JUNNA ROCK YOU TOUR 2021 ~20才の夏~ 千秋楽 Zepp Haneda公演を、JUNNAの楽曲「我は小説よりも奇なり」に則って、私小説風のライブレポを目指し書いてみました。
思いの丈を全て綴っていたら1万字を超えてしまいました。お時間のある方はお付き合いください。

※注意※
レポのつもりですが非常に個人的な感想を盛り込んでいます。
またライブの構成も100%文章通りではございませんのでご注意ください。
極力控えたつもりですが若干捏造してる部分もあると思います。
その他実際のライブと違う部分も多々あると思いますので読まれる方はご了承ください。




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2021年8月19日

空は快晴。ツアーラストに相応しい、夏の終着地の様な天気だ。
風は強いけれど、今日のライブを成功に導いてくれる追い風にも感じる。

JUNNA ROCK YOU TOUR 2021 ~20才の夏~がいよいよ千秋楽を迎える

本当に待ちに待った、2度の中止を経て約2年半振りのソロライブツアー。
今にも破裂しそうな程膨らませた風船の様な思いを、大事に大事にここまで連れてきた。

入場は感染症対策も万全にスムーズに進んだ。
スタッフもファンも、彼女がライブを開催する上で「誰も悲しい思いをして欲しくない」といつも言ってくれるからこそ、それに応える形になっているのではとしみじみ。

体調チェックシートの確認、検温を済ませ自分の座席を探し席に着こうと思って目に飛び込んだのは、席に置いてあったJUNNAからのメッセージ付きフライヤー
思わずチラシを抱きしめてしまいそうになるが、我慢して大事にしまう。

席に着いて改めて会場全体を見渡す。

久々のステージはとても大きく、そして近く感じる。

席の配置はディスタンスを保つために前後左右が空けられている。
少し寂しい気もするけど、ストレスフリーでこれはこれで良い感じだ。

会場BGMが静かに流れる場内は誰も彼も少し落ち着かない感じで不安も多少入り混じるといった様子。
もちろん楽しみが殆どだと思うけれど、多くのファンにとってもかなり久しぶりのライブだし仕方がない。

時計を見ながら今か今かと開演を待つこの感覚も本当に久々で既に感極まりそう。
でも同時に未だに実感が湧かず、本当にこの後JUNNAが現れるのか、夢を見ているんじゃないかとも思ってしまう。

そんなソワソワもピークに達したころBGMの音量が少し上がる。

聞こえて来たのは「Show Me How You Burlesque」

JUNNAライブのOPではお馴染みのこの曲。
彼女がフェイバリットに挙げる映画「バーレスク」の表題曲だ。

会場が一気に色めきだして、音にならないざわめきが広がる気がした。
次第に誰から始めたかもわからないクラップが鳴り出してさっきまでバラバラだった観客の心が一つになり始める。

ライブだ。
本当にライブが始まるんだ。
あっという間に会場の照明が落ちて、誰かが息を呑む音だけが聞こえる。


静寂を掻き切ったのは激しいギターストローク
ライブを夢見て幾度と無く聴いたイントロ。
ドラムのフィルインで居ても立っても居られずほぼ全員が立ち上がる。

一曲目は「FREEDOM~Never End~」

照明がステージを照らし、ステージの全容がわかる。
7人のバンドメンバー、その中心に立つのは

正真正銘、待ち焦がれた、我らのJUNNAだ。

「みんなで一緒に最高の夏を過ごしましょう!」
その掛け声で一気に心を掴まれる。

最初からJUNNAは全開で、身体全てを使って歌声を響かせる。

さっきまで抱いていた不安なんてもうどこにもない。
バンドの轟音と、轟く歌声で全て吹き飛んでしまった。

ド直球王道ロックチューンのこの曲は一気に観客の胸倉を掴んで駆け抜けていく。
それでも落ちサビではこれでもかという感情を込めて歌う姿に胸を打たれる。

最後には開かれる様な曲調で締められ、鬱屈した日常から引き上げてくれた様だった。

そんな感傷に浸る暇もなく、聞こえてくるのは「ピロリロリ」という聞き覚えのある電子音。

忘れていない、忘れるわけがない。あの曲だ。

2曲目はSteppin' Out~extended ver~

スペーシーな曲に相応しいレーザーライトが縦横無尽に会場を行き交い
小気味よいギターのカッティングから、ベースのスラップ
そこにコーラスも混じり、どうあっても昂る。

この会えない2年の間にもJUNNAは2周りも3周りもextendedした歌声を響かせ
ステージを嬉しそうに駆け回る。

配信ライブでも色んな新しい一面を見せてくれたけれど、何よりも見たかったのはこの満面の笑みだ。
オーディエンスもそれに呼応するように飛び跳ねる。
お馴染みの「ヘイヘイヘーイ」のコールは出来ないが身振り手振りで応える。

