(11月19日付け、゙AERA dot.゙より…)

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…東京・浅草の小さな遊園地「浅草花やしき」。ここを拠点とする「花やしき少女歌劇団」にかつて、小児がんで右足を失いながらもセンターで歌う少女がいた。
 少女の名は木村唯さん。
 私は2014年秋、初めて彼女の存在を知った。東京・築地にある国立がん研究センター中央病院の院内学級の取材で、闘病中だった唯さんの歌声を聞いたのだ。『ママ、産んでくれてありがとう…。』抜群の歌唱力と、歌に込められたメッセージに強く心を揺さぶられた、、、
いつか唯さんのことを書きたいと思いながら果たせずにいた。15年秋に亡くなったことを知ったのは半年以上たった後……。
足跡をたどる取材が始まった。
 小学3年生で地域アイドルグループの「花やしき少女歌劇団」に入団。歌手で作曲家の故・平尾昌晃さんに歌の才能を見いだされ、3人組ユニットでプロデビューする話も持ち上がった。
 その矢先の中学3年の夏、唯さんは右足の痛みに襲われる。診断は小児がんの一種「横紋筋肉腫」……。本人にも病名は告知された。このときすでに「ステージ4」であることは、両親だけに伝えられた。
 抗がん剤による激しい吐き気と、ごっそり抜ける髪の毛。どんなに苦しくても、唯さんは常に歌劇団のことを考えていた。病室で歌劇団のショーの動画を見て「笑顔が足りない」「こんなステージをお客さんに見せるの??」。「だめ出し」は歌劇団の少女たちを奮い立たせた。
 経過は思わしくなかった。「これ以上続けても治せない確率のほうが高い」──最低限の治療にとどめ、残された時間を有意義に過ごしたほうがよいという主治医の提案に、唇を噛んだ。
 両親は一縷の望みをかけ、国立がん研究センター中央病院にセカンドオピニオンを求めた。右足の切断。それが残された道だった。母の雅美さんはネットで義足のファッションモデルの写真を見つけ、唯さんに見せた。「きれいだね、すごーい。義足に見えないね」。義足をつければステップくらいのダンスはできるかもしれない、と伝える雅美さんの言葉に、唯さんの心は動いた。「手術しようかな……」
 13年7月、唯さんは右足の切断手術に踏み切る。5カ月後、念願だったステージに復帰。「歌劇団の小さなメンバーが、足がない自分を怖がるかもしれない」「お客さんが不快に思ったらどうしよう」──そんな心配は杞憂だった。少女たちは再び唯さんと同じ舞台に立てることを喜び、ファンは手作りのうちわを振って迎えた。唯さんが倒れても支えられるように、大柄なメンバーが周囲で踊るフォーメーションを組んだ。
 しかし、がんは全身に転移。15年9月、体調が悪化して入院する。抗がん剤はもう効かなくなっていた。月末、雅美さんは唯さんを自宅に連れて帰る。
 肺に水がたまり、呼吸が苦しい状態が続いた。懸命に文字を打とうとしたが、力を失った手からスマートフォンが何度も滑り落ちた。脳への転移で片方の目が見えづらくなっていた。友達からたくさんLINEメッセージが届いていた。「『既読無視』になると悪いから」。唯さんはLINEを開かないように雅美さんに頼んだ。連絡が取れなくなった唯さんを、友達みんなが心配していた。
 亡くなるまでの18日間、家族と親戚、交際していた1歳上の彼氏に囲まれ、在宅医療を受けて過ごした。10月14日早朝、静かに旅立っていった。。。
 あれから2年、唯さんの死は友人たちの進路に影響を与えていた。
 中学時代、仲のよかった金谷唯香さん(20)は、義足をつけた人のリハビリが学べる大学に進学。理学療法士を目指す。小中学校の同級生・附柴央織(つけしばひろのり)さん(19)は農業大学に進んだ。自分には病気を治すのは難しくても、飢えに苦しむ子どもたちのために食品の研究をしたいという。やりたいことが見つからなかった自分を、唯さんが導いてくれた。
 最期まで生きる望みを失わなかった少女の生涯は、人々の胸に深く刻まれている。。。(朝日新聞記者・芳垣文子)
※AERA 2017年11月20日号

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…私立恵比寿中学の松野莉奈ちゃんが若くして他界した時も、その無念さは胸が張り裂けそうになるくらい伝わってきたんですが、唯ちゃんの事例もまた心がかき乱されるものをとても感じました、、、

これからまだまだ女の子としての楽しい人生が待っていたであろう矢先の暗転……。

なぜ神様はこんなにもつらい試練を年端もいかぬ女の子に与えてしまったのか………。

何度も何度も記事を読み返すうちに、どこにぶつけていいのか判らない怒りが沸々と僕の中にわいてきました。。。

…ただ救いに思えたのは、歌の活動への情熱が絶えずあったことと、お友達やファンの今後の人生に大きな影響を与えたことだと思います。。。

そう考えるとアイドルが目指す本来の目的、゙夢を与えるお仕事゙は達成出来たのではないでしょうか??



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