昨日のブログでは

『記憶と海馬の深い関係』

てんかん患者のHMさんのケースから

海馬は記憶と関係がありそうだ

ということを書きました





記憶のメカニズムは現在でも

脳科学の中心的な課題の一つで

まだまだ分からないことだらけ

ではありますが、

かなり分かってきている

というのも事実です




脳だけでなく脊髄や全身にある

神経細胞は、シナプスという

神経細胞同士の接点で情報を伝えます



例えるなら、

神経細胞を一人のヒトとすると

握手をして(ここがシナプス)

情報を伝える感じで、

そのとき、手から神経伝達物質が出て

それを相手の手が受け取ることで

情報が伝わるといった具合です



記憶や学習のメカニズムとして

考えられているのは

そのシナプスで情報伝達が

スムーズになるということです



その一つが海馬で初めて発見された、

長期増強(LTP)
Long-Term Potetiation





LTPは、1973年、Bliss らによって

発見されました



麻酔下のウサギを使った実験↓

Bliss TV & Lomo T (1973)
"Long-lasting potentiation of synaptic transmission in the dentate area of the anaesthetized rabbit following stimulation of the perforant path."
Journal of Physiology 232(2): 331-356.




上記と同じグループで

覚醒下のウサギを使った実験↓

Bliss TV & Gardner-Medwin AR (1973)
"Long-lasting potentiation of synaptic transmission in the dentate area of the unanaestetized rabbit following stimulation of the perforant path."
Journal of Physiology 232(2): 357-374.







LTPが起こっていない通常の状態では

情報を受け取る側の神経細胞は

神経伝達物質を受け取ると

Naイオンチャネルが開いて

正電荷のNaイオンが流入して

受け取る側の神経細胞の電位が

短時間だけプラスに向かいます



LTP、長期増強というのは

その受け取る側の神経細胞内の電位が

長ければ数日という長期に渡って

プラスに近い電位を維持する現象です



通常、

受け取る側の入力が1回だけなら

受け取る側の電位が

プラスに向かっても

次の神経細胞に情報を送るには

至りません



短時間に複数の入力があって

プラスの電位が大きくなったら

次の神経細胞に情報を伝えます



ですから、

プラスの電位が大きい状態が

長く続くと、少ない入力で

電位が大きくプラスに向かうので

情報が簡単に神経細胞間を

次々に伝わるということになります




海馬で確認されている例では

LTPは、25-200 [Hz]

つまり、1秒間に25回から200回

という高頻度の電気刺激を

神経細胞に与えることで起こります



そこまで高頻度な刺激でなくとも

送る側と受け取る側の神経細胞を

同時に刺激しても LTP になります


Bi G & Poo M (2001)
"Synaptic modification by correlated activity: Hebb's postulate revisited."
Annu Rev Neurosci 24: 139-66.






海馬の話は、あの有名な、

東大の池谷裕二先生がご専門で

分かりやすいご著書もあります


池谷裕二、糸井重里『海馬 ー脳は疲れない』(新潮文庫)





池谷裕二先生のサイト『海馬の基礎知識』

もご参考ください




明日は、

LTPについてもう少し詳しく

みていきましょうか




(つづく)





文:生塩研一




お読みいただきまして、ありがとうございました。
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