パーキンソン病のTAさんに
わちはひどく叱られた。
2週間ほど前のこと。
トイレ介助で、
まだそのときも
介助がもたついているんで
早く慣れたくて
わちは
すすんでTAさんをお連れしていた。
まず
立つために
便座の横の棒に
つかまっていただくんだが
その手をどうやってその棒まで
届かせるんだろうと思ってしまうくらい
彼女は身体全体が縮こまっているし
よろよとしていて
でもなんとか手を
伸ばしに伸ばしてもらって
やっとやっと立っていただくんだが、
足の裏が
なかなか床に
しっかりと着かないんで
ふらふらふらふらしていて
リハパンを下ろす、その勢いだけで
転倒してしまいそうなんで、
後ろから股の間にわちの膝を入れ
ほとんどそこに座っている感じだが。
その日は、何やら彼女は
喋っていた。
いつもなら
彼女が何か言うと、
わちは必ず耳をくっつけたり
顔を覗き込んだりして
何を仰ってるんだか
聞こうとするんだが
トイレ介助のときは
利用者様がどんどんいらっしゃるんで
わちは急いでいた。
とりあえず、
本当にとりあえず、
急いでリハパンを下ろし
便座に座っていただこうと思った。
すると。
突然よろよろと
TAさんは崩れ落ち始めた
わちは慌てて身体ごと抱き上げ、
便座に座らせようとした瞬間
気がついた。
濡れている。
どこかが。
見ると、床に水たまりが。
しまった。
間に合わなかったんだ!
TAさん、
ごめんなさいね、
ごめんなさいね、
と言いながらわちは
床を拭き、
ズボンも濡れてしまってたんで、
トイレのボタンでスタッフを呼び
代わりのズボンを持ってきてもらった。
ズボンを替えたり
リハパンを替えたり
あちこち拭いたり
すると、便座に座ったままの彼女が
突然
ごめんなさいね、じゃないわよ。
と言った。
え。
わちは一瞬
自分の耳を疑った。
彼女はいつもモゴモゴ言うだけで
ほとんど聞き取れない。
が
もごもごしながらも
また言った。
「ごめんなさいねごめんなさいね、って
謝って済むことだと思ってるの?」
「このことを、バラしてやるから。」
いつもは愛らしい大きな
目をしているその目は
いつもと変わらなく大きく開いているが
怒りに燃えてたのかもしれない。
ごめんなさいじゃない。と言われてしまい、
わちは何も言うことができず、
ただ申し訳なさそうに
はい。といって
彼女の前にひざまづき、
その目を見つめた。
「どういうつもりなの?」
こんな言葉を
そのTAさんに言われたと
誰かスタッフに話したとしても
絶対信じてもらえないと思う。
それくらい彼女はいつも
何を言っているのか判らないし、
誰も表面的にしか
判ろうとしていない。
むしろ意思の疎通はできないと
さえ、たぶんみんな思っている。
「一体どうしてこんな事になったと思ってるの?」
わちはその時初めて気づいた。
あの時、彼女が何か喋っていたのは
この事だったのか!
わちは急いで便座に座らせることしか頭になかったんだ。
座ってからゆっくり話を聞こう
と思っていた。
すみません。
あの時ちゃんとTAさんのお話を聞かなかったからです。
申し訳ございません。
とわちは言った。
絶対このことをバラしてやるから!
と
彼女は言い続けた。
わちはもう、
ショックでショックで。
わちがそうやって
真摯に謝り続けた事で
彼女の潜在意識には、
わちへの恨みが刷り込まれてしまうかもなあ、と思った。
どうすればよかったんだろう。
みんなみたいに
はいごめんなさいねーって
笑いながら言えたなら
もしかしたら良かったのかもしれない。
ヤバイ、ショックすぎて
もう目を見れないかもしれない
と思っていた。
が。まあ次回あったときは
ちょっとはビビったが
いつものように
接することが出来た。よかった。
この事件は
ここに報告しようと思っていた。
時間が取れず、なかなか書けなかったんだが、、、。
そうこうしているうちに
次の事件が起こってしまった。
昨日、
送迎でTAさんのマンションでエレベーターを待ってた時
また彼女が耳を疑うことを言った。
どんな事があっても、
なにがあっても、
あなたのこと、
え。なんかまた
傷つけてしまったのか??
とびびってると
その言葉は続いた。
あなたの事、
頼りにしています。
え????
TAさんは
わちの手を握り
何度も何度もそう言った。
昨日もわちは
あまりみんながやりたがらないのか
後回しでいいと思うのか
食後のうがいも
うがい薬を飲んでしまうので
やんなくていい、と言われるんだが
わちの時は
彼女はいつもちゃんとブクブクペーしてくれる。
でも昨日は
Tさん、飲んじゃダメですからね、
ブクブクペーですよー
って言って
お口に含ませた
わちが
「はい、ぶくぶくぶく~」と言うと
Tさんすました顔で、
ゴックンしてから
「ぺー」と言った(笑)
わち、爆笑してしまった。
ぺーって。。。(笑)と。
でも彼女も笑ってくれた。
いつも
彼女が何かを言うと
それが大して意味のない事だとしても
わちは
意思を伝えようとしてくれた事自体が
嬉しくて
持って折りたたんだ
テッシュを、
これでいいのかな。と
話しかけてくる彼女に
そうですね!
綺麗にたためましたね。
Tさん几帳面ですね~とか
目を合わせて微笑む。
前みたいに
ずっと付きっきりにはなれない。
他の方の見守りもしながらなので。
それでもきっと彼女は
わちとの会話がもしかしたら
嬉しかったのか
それともあの日、叱った彼女に対して
真摯にうけとめて、謝罪したからなのか
玄関の中に入って、さあ帰りますというときまで、
彼女はわちの手を、きつく握ってくれた。
わちは決めた。
どれだけ先輩に
イヂワルされても、
このTAさんの言ってくれた言葉を
約束として
わちは裏切らない。
自分の感情で
ここを去ることだけはしない。って
独立するときは
仕方がないけど。。。
それでももしかしたら
なんらかの方法が見つかるかもしれない。
涙が出ちゃうくらい
嬉しかった。
心は 絶対
通じる!
ってこと
また証明された!!!