どんどん忘れていた感覚が蘇ってきて、ずっと失われていた感情があふれ出る。
鬱屈な日常から抜け出し、「JUNNAのライブに来たんだ」
そう心から実感させてくれた2曲目だった。

続く3曲目は「La Vie en rose」
更に大人の魅力を増した20才のダンス&シングはまさにステージに咲いた一輪の薔薇。

配信ライブでも披露されたダンスだが、重ねてきたレッスンの成果もあってか、指の先まで、視線の先まで魂が注がれ、よりグルーヴィーにブルーミーに咲き乱れる。

このロックライブに差し込まれるダンスパートはJUNNAのライブの一つのスタンダードにもなっていて、アーティストとしての醸成を改めて感じる。

あっという間に3曲を終え、ここでMCが挟まれる。
相変わらず急にフランクになる彼女らしいMCも健在で安心する。
声を出してのコール&レスポンスが出来ないのはもどかしいが、JUNNAが何か言い終わるたびに観客が大きな拍手をするのも微笑ましい。

無事に千秋楽を迎えられたことを嬉しく思っている、と告げると次の曲へ。

スタンドマイクが登場しその前に仁王立つJUNNA.
先程までのあどけなさは完全に無い。
クセになる怪しげなイントロが聞こえてくる。

4曲目は「あばよイエスタディ」だ。

JUNNAの骨頂とも言えるドスが効いた低音と突き上げるビートが一拍ごとに会場の雰囲気を塗り替えていく。
スタンドマイクを押し倒し、破綻寸前とも言えるフェイクを織り交ぜる。
カタルシスにまみれた危うい歌声にどうしようもなく虜になる。

まさに「即興で、エグ味出して」の体現と言った感じだ。

続けざまにラウドネスなビートが打ち鳴らされる。
「We will rock you」ばりのキック&クラップで始まるのは5曲目「Sleepless」

スタンドマイクにより自由になった両手でフリを織り交ぜながら鬱屈な歌詞をリズミカルに歌い上げていく。その歌詞は偶然なのかどこかこの時世にも当てはまるようにも聞こえる。
だがJUNNAは負の感情もエネルギーに変え代弁してくれる。
どこか痛快な気持ちになるのはそのせいだろうか。

まだまだディープな世界観の曲は続く
特徴的な音階のマリンバが聴こえ、ヴァイオリン、そして激しく打鍵される鍵盤。

6曲目は「コノユビトマレ~20×20 ver~」

よもや早くもライブの終盤かと思えるほどの畳み掛け方。
髪を振り乱れさせながらも、一糸乱れぬ演奏と歌で会場を熱狂の渦に巻き込んでいく。
個人的にJUNNAはスロースターター気味なイメージだったが、もう既にフルスロットル。完全にトランス状態といった感じ。
語弊を恐れず言うが、このちょっとネジが外れてしまってるJUNNAが何よりも好きだ。

まさに最強のバンド、最興の観客、最狂の歌声。
3つ揃ってジャックポットだ。

もうこれ以上無いのではないかというくらい盛り上げて再びMCへ。
先の3曲はJUNNAのダークサイド曲を並べてみたとの事。
本当に自分もこのセトリは大正解だと思った。

話しは変わり衣装の話しへ。
黄色のレースを取り入れたのは20×20のジャケットカラーを意識したとのこと。
バングルやピアスもROCKな意匠が取り入れられていて、THE JUNNAの勝負着と言った感じで最高だ。
髪も今回のツアーの為に染め、千秋楽まで維持できたのが嬉しいと語る。かわいい。

衣装の紹介を終え、続けた言葉は「皆さんには大切な人がいますか?その人を思い浮かべながら聴いてくれたら嬉しいです」と伝え、また彼女の世界に戻っていく。

息を深く吸う。
深く海に潜るように、思い出に浸る為に。

7曲目は「波打ち際」

木漏れ日ならぬ、波漏れ日のようなレーザーライトがJUNNAを取り囲む。
優しい様で居て、囚われている様にも映る。
愛おしそうにその光に触れるJUNNAがすごく印象に残っている。

Aメロは淡々と歌い上げさざ波のよう。
だけれどサビに近づくにつれ、感情の高波が会場を飲み込む。
波が二度と同じ形を象らないように、彼女の歌声も情動に任せたフェイクを織り交ぜていく。
恐らくこの曲を、この解釈で歌い上げる事が出来るのはこの世に只一人だけだと思わせられる。

