9月終わりの土曜日は横浜のみなとみらいへ。IRON MAIDENの日本ツアーのラス前のライヴ。明日もここ、横浜ぴあアリーナMM(MMとは、みなとみらいの意味。)でやる。会場前に着くと、IRON MAIDENのTシャツの人しかほぼいない。自分は国内のCASBAHのT。他のバンドのTの人は2人ぐらいしか見かけなかったな…俺が見たところでは…METALLICAとかぐらい…。もっといるとは思うけど。
さて、17時に開場。自分の席に着いてみると、3階の1列目という事はわかっていたのだが、なかなかに良い感じでステージ全体がよく見える席であった。ただ、もう近視と乱視で、スクリーンも眼鏡がないとハッキリ見えないぐらいになっているので、そこはもうあまり気にしない。基本、音だから。それと、3階席と4階席の最前列は会場規定で立ち見禁止という事になっていた。まぁ、ちょっと左膝が痛いのもあるので、座っている方がジジイにはいいかも…。(苦笑)最初に91年に見たMAIDENは、NHKホールの2階のせり出した部分で結構怖かったな。でも"Wrathchild"とか始まったら関係なくなっていたけどね。
BGMが、JUDAS PRIESTの"You've Got Another Thing Comin’"からTHE MONTROSEの"I Got The Fire"になり(何故かMAIDENのカヴァーはタイトル間違えていて、"I've Got The Fire"になってる。「俺は炎を得た」という意味から「俺は炎を持ってる」に変わっちゃうんだけど。w)、音量が大きくなって、開始の18時から4分押しでSEがいつものUFOの"Doctor Doctor"になり、オーディエンスが手拍子。さらに全パート終わってVANGELISの"Blade Runner(End Titles)"に変わる。そして、SEが1曲目のイントロになると、会場騒然!キタ~~!"Caught Somewhere In Time"!87年の日本ツアーでも1曲目でやったが、あの時は予備校生で行けなかったため、この名曲をライヴで聴くことは出来なかったのだ。遂に初老にして初めて青春を取り返したとさえ言える。(笑)テンポ・チェンジするところからメンバーが出現して生演奏開始!このイントロを何故SEにするのかは、おそらくだが、ちょっとスローなテンポだし、ギターのハモリとアクセントのベースのみで始まるので、トップで生演奏で雰囲気を高めるのは難しい可能性があるからかも?ブルースのヴォーカルは、素晴らしく出ており、何も問題がない!それに、昨年軽い脳卒中で倒れたニコのドラミングは一番気がかりではあったが、完璧(プレイヤー側からするとそうではないかもしれない。)なリズムで、スティーヴとのコンビネーションも強固!ツアー中にかなり切磋琢磨した部分はあるのだろう。この日にライヴを恵比寿のThe Garden HallでやっているLOUDNESSもそうだが(ライヴ後にスティーヴと高崎さんが偶然会ったらしい。w 高崎さんのTwitter(X)参照。)、同じくドラマーが脳梗塞の後遺症を克服して臨んでいる…凄いプロ根性である。ソロは、最初はデイヴでスタジオ盤とあまり変わらないフレーズ。対して次のエイドリアンのソロは、ちょっと即興プレイも混じっていた。
この曲への想いは色々あるのだが、80年代、中学、高校と同じだった友人達がLAメタル以外のHR/HMをあまり聴かないという感じがあって、「なんでIRON MAIDEN聴かないの?」と訊いたら、「いやぁ、ちょっとなんかシブいっていうか、モロにメタルって感じみたいだから、どうも。」とどちらかというと、DOKKENやRATT、それにLAメタルではないが、VANDENBERGなどを好んでいたため、METALLICAはその後聴くようになったが、スラッシュ・メタルなんぞもってのほかで、MAIDENやJUDASなどはキャッチーでメロディアスという側面がないから…と考えて聴かず嫌いをしていたので、この曲を聴いてくれ!と聴かせたら、「スゲーカッコイイ!」となったという経緯があるので、自分の中では友人のMAIDENへの意識を変えたという意味でも大きな意味があるのだ。
そして、ベースのイントロから、MAIDENではおそらく初めて聴いた曲(あのPVで)、"Stranger In A Strange Land"。厚いコードのサウンドが作り出すメイン・リフが本当に素晴らしい。当時のシンセ・ギターがどうこうなんて批判なんて俺は気にした事がないぐらい当時もヘヴィだと思った。2回目のサビの後、ソロの導入でベースも主張する。このパートではブルースもオーディエンスを煽る!エイドリアンのソロはスタジオ盤に忠実で、これがまた泣かせてくれる。フラッシーな速弾きなどはしないエイドリアンだが、彼ほど曲に合ったメロディアスなソロを聴かせるリード・ギタリストもあまりいない。エンディングではヤニックがソロを入れていて、これもなかなか良かった。
