今日はとても涼しかったですね


職場でもエアコンなしで過ごせました


このまま秋になってくれると

嬉しいのですが。。。




さて、



様々な精神疾患と

脳機能の関係が調べられつつあります



関係する脳領域が分かれば

fMRI や NIRS といった、

脳機能イメージングにより

客観的な指標が得られ

診断などの助けになります




広汎性発達障害(PDD, Pervasive Developmental Disorders)

とは、

以下の3つの領域に障害のある発達障害


1) 相互的対人関係の質的異常

 アイコンタクトがあまり取れない

 顔の表情やジェスチャーが読めない

 楽しみや達成感を分かち合えない、など


2) コミュニケーションの質的異常

 会話の開始や継続に障害がある、など


3) 幅が狭く、反復的・常同的である行動・興味・活動パターン

 興味のあることだけに執着する

 意味のない習慣や儀式にこだわる

 同じ行動を繰り返す常同を示す、など



自閉症やアスペルガー症候群などの

自閉症スペクトラムもPDDに含まれます




今回ご紹介する論文では

広汎性発達障害(PDD)の患者における

表情の処理についての実験を行なっています



中土井芳弘、他 (2013)
「多チャンネル近赤外線スペクトロスコピーが示す広汎性発達障害の表情処理過程における前頭前野の賦活反応性の低下」
精神神経学雑誌 115(3): 237-244




健常者では、顔を認知する際

紡錘状回という、

側頭部から後頭部の脳の底あたりの

大脳皮質が活性化しますが、

PDD患者では、その活性化が弱いという

研究報告もあります



表情の認知には、他の脳領域も

関与していることが分かっており

前頭前野(おでこの奥)も

その一つであることが fMRI の実験で

示されています



論文のタイトルにありますように

前頭前野の活動は

「近赤外線スペクトロスコピー」

で調べますが、

これは、NIRS(ニルス)のこと



以前、このブログでも取り上げましたね



透過性の高い近赤外線を

頭皮の上から照射して、

どれくらい吸収されたかで

酸素飽和度を計測して

血流の変化を調べるのでしたね


『脳の活動はどうやって調べるの?(3)NIRSその1』

『脳の活動はどうやって調べるの?(4)NIRSその2』

『脳の活動はどうやって調べるの?(5)NIRSその3』




そこで、

PDD患者に表情を読んでもらっている間に

前頭前野の活動低下が NIRS でも

検出できるかを調べてみよう、

というのが今回の論文のテーマです



実験では、強い恐れを示す表情と

中立的な表情を用いています



実験用のデータベースも

販売されていまして

今回の論文で使われているのは

日本人の標準的な表情画像を集めた

ATR顔表情データベースです


一般価格:199,500円(税込)

アカデミック価格:99,750円(税込)

とのことです




男性6名、女性4名の計10名の

恐れ表情と中立表情の静止画像から


まず、中立表情を2秒毎に15枚表示

続いて、恐れ表情を2秒毎に30枚表示

再び、中立表情を2秒毎に35枚表示



中立表情に比べて、恐れ表情では

前頭前野の活動がどうなっていたかを

NIRS で調べました



その結果、

恐れ表情を見た PDD 患者は

健常者に比べて

前頭前野の活動が有意に低下していた

とのことです



NIRS で検出されたということに

意味があります



というのは

fMRI は患者への負担も結構あり

コストも高くつきますが、

NIRS は患者への負担も小さく

安価ですみます



発達障害は

発達歴を詳しく調べる必要がありますが

それには困難を伴うことが多く、

客観的な指標が求められていました



今回の実験結果から

NIRS が PDD の客観的な指標を与える

補助診断法となる可能性が示された

ということなのです







(おしまい)






文:生塩研一



お読みいただきまして、ありがとうございました。
コメントもお待ちしています。お気軽にどうぞ~!


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