余談かもしれないが前日の羽田公演では彼女の半身でもある美雲・ギンヌメールを想ってこの曲を歌ったという。
JUNNAと美雲の関係性を想って聴くとこみ上げてくるものがある。

曲が終わりを迎えるにつれ、波は再び凪ぐ。

思い出という深い海から、未来を目指すための息継ぎで曲は終わり、
同時に海面から浮上するようなライティングがとても印象的だった。

続く8曲目は「Here」

JUNNAをJUNNAとして世に知らしめた彼女の一番の代表曲。
過去のMCなどでもこの曲への強い思いを何度も聞いている。彼女にとってもファンにとっても大切な曲だ。
先に挙げた美雲もそうだが、作品とキャラクターの魂を降ろして歌声に乗せる事が出来る、アニソンシンガーとしての才能も凄まじいと思う。演技とはまた違う肌感覚の才覚だ。

演奏も素晴らしく、ヴァイオリンやガットギター等のアンプラグドな弦楽器がJUNNAの歌声ととてもマッチして、心の琴線に触れる。

流石と言うべきか堂に入った歌唱。
あまりにも当たり前の様に歌うので忘れがちだが、変拍子やアカペラなど常人ではとても歌えない難曲でもある。
そんな事を微塵も感じさせず、既にこの曲は彼女の骨身に染み込んでいるのだろうなと感じる。

後半のアカペラではこの会場に、ライブという存在そのものに、自分の居場所を、魂を刻みつけるように歌う姿が、今でも耳と瞳に焼きついている。

そして最後には笑って「わたしは、ここ」と歌ってくれるJUNNA。
もう愛以外の感情が育たない。好きだ。

曲を終えるとJUNNAは一度観客を着席させる。
ここからはゆったりと楽曲を披露していくとの事。

正直、久しぶりのライブ、且つ初めから畳み掛けるセットリストだったので一度座ることが出来るのはこちらとしても嬉しかった。
もしかするとそれを見越した気遣いでもあったのかもしれない。

JUNNAも椅子に座り、次の曲が静かに始まる。

9曲目は「いま」

JUNNAが初めての作詞曲を担当した曲だ。
彼女の部屋から、彼女一人の、手さぐりな歌と演奏で始まった曲。
当時はまだ曲名すら決まっていなかった。

それが配信ライブやデジタルリリースを経て
いま、こうして素晴らしい伴奏と沢山の観客の前で歌われている。
その事実だけで胸がいっぱいだった。

「なにが正しくて、何が間違いか。誰にもわかりはしない」
今日ここにたどり着くまで、何度もこのフレーズが頭によぎった。
未だにその答えはわからない。でも、いまここにいる自分の事だけは肯定してやりたい。そう思える。

彼女は自分の語彙が少ないと揶揄する事もあるが、作詞するうえで大事なのは語彙の豊富さでは無く、その選び方だと思う。
この曲もとてもストレートな詩だが、彼女の人柄がにじみ出る様な言葉のチョイスが素晴らしい。そしてJUNNAの歌声にはそれに想いを乗せる力がある。

最後に演奏は一気に広がりを見せ、
「私とここで歌おう」という歌詞で締められる。

いつかJUNNAがこの曲をシンガロングで歌いたいと言っていたのを思い出す。
まだライブで声を出すことは許されない現状だが、
いつか、必ず、この曲を全員で、奏でられる日が来ることを願った。

ここからの楽曲は更にアコースティックなアレンジを打ち出していく。
ヴァイオリン、アコースティックギターにウッドベースも加わり次の曲に期待が高まる。

聴こえてきたのはケルティックなアルペジオ。

10曲目は「Sky」

印象的なイントロでどの曲かは直ぐに判別できた。
だけれどすぐに大胆なアレンジが加わっていることがわかる。
ジャズをベースにフュージョン風の演奏が加わってとても洒落た雰囲気に。

原曲が春先の少し冷たい早朝の空だとすれば、こちらは夏に爽やかな風が吹く昼下がりの空と言った所だろうか。
ツアータイトルにも相応しいとても素敵なアレンジだ。

それに応じてか、JUNNAもとても伸びやかに気持ちよさそうに歌い上げていく。
毎回様々な楽曲で新しい歌声を聞かせてくれるJUNNA。
この曲の歌詞にもある「この世の全ての鮮やかな音楽が、歌声が聴きたい」はまさに皆が彼女に願うワンフレーズでもある。

