咳がとまらない。
けほけほ。
私がくるしんでいたら、けむくじゃらの手が背中をさすってくれた。
けほけほ。
ありがとう。そう言って後ろをみると、つるつるのホッキョクグマが座っていた。
あれ、あたしの背中を撫でたのはけむくじゃらの手だったのに。
後ろにいるホッキョクグマは毛がなくてつるつるだ。
よくみると、私の背中が真っ白な毛でいっぱいになっていた。
わぁ、あったかい。
けほけほ。
クライットさんというおじさんがいた。
クライットさんはお人形みたいなおじさんだから有名だ。
いつもにこにこして、丸い眼鏡をかけていて、とても太っているのだけれど、顔だけがとてもちいさい。
彼はチキンが好きなので、ランチはチキンがはさまったサンドイッチをよく食べる。
ある日、クライットさんの飼っている黒猫が突然しゃべりだした。
猫は、起きぬけに歯磨きをしているクライットさんの前にとことこと歩いてきて、座った。
そして、長いしっぽをぴんと立ててこう宣った。
「あなた、あたし子供ができたの」
クライットさんはぎょっとして猫を見た。
びっくりしたためにうっかり歯磨き粉をちょっと飲み込んでしまった。
「おい、まさか俺の子じゃあないだろうな」
猫は目をぎらっと濡らした。
「まさか、なんてひどいじゃない。そんな言い方するなんてひどいわ」
「すまん、悪かった。で、父親は」
猫は身動き一つせずにいう。
「あなたに決まってるでしょう」
クライットさんの口からはぼたぼたと歯磨き粉がこぼれている。
「お、お前、俺だけだったのか」
「あたりまえじゃない。雄猫になんか興味はないわ。あなたが初めて好きになれた雄だったのに。よろこんではくれないのね。悲しいわ」
「いや、うれしいよ。しかし、当然お前は猫のボーイフレンドがいるものかと」
クライットさんは、猫の目に浮かぶ涙を見て動揺した。
「すまん。いや、お前のことは本当に愛してるんだ。俺達のこどもか」
猫は目だけで微笑んでみせた。
「で、いったい人間と猫のどっちが生まれるんだ」
猫はなにも言わない。
「おいおい、それによって、出産準備もいろいろと違ってくるだろう」
猫はまっすぐクライットさんを見つめていた。
クライットさんはそんな猫をとても愛しくかんじて、キスしようとしたが、猫に前足で制された。
「あなた、口が泡だらけよ」
とってもいい夢がアンハッピーエンドだった。
夢の中で読んだ本の内容をほとんど覚えている。
主人公の名前の漢字がわかるから文字で体験したんだとわかる。
アンハッピーエンドだということも、
文章を読んで知らされた。
とても悲しかった。
女の子は二つ以上のことを同時にできるんだけど、
一つしかできなくなっちゃうことがある。