短いMCがあって、エイドリアンがアコギを弾く。すぐにヘヴィで東洋的なリフへ移行し、バック・スクリーンにはシングルのジャケのバイクに乗ったエディが映し出される。最新作「SENJUTSU」アルバムから、"The Writing On The Wall"。ここでのトリプルギターのサウンド・バランスは最高だ。この曲は、IRON MAIDENとしてはどちらかというとハード・ロック的で、リフ・バッキングよりヴォーカル・メロディに重きを置いた作りだが、ライヴではスタジオ・ヴァージョンより映える感じがする。最初のソロはデイヴで、ストラト・サウンドで流れるラインが素晴らしい。全くスケールも違うし、比較するのは何だが、速弾きは同じストラト使いのイングヴェイよりも丁寧で美しい音かな。伯爵(イングヴェイ)は、勢い重視だから、今は。後半のソロはエイドリアン。やはりメロディを大切にしたソロ。
次も「SENJUTSU」アルバムからで、ちょっとノイジーに聞こえるイントロのリフ…"Days Of Future Past"。こちらもミドルややスローなスタートだが、途中からテンポアップする。短いナンバーで、4分ちょっと。ソロはエイドリアンで、泣かせてくれる。この曲のタイトルが今回のツアーのタイトルに反映している事は間違いないが、「SOMEWHERE IN TIME」アルバムを中心とした「過去」と「SENJUTSU」という「未来」の曲群を網羅したセットがやはり響くものがある。
聞き取れなかったが、ブルースが「過去と未来が…」などとMCで言っていたので、今回のツアーの事を言っていたのかもしれない。もしかすると、次の曲のタイトルが"The Time Machine"なので、そこに絡めていたか…?
今度はヤニックがアコギを弾く。そこに乗るブルースの静かなヴォーカル。過去のナンバーのように凄く極端ではないが、激しいパートへと入る。テンポはミドル。展開の雰囲気はやっぱりMAIDENのそれだ。この曲では、エイドリアン、デイヴ、ヤニックとソロが回されていく。デイヴとヤニックのソロは速弾き中心だが、やはりレガート奏法とトリルを上手く絡めたデイヴの速弾きは独特である。ヤニックの速弾きは、よりアタックが強くて、やはり3人の中で最もリッチー・ブラックモアからの影響を感じる。そこは、WHITE SPIRIT時代から変わらない。エンディングはサイレントな雰囲気になり、終了。この展開もMAIDENらしさを感じる。
そして、ここでSEで、"We want information, information, information."と声が流れてくる。おおっ!初めてライヴで聴くぞ、"The Prisoner"!(自分は、「THE NUMBER OF THE BEAST」からの曲は実はライヴで結構聴いていて、これを聴いてしまったので、残りは3曲となったが、あの1曲目の"Invaders"はまだライヴでやったことはないんじゃないかな…。だが、来年、再来年のヨーロッパでの「RUN FOR YOUR LIVES' WORLD TOUR 2025/26」ではやるかもしれない。)ソロはエイドリアンから、デイヴへと続く。このサビのメジャー・キーで異様に明かるいっていう所が、当時のMAIDENでは珍しいと思うのだが、アルバムで浮いている感じはしないのがサスガである。(またこの曲は、邦題では「プリズナーNo.6」で知られるイギリスのSF調スパイもののテレビドラマからインスパイアされたものであるが、SFファンの間ではそのドラマはかなり有名。)
MCがあって、「次はジェノサイドについて歌った曲だ。」とブルース。「SENJUTSU」から"Death Of The Celts"。3人のギターがクリーン・トーンで鳴らされ、スティーヴもアコースティック・ベースでフレーズを弾きイントロが始まる。コードが変わってヴォーカルが入り、さらに徐々にヘヴィなサウンドになっていく。まずはエイドリアンのソロがあって、曲展開して三連のリズムになっていく。ヤニックのソロがあり、デイヴ、エイドリアンのソロへと続く。再びサイレントなバラード調のパートに移り、スティーヴもスタンドにあるアコースティック・ベースを弾く。ラストのリフが正にIRON MAIDEN節で、今回のライヴで聴いた「SENJUTSU」からの曲では、この10分強の大作が最も彼ららしい作風だと思った。おそらく、殆どの人がそう思ったに違いない。