とても気持ちの良い音楽に浸っていると1コーラスでこの曲は締められる。
名残惜しいが、一拍おいて次の曲へ。

先程まで明るかったライティングが一気に暮れ始め、紅が射す。

11曲目は「火遊び」

まさかここでこの曲が聴けるとは。

デビューミニアルバムに収録されている本曲だが、その異質さゆえに中々ツアーライブのセットリストに組み込まれる事が少なかった。

だが確かにこの濡れ艶やかな、ともすれば怨念めいた様な歌唱は夏の夜にピッタリかもしれない。

先程が昼のジャズカフェだとすれば、こちらは夜の歌謡バーと言ったところだろうか。
正に180度正反対な曲だがこの振れ幅の大きさもJUNNAの魅力の一つだ。

音源収録当時は恐らく15歳。当時からその若さを全く見出せない大人びた歌声だったが、今はそこに貫禄も合わさり、どっぷりと曲の世界観に沈められてしまう。

最後まで情感豊かにじっとりと歌い上げたJUNNAは一度舞台袖に捌ける。
だが曲は続き、アウトロでまだ盛り上がりを見せる。

煽情的に情熱的にギターが唸る。これでもかというほど昭和歌謡的な「クサさ」を醸し出すギターソロだ。

改めてバンド演奏の素晴らしさに震える。
難曲ばかりのJUNNAの楽曲をここまで演奏仕切れる奏者達はそういないだろう。

アウトロは次第に転調し長調の広がりをみせる。
夜明けを感じさせるような、希望に満ちたコーラスが乗せられる。
昼から夜を経て朝へ、と時間軸を意識した構成なのだとここで気付き唸る。

ステージライトも日の出のような眩い光を放つ。
生まれ変わったような朝が来た。

そこに厳かなオルガンの調べが会場に響き、
黒を基調にし、シック且つロックテイストを増した衣装に身を包んだJUNNAが舞い降りる。

12曲目は「Believe In Myself」

個人的に讃美歌の様な印象もあるこの曲はイルイミのカップリング曲。
生のバンドアレンジでこんなにも奥行きのあるメロディだったのかと衝撃を受ける。

「この世界に、舞い降りた」の歌詞で始まるこの曲。
前回の配信ライブでは1曲目として披露された曲だが、後半パートの始まりを告げる曲としても正に相応しい。

改めて歌詞を追ってみると、ステージで、ライブで歌うJUNNAを見事に形容している。
この曲だけではないが、JUNNAの楽曲に携わる作家の方々の彼女の解釈や解像度の高さにはいつも敬服させられる。

JUNNAの楽曲の中でも屈指のハイトーン、ロングトーンの連続だが一切のブレなくどこまでも真っすぐに歌い上げる。
その高らかに、決意と覚悟を感じさせ語りかけるような歌唱は、観客一人ひとりの魂に響きわたった。

しめやかに曲は終わり、このまま少しゆったり目の曲が続くと思いきや、
鳴らされたのは陽気でスウィングィンなブラス。
すぐに応える様に観客も手のひらを打ち鳴らす。
楽しい楽しい音楽の時間が始まる!

13曲目は「Now or Never」

ビッグバンドやラグタイムのエッセンスをふんだんに取り入れたこの曲は、JUNNAのグルーヴィーでソウルフルな英詩に乗せられ会場全体をスウィングの波に変えていく。
その歌声と共にゴキゲンなツイストを披露するJUNNA。思わず自分も一緒に揺れ動いでしまう。まさかここでツイストバージンを捧げることになるとは。

サビでは手をJの形に掲げ振り揺らす特徴的な振付で会場の一体感を更に高める。
1コーラスを経る度に観客とJUNNAの動きが揃って行き、体を使ってのコミニケーションの交換で多幸感に包まれる。

正直ここまでこの曲に踊らされるとは思っていなかった!

JUNNAの楽曲、ライブには毎度この驚きに出会えるのだ。
20×20というアルバムも今回のツアーを経て自分の中で120%味わえたと実感できた。

まさに「今しかない!」最高に楽しい音楽の時間だった。

会場の温度はそのままに、ここでクラップによるコール&レスポンスで更に盛り上げる。
JUNNAが「まだまだ盛り上がって行けますか?!」と全力で煽ると観客もこれでもかと両手を打ち鳴らす。
だけれど我らがJUNNA嬢はまだまだ満足いかないよう。
ちょっとしつこいくらいに(かわいい)何度も更なる拍手を求める。
そんな彼女のわがままに満更でも無く全員で応え、次の曲が始まる。

14曲目は「We are」

まさに夏に相応しい一曲。
JUNNAの楽曲で随一と言って良いほどに底抜けに明るいナンバーだ。
こちらも元々はカップリング曲だったが、バンド演奏になるとこうも化けるとは。
増々の多幸感と無敵感を伴ってJUNNAもエネルギッシュに歌い上げていく。
そんな彼女の姿に会場のボルテージもMAXだ。

