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前々回は、
脳のニューロン活動を調べるのに
その活動の様子を示す電気信号の波形を
スピーカーにつないで音で聞く
ということをかきました
拙ブログ『脳を調べる実験では神経活動を音で聞きます』
脳の座標系は、
耳の位置などを基準として決められます
その位置座標から
記録したい脳領野の位置を特定して
その辺りの頭蓋骨を取ります
すると、脳を覆う髄膜が見えます
数ヶ月に渡って同じ脳領域から
ニューロン活動を記録しますので、
ステンレス製の窓枠を取り付けて
清潔に保つようにします
髄膜は外から、硬膜、クモ膜、軟膜の
3層からなり、硬膜が一番硬いです
脳にはシワがありますが、
大きいシワは硬膜越しにも分かるので
頭蓋骨を取ったらシワの様子を
スケッチしておきます
脳のシワは領域を分ける基準にも
なりますので、このスケッチは大事です
針電極を脳表面から刺すときは
予め用意した所を基準にして
位置座標を指定して刺し込みます
あとは、
針電極をマイクロメートル単位で
進めながら、ニューロン活動を拾う度に
深さを記録しておきます
大脳皮質は浅いので
それほど難しくはないのですが、
問題は深い所にある大脳基底核など
の灰白質(細胞体が集まった所)です
活動を記録したニューロンが
本当に大脳基底核なのか、
その中でも、もっと細かくはどこなのか
をきちんと調べる必要があります
普段のニューロン活動記録実験では
針電極が細いため、
実験終了後に脳を取り出しても
どこに刺したかがそのうち分からなく
なってしまいます
では、どうやって具体的な位置を
特定するのでしょうか?
ニューロンの電気的な活動を拾うために
脳に針電極を刺し込むのですが、
金属の電極ですから、電気信号を
拾うだけでなく電流を流すこともできます
つまり、実験の最終段階で
刺し込んだ針電極の先端から少し強めの
電流を流して微小な焼き跡を
証拠として何点か残しておくのです
そして、脳を取り出して
厚さ数十μmの切片にして
脳の構造と焼き跡の位置を確かめてか
それを基準にすることで活動記録をした
ニューロンの位置が分かるのです
実験の様子が
お分かりいただけたでしょか?
とってもマニアックな内容に
なってしまいましたね
これで、
実験がスムーズに行くように見えますが
実は、少し厄介なことがあります
ニューロンの活動の程度は
領域によっても様々で
必要なときに活発に活動するものや、
その反対に
活動電位を高頻度に出し続けている
ものもあるのです
前回、
針電極を進めると、活動電位の波形や
それをつないだスピーカーからの音で
細胞体の多い灰白質なのか
線維だけの白質なのかが区別できると
書きましたが、
あまり活動性の高くない細胞体が
集まっている灰白質では
音も出ませんので、
針電極の先端が灰白質にあるのか
そうでないのかの区別がつきにくいです
とは言え、
私が記録しているような
大脳皮質や大脳基底核は
厚さや大きさが結構ありますし、
ある程度活動してくれるニューロンの
お陰で何とか調べられている状況です
ということは、
小さい核や薄い灰白質を調べるのは
難しい、ということになります
脳の中の薄い灰白質の一つに
「前障」があります
とっても薄いので、
私は存在自体こそ知ってはいますが
あまり気にかけておらず
それを調べている研究者も
ほとんどいないだろうと思っていました
なんと、先日、
その前障に関する論文が発表されました
この話は、次回。
(おしまい)
文:生塩研一
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