最近の癒しと言えば、何と言っても、奇跡的に回復した愛猫ジーグだ。

7月28日に突然倒れた。激しい黄疸だ。起きあがろうとしてもよろけてしまう。首が座らない状態だ。瞳孔が開いたままになった。呼びかける声も全く聞こえてないかのようだった。そのうち、体温が下がってきた。体が硬直し始めた。そして痙攣が始まった。
実は、ジーグは、推定10ヶ月前後の頃に保護したのだが、その直後に急性肝機能障害を発症し、3日間危篤状態に陥った。それ以来、血液検査をしてもただの一回も正常値になったことはなかった。
が、ふだんは健康な猫と同じように、好き嫌いはあるものの、これだけは食べて欲しいというフードを食べてくれ、よく遊び、心地よさそうに眠った。こうして10年の月日が流れた。
そして、今年の3月にも一度倒れた。この時は2週間ほど入院したが、今回の状態はその時よりずっと深刻だった。もはや、夜が明ける前に息を引き取るのではないかと、覚悟を迫られた。で、せめて生きているうちにその姿をと、腕に抱いて写真を撮った。

がそんな状態にもかかわらず、排泄の際には、必死に起きあがろうとした。その余りにもけなげで切ない姿に、このまま見送るだけというのは辛すぎるし、ジーグに申し訳ないという思いで、妹はツボマッサージを試みた。長い時間、手や指が痛くなるほど続けた。
それが功を奏したのだろう、夜は明けた。だが、危険な状態はまだ続いた。食べ物を口にあてがってもいっさい食べないし、水も飲まなかった。

そこで最後に思いついたのが、ミルクだった。1歳未満の時もミルクで命拾いをしたことがあったので、とにかくミルクだと、最初は強制給餌で飲ました。すると、嬉しいことにミルクは飲んでくれた。
それから、やっと病院に連れていける状態になったところで、抗生物質の投与を受けた。
食料は、AD缶と、友人から頂いた山羊のミルクだった。特に山羊のミルクは、貪り飲んだ。
こうして、奇跡的に生死の境からこちらの世界へ戻ってくることができた。体重も一時は2kgまで減少し、骨と皮だけのガリガリ状態だったが、今は自己ベストの4.05kgだ。ジーグの場合、3.9kgあたりが一つの壁でこれを越すとある日パタッと食欲が無くなり、あっというまに3.5,6kg位まで減少する。すると、また食欲が出始めて増える、ということを繰り返していた。それが、今回は自己ベストに達してから、もう1ヶ月ほどキープしている。

ただ、命拾いをしたら、心はすっかり幼時化してしまい、元々甘えたさんだったが、さらに甘えたになった。ミルクも、床にお皿を置いても飲まない。私のベッドにいるジーグに私がお皿を口元に持っていくと飲むのだ。もちろん、すりすり攻撃は激しくなった。

ろうそくの炎が燃え尽きるようだったジーグだが、今暫く、この世で甘えてくれそうだ。撫でたり、抱いたりして感じる体の温もりは、本当に、私の心を癒してくれる。猫と一緒に暮らしていない人にはもちろん実感が湧かないだろうが、私にとっては、掛け替えのない命だ。今は、毎夜、私のベッドの中に入って、一緒に寝ているのだが、まさに至福の時である。この一瞬、この一時の温もりを大切にと思いながら、同じ世界を生きているのである。