私たちが手や足を動かせるのは、
脳の手足を動かす領域の神経細胞が
司令を出すことによって、必要な
筋肉を収縮させるからですね

これをもう少し詳しく見てみましょう

神経細胞(ニューロン)は細長く
片方の端で情報を受けて情報を集約し
もう片方に向けて情報を送ります

情報を受ける部分を樹状突起、
集約する部分を細胞体、
情報を送る部分を軸索といいます。
軸索は電線みたいな感じです

軸索の末端ではアセチルコリンや
ドーパン、セロトニン、GABAなどの
神経伝達物質が放出されて、
次の神経細胞などに情報を伝えます
この、情報を受け渡しするところを
シナプスといいます

そのようにして、情報が次々に
神経細胞に伝わります


脳からの情報は首や背骨の中を通る
脊髄を通して伝えられます

頭を支える首の骨は頸椎(けいつい)
と呼ばれ、ヒトの場合は7個。

ちなみに、首が左右に270度も回る
フクロウは頸椎が14個。
ついでに、首が長くて白鳥は25個とか
首の長いキリンはいくつでしょう?
実は、ヒトと同じく、7個なのです。
大きい骨が7個重なっています
どうりで曲がりにくいわけですね
哺乳類の頸椎は大体7個です


この頸椎の中を脊髄神経が通っています

例えるなら、だるま落とし
だるまの下の胴の一個一個が頸椎で
個々の胴の真ん中に穴が空いていて
ハンマーの持ち手を通せますね
その穴を脊髄が通る感じです
例えなくてよかったですかね(笑)

で、個々の胴から横に別の神経
(脊髄神経)が軸索を出します
手を動かしたりするために


軸索は結構長くて、手足を動かす場合
その神経細胞の細胞体は
頭蓋骨のすぐ下にありますが
そこから軸索が伸びて、首を通って
頸椎などから横に出る脊髄神経の
ところまで1本でつながっています

そこでようやく次の神経細胞である
脊髄神経に情報が伝えられ、
その脊髄神経が筋肉に情報を伝えて
手や足の筋肉を収縮させます


昨日(4/11)発表された論文では
上から2番目の頸椎の所で
サルの脊髄の左右の片方だけ損傷させ
脳の運動領域の神経細胞群の活動を
記録して、その信号を加工して
電線で送って、手の筋肉を動かす
脊髄神経を刺激。その結果、
手の運動に成功したとのことです

素晴らしい。。
またまた日本人研究者の成果です
(生理研、西村幸男准教授)


脳科学の分野では、BMI
(Brain Machine Interface)といって
脳と機械をつなげる技術の開発が
活発に進められていますが、
その場合、脳の信号を使って
ロボットアームのような機械を
動かすという試みがほとんどでした


今回の論文は、ロボットアームを
動かすのではなく、自分の手を
動かす点が画期的です
脊髄が損傷しても、手や足があれば
何らかの信号で手や足を動かせる
わけですからより自然です


もう少し細かく書きますと
脳の信号はMI(一次運動野)と
PMd(運動前野背側部)からLFP
(Local Field Potential)を記録し
高ガンマ波(90-160Hz)を抽出
脊髄神経は0.2msのパルスを10-20Hz
で脊髄神経を電気刺激しています


脊髄損傷の治療では、
慶大の岡野先生がiPS細胞を
使った臨床試験を2016年度末にも
始めると発表していますし
治療法の進歩が期待されます



生理研のプレスリリース


論文本体
Nishimura, Perlmutter, Fetz
Frontiers in Neural Circuits (2013)
doi: 10.3389/fncir.2013.00057




$プラスサイエンス-「人工神経接続」の模式図 by 理系漫画家はやのん

「人工神経接続」の模式図。損傷した脊髄の経路をバイパスして、人工的に脳と脊髄の運動神経をつなぐ技術。原画:理系漫画家はやのん。
(プレスリリースより)



(おしまい)




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