感謝のMCがあって、すぐに"Can I Play With Madness"のコーラスに入る。そういえば、「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」アルバムでエイドリアンが脱退したというのも、既に35年ぐらい前の話となるんだな…2000年で復帰してもう24年も経つ…80年代にガンガンアルバムを出してビッグになっていく過程では7~8年しかいなかったわけだから、ブルースもそうだが、本当に若い頃の思い出となっているのだろう。(自分にとってもだけれど。)曲のリズムがチェンジして、エイドリアンのソロへ。今、この曲のPVを見ると、あの頃はスタジオ・ライヴ的な映像メインだったMAIDENがついに役者を使ったMTVイメージ・ビデオ的なのを作ったかぁ~と思ったが、それでもこれはこれでイイかな?とも思えてくる。
そして、ついにこの曲が来た。"Heaven Can Wait"。この曲のバックスクリーンには「SOMEWHERE IN TIME」の裏ジャケのような物がでたのだが、その街並みの看板がほぼ全部日本語。これにはタマゲた!「待合室」、「天国」、「天ぷら」、「この世の地獄」などなど。(笑…もちろん、このツアーでは世界中でこれを使っている。)まずソロは、スタジオ盤より速弾きが強烈なデイヴが弾き、その後の"Take my hand~"のところではスティーヴとヤニックはジャンプしまくっている。(凄い!みんな元気!)そして、例のオーディエンスも歌う「ウォウォウォー…」のコーラスのパートでは、昔はスタッフなどがステージに上がって一緒に歌うという場面になっていたが、今回は巨大なSOMEWHEREエディが出てきて、ブルースとレーザー銃(実際には花火が出ているのみだが)での撃ちあいをするアトラクション!さらに、その前でソロを弾きまくるヤニック!昔、91年のNHKホールのライヴは当時組んでいたバンドの楽器陣のみで見に行ったんだが、ギター君は、この曲と巨大エディに感動しまくっていて、今回のツアーは(彼は忙しいのでなかなか行けないのだが。)見せてあげたかったなぁ…。
そして、ここで、SEで風の吹く音と声が入ってくる。"My son, ask for thyself another kingdom..."…ついに、今回のツアーで初めてライヴで演奏された大作の"Alexander The Great"。この曲が聴けるという事はほとんど奇跡に感じられてしまう。イントロの静かなソロはデイヴが弾く。2番終わって、スネアが断続的に入るパートのソロもデイヴ。そして、少しオリエンタルな雰囲気になるところはブルースが銅鑼をならし、続くソロはエイドリアン…なのはスタジオ盤で、今はここはヤニックとのハモリである。途中から3人のハモリへ!そして、エイドリアンのソロ、さらにシュレッドなデイヴのソロへと続く。そしてテンポチェンジしてエンディングへと入っていく。この曲は凄い…8分半のドラマ…なかなか当時のツアーでは出来なかったのがわかるような気はする。
続いて、ハット4発を入れて、単音リフに場内のオーディエンスがユニゾンする合唱で呼応する。"Fear Of The Dark"!サイレントなイントロから、急激に激しくなり、中間部のフレーズをオーディエンスはまた大合唱する。まず、ヤニックのソロがあり、続いてデイヴのソロ。その次のフレーズもオーディエンスの大合唱がこだまする。リズム・チェンジして、さらにギャロップのリズムに移った所で、ヤニックとスティーヴの元気おじさんチームはジャンプしまくりである!リタルダンドして、最初のAメロのフレーズに戻り、またオーディエンスの呼応がある。そして、最後はゆっくりと静かにブルースがしめくくった。
「Screaming for me!Yokohama!」といつものようにブルースが叫び、"Iron Maiden"をコールした。いつものあのアタマ打ちのビートが響く!!2番が終わって、デイヴの即興っぽいギターが鳴り響き、そしていつものフレーズがゆっくりタメて演奏されて、展開部からリズム隊のみになり、再びメインの単音リフに戻る。というところで、巨大SENJUTSUエディ登場!バックスクリーンにはSOMEWHEREエディとSENJUTSUエディが映し出されている。曲が終わって、ブルースは、「See you!」と言い、続いて「Soon!」と言ったので、爆笑が起こった。ニコはフロントに来て走りながらスティックをスタンディングのエリアに投げていた。
