テレビで麒麟の田村を見るたびになんかイライラする。
一発屋で終わってしまえと心から願う。

田村は高校の時のいっこ先輩で、卒業後もバイト先が
隣同士だったので30回くらいは喋った事がある。
時間に換算すると、合計2時間ぐらい。

そんなに仲良くはなかった。
しょーもない馬ヅラがおるってぐらいに俺は思ってたし、
田村も汚いテンパの後輩がおるってぐらいに思ってたやろう。

ほんで最近よく見る「ホームレス中学生」とか言う本が
バカ売れしてるらしい。イライラする。
こんな本絶対見てやるもんかいと勝手に意地を張ってたにも
関わらず、昨日ついつい立ち読みしてしまった。

時間も無かったのでパラパラと飛ばし読みして、
そして最後のあとがきの項は、同級生や後輩や、お世話になった先生
などに感謝の言葉を並べているという内容だった。

ふと気が付けば、俺はそこに自分の名前を必死に探していた。
本屋は暖房が効き過ぎていて、厚着だった俺はワキ汁びっしょりだった。
俺の名前なんて載ってるはずもなかった。

誰か俺をしばいてくれ。
こめかみをグーでおもいっきりしばいてくれ。
こんな恥ずかしい期待をした俺をしばいてくれ。
今度会ったらしばいてくれ。
昼過ぎにはもう限界だった。

俺の唇はぱりっぱりで、あの時誰かに笑かされたら
真ん中でぱっくり割れてたやろう。
周りもほんのり赤くなって、ヒリヒリしていた。

すぐさまローソンでリップクリームを買った。
心なしかいつもより早いスピードで、
時計回りにリップクリームを塗りたくった。

実は今シーズンでリップクリーム2本目。
1ヶ月ぐらい前に買った奴は一体どこへ消えたんやろう。

27年間生きて来た。
面白い友達に囲まれて本当に楽しかったし、
それなりに恋人も出来て幸せだった。
今ではちゃんと仕事も頑張って、社会の一員として生きている。

だが俺の人生にリップクリームは27本で良かったはずだ。
毎年冬に、一本のリップクリームで良かったはずだ。
いや、もっと大切にしていれば15本で良かったかもしれない。

それなのに、これまで50本くらいのリップクリームが
最後まで使い切られないまま、俺の前から消えて行った。

何とか使い切ってやりたいと思ったけど、
ベッドの下からホコリまみれになって出て来たリップクリームは、
全く使う気になれなかった。
ので、軽くティッシュで拭いて、弟にあげた。