だけれどふとした時に彼女自身が書いた詞に耳を傾けると「暗闇でも僕がいるから」や「迷ってても君がいるから」といった歌詞に高揚と一緒に別の感情も込み上げて来る。
いつだって彼女は「僕と君」の世界を讃えてくれる。

正直今回のセトリにこの曲は入らないかもと感じていた。
この曲は沢山のコールが組み込まれていたり、タオルを振り回すのが定番でどちらも現状では叶わない。今一つこの曲の魅力を引き出せないかと思ってしまっていたからだ。
でもそれはまったくの杞憂で、JUNNAは120%の笑顔と歌で、観客は声が出せなくとも全身を使った感情表現で心を通わせていく。
僕らには何よりも音楽と云う共通言語があったんだ。
そう気付かさせてくれた。

最後に彼女が特別な思いを込めた「Super  Hero」という歌詞で会場の一体感はより強固なものになった。

最早テンションは最高潮。だがJUNNAライブの真骨頂はここからだ。
更なるアップチューンで繋ぐ15曲目は「世界を蹴飛ばせ!」

JUNNAは会場狭しと端から端まで駆け回り、観客一人一人に歌を届けに行く。
前曲からアップテンポな曲が続き、少し肩で息をする瞬間も見せるが、その疲労すらも愛おしそうに全力で歌い続ける彼女。ランナーズハイならぬライバーズハイと言ったところだろうか。

王道なバンドサウンドに誰しも経験した事のあるモラトリアムを歌ったこの曲。
誰にとっても宝物の、在りし日を思い出せるタイムカプセルの様な曲だ。
その歌詞と歌唱に何故か無性にセンチメンタルになる。

間奏ではバンドメンバーの紹介が行われた。
JUNNAがテンション高くメンバーの名前を呼んでいくと、それぞれ素晴らしい演奏で応えていく。
メンバーにスポットが当たっている間も楽しそうに体を揺らすJUNNAについ目が行ってしまう。かわいい。

最後にバンドマスターからVo.JUNNAが紹介され曲に戻る。

「笑顔を見せるよ、自分らしく夢中で駆け抜けるよ」
落ちサビのこの歌詞で思わず感極まる。

でもJUNNAも観客も見たいのは、見せたいのは、笑顔だ。
頬を伝う何かを拭ってそのまま思い切り拳を振り上げる。

ラストサビの前では全力でシャウト。勢い余って歌に少し入り損ねるも彼女の完璧じゃない、ありのままの姿が伝わってきて尚更昂る。

最後には特大のキックをかますJUNNA。
この世に溢れる陰鬱を今この時だけはどこか遠くへ蹴飛ばしてくれた気がした。

もうこのままライブが終わっても良いと思えるくらい、大団円、満身創痍の会場。
だがここでは終わらない。

シビれるようなエッジの効いたギターが鳴り響く。

ステージに不敵に咲く徒花。その肩に担がれるはフライング「V」!!

トドメの一曲と言わんばかりのキラーチューン!! 16曲目は「Vai! Ya! Vai!」

掲げるギターの粋な演出に思わず唸る。(超個人的な話しだが筆者は変な形のギターを持った女性がめちゃくちゃ好きだ。殴(ぶた)れたい。)

両足を広げ、どっしりと構えギターをかき鳴らしていくJUNNA。
今までもライブでギターを披露することはあったが、今回は複雑なコードストロークやブリッジミュートをも織り交ぜて弾きこなす。
難度の高い演奏をしつつも歌唱は全くブレない。TikTokで武者修行の様に努力していた成果が遺憾なく発揮されている。
その姿は完全に「Vo&Gt.JUNNA」といった感じでその成長度合いに開いた口がふさがらない。マスクをしててよかった。

間奏ではバンドメンバーと背中を合わせギターをかき鳴らす。
バンドの一員としてロックンロールを心から楽しんでいる姿にこちらまで笑顔になる。別に嫉妬はしていない。


この曲でデビューした当時は少し物議を醸したが、大事なライブではほぼ必ず披露され、一種の代名詞の様にもなっているこの曲。
きっとこれからもここぞとばかりの必殺技のように歌われていくだろうと確信できた。

そしてJUNNAが始まった最初の代表曲から、いまのJUNNAの最新の表題曲に繋がる。

最高のライブの幕引きに、最強の物語が幕を開ける。

17曲目「我は小説よりも奇なり」

作詞にシンガーソングライターの石川智晶を迎えるこの曲。彼の伝説のユニット「See-Saw」(後に披露される新曲をプロデュースする梶浦由記とのユニット)の一員でもある。今の業界を牽引してきた一人でありレーベルでの大先輩でもある。
その曲名は彼女のコンサートタイトルにも掲げられた事がある程、特別な意味を込めたフレーズだそうだ。

