『世界は慢性的なサイドバック人材難である。』

これは、ぼくがここ何年かの欧州リーグを観ていて、出てきたテーマです。

各国の代表クラスの選手が控えにゴロゴロと居るような、
いわゆるビッグクラブと言われてるチームでも、サイドバック=SBの選手は、
あまり聞いたことないような若手の選手がレギュラーだったり・・、

あるいは、本来SBではない選手が便宜的にSBのポジションに入ったりしているのが
現状である。


サッカーにむちゃくちゃ詳しい友達でも、『あれ?レアルマドリーの左SBって誰だっけ?』
なんて言ってる。

答えはもちろん、アルベロアである。

『あれ? チェルシーの右SBは??』

・・・答えはもちろん、パウロ・フェレイラである。



運動量がチームで一番多いのにも関わらず影が薄い・・[m:56]割り食うポジションではある。




話しが脱線するが・・・、
どのチームもアタッカーや中盤の選手の獲得には
躍起になり、高額な年俸そして莫大な移籍金が飛び交う。

去年、バルサからACミランに移籍したFW ズラタン・イブラヒモビッチ
彼一人の年俸は、昔、長友がいたチェゼーナの選手の全員分の年俸とほぼ同じぐらいである。

チームによって多少程度の差はあれ、プライオリティは、
FW>MF>GK>CB>SB  

多分、こんな感じだろう。

FW、MFの充実していないチームがSBの補強をファーストプライオリティ
に掲げることなんて、まずあり得ないのである。


しかしながら・・・、と僕は思う。

SBのクオリティーが試合を決める。
言うならば Key Factor for Success であると断言したい。



ここで、SBのクオリティー=優秀なサイドバックとは何か?に言及しよう。

SBは主に3つのタイプに分かれる。

①攻撃的SB    攻撃ばかりで守備が疎かになる

②守備的SB    守備は良いけど、殆ど前線には出て行かない

③万能型SB     運動量が豊富で、しっかりと守備から入り、攻撃参加のタイミングが
             絶妙で攻撃の起点になれる

もちろん、優秀なSBとは ③万能型SB の事を指す。



DFの鉄則として 「数的優位を作らせない。」

まず、これが大前提で、昨今のフットボールは組織的な守りが徹底され、
そしてそれが確実に実行されている。

数的優位で対峙するDFに対峙して前線の選手が個人技で切り崩していく。
そんな時代はナポリをマラドーナが去った時に、とっくに終焉を迎えている。

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近代フットボールにおけるSBには2つの重要な役割がある。

まず数的優位を作らせないための守りとしてのサイドバック。
そして組織的なディフェンスに対抗する攻撃のためのサイドバック。

よって近代フットボールでは、このSBのクオリティーが試合で非常に重要な意味合いを持つ。



もちろん、そんな事はどのチームの監督も分かっている。

分かっていても、理想的なSBを両翼に携えているクラブチームは殆どない。
ナショナルチームになると事態はもっと深刻である。

何故なら、「世界は慢性的なサイドバック人材難。」なのだ。

ある時には、パスの受け手になるために最後尾からで全速力でサイドを駆け上がり、
ある時には、クロスを上げるためにドリブルで最後尾から全速力でサイドを駆け上がり、
ある時には、ディフェンダーを引き付ける囮になるために最後尾から全速力でサイドを駆け上がり、
またある時には、こぼれ球を詰めるために最後尾から全速力でサイドを駆け上がる。

そしてボールをインターセプトされた時には、全速力で最後尾に駆け戻り、しっかりと守備をやる。

そんな途方もないピストン運動を試合終了のホイッスルが鳴るまで、
終始ハイパフォーマンスで続けられるSB。

そんな優秀なサイドバックなんて、世界広しと言えども中々見つからない。

もしかしたらそれは、サハラ砂漠に落としたコンタクトレンズを探すぐらいの
不毛な作業なのかも知れない。

世界中の監督がSBの人材探しに頭を痛めている。


そんな中、サッカー後進国と言われたアジアの極東の地から成長著しい2人の
優秀なSBが台頭してきた。[m:1]

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左SB 長友佑都




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右SB 内田 篤人



今冬、インテルに電撃移籍した長友佑都の実力と活躍は言わずもがな、である。

そして特に、ここ最近の内田 篤人の成長ぶりには目を見張るべきものがある。



昔・・、とは言っても一年前、

内田は 攻撃的SBとしてそれなりに評価をされていた。

しかし、攻撃ばかりに目がいっていて守備をやらないことでも有名だった。
(特に代表戦では。)


時に、「お前はウイングか?」って言うぐらいに前線で張っていて
守備に戻らない内田にヤキモキしていた人も多いだろう。

そんな調子なので、守備力が重要な格上相手のワールドカップ本戦で、
岡田監督は(その才能を高く評価しつつも)結局最後まで内田を使う事は無かった。

そして内田の出番は一切無いまま、4年に1度の祭典ワールドカップ[m:93]が終わり、
ベスト16という大奮闘で予想外な結果に日本中が歓喜した。



そして内田はドイツへと移籍をした。

内田がドイツに行く前、応援はしつつも海外移籍に懐疑的な見方をしている解説者も
少なからず居た事も事実だ。

それぐらいに「内田 篤人」という名の才能は儚くてもろく不透明で不確かなモノであった。


しかし、ドイツに行って約半年、彼は急激な成長を遂げる。

それはまるで、蕾をつけた桜が一気に花を咲かせるように
彼のプレースタイルは日に日に変化をしていった。



その攻撃センスにしか、存在価値を見出せなかった典型的な攻撃的SB
だった彼は今、ドラスティックにかつ正確に、万能型SBへとシフトしつつある。

そして彼は先週、世界最高峰と言われるUEFAチャンピオンズリーグで、
日本人初であるベスト4進出という快挙を成し遂げる。

エトー、スナイデルといった世界一と言っても過言ではない選手を完璧に抑えつつ、
機をみては、絶妙なタイミングで前線まで駆け上がっていく。

それはまるで、ジャン=ピエール・ジュネが撮った映画を見ているみたいに美しい光景であった。



「自分がどうとかよりも・・・まぁ・・・チームが勝てて良かったです・・・。」(試合後のコメント)

このやる気があるのかないのか分からない飄々とした感じにも最近は、好感が持てるようになりました。


さすがに「世界一のサイドバック。」とまでは思わないけれど、長友にしろ、内田にしろ、
間違いなく世界でトップ10には入るぐらいの実力がある。と私は確信しています。


そして断言しよう!
「優秀なSBがいる代表チームは幸運だ。」と。

そして
「それを応援できるファンは幸せだ。」と。


色々とすったもんだがありましたが・・・、7月の南米選手権に日本代表の出場が決まりました。

所属チームの事情や選手のコンディションなど色々と問題はあり、
出場に疑問符をつける意見も多いですが・・・、

もし・・、もし、この2人の召集が実現したならば、もろくて儚い小さな羽根でしかなかった両翼が大きく羽ばたいて何度もサイドを駆け上がっていく姿を多くの人が眺める事ができるだろう。

そしてこの大きく羽ばたく両翼と共に日本代表はどこまでも天高く昇っていく。

そんな大いなる可能性を感じずにはいられない。

そして僕の視線は両翼に注がれる。






本田も頑張れ!! 


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 愛してるぜ!!