毒は、英語で poison(ポイズン)
これまで見てきた神経毒は
生物が持っているものでしたが、
生物がもつ毒を
toxin(トキシン)と言います
テトロドトキシンとか
バトラコトキシンとか
ありましたね
今日は、トキシンではなく
合成毒ということで
サリンを見てみましょう

(サリン)
前回のキノコ毒と同様に
神経伝達物質が関係します
サリンは
1938年、ドイツの研究チームが開発
それを主導したのが
ゲルハルト・シュラーダー
Gerhard Schrader
(1903年~1990年)
ドイツの有機化学者で
殺虫剤の開発に従事
第二次世界大戦で
ナチスの下で化学兵器の研究に携わり
1936年、タブン(GA)
1938年、サリン(GB)
1944年、ソマン(GD)
1949年、シクロサリン(GF)
といった神経ガスを開発
「神経ガスの父」とも呼ばれます
上記の神経ガスは
ドイツで開発されたので
Gシリーズと呼ばれ、括弧内の
GA, GB, GD, GF は
開発順につけられたコードネームです
サリン(Sarin)という名称は
開発チームのメンバーの名前に由来
Schrader の S
Ambros の A
Rudiger の R
van der Linde の in
から取って、Sarin
組成式: C4H10FO2P
構造式: CH3P(O)FOCH(CH3)2
融点:ー57℃
沸点:147℃
沸点が147℃と高くて
常温では液体なので
撒かれても危なくないのでは?
と思われるかもしれませんね
ところが、そうもいかないのです
揮発性が高い
つまり、気化しやすい、と言えば
お分かりいただけるでしょうか
例えば、
エタノールの沸点は78℃で
サリンほどではないにしても
気温よりは充分に高いです
それにもかかわらず、
お酒や注射のときの消毒
はよく匂いますね
それらの成分であるエタノールの
揮発性が高いからです
というわけで、
サリンは常温では液体ですが
撒かれると簡単に気化してしまい
大変危険です
上記のGシリーズで
一番揮発性が高いのは、サリン(GB)
口を塞いだだけではダメです
なんと、サリンは
皮膚や粘膜からも吸収されるのです
では、
どのように危険なのでしょうか?
神経伝達物質は本来は
受容体に作用すると
すぐに分解されないといけないのに、
前回ご紹介したキノコ毒は
その神経伝達物質にそっくりですが
ちょっと違うために分解されず
ずっと漂って神経系を狂わす
と書きました
『キノコ毒 ~ 神経毒からニューロンの機能をみる(8)』
サリンも
神経伝達物質に似ていて
分解酵素にがっちりくっつくことで
神経伝達物質の分解を妨げます
具体的な作用と解毒剤については
明日にでも
(つづく)
文:生塩研一
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