歌詞を紐解いてみると、シンガー、特にアニメ等の作品に寄り添う所謂「アニソンシンガー」として背負う「業」を歌っている様にも取れる。

様々なキャラクターの魂を宿し歌い、様々な偶像化をされる。
それによって他者からも自分からも向けられる、想像を超える思い。

後のMCでも彼女自身が語っていたが、アーティスト「JUNNA」に求められるのは「完璧であること」だと思っていた、と。
その煮え滾るほどの熱量は、時に彼女の心を焼いてしまったこともあったかもしれない。

だけれどサビの歌詞では、どんな熱情も劣情も消化し昇華させ、全てを内包した最強の「私」になりさない、という激励にも聞こえてくる。

JUNNAがいまこの曲をどんな思いで歌うのかは計り知れないが、きっとこの曲はこれから彼女に降りかかる様々な業を払う力の源となる気がするのだ。

きっとそういう風に作られている。

そんなこの曲をエモーショナルにパワフルに凛と歌い上げていく。
混沌としているが洗練された一体感がとてつもない凄みを放つ。

Cメロでは歌詞の通り、眩い桜色のライティングが満開になる。
それを見上げ立ち向かう様に歌に熱を帯させていく。
その熱狂の歌声が渦巻いていき、風を起こす。

刹那、台風の目の様に静まり返る会場。

会場全員の魂を解き放つかのようなシャウトが響き渡る。
二度と無い、”いま”だけの叫びだ。

観客もバンドも息を呑み、飲み込まれる。
会場を完全に支配し、JUNNAが全ての主導権を握るこの瞬間がたまらない。

その絶唱のタクトによって再び演奏は流れ出す。

さらに一段高く転調するが、意にも解せず彼女は超えていく。
今この瞬間にもJUNNAはまた一つ、彼女は開花しているのだ。

最後に拳を天高く突き上げ今の彼女のありのままの魂の形を観客に刻みつける。
紛れもなく、最強で最高のJUNNAだ。

ここまで自分の持ち得る限りの語彙を並べて彼女の魅力をレポという形で伝えて来たつもりだが、その魅力の1/10も伝えきれない。

JUNNAはレポよりも奇なり。
百聞して一目見ろ。

これに尽きる。

きっとどんな小説よりも数奇で奇麗な物語をこれからも奏でてくれるだろうと、その姿をみて確信した。


本編の演奏を終えた瞬間、あどけなさも残るハタチの顔に戻り、「バイバーイ!」と笑顔で手を振りステージを後にするJUNNA。

しかし、完全に彼女を見送る前から拍手は手拍子に変わる。
そのクラップは声を出せない分、彼女が再び姿を見せるまで一切衰えを見せない。

程なくしてライブTシャツを着たバンドメンバーとそれを更にアレンジした衣装に着替えたJUNNAが再登場。今度は手拍子から拍手に変わる。

ステージに舞い戻ったJUNNAは再びを息を深く吸い、歌い始める。

アンコール最初の曲。
18曲目「イルイミ」

ロックバンド、Dragon AshのKJこと降谷建志がプロデュースした同曲。
そのラウドネスなバンドサウンドにJUNNAの芯のある柔らかい歌声が乗せられる。
強さだけでなく儚さと優しさを両立した歌声。
個人的にこの曲はJUNNAのアーティストしてのターニングポイントにもなった曲だとも思っている。

この曲はCDのジャケットや歌詞から「夜明けの歌」のイメージがある。
どの曲にも言えるが、本当に時世にマッチしてしまう楽曲が多い。
この辛い時代に差し伸べてくれる光になっていると同時に
早くこの曲たちを、「禍」というテーマから解き放ってあげたいとも思ってしまう。

直後のMCでJUNNAは「この時期、一人になることも凄く多かったと思います。みんなに一つでも誇れることがあって、私はここにいてもいいんだって思ってもらいたかった」とこの曲に込めた想いを語った。

確かな正義が無いこの世の中で、JUNNAの存在はいつでも強く、優しく、常に寄り添ってくれていた。

未だ曖昧で、まだまだ先は見えない世の中だ。でも今日ここでJUNNAの歌を直接聴くことが出来たのは細やかだが、この先を照らしてくれる光になった。
この希望を絶やさず、自分のイルイミを全うして、またみんなで朝焼けを見られる日を切に願った。

