昨日のブログでは

『マウスの空間記憶実験の装置、あれこれ』

マウスを使う実験装置のことを

書きました



それは、

長期記憶の分子メカニズム

と考えられている LTP が

行動レベルでどう影響しているか

を調べる最先端の論文を

紹介するための準備だったわけです




では、論文を見てみましょう



結果から言いますと、

ノックアウトマウスを使って

海馬で LTP ができないようにしても

記憶が形成された、とのこと



Bannerman DM, et al. (2012)
"Dissecting spatial knowledge from spatial choice by hippocampal NMDA receptor deletion"
Nature Neuroscience 15: 1153-1159.





あれ?

海馬が記憶に関係ないの?



論文の中身を見てみましょう



特定のタンパク質を作れなくするなど

遺伝子組み換え技術は、脳に限らず

いろいろな組織の機能を調べるのに

とても役に立ちます



特定のタンパク質を作れないと

そのタンパク質が関わる機能が

働かなくなるからです



こういう手法を、ノックアウトといって

ノックアウトマウスが有名ですが、

それは、

マウスがノックアウトしやすくて

高等な動物だからです




以前のブログで書きましたように

『神経情報伝達をスムーズに LTP と NMDA受容体』

LTP は NMDA 受容体によるのでしたね



そこで、

海馬の NMDA 受容体が機能しない

ノックアウトマウスを使って

記憶の実験をしたのですが、

ちゃんと記憶できた

ということなのです。。



実験では、空間的な記憶の課題として

モリス型水迷路と8方向放射状迷路

が使われています



上記2つの迷路については

昨日のブログを参照ください

『マウスの空間記憶実験の装置、あれこれ』



モリス型水迷路では

長期記憶に関わると思われていた、

海馬の NMDA の機能させなくても

普通のマウスと同程度に

クリアできたそうです



ちなみに、逃避台を

プールの中心に対して反対の位置

に移すと(reversal task)

記憶はできるけれど、遅かったとか




次に、

8方向放射状迷路で調べたところ

今度は、

上手く記憶できなかったようです



どの通路も入口が同じなので

紛らわしくて、出来なかったのでは

ないかと考えられます




そこで、

モリス型水迷路で似たようなことを

して試してみようと



逃避台の上に目印をつけて

さらに、

反対の位置に同じ目印をつけただけで

台のないニセの逃避台も設置すると

今度は、間違えたそうです



ニセの逃避台の目印が

本当の逃避台のそれと違うものでは

間違わなかったとのこと



ということは、

海馬の NMDA 受容体が機能しないと

紛らわしい情報がある際の選択に

支障が出るようです



つまり、海馬は

空間的な記憶にも関わっているが

記憶というよりは

似た複数の情報の中から選ぶことに

より関係している、と考えられます



海馬の NMDA が機能しなくても

とりあえず

空間的な記憶は出来たわけですが、

それでは、

長期記憶に関わっているのは

他にあるのでしょうか?




明日はまた別の論文をご紹介しますね




(つづく)





文:生塩研一




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