記憶の問題は

おもしろいですが、とても難しいです



先日も記憶について

何日かに渡って書きました


『記憶と海馬の深い関係』






記憶は、

寝ている間に整理されている


とか、


エピソード記憶や手続き記憶を

匂いや音と関連付けて形成した後で

その被験者が寝ている間に

徐波睡眠の状態で

その匂いや音を与えると

記憶が増強された


という報告も複数あります



例えば、

Diekelmann S, et al. (2011)
"Labile or stable: opposing consequences for memory when reactivated during waking and sleep"
Nature Neuroscience 14: 381-386.
doi:10.1038/nn.2744






徐波睡眠ですから

レム睡眠ではなくて

δ波(1~4Hz)のノンレム睡眠です



レム睡眠は

その名前がよく知られてはいますが

実のところ

その役割はよくわかっていません



一方、

徐波睡眠が記憶の整理や固定に

関わっていそうだ、ということは

共通の見解になっています




睡眠は、

恐怖など、感情と結びついた記憶

についても重要だと思われますが

脳のどこが関与しているか、など

ほとんど分かっていません




先日、

記憶・睡眠・匂い についての

興味深い論文が発表されました



Hauner KK, et al. (2013)
"Stimulus-specific enhancement of fear extinction during slow-wave sleep."
Nature Neuroscience
doi: 10.1038/nn.3527.






実験では、15人の被験者に

匂いを嗅がせている間に

他人の顔写真を1秒間見せるのを

3回繰り返して、その3回目に

軽い電気ショックを与えます



嗅がせる匂いは4種類


柑橘系の匂い(リモネン


針葉樹の匂い(α-ピネン


アーモンドの匂い?(アセトフェノン


薬草の匂い?(カルボン




これを繰り返していくと

匂いを嗅いでいるだけで

電気ショックがくるという

嫌な記憶が形成されて

恐怖応答として微量の汗を

かくようになります




それから、

仮眠をとってもらっている間に

先の4つの匂いのうち

どれかを嗅がせます




そして、

また最初と同じように

匂いを嗅ぎながら顔写真を

見てもらいました




すると、

仮眠中に嗅いだ匂いのときだけ

汗の量が少なかったのです




このときの脳の活動を

fMRIで調べたところ、

海馬と扁桃体の活動が

弱くなっていたとのこと




つまり、

睡眠中に嗅いだ匂いについては

恐怖応答が少なくなるように

記憶が書き換えられた、

ということです




ちなみに、

被験者は仮眠から覚めても

仮眠中にその匂いを嗅いだ

ということは覚えていません




負の感情を伴った嫌な記憶を

匂いと結びつけておいて

徐波睡眠中に匂いを嗅がせることで

その記憶を呼び起こす



そうすると、

海馬や扁桃体で再処理されて

その記憶に対する負の感情が

弱くなる、

ということを示唆する実験結果です





嫌な記憶は匂いと結びつけて

ノンレム睡眠で処理、


というお話でした





(おしまい)






文:生塩研一





お読みいただきまして、ありがとうございました。
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