かたあしだちょうのエルフと奇跡の一本松 | プラネタ旅日記

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児童書専門古本店プラネタ(無店舗)の管理人が細々~となにやら呟いております。大半は読書記録。時々頭の悪さと猫馬鹿具合を炸裂させてます。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
エルフはわかくてつよくてすばらしく大きなおすのだちょうです。なにしろ、ひといきで千メートルもはしったことがあったくらいです。それでみんなは、エルフ、エルフとよぶようになったのだそうです。エルフとはアフリカのことばで、千のことなのです。



以前にも紹介 しましたが、おのきがくさんの「かたあしだちょうのエルフ」と言う絵本があります。

(以下、ネタバレ注意)

若くて強くて大きくて、みんなに好かれていただちょうのエルフ。

みんなを守るためにライオンと戦い、大切な足を1本失いました。

思うように動けず、食べるものもろくに食べられず、皆から忘れ去られ、早く死んで自分たちの餌になってくれと言われるエルフ。一人ぼっちで涙を流しながら、小さな子供たちの遊んでいる声だけが慰めの毎日。

ある日、襲ってきたくろひょうから子供たちを守るため、片足ながら再び戦ったエルフは……。


絶版でもなんでもなく、普通に一般の書店に流通していますし、図書館にもあると思いますので是非、呼んで頂けたらなと思いますが、私は「奇跡の一本松」と聞くたびに、このエルフのことを思い出します。


岩手県陸前高田市。

http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kategorie/fukkou/ipponmatu/ipponmatu.html

↑こちらのHPでも紹介されていますが、あの3月11日の震災。

7万本の中でたった1本だけ、津波に耐えた松がありました。

高らかに、空に手を伸ばした力強い姿を、テレビなどでご覧になった方も沢山いらっしゃることと思います。

私は最初にテレビで見た瞬間に、「エルフだ」と思いました。


高田松原は、約350年前から植林を行い、市民の皆さんが丹精込めて育ててきたとても美しい場所だったそうです。

ほとんど四国から出たことのない私は恥ずかしながら、震災の後になってそのことを知り、以前の姿も写真でしか見たことがありません。

http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kategorie/fukkou/ipponmatu/takata-ipponmatu/takata-ipponmatu.html

青々とした海に白い砂浜、そして7万本の翠の松。

白砂青松と言うに相応しい本当に素晴らしい景色でした。


しかし、たった1本残った松も海水により枯死。

それを復興のモニュメントとして残すために人工的に処理を行い、復元したと言うのは、すでに皆さんご存知の通りです。

整備には多額の資金がかかることから、復興に回すべきだとの声も多くあったようです。

確かに、1本残った松があの日、誰かの命を救ったわけではありません。

けれど、もしかしたら、あの力強い姿に勇気づけられる人がいるかも知れません。

いつか再び、7万本を超す大きな松があの海辺を囲む日がくる。

いつかその緑の木陰で、人々が笑いあい、語り合い、空を見上げ、海を見渡す日が来る。

その時に、あの津波に負けなかった1本の松も、そこにある。


「かたあしだちょうのエルフ」の最後がどうなったのか。

是非、皆さん読んでみて下さい。

私は以前、この絵本を読むたびにエルフが可哀想だと思っていました。

自分を犠牲にして、傷つき、忘れ去られ。再び犠牲になったエルフ。

みんなは幸せかも知れないけれど、エルフは幸せじゃないんじゃないか?と。

けれどきっと、エルフは幸せなんです。

再び忘れ去られる日がきても。

皆が幸せにさえ暮らしてくれたら。

皆が笑顔でさえいてくれたら。



東日本大震災から今日で2年です。

犠牲になった皆様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(もちろん、すべての動物たちの冥福も)

そして、被災され今も復興を目指して頑張っていらっしゃる皆様にも、心の安息が得られますようお祈り申し上げます。