誰かに見られていると
ズルをすることはできませんね
では、
リアルな人が見ているのではなく
人の目の「写真」でも
その効果はあるのでしょうか?
それを確かめた実験があります
Bateson M, et al. (2006)
"Cues of being watched enhance cooperation in a real-world setting"
Biological Letters 2: 412-414.
実験の参加者は
ニューキャッスル大学心理系の
スタッフ、48名(女性25名、男性23名)
会社などのコーヒーコーナーで
飲んだ分だけ払うように
なっている所もありますよね
具体的な様子が
論文からはよく分からないのですが
どうやら、自販機ではなく
何人か分をまとめて作り置きして
各自のコップに取っていく
やり方のようです
メニューは
紅茶 か コーヒー
ミルクが必要な人は追加できるようです
料金は
紅茶:30ペンス
コーヒー:50ペンス
ミルク:10ペンス
1ポンド = 100ペンス
1ポンド = 170円、ですから
日本円に換算しますと
紅茶:51円
コーヒー:85円
ミルク:17円
ということになります
毎回、
近くに置いてある料金箱に
コインを自主的に入れるシステムです
無人販売所ですから
中には払わない人とか
少なめに払う人もいるかもしれません
という感じの状況で
飲んだ量と集まったお金を
10週間に渡って調べたそうです
ここからが大事なのですが、
ただ単に10週間を調べたのではなく
週毎に条件を変えています
それは、
料金箱と、コーヒーメーカーや
ティーメーカーの近くで
飲みに来た人の目に付きやすい所に
「人の両目」と「花」の写真を
1週間単位で交互に設置したこと
つまり、
人の目の写真を置くだけで
実際には誰も見ていない支払行動に
違いが出るのかどうか、
ということを調べたのです
ちなみに、
それらの写真も1週間は同じですが
次週は同じ物は使わず
人の目は男女交互に用意しています
特定の写真の影響ではないことを
調べるためですね
そして、
集まったお金は確実に分かるのですが
問題は飲んだ人数
結果的にどうしたかというと
ミルクの量で判断したそうです
何でも、これが一番指標として
適切だったからだとか
タイトルにも
a real-world setting
とありますように
出来るだけ、普段の様子で調べたい
ということですので、
実験だと悟られてはいけません
10週間もかけるので
ずっと監視するのも大変です
ということで、苦肉の策で
ミルクの使用量を採用したようです
さて、
実験結果はどうだったでしょうか?
なんと
花の写真のときよりも
人の目のときの方が
高く支払われていたのでした

グラフの横軸は
ミルク1リットル当たりに
支払われた金額(ポンド)
0.7ポンドは、70ペンスです
縦軸は週で、下から上に経過します
各週で貼られていた写真がその左に
人の目から始めて、
花と目を交互にしています
グラフを見ますと
黒丸が人の目で、白丸が花ですから
黒丸の方が高い
つまり、
人の目の方が高く払われていたのです
その金額は
同じミルク量に対してですから
そもそもは変わらないはずなのです
それにもかかわらず、
置いてある写真で金額が変わった
ということは
目の写真を貼ることで
不正がより防がれたということです
「見られている」という意識が
無意識にプライマーとなって
ごまかしを防いで
協力行動を引き起こした
と考えられます
無意識レベルのきっかけが
その後の判断や行動に影響を与える
プライミング効果
面白いですね
(おしまい)
文:生塩研一
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