以前、

カーネマンの実験を引いて

アンカリング効果について書きました



関係ないと分かっていても

直前に与えられた数値が

価格などの数的な判断に影響する

というものでしたね



拙ブログ『あなたは操られている アンカリング効果』




そのときには書きませんでしたが

著者のカーネマン自身は

そのメカニズムとして

2つの処理システムがあると考えています



まず、

自動で速く無意識な処理



そして、

経験や知識も動員しながら

ある程度時間をかける論理的な処理



1番目の

自動で速く無意識な処理

として心理学でよく知られた現象に

「プライミング」があります



プライミングとは

プライマーという先行刺激が

直後の判断などに影響することです



プライマーというのは

アンカリング効果の回を読まれた方は

もうお分かりと思いますが、

何かをしてもらう前に与える情報のこと



アンカリングの場合は

関係ない数字でしたね



心理学でよく出される例は

単語を考えてもらう問題でしょうか



例えば、

□クラの□に文字を入れるとき

春を連想される情報を与えておくと

「サ」を入れて、サクラに

夜とか寝るといった情報だと

「マ」を入れて、マクラにする確率が

高くなるといったことです



連想というメカニズムが背後にあって

関連する情報が意識に上りやすくなる

と考えられます




このプライミングは

言葉の想起だけでなく

行動や感情にも表れます



有名なBargh らの論文を紹介しましょう



Bargh JA, et al. (1996)
"Automaticity of Social Behavior: Direct Effects of Trait Construct and Stereotype Activation of Action"
Journal of Personality and Social Psychology: 71(2): 230-244.






論文では3つの実験をしていますが

そのうち2つについてご説明しますね





【実験1】



プライマーとして

無作法、礼儀正しい、どちらでもない

という3つのイメージを与えます



それを与える仕組みとして

5つの英単語から4つを選んで

単文を作る、

というテストをやってもらいます



単語の中に、無作法や礼儀ただしさを

イメージするものを入れておくわけです



それに5分くらいかかるのですが、

終了したら部屋を出て

担当者に声をかけることになっています



しかし、

担当者は他の被験者(共謀者)の対応を

していて取り込み中なため

被験者が来たことに気付きません



このとき

被験者が、取り込み中の担当者に

声をかけるまでの時間を計ります



すると、

10分以内に割り込んで

声をかけた確率でみると

「無作法」なプライミングでは

6割強と多かったのですが、

「礼儀正しい」では

2割弱しかいませんでした



「無作法」と「礼儀正しい」という

異なるプライミングによって

割り込むという行為に差が出たのですね




【実験2】


実験1と同じく

5つの英単語から4つを選んで

単文を作るというテストをするのですが、

プライミングとして

「高齢者」をイメージさせるケースと

特定のイメージがないケースに分けます



そして、

テストが終わった後、担当者から

不充分であまり納得がいかない説明を

受け、廊下の先のエレベータを使って

帰るように促します



計るのは、その説明を受けてから

エレベータに向かうまでの 9.75 m を

歩くのにかかるタイム



実験の結果、

特にプライミングのないケースでは

平均で 7.30秒だったのに対して、

「高齢者」のプライミングをすると

8.28秒と、約1秒遅くなったのです



実験後の聞き取りで

被験者は「高齢者」にプライミングされた

とは自覚していなかったとのこと



つまり、

「高齢者」のプライミングによって

無意識に歩く速度が落ちた

と考えられます




このプライミング効果は

言葉の想起だけでなく

行動にも表れるのですね





(おしまい)





文:生塩研一





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