1分程でステージの上の照明が灯き、メンバーが位置についていく。バックスクリーンには自由の女神のエディのイラストが。アンコール1曲目は、「SENJUTSU」からの"Hell On Earth"。スティーヴのベースとヤニックのギターのメロディがメインで響き、さらにデイヴ、エイドリアンもコードを弾く。クリーン・トーンで静かな始まり。ブルースが前に出てきて、左右に手を振ると、オーディエンスも片手を左右に振る。ニコのフィルが入り、パイロの炎が出て、曲は激しくなる。その後、パイロはガンガンたかれる。ヤニックのメロディを弾くソロがあり、ヴォーカルが入る。そして、ずっとヤニックはヴォーカル・メロディを追って弾いている。珍しいアレンジである。途中リズム・チェンジしてデイヴがソロを弾き、次にエイドリアンがソロ。再びヤニックがメロディ・ギターを弾き、サイレントになると、ベース主体のサウンドになる。(少々ギターのボリューム奏法も聞こえた。)そしてブルースも静かに歌いだす。しかし、すぐにヘヴィなバッキングに戻り、ヤニックの速弾きも入るギター・ソロが入り、そしてまたメロディ・ギターに戻る。一瞬全員音を止めて、再び静かなパートへ。最後のパートでは、ブルースはまた左右に手を振って、オーディエンスも手を振る。11分を越えるアルバム最後の曲だが、例えば過去の"Hallowed Be Thy Name"、"Rime Of The Ancient Mariner"、先程本編で演った"Alexander The Great"などのアルバム・ラストの大作と比較すると、かなりメランコリックというか、攻撃的な部分はほぼない作風になっている。アルバム全体が若き初期の攻撃的ヘヴィ・メタルの作風ではなくなっているのも、やはり自然の流れであろうか。
だが、ここで、遂に必殺のナンバーが繰り出される。ハット4回のカウントから"The Trooper"!楽器陣4人がフロントに並ぶのは壮観である。ブルースはやはりアンコールでこの曲だと、やはりどうしてもメロディを少し変えて歌っている。キーが高いのとパワーが要るからであろう。ソロはスタジオ盤では一箇所だけハモリが入っているエイドリアンのソロだが、このソロはヤニックと全部ハモって演奏。これはハッキリ言って素晴らしいアレンジである。(トリプルになってからずっとやっていたのかな?)そして続くデイヴのソロはトリルとスタジオ盤以上に強烈な速弾き連続のプレイで凄まじかった!
アンコール・ラストは、なんと"Wasted Years"!この曲を聴くのは初めてのような気がしていたが、08年の「SOMEWHERE BACK IN TIME WORLD TOUR」で聴いていたという事が、過去の記録で分かった。あの時にやっていたんだな…2番のあとのメイン・リフのところで、少しリズムをためる感じになるのがMAIDENのライヴでの醍醐味という感じがする。エイドリアンのソロはちょっと即興も入ったプレイであった。
「君たちと写真を撮るぜ!」とブルースが言って、ドラムのライザーの上からステージと客席を入れてパシャリ!写真はどこかに上がっているかな?と思ったけど、インスタとかにもなかったなぁ…。
ともかく、今回は、ついに聴けた!という曲が4曲もあったというオタク的な部分で嬉しかったのもあるけれど、ともかくブルースのヴォーカルが好調で、これまで見た中では最高のパフォーマンスだったと思う。デイヴは速弾きを惜しげもなく入れてくるし、トリプル・ギターならではの新しいアレンジもあったし…でも、あの感じを見ていると、MAIDENはまだまだ続くかな…と思ってしまった。もう1回ぐらいは日本に来るような気がしてきたぞ。
Up the IRONS!!
IRON MAIDEN@横浜ぴあアリーナMM 2024.9.28
SET LIST:
1. SE:Doctor Doctor(UFO)~Blade Runner(End Titles)(VANGELIS)~Caught Somewhere In Time
2. Stranger In A Strange Land
3. The Writing On The Wall
4. Days Of Future Past
5. The Time Machine
6. The Prisoner
7. Death Of The Celts
8. Can I Play With Madness
9. Heaven Can Wait
10.Alexander The Great
11.Fear Of The Dark
12.Iron Maiden
-Encore-
1. Hell On Earth
2. The Trooper
3. Wasted Years
4. (Closing SE:Always Look On The Bright Side Of Life(Monty Python ))