やさしく、真夏の慈雨のように降り注いだ曲が終わると、JUNNAは和やかにグッズ紹介を始める。

相変わらずフランクな物言いで楽し気に話すJUNNAを見るととても安心する。
このJUNNAという絶妙なバランス感覚の存在に、まったくもって虜になっているなぁと両の手を挙げる。参った。
ずっとずっとこの無邪気な笑顔を守ってあげたい。

そして次は先にも挙げた梶浦由記によるプロデュースの新曲を披露すると告げる。
19曲目は「海と真珠」

船を漕ぎだす時の掛け声のような特徴的なフレーズから始まるこの曲。
異国情緒に溢れるサウンドとJUNNAの歌声の相性は今までの楽曲からも折り紙付き。
そしてどこか懐かしさを感じるメロディと波に揺られる船のようなリズムはとても心地よい。聴いているだけで活き活きとキャラクターが動く映像が浮かぶようだ。

後のMCで直接梶浦から歌唱も交えながらのディレクションを受けたことも語っていた。
数々の人気作の劇伴も担当してる彼女から指導を受けられたことはとても彼女の刺激になっだろう。興奮気味に語ったその口調からもそれが良く見て取れた。

こうしてまた新たな作品で新たな作家とキャラクターという仲間に出会い、共に新しいJUNNAの旅路に一緒できるのが何よりも嬉しい。
この曲はきっと、この先JUNNAの旅路を征くにあたって、とても頼もしい船になる気がする。
そんな期待で帆を膨らませ、止まっていた時が進み出す確かな実感があった。
きっと彼女となら「僕らだけのエル・ドラド(黄金郷)」にたどり着けるはずだ。

そんな素晴らしい新曲を披露し、JUNNAは次の曲が最後だと告げる。

毎回ツアーでは新しいことに挑戦すると決めていると言う彼女。
今回の挑戦は「ライブのために曲を書き下ろす」だったと発表する。

そんな曲に込めた想いをとつとつと語りだす。

私にとって「ライブとは」を込めて書いたこと。

伝えたいことが多すぎて中々まとまらず歌詞を7回書き直したこと。

最初のうちは「完璧なJUNNA」に囚われていたこと。

そうじゃなくても良い事に気付けたこと。

完璧じゃない「ネガティブ20%」も歌詞に混ぜ込んだこと。

そんな「素」のJUNNAを見て欲しいこと。

普段から気丈で弱みをあまり見せない、彼女の口からこういう言葉を聞くのは以外だった。
でも素直にとても嬉しかった。

アコースティックギターを携え、そんな想いを込めた最後の曲が静かに始まる。

“20才”の夏の”20曲”目は「はじまりの唄」

爽やかな夏を思わせるマンダリンが清々しいサウンドにJUNNAらしいストレートで思いやりに溢れた歌詞が乗せられる。
彼女が活動するにあたってライブが如何ほどに大切かというのは今まで彼女自身が色んな所で語ってきた。その強くて優しい想いがとても感じられる詞だ。

作曲はJUNNAと本ツアーのバンマスでもある島田昌典との共作。
同じJUNNAが作曲した「いま」のメロディも素晴らしかったが、今回はより曲としての構成の良さが際立ち、JUNNAのソングライターとしての才能の芽生えも感じる。

彼女の楽曲といえば「強く、太く、轟く」と云ったイメージが思い浮かぶ。
が、この曲は正反対の位置にある。
そんな曲を朗らかに歌い上げる彼女を見て、この曲自体が「ありのままの自分を愛して欲しい」という強いメッセージにも思える。

先のMCでは10月にFCイベント、更に1月にはライブツアーの開催も発表された。
ツアーに関しては時期尚早とも言える発表かと思ったが、「みんなと私の大切な時間が動き始めたので、それを止めたくないなと思い、みんなとまた集まれる機会を作りました」と語り、ファンとの約束の指切りのつもりで早めに発表してくれたと思うと目尻が滲む。

そんな約束の場所を共に目指して歌うJUNNAを改めて、心から、好きだと思った。

全ての楽曲を終え、万感の思いと云った表情でバンドメンバーと共に締めの挨拶をする。
本当に久々の写真撮影の時間、最後の最後まで2階席までちゃんと移るかどうか気にするJUNNAの心遣いには感服した。

全ての観客に心から感謝を伝え、JUNNAはステージ袖に消えていく。
それを心からの拍手で見送る観客。
本当に素晴らしいライブで、一瞬の出来事だった。

大満足の公演だったが、叶うなら、もう少しだけその顔を見せて、もう少しだけ声を聞かせて欲しい。そう思ってしまった。

きっと観客はみな同じ思いだったのだろう、万雷の拍手は少しづつリズムを揃え始め、やがて一つになる。
何故かまた出てきてくれるような確信が確かに有った。

そしてその期待を裏切らずJUNNAは再び一人でステージに戻って来てくれた。
その足取りはすこし緊張を伴っているようにも見える。

「もし、みんなが聴きたいと思ってくれるなら、もう一曲だけ歌おうと思ってきました」
短くそう告げ、ダブルアンコールへの感謝を伝えると、ぽつりぽつりと自分の感情を吐露していく。

