小説を読むと
その世界に没頭してしまいますね
そんなとき
脳はどんな状態になっているのか?
というのを調べた実験があります
Berns GS, et al., (2013)
"Short- and long-term effects of a novel on connectivity in the brain"
Brain Connectivity 3(6): 590-600.
被験者は21名(女性12名、男性9名)
19歳~27歳(平均21.5歳)
実験期間は、19日
真ん中の9日間に本を読んでもらいます
最初の5日と最後の5日は
比較のため期間
被験者に読んでもらった本は
ロバート・ハリスの
『ポンペイの四日間』(原題:Pompeii)
内容は、
前任者が謎の失踪を遂げ、アッティリウスはローマ帝国最長の水道の管理官に任命された。だが就任早々、断水という重大問題に直面した。水道を修復するため彼はポンペイに向かうが、当地では大富豪が密かに悪事を行なっていた。大富豪に反感を抱くその娘との恋を育み、彼は水道の修復に命懸けで挑む。が、ヴェスヴィオ山の噴火が目前に!古代都市ポンペイが壊滅するまでの四日間のドラマを壮大なスケールで描く話題作。
(アマゾンより)
簡単に言うと、
スリル満点な小説のようです
毎夜、本全体の1/9を読んで
翌日、読んだ内容に関するクイズと
感想を言ってもらっている間の
脳活動を fMRI で調べます
fMRI のデータ解析というと
脳血流が増えたのは
つまり、脳活動が強くなったのは
どの脳領域であるかを調べますが、
この論文では
脳の中に、半径6mm の球状領域を
160カ所設定して
その球状領域での脳活動が
一緒に強くなったり弱くなったりという
結合性を調べています
the Network-Based Statistics (NBS) Connectome v1.2
とか言う解析ソフトを使用
さて、
実験結果はどうだったでしょうか?
小説を読んでいる期間に
活動が強くなったのは、
下頭頂小葉が中心となったネットワーク、
側頭葉や視覚野が中心となった
ネットワーク、
側頭葉や中心溝が中心となった
ネットワーク、
だったとのこと
下頭頂小葉は頭頂葉の外側部で
後下方に位置して、
自他の区別や、言語、それから、
体外離脱体験やドッペルゲンガーとも
関係すると考えられています
また、
中心溝は前頭葉と頭頂葉を分ける溝で
その前部は運動野、そして、
後部は体性感覚野です
著者らは
小説の中に入り込んだ状態を
反映していると考えています
しかも、
本を読む期間を終えても
中心溝と島皮質や後頭葉の
ネットワークは
強い活動が残ったところがある
というのも面白い結果です
島皮質の機能も
まだよく分かっていませんが、
情動との関わりが指摘されています
実験の試み自体は面白いのですが
かなりもったいない
というのは、
脳の活動を比較するのに
本の中身を思い出しているときと
何もしていないときを比較していること
比較すべきだったのは
本の中身を思い出しているときと
本の中身とは関係のない簡単なことを
質問して答えてもらうときなどです
そうしないと
本を読んだことの影響なのか
それとも、
質問を聞いて答えるのに必要な活動
に過ぎないのかという区別が
付かないからです
この論文を紹介した記事もありますが、
やや過大評価気味のような。。
はやり原論文にあたってみないと
ちゃんとした評価はできませんね
着眼点は面白いだけに惜しい論文です
(おしまい)
文:生塩研一
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