乳幼児は6ヶ月頃から
泣いたり、笑ったり、後追いしたりで
母親などの愛着対象に対して
接触を求めるようになります
これを愛着行動と言って
1、2歳頃に活発になり、
母親の養育行動を促進することが
知られています
最近、
わが子や他人の子の表情を見た
母親の脳がどのように反応するか
を調べた論文が発表されました
則内まどか、菊池吉晃 (2013)
『養育者の育児行動を支える神経基盤』
精神神経学雑誌 115(6): 630-634
実験では
乳幼児の表情を動画で見せ
そのときの母親の脳活動を
fMRIで調べています
脳のどのあたりが活発に活動するか
を調べたいわけですが、
活動が活発になる脳領域では
たくさんの酸素を使うので
酸素を運ぶために血流が増えます
fMRI では血流の変化から
脳活動の様子を調べるのでしたね
さて、今回の実験です
被験者の母親は、30歳前後の13名で
1、2歳の子どもをお持ちです
母親に見せる動画は
わが子か、他人の子が
引き離されたときに母親を求める泣き
または、遊び場面で母親に向けた笑顔
の4パターン
動画を見てもらった後で
動画に対して抱いた感情として
幸せ、母性、愛情、喜び、興奮、
心配、不安などを
5段階で評価してもらいます
実験の結果、
わが子と他人の子との違いから
わが子に対する愛情に関する領域は
眼窩前頭皮質(orbitfrontal cortex)
中脳水道周囲灰白質
被殻(大脳基底核)
前部島皮質
の4つだったとのこと
眼窩前頭皮質は
おでこの奥の前頭葉ですが
その最下部で脳の一番底の皮質です
機能としては
情動や報酬系に関わると
考えられています
報酬系というのは
快の感覚を引き起こす神経回路で
欲望が満たされたときなどに
活動します
近年、
脳科学で盛んに研究が進められている
分野の一つです
「喜び」や「幸せ」が強くなるほど
左脳の眼窩前頭葉皮質の活動も
強くなったのですが、
右脳の眼窩前頭皮質は、
「心配」の強さと関係があったとか
著者らは
眼窩前頭皮質は
わが子の存在そのものが
母親にとっての報酬であることを示す
としています
中脳水道周囲灰白質は
母性ホルモンのオキシトシンの
受容器がたくさんある領域で、
ラットの実験で、ここを破壊すると
母ラットは育児ができなくなる、
という実験もあるそうで、
育児に大事な領域なのですね
それから、
わが子の「泣き」と「笑顔」で
脳の反応を比べたところ、
「笑顔」に反応していたのは
快情報に関する視床下部、
視覚認知に関わる楔部、
動き認知に関わる中側頭回、
表情を作る前中心回などで、
喜びの表情や快の情動を
共有しているとのこと
また、「泣き」に対する反応は
笑顔を見たときに比べて
複雑な処理をしていたそうです
具体的には、
共感的に正しく理解するための
認知情報処理系
(上側頭溝、右下前頭回、前頭前野)、
警戒情報の処理系(前帯状回)、
母親自身の情動制御のための系
(後帯状回)、
そして、
これらに基づき適切な母性行動を
制御するための運動実行系(尾状核、
眼窩前頭皮質の背側領域)、
が活発に活動していたのだとか
わが子の苦痛に対する脳活動は
母親の愛情に関する脳機能に
支えられているのですね
育児放棄の母親の脳活動は
どうなっているのでしょうね
報酬系が働かないなどの違いが
あるのだろうと思われます
母親の育児行動に関わる脳活動を
調べた研究をご紹介しました
(おしまい)
文:生塩研一
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