雪組公演 ドン・ジュアン 大千秋楽おめでとうございます。本当に熱量のこもった作品だったと思います。
普通にネタバレを含む感想です。
また、とても長いです。





KAAT神奈川を二度、梅田芸術劇場を一度観劇しました。
ドン・ジュアンが母親を押し倒すシーンが変わりましたね。
クレームでも来たのでしょうか?
もしそうだとしたら、クレームごときで改悪するのは残念です。
投身自殺も、病死とマイルドになっていました。
あのシーンのおかげで、ピリッと引き締まっていたように感じだからです。
常に緊張感を持って、ドン・ジュアンの言動や行動を見る度に「あの過去」をフラッシュバックさせてくれました。

しかし、聖母マリアと同名の「マリア」に恋したということに結びつけるためには、
確かに十字架や聖書を使ったシーンに変えるのも頷けます。

私としては…
「母と聖書を読むor母と十字架をきる という描写→ 母とキスor抱擁(押し倒すまではいかなくとも) →母、投身自殺」
そんな流れでも良かったのではないかと思いました。

しかし、「お父さんは息子と母の関係に気付いてないの?」と劇中もそこがずっと気になってしまいましたので…
そういう余計な思考回路が起こらないように、ドンジュアンと母の関係は一切カットしたのかもしれませんね。

DVD版は梅田でしょうし、残念。
伝説(?)のシーンを二度見れたとのことで、運が良かったと思っておきます。

さて、次に演出について感想を。


*薔薇

大きな薔薇から登場するドン・ジュアン
インパクト大です。

全編を通して「薔薇」をよく使っていましたね。
ドン・ジュアンが死んだ時、
最初は皆が薔薇をドン・ジュアンの前に無造作に投げ落としていくのに対し
最期にはマリアから一本ずつまた皆が取っていく…… その流れが美しかったです。
望海さんも、彩さんも、全部薔薇をかき集めて掴むの毎回ヒヤヒヤしそうですね(笑)


*エメ

エメの歌唱力には、もう感動しっぱなしでした。
今まで石のように冷たい(笑)ドン・ジュアンさんが、愛を知って1人の女性を思って歌う…
愛している感情と共に、この身を全て捧げられる…という強い意志もしっかり現れているんです。
このシーンの羽根の演出もとても好きでした。
友人が観た日にちでは、羽根が望海さんの口元についてしまったみたいです!
が、終盤に、顔を覆いながら羽根を手に取り、愛おしげに羽根を見つめる……というファインプレー。役者ですね。

振ってくる羽根にしても、振ってくる薔薇にしても、かき集める薔薇にしても、
毎回違った何かがあるのでしょう。
そこが、面白そうですね。



*兵士

兵士が一列に並び、棒を持って踊るシーンがカッコいい!と観る前から聞いていましたので、楽しみにしていました。
KAATで初めて観た時、迫力がありましたね…逆に、梅田だと劇場の横幅が広いからか、少し軽減してたかもしれません。
この兵士のメイン4人のキャラクターが濃くて(特に叶ゆうりさん)、それゆえに死んで行くシーンは悲しかったですね。
一番おふざけな叶さんが先に殺されるというのも、悲劇感がありました。
永久輝さん、レオさん、縣さんについても書きたいのですが、長くなりそうなので、次の出演者感想に書こうと思います(笑)


*ドン・ジュアン という男
本気で愛すること、愛を知らずに生きていた男…なんと、マリアを愛したことで初めて「嫉妬」を覚えるのです。
何故そこまで「愛」を知れなかったのか。
それについては改変前の過去のシーン(母を押し倒す)でも、あまり分かりませんでした。 
そこまで父をエゴイストと呼び、嫌う理由も。 全編通して、父は、息子をどんな時も愛し、赦そうとしていましたから…

女たちを侍らせ、自分の女にしては離れていく…それでもその冷たさにやられた女は寄ってくる。(ハーレムだな)
そのことが、ドン・ジュアンが自分自身で「存在価値」を見出す方法だったのかもしれない。


*亡霊

圧倒的存在感で大活躍の亡霊さん。
怖いというより、なんかかわいい…?と本編でも思っていましたが、
最後に出演者が出てくるところで香綾さんがお化けポーズをしたのを見て、やっぱり可愛いと思いましたね。(余談でした)

個人的な解釈ですが、
ドン・ジュアンが愛を知って死ぬのは全て、ドン・ジュアンを死に導くために亡霊が仕組んだこと、だと考えています。

婚約者が既にいるマリアに導いたのも、
そうすればラファエルと決闘になることを読んでいたからではないでしょうか。

ラファエルを殺した十字架を背負い、マリアも元婚約者を殺された事が頭に離れず…
そうなるよりも、愛されているこの瞬間に、愛のために死ぬのを選ぶドン・ジュアン

…となるように仕組んだ亡霊さんとんでもない策士ですね。

♪〜もう二度と彼女に触れるな
の歌の時、ドン・ジュアンと亡霊が同じ動きをしていましたね。
嫉妬の感情さえも、亡霊が生み出した呪いなのではないでしょうか。
それにしてもこの歌の時の迫力と声量と熱量と……いつ卒倒するのかハラハラするぐらいの勢いでしたよ。

となると、結局ドン・ジュアンが愛することを知り、嫉妬の感情を知ったのも呪いのせいで
実際には知ることはなかった…?とまで考えてしまいます。

無音の中から大勢がタップを踏み始め、亡霊さんが満面の笑みで前で踊るシーンは
狂気を感じて非常に好きです。

「ああ、自分の思い通りに進んでるぞ!ヒャッハー!」
という心の声が聞こえてくるようです(笑)


初観劇の時に本当に驚いたのは、最後に出演者一同が集ったときでした。
こんなに少ない人数で、これだけ濃いものを作れるものなのか、…と。
兵士メンバーも、酒場に出ているのは気づいていましたが、改めて人数を見ると驚かされます。

望海さんの歌は言わずもがな素晴らしいですが、コーラスの出来の良さにも驚きました。
ソロが少し与えられたシーンで、この人こんなに歌うまかったの?!という驚きもあり。

ストーリーに疑問や、解釈の違いはありますが、そこも含めてモヤモヤしてね!という作品だと思いました。
もう少し過去のシーンは練って欲しかったな、という気持ちです。
マリアに恋するシーンも、「操られてる感」がもう少しあると良かったかもしれません。
正直最初は、なんでいきなりドン・ジュアンはマリアに恋したんだ?!まるで別人のように優しくなってる…
マリアにそこまで魅力があったかな?
マリアもマリアで婚約者いるのに!?
など気になりましたが、
全て、お互い亡霊に操られている と考えるとしっくりくるのです。
1回だけじゃなく、何回か観て解釈をしたくなる作品でした。


……と、感想が長くなりそうなので
ここで一旦切ります。
また時間があれば感想追記や、出演者の感想などしたいです。