男は最強を自負していた
どす黒いナリと
凶器のような腕
いつも我が物顔で歩いている

若い頃から、街へ出て
肩で風を切る姿を何度も想像して過ごした

たくさんの兄弟たちが巷へ散って行った。
姿を見せると人に逃げられる恐怖を与える
そんな兄弟たちを
誇らしげに思った

しかし、ある時
巨大な相手に潰される兄弟をみてしまった。
いくら強くなろうが
巨大な相手には無意味か。
また、家に忍び込み寝込みを襲い
一矢を放つ兄弟もいたが
そのまま帰って来ない兄弟が多かった。
さらに、白い粉に溺れ
身体が動かなくなる兄弟もいた。

兄弟達は、食うに困り
都会から姿をみなくなった。
中途半端な田舎では
兄弟の噂を聞いたが
結果はどこでも同じようだった

そんな中、俺も巷で名をあげようと
一度だけ、巨大な相手に挑もうとした
しかし、すぐに捕らわれ
死を覚悟した
しかし、半透明の紫色をしていた幼き俺が
ガラス細工のような繊細な姿に見えたのか
おかげで、逃がしてもらえた
若さゆえの無謀な行動だった
その頃から
恐怖に怯えながら物陰にひそんでいた
目立たないように注意を払い
息を潜ませていた

世界を変えた。
この原野を俺の世界にした
ここなら、むやみに人間に潰されることもなく
人間が撒き散らす、ムカデ殺虫剤の白い粉にも
やられない
俺はこの世界最強だ
とムカデは歩いている