月曜からの
記憶と脳についての続きです
『記憶と海馬の深い関係』
『記憶の分子メカニズム? LTP 概略』
昨日は、
記憶の分子メカニズムとして
LTP(長期増強)
というメカニズムによって
神経細胞同士の情報連絡が
スムーズになるから
ということを書きました
LTPでは
シナプスで神経伝達物質を受け取ると
プラスの電位が長く続くのですが、
どうしてそうなるのでしょうか?
その神経伝達物質で大事なのが
グルタミン酸
送る側の神経細胞から
放出されたグルタミン酸は
受け取る側の神経細胞の
細胞膜表面にある
Naイオンチャネル受容体という
タンパク質に結合します
Na:ナトリウム
すると、チャネルが開いて
Naイオンが神経細胞内に流入します
このチャネルには
いくつか種類がありまして
上で書いたように Naイオンがまず
流入するのは、AMPA型と言います
Amino-3-hydroxy-5-Methylisoxazole-4-Propionic Acid
他のチャネルに、NMDA型があります

このNMDA受容体はチャネルの穴に
Mgイオンがあって、グルタミン酸が
受容体に結合しても Na イオンは
流入しません
Mg:マグネシウム
しかし、
先の AMPA 型チャネルから
Na イオンが流入して
細胞内の電位がプラスになると
チャネルの穴をふさいでいる
Mgイオンが外れます
すると、
Na イオンだけでなく
Ca イオンも流入して
細胞内の電位をプラスに押し上げます
Ca:カルシウム
さらに、
神経細胞内の Caイオンが増えると
受容体の感受性が増加し、
また、
受け取る側の神経細胞から
一酸化窒素(NO)が
シナプスの隙間に放出されて
送る側の神経細胞に働きかけ
グルタミン酸の放出を増やします
このようにして
受け取る側の神経細胞が
高い電位を維持しているというのが
LTP の基本的なメカニズムとして
考えられています
LTP(長期増強)と逆の現象もあり
LTD(長期抑圧)と言います
Long-Term Depression
Dudek SM & Bear MF (1992)
"Homosynaptic long-term depression in area CA1 of hippocampus and effects of N-methyl-D-aspartate receptor blockade."
Proc Natl Acad Sci USA 89(10): 4363-4367.
こちらは、LTP の逆で、
受け取り側の神経細胞が
長期的にマイナスになって
興奮しにくくなります
LTD になるには
1-5 [Hz] の低頻度刺激を
数分間続けます
必要な回路を残すために
あまり使われない回路を
活発にさせないため
と考えられています
記憶や学習は
情報の通りがよい神経回路の
ネットワークをつくること
同じことを繰り返すのは
その回路の情報伝達をスムーズに
していることなのですね
明日は記憶についての
行動レベルの実験をご紹介します
(つづく)
文:生塩研一
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