異世界転生したら最弱ステータスの無装備の冒険者だった件について
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翌朝。

相変わらず俺は全裸だった。

それにしても装備ができないって何だよ。

武器や防具だけならまだしも、服までとは俺の前世の行いがそんなに悪かったのか。

 

「おはようございます。具合はどうですか」

扉を開けてオオブが入ってきた。

昨日のくそみたいに畏まった敬語より少しくだけた話し方になっている。やっぱり俺が弱いからか?

「おかげさまで一晩休んだらだいぶましになりました。ありがとうございます。」

「ところで紅の探究者Kureha♰紅葉さん、服の件なんですが…」

「その二つ名で呼ぶのはやめていただけませんか…?」

とても弱いのに強そうな二つ名がつくのは俺が我慢できない。

何の拷問だよ中二病が甚だしい。

「いえ、そういうわけには…いくらくそ雑魚くてもあなたは選ばれし者ですので…」

お、おう。いやだ。

「で、服の件なんですけども、装備不可の方でも装備できる服が、この村で一着だけございまして…、」

「本当ですか?ぜひ持ってきていただきたいです。」

今後もずっと裸生活だと思っていたので素直にうれしい。

「しかしその服を着てしまうと、その服に合った職に就かなくてはならないのです。紅の探究者様はレベルが上がることはなく、ずっと1のままのごみのようなステータスとはいえ適職が冒険者ですので、適さない職という形になってしまいますがよろしいでしょうか…」

「全然かまいません。むしろ仕事まで見繕っていただいて非常にありがたいです。」

「ただ、その職というのがですね、主に夜していただく、少しいかがわしいものなんですが、、、」

「おかまバーやゲイバーですか…?それとも女装とか…」

そういうものは絶対に避けたい。俺がおかまなんて絶対嫌だ。

「いえ、そういったものが何かわかりませんが、少し女の子の露出が多いお酒を出すお店の店員さんなんですよ」

俺がちょっとやりたいとおもってた仕事だ…!ボーイじゃん。ちょっとうれしい。

「いえ、とんでもありません!やります!」

どうやらオオブによると、帰りが夜遅くなり、女の子が多いこういう職はこの世界では敬遠されがちらしい。

「人手が足りなかったようですので非常にありがたいです、助かります。では今晩から頼めますか?ところで紅の探究者さん、あなたを発見した近くで見つけたものがあるので来ていただけますでしょうか?この村の者では使い方も何をするものかもわからなくて…。」

 

オオブに連れられるがまま外に出た。

「あああああ!俺の原付…!!!!!!!!」

彼女にナンバープレートが外され、軽自動車とぶつかった衝撃で少しへこんではいるが、俺の原付がそこにあった。

またがり、ハンドルを握りエンジンをかける。

…かかった。

愛してる、俺の原付。異世界でもよろしくな。

「あの、紅の探究者さん、これはなんでしょうか…?」

急に音を立てた原付に驚いたのかオオブが言う。

俺は適当に説明してやり、今後も使いたい旨を伝えた。

「承知しました。では今晩のお仕事も少し遠くですのでこちらを

お使いください。向こうの者には伝えておきます。」

俺の異世界原付ライフが確定した。

今度はエンジンを盗まれないことを祈ろう。

 

部屋に戻り、オオブが渡してくれた服に着替える。

ワイシャツに黒のベスト、黒のズボン、さながら黒服といういで立ちだ。

「あの、鏡はありますか?」

異世界に来てから自分の姿ウィ確認していなかったことに気づき、せっかくなのでオオブに尋ねてみた。

「鏡ですか?こちらに。」

俺の寝ていたベッドを倒すと裏側が姿見になっていた。わけわかんねえよ。

俺の外見だが、

黒と赤の斑の髪に、スラっとした細身のからだ、きりっと太い眉に、え、俺ずっとメガネかけてたの?きづかなかったが赤縁のメガネをかけている。髪も見ようによってはメッシュに見えてかっこいい。元の世界の俺とあまり変わっていないように見えるが…。まあイケメンだしいいかな。と一人納得し髪を整えた。

 

後ろから黙ってみていたオオブが言う。

「あの、お仕事のお店ですが、少し遠いのでそろそろ出発されたほうが、、、。こちら地図です。まっすぐ行くと最初に見える大きな町です。カイナンというところです。入口に綺麗な女性がたっていますので、その方に話しかけてくださいね。では、お気をつけて。」

オオブは話すだけ話すと去っていった。見送りもなしなのか。

俺は選ばれし者になりたくてなったわけじゃねえぞ。

地図を見てみると、本当に一本道である。ずいぶんと縮尺がアバウトだが、そんなに時間がかかるのだろうか。

まさか和歌山から岩手ほどではないだろう。

そう思い、始まりのまちワカヤの門を出、原付にまたがった。