォ。その格好は・・・」
「マドレーヌを作ってみました~」
と凜子は平然を装って、明るく言ってみたが、喜ぶ者はだれ一人いなかった。孟男はさておき、砂川はいつも通りのポーカーフェイスだったが。リアクションに困っているようだった。
砂川は会話をつづけた。「いや、マドレーヌはいいから。その服って、なんだよ。」
「9号ですよ?」フックが閉まらなくてキツイ。一所懸命に垂れてるお腹をへこんでもブラウスがへそまで届かない。ブラウスのくせに、肉が食い込む。プリーツスカートのくせに、おしりさえを隠せない。ちょっと上がったスカート丈は、ぎりぎりパンツを隠している様子で、座ったら絶対今日のパンツがばれる。いや、座らなくてもやばい。だけど、9号は9号。
階段を上っているとき、後ろの女の子らの嘲笑が聞こえた。
「あれ、見て。ちょーやばいんですけどー」
「よくあの格好で学校これたよね」
「あれは、ないない」
女子は残酷だ。すれ違いざまに、凛子に悪口を浴びせていく。急に、凛子の目には大粒の涙がたまり始めた。
「ごめんね、孟男君。なんか、うち、痛い女の子だよね」
凛子は「そうじゃないよ」という孟男の言葉を期待していた。きっと孟男なら、大丈夫だよ、というはずだ。
「ヤマトは・・9号は・・無理だ」
そんな言葉を予期していたかった彼女は、胸がぎゅっとしまった。
しかし、片手で涙をぬぐいながら、凛子は必死に笑顔を見せる。
「そうだよね~。私みたいなぽっちゃり体型が9号はまずいよね~」
「ぽっちゃりじゃない、と思う」
「え?」
凛子の顔が急にぱっと輝く。
「ヤマト…」孟男は眉を上下させて、言葉につまりながらも、次の言葉を選んでいた。
「お前はデブだ、だろ?」
「すなっっっ」
砂川の口の悪さは止まらなかった。「その体でぽっちゃりはないよな~」
「このばかやろう! デリカシーない! すなも太れ!!」