「私にとってみんなは“ともだち”みたいな存在だと思うんです。たまに背伸びをしてみんなを引っ張っていくこともあるけど、話しているときはみんなと同じ目線で立っていたい」
と、涙を堪えながら語る。

それを聞いて正直自分は少し戸惑いもあった。

”ともだち”になれるだろうか、と。

どうあっても、どうしても、彼女の存在は自分にとっては憧れで、焦がれるものだったから。

過去のJUNNAの作詞曲や発言からも、どこかファンに対する固執のようなものが垣間見えることがあった。
それはファンがどこまで付いてきてくれるかわからない不安の裏返しのような物なのかとも思っていた。
ファンに言われて一番うれしい言葉に「一生、ついていきます」を挙げているのもそう思わせる一つだ。

そんな彼女をとても愛おしく思っていたし、
「本当のことを言わない」彼女だからと、見守っていた。

でも、この6年間の歩みでJUNNAとファンの関係性は少しづつ変わっていたのかもしれない。
会えない期間も長かったがそれを乗り越え、お互い信頼を得て、ありのままを愛し愛される関係でいたい。

そういう意味で改めて、”ともだちになろう”と勇気を持って言ってくれたのではないかと。

昨日見に来てくれていた高校の友達とも仲良くなるのに時間がかかったという。
決してJUNNAにとって「ともだち」というのは存在は容易くなれる物ではない、特別な存在なのだ。

それを私達ファンに向けて使ってくれる。
これほど嬉しいことはあるだろうか。

JUNNAは涙混じりにもしっかりと自分の思いを伝え終わる。

そして、バンドマスターを再び招き入れ、本当に最後の曲を歌い始める。

21曲目「ともだちと呼べる幸せ」

最初は涙まじりに歌い初め、少し心配になった。
泣いてもいいんだよ、と思うが、彼女は絶対に泣きたくないと言っていた。

がんばれ、JUNNA。

声は出せないけれど彼女に届くように視線に想いを乗せる。

それが届いたかは分からないが、JUNNAは気丈に持ち直ししっかりと歌い上げる。

最初まさかこの曲を歌うとは思っていなかった。
自分の中では卒業を控えた冬の曲のイメージだったから。
でも先程のMCを受けこれほどまでに相応しい曲は無いと思った。

そんなことを考えながら聴いていると

「不安な私の世界 そっと押してくれた ”夏”の夜」

と、冬から夏に詞が変わっていることに気付く。
JUNNAが詞を書いたからこそ出来るサプライズだ。

そこから一気に歌詞に耳を傾けてしまう。

「変わらない、この想い」
「会えない距離も、怖くない」
「これから先ずっと、貴方の笑顔をみていたい」

JUNNAがファンに向けたメッセージにも、
自分がJUNNAに思う全ての想いでもある。

こみ上げる物を抑えきれなくなってしまった。

”ともだちと呼んでもらえる幸せ”
それを心から嚙み締める

20曲以上の楽曲を歌ったと思えないほどの最上の歌声で最後まで歌い上げたJUNNAに改めて盛大な拍手が鳴り響く。

「ありがとう、また絶対に会おうね」
そう約束してくれたJUNNAを最後の最後まで万感の拍手を贈る。
全ての曲目を終え、どこか安心したように見える背中を見送る。

寂しくはない、また必ず会えるから。



絶対に、いつまでも忘れない、最高の夏の夜。

「大好きだよ、ありがとう」

心からそう思う。






※一部楽曲の歌詞を引用させて頂いております。
〈セットリスト〉
『JUNNA ROCK YOU TOUR 2021 〜20才の夏〜』at Zepp Haneda
1 FREEDOM〜Never End〜 
2 Steppin’ Out~extended version~
3 La Vie en rose
4 あばよイエスタデイ
5 Sleepless
6 コノユビトマレ-20×20 ver.-
7 波打ち際
8 Here
9 いま
10 Sky 〜 火遊び
11 Believe In Myself
12 Now or Never
13 We are
14 世界を蹴飛ばせ!
15 Vai! Ya! Vai!
16 我は小説よりも奇なり
-ENCORE-
E1 イルイミ
E2 海と真珠
E3 はじまりの唄
W/E ともだちと呼べる幸せ