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前回は、、

虐待のない健常な親子で、

親子が一緒にいる時間の長さが、

言語処理能力や脳の形態に

影響を与えるのかどうか

ということを調べた、

「脳トレ」の川島隆太先生@東北大の

研究グループによる実験の紹介の

途中まででした



拙ブログ『子どもの言語機能の発達は、親子で過ごす時間が影響する(1)』




得られたデータを元に、

親と過ごした時間、言語理解度、IQが

上側頭回の形態と関連があるかどうか

を解析した結果、


親と過ごした時間が長いほど

上側頭回の灰白質密度が低いことが

分かりました


また、

言語理解度や知能指数(IQ)が高いほど

上側頭回の灰白質密度が低かったのです



これらの結果は、

どう考えたらよいのでしょうか?



灰白質というのは、

ニューロンの細胞体が集まった所なので

その密度が低いというのは

ニューロンが少ないことを意味し、

情報処理能力が低下したようにも

思われます


実は、

脳の基本単位であるニューロンは

産まれるときに一番多くて、

乳幼児期にグッと減ります


また、

ニューロン同士がつながるシナプスも

生後に増えた後、使っていない回路は

刈り込まれていくこともわかっています



実際、

小さい頃に灰白質が減っていくとする

研究結果や、

Giedd JN, et al. (1999)
"Brain development during childhood and adolescence"
Nature Neuroscience 2: 861-863.


高い IQ の子どもは、側頭回を含む

脳領域で大脳皮質が薄くなっている

という結果や、

Shaw P, et al. (2006)
"Intellectual ability and cortical development in children and adolescents"
Nature 440: 676-679.


IQ の高い子は、低い子よりも

大脳皮質が少しばかり薄い

という結果があります

Schnack HG, et al. (2014)
"Changes in thickness and surface area of the human cortex and their relationship with intelligence"
Cerebral Cortex.
doi: 10.1093/cercor/bht357.



今回の結果では、

言語理解度が高いほど、

それから、IQ が高いほど、

上側頭回の灰白質密度が低かった


親子で一緒にいる時間が長いほど、

上側頭回の灰白質密度が低かった


そして、

親子で一緒にいる時間が長いほど

言語理解度が高かった


という結果から、

親子で一緒にいる時間が長いほど

言語理解度が高くなったのは

上側頭回での灰白質密度の低下と

関連があり、それは、

その脳領域が発達したと考えられる

というわけです



Takeuchi H, et al. (2015)
"The Impact of Parent-Child Interaction on Brain Structures: Cross-sectional and Longitudinal Analysis"
Journal of Neuroscience 35(5): 2233-2245.




東北大学加齢医学研究所のプレスリリース
「親子で過ごす時間が子どもの言語理解と関連脳領域に影響 ~脳形態イメージングにより解明~






プレスリリースに掲載の3つの図のうち

親子で過ごした時間と、

言語理解指数や脳の灰白質密度の間の

関係を示した2つが原論文にないのが、

もったいない。。


脳のイメージングの図は

論文と同じみたいですが。。


どうも、

他の学会か何かで使った別の図を

プレスリリースに使ったような。。


ま、データの傾向としては同じですし、

データとしては伝えたいことが

伝わればよいので、問題はないのですが


学術雑誌に掲載された、という

プレスリリースなのですから、

論文に掲載の図をプレスリリースにも

使っていただきたかった


それと、プレスリリースには

論文が掲載された雑誌の巻号とページ数

が欲しかった。。



いずれにせよ

262名もの被験者を使って、

評価が難しい脳の発達のことに

取り組まれたのは素晴らしいです



子どもの言語機能の発達には

親子で一緒に過ごす時間が影響している

というお話でした。




(おしまい)




文:生塩研一




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