12月の今から思い返すと、あの時こうだったのはこういう理由だったからか、とパズルのピースがつながることが多いですが、当時は気づく由もないことがいろいろあったなと、思い出されます。

記録①に書いたように、奇妙な第一印象を抱いたものの、一緒に住んでいかねばならないという間柄なので、何とか良好な人間関係を構築しようと当初は思っておりました。

その通り、10月中旬までは、Sとは極めて良好な関係を気づくことができました。思い返せば、あの時は楽しかったなと思えます。彼女を完全に嫌いになりそうになっても、あの瞬間は、純粋に楽しい思い出として私の中に保存しておこうと思います。

同じ日本人ということで、Sと私はすぐに打ち解けました。

私からすると、年上の女性で、海外経験豊富なSがどんな人だろうというところに興味がわきました。

Sは、米国で大学を卒業し、フランスで博士課程を取得した女性で、英語もフランス語も堪能な、いわゆるデキル女性でした。

見かけに無頓着なのも、博学なタイプに多いことかもしれない（偏見で恐縮ですが）というので、謎に納得してしまいました。

Ｓは人権活動家という肩書を持ち、彼女曰く、「国連機関のあるジュネーブには、人権団体との関係があり、ちょくちょく滞在している」とのこと。長い期間欧米に滞在してきたが、その中でもジュネーブは一番好き、等海外生活の長さがうかがえ、なんとなく‘すごい人っぽい‘と思いました。

私は自分の勤務先が明確にありましたし、月から金までオフィスワークだったので、唯一のＳとの交流時間は勤務後の夕飯の時間でした。そのわずかな時間に、どんな仕事をされているのか等、いろいろ話しました。

今からしてみて変だなと思うのは、具体的にその人権活動、というのが何を指すのかがクリアではなかったことです。

ただ、出会ったばかりというのもあり、いきなりずけずけ経歴を聞き出すのも失礼かと思い、当時はなあなあにしたまま、特に疑問を抱くこともなく、過ごしていました。

もう一つ、当時の私でも極めて異常だなと思ったことがあります。そしてそれは、夕飯の時間を一緒に過ごすから、気づかざるをえなかったことです。

それは、｛料理が全くできないこと｝です。

見かけから推定するに、40代以上であるにもかかわらず、私はこの3ヵ月、Sが卵焼き、ご飯を鍋でたく、茹でる以外の物を作ったところを見たことがありません。

彼女の夕飯は毎日、スモークサーモンとご飯とサラダ、たまに日本食スーパーで買った納豆、と調理を要しないものばかりでした。

天才型の人は、しばしば料理が全くできないこともあるな、というこれまた偏見もあり、私は変にSの料理のできなさに大きな疑問を抱くでもなく、受け入れてしまいました。

私は料理をするので、作り過ぎるたびに、Sに一部、自分の料理を分けてあげました。

夕飯を一人で食べるより、分け合って一緒に話しながら食べたほうが楽しいので、深く考えることもなく、そのようなスタイルが定着していきました。

↑奥がS。ごはんと納豆パックとサラダを食べています。私が作った味噌汁と炒め物を分けてあげました。

その中で話したこと：

そのうちに、Sは作ってもらうばかりでは悪いと言い始め、自分の持っている食材を私に渡してくるようになりました。

「今日は何を作られますか？私はニンジンと玉ねぎがありますが…」

そのように、貰ってばかりではだめだという感情からか、いつからか、食材の一部をSが支給し、私が作り、二人で食べ物をシェアする、という生活が10月の下旬まで続きました。

↑奥がS、私の作ったパスタと、Sのフルーツで作ったスムージーを食べる休日ランチ。

一か月ほどそのような生活が続いたころ、徐々に、Sの奇妙な食行動が表れてくるようになりました。

狂怖同居人記録②