私たちは、

自分さえよければと思う反面、

困っている人を見かけると

助けたくなる衝動にかられますね



なぜ、このような利他的な行動を

とってしまうのでしょう?



「情けは人の為ならず」

という、ことわざがあります



他人に親切にすると

回り回って自分に帰ってくる

と言っているわけですが、

本当にそうなっているのでしょうか?



そう言えば、しばらく前、

情けをかけるとその人のためにならない

と誤解されているケースが多い

との報道もありましたね





最近、

大阪大学の研究グループが

このことわざを検証すべく

相手の利益となる利他的行動を

見た第三者がどのように振る舞うか

を日常的な場面で検証した、

という論文が発表されました



ニュースでも広く取り上げられたので

ご存知の方も多いかもしれませんね



阪大のプレスリリース


論文(閲覧自由)
Kato-Shimizu M, et al., (2013)
"Preschool Children’s Behavioral Tendency toward Social Indirect Reciprocity"
PLoS ONE 8(8): e70915.







この利他的行動については

心理学的な研究が進められ

利他性を調べる社会ゲームなどで

検証が行なわれてきましたが、

日常的な場面ではどうなっているか

を調べた研究はありませんでした



ご紹介する論文では

それを世界で初めて実施した

とのことですが、

どうやったのでしょうか?





実験では、

保育園で5-6歳児の園児を

対象に選んでいます



まず、園児を12名選んで行動を観察


そして、その園児Aが利他的な行動、

例えば、手伝ってあげたり

ものを貸してあげたり、

そういうことをした瞬間から10分間に

その利他行動を見ていた第三者の

園児Bが園児Aに対して行なう行為を観察



さらに、後日、

その園児Bが園児Aに対して

どのように振る舞っているかを観察



親切行為を観察した直後ではないので

普段の場面として評価します



園児Aの利他的行動の直後 と

後日の普段場面での行動

を比較した結果、


利他的行動の直後では

園児Aの利他行動を観察した園児Bが

園児Aに対して利他的行動をよく取り、

また、

利他的行動とはいかないまでも

体に触ったり

肯定的な内容で話しかけたり

自分の持っている物を見せたり、

といった親和行動も多かったとのこと



この傾向は

園児Aが普段に受ける利他的行動や

園児Aと園児Bの友好関係を考慮しても

結果に変わりはなかったそうです



気になるのは、

幼児はあまり意味もなく他の子の

真似である模倣行為をよくする点



今回も、

園児Aの利他行動を園児Bが単に

模倣したという見方もできます



この点を、この論文の著者で

阪大の大西賢治先生に伺ったところ、

あ、大西先生とは別件で連絡を

とったことがあったりします。。


で、

今回の実験結果からだけでは

模倣の可能性も完全には排除できないが、

6歳児以下でも、他者に親切な人を

ポジティブに評価する心理傾向がある

という先行研究もあり、

園児Bが選択的に園児Aに

親切行動ととった可能性は高い

と考えられ、

模倣の影響は今後厳密に調べる予定

と教えていただきました



また、

後日、園児Bが園児Aに好意的に

接触する頻度は高くなったかどうか

も大西先生にお聞きしましたが、

今回の観察ではちゃんと評価できないが

今後の課題として視野に入れている

とのこと




論文では

ヒトの利他性は動物界でも例外的

とありますが、

マウスやラットの研究も

あったような気がしますので

思い出したら、また紹介しますね



ヒトの利他性の進化との兼ね合いも

面白い点ですが、微妙な問題もあり

難しいところです



とは言え、

何をどう評価するのかというのが

極めて難しい

日常的な場面での観察に

取り組まれているのが素晴らしいです




今後の研究成果も期待しましょう




(おしまい)






文:生塩研一



お読みいただきまして、ありがとうございました。
コメントもお待ちしています。お気軽にどうぞ~!


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