
冷静と情熱のあいだ 江國 香織
あらすじ(アマゾンより)
穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。これが私の本当の姿なのだろうか。誰もが羨む生活の中で、空いてしまった心の穴が埋まらない。10年前のあの雨の日に、失ってしまった何よりも大事な人、順正。熱く激しく思いをぶつけあった私と彼は、誰よりも理解しあえたはずだった。けれど今はこの想いすらも届かない―。永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。

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とても素晴らしい本でした。
私がそう感じた理由はいくつかあります。
まず大きな理由は、 主人公(あおい)の持つゆっくりとした時間が忠実に本に映し出されていたからです。
私は、人にはそれぞれ自分のペースがあると思います。
せかせかした人も居れば、どっしりかまえた人もいます。そういう時間の流れは、その人と過ごしているとよく伝わります。
しかし驚くべき事実は、その人その人が持つ特有の時間の流れを、この小説で表現しきっているということです。
紛れも無く、あおい自身の時間の流れ、ペースで話は進んでいました。
私はそういう小説に出会うと、本当に安心して読みすすめることが出来ます。それが顕著に出ているのが、この冷静と情熱のあいだ です。
すこしネタバレになってしまうのだけれど、
主人公(あおい)は、順正と離れてから、自分の時間が止まってしまいます。
そんな中で、自分を大切にしてくれる恋人と出会い、友達に恵まれます。
でも、ずっと満たされないのです。それは、隣に居るべき人・ずっと一緒に居ると信じて疑わなかった人が、もう隣には居ないからです。
新しい世界にも行けず、過去にも戻れず、ずっと同じ場所に止まっています。
その、心の動きがとても繊細に表現されているのです。
あおいは賢い女性であるので、過去を悔やんだり未来をのろったりはしません。
とにかく冷静に、順正のことを思い出し、そこから動けないでいるのです。
私は青の辻版から読んだので、最終的にどうなるかは知っていたけれど、それでも江國版を読んでる時は、
最後までどうなるのかわかりませんでした。
結末が分かっていても楽しめる本ってなかなかないです。
両サイドから読むことで、本当に楽しめます。
今でも、よくあおいがお風呂に入って自分の殻に篭ってしまう情景が目に浮かびます。
本当に、素晴らしい小説だった。 一読、いや何度も読む価値のある小説。



