このシリーズの前回のブログでは、
脳の活動はどうやって調べるの?(3)NIRSその1
NIRS(ニルス)は
可視光の赤より少し波長が長い
近赤外線を使っていますが、
それは、
生体への透過性が高いから
ということでした
今回は、
NIRS で脳活動を調べる原理
について簡単に書いてみます
まず、イメージとしては
CT のような脳の断層像ではなく
割と表面近くの脳活動を調べます
脳を構成するニューロンは
細胞体から長い軸索を使って
遠くのニューロンに情報を送りますが
その細胞体は、大脳皮質という
脳の表面の層に集まっていて
それより深い所は軸索の配線で
埋められていますので
表面だけを調べてもかなりのことが
わかるのです
NIRS では、近赤外線を照射して
脳で散乱されて戻った近赤外線を
検出します
これで何がわかるのでしょう?
以前のブログで
脳の活動はどうやって調べるの?(2)脳機能イメージング概略
脳機能イメージングの方法には
測定対象として
ニューロン集団の活動 と
脳血流の変化
の2パターンがある
と書きました
脳血流が増えるのは
ニューロンが活発に活動して
酸素が必要になり、
それを補うのに血流が増えるから
酸素は赤血球のヘモグロビンに
くっついて運ばれます
神経活動により
代謝が5%増加すると
局所脳血流は30%増加します
fMRI も血流の増加をみますが
テレビなどで、脳の画像に
活動が高くなった領域が
赤く重ねて示されて、いかにも
そこだけ活動しているようですが
脳機能イメージングの
空間スケールでみると
実際にはほんの数%だけ
血流が増えるに過ぎません
いずれにせよ、
血流が必要以上に増加して
酸素をくっつけたヘモグロビンで
ほとんど占められるようになります
つまり、NIRS では
酸素をくっつけたヘモグロビンと
くっつけていないヘモグロビンの
比率を調べることで
脳血流が増えた脳領域を探します
では、
その比率はどうやって分かるのか?
近赤外線の吸光係数は
酸素がくっついたヘモグロビンと
くっついていないヘモグロビンとで
異なるります
それだけだと、
酸素がくっついたヘモグロビンと
くっついていないヘモグロビンの
比率が同じでも、量が変わると
吸光係数も変わるので
何を計測しているのか
分からなくなってしまいます
近赤外線といっても
その波長は 0.7 ~ 2.5 μmと幅広く
(700 ~ 2500 nm)
いろいろな波長があります
そして、
酸素がくっついたヘモグロビンも
くっついていないヘモグロビンも
その波長によって近赤外線の
吸光係数が変わります

吸光係数の波長依存性
Hb02(酸素がくっついたヘモグロビン)
Hb(くっついていないヘモグロビン)
文部科学省のサイトより(図4)
そこで、
近赤外線の2つの波長を使えば
連立方程式を解くことによって
比率が分かるというわけです
そして、
結果的に血流が増えた脳領域
つまり、
活動が活発になった脳領域
が分かることになるのです
(つづく)
文:生塩研一
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