前回と前々回で

ヒトの立体視について見てきました



前々回は、

左右に離れた2つの目が

立体感を与えているという例として

3Dメガネの話を


『3Dメガネ ~物が立体的に見える理由(1)』




前回は、

3Dメガネを使わずに

平面の映像から立体感を得る

シングル・イメージ・ステレオグラム

(単に、ステレオグラム

 と言った方が分かりやすいかも)

を紹介して、さらに

脳の思い込み(高度な処理)により

片目でも立体感を感じている

というお話をしました


『ステレオグラム、ポンゾ錯視 ~物が立体的に見えるわけ(2)』







立体感や奥行き感をともなう

認知能力についても

研究が進められています



先頃、

チンパンジーとヒトの

空間認知能力を調べた論文が

発表されました



京大の研究者らによる成果で

チンパンジーの視覚探索が

ヒトに近いことを実験で

確かめています



京大のプレスリリース


Imura T & Tomonaga M (2013)
"A ground-like surface facilitates visual search in chimpanzees (Pan troglodytes)"
Scientific Reports 3, 2343.





実験では、

下図のような図形を見せて

一つだけ違うパターンの箱を

見付ける課題を

ヒトとチンパンジーにさせます



$プラスサイエンス ~ 科学が気になるアナタのために-地面


(図1:地面を見下ろすパターン)



これ、前回紹介したステレオグラム

とは違いますよ



片方の図だけで、手前から奥の方に

箱が並んでいるように見えますね



その中で、仲間はずれを捜します


図では、

その2例を示しているだけです




これまでの研究により

このような図では、ヒトは

図の中で探し物をするときには

地面の奥行き方向に向かって

注意を向けることが分かっています



今度は、その図をひっくり返して

天井にくっついているような

図にしたら、どうでしょうか?



$プラスサイエンス ~ 科学が気になるアナタのために-天井


(図2:天井を見上げるパターン)




こうすると、少し難しくなって

見付けるのが遅くなるようです



このような地面優先的な探索は

ヒトのような地上性の動物には

機会が多いため、その状況に応じた

認知能力が高くなっているのでしょう




では、

他の動物はどうなんでしょう?



ということで、

チンパンジーを調べてみたら


$プラスサイエンス ~ 科学が気になるアナタのために-チンパンジー


(実験風景)



ヒトと同じように

地面を見下ろすパターン(図1)

の方が、

天井を見上げるパターン(図2)

よりも見付けるのが速かったそうです



著者らは、

人間に比べ、樹上性の傾向が強いチンパンジーも、人間と同じように「地面」の上の物体により注意を向けていたことから、地上を優先的に探索する能力は、少なくとも人間とチンパンジーの共通祖先において共有されている可能性が示唆されました

と述べています



まあ、

チンパンジーが樹上性とは言え

見上げるより見下ろす方が多い

ような気もしますが




このように、

異なる動物の認知機能を調べるのは

比較認知科学と呼ばれます



ヒトの認知能力について

時間軸を遡る研究とも言えます





(おしまい)





文:生塩研一





お読みいただきまして、ありがとうございました。
コメントもお待ちしています。お気軽にどうぞ~!


応援してくださる方は、下のバナーをクリックビックリマーク
ランキングサイトが開いたらOK! 


自然科学 ブログランキングへ

にほんブログ村 科学ブログ 自然科学へ
にほんブログ村


Facebook の「いいね!」も嬉しいです!


Twitterもやってます




読者登録してね