<これは卵巣がんを患った体験談。個体差があるため、参考程度に読んでくださいね>

 

  退院後と今後の治療

自宅に戻り、退院後の生活が始まる。手術による腹部全体の痛みと食事をとるたびに発症する右下腹部の痛みが続く。医師からは、今後の治療について大きな選択を迫られることになる。

 

退院後の生活

【退院後の翌日】

手術による腹部の痛みは当然続く。むくみが最大化し、片足のモモが背中一つ分に見える。

就寝時、腹部全体の痛みで仰向けでは寝られない。振り返ると病院のリクライニングベッドは角度がつけられたのでありがたかった。自宅では、ソファーによりかかりながら寝ることにした。絶食により右下腹部の痛みはなくなったが、立つ際に右側に重心を置くと痛みが走るため、左側から立つことにした。

 

【2日目】

少し食事をとる。家族に支えてもらいながら、ゆっくり近所を散歩した。新鮮な空気を吸い込むと気持ちがよい。

夜中に腹痛がおきる。部屋中を歩きまわり朝方トイレで排泄し落ち着く。

 

【3日目】

若干右下腹部の痛みはあるが、右側から立てるようになった。少し回復してきたので、昼間に外食したが、量は少なめにした。

 

【4日目】

朝方、腹痛をおこし、トイレで排泄し落ち着く。

右下腹部の痛みを感じることなく立てるようになった。まだ、腹部全体の臓器が揺れるような違和感はあるが、ようやく以前と変わらないスピードで動けるようになった。久しぶりに布団で仰向けになって寝れた。

 

【5日目】

朝方、変わらず腹痛をおこす。また、腹部全体には違和感がある。

 

【6日目】

朝方、変わらず腹痛をおこす。腹部全体の違和感は続く。

食事は通常量が食べられるようになった。手術痕にオロナインを塗って様子をみてみる。

 

【7日目】

朝方の腹痛がなかった。散歩中、ようやく腹部全体の臓器が揺れず固まったような感覚があった。

 

【8日目】

久しぶりに街中に出かけた。外に目を向けると、腹部全体の痛みも忘れられた。

9日以降、順調に回復に向かった。

 

検査結果報告と今後の治療について

手術から2週間が経った頃、病院へ。手術時に検査にだされた悪性腫瘍の詳細結果と、これからの治療について担当医から伺うためだ。

 

医師から、私の悪性腫瘍の種類をはじめ、手術時のこと、また今後の治療について説明をうけた。

悪性腫瘍のステージ1であったが、手術中、悪性腫瘍を包んでいたのう腫(13cm)を取り出す際に、のう腫が破れてしまい、お腹で悪性腫瘍が出て散ってしまったと説明をうけた。もちろん念入りに洗浄はしたが、抗がん剤治療を推奨すると言われた。

 

聞いた瞬間はあまりにも淡々と話されるので、重大さが伝わってこなかった。1つ目のクリニックの先生が言われていた「のう腫が破れて悪性腫瘍がでてしまったら大変だから開腹手術だと思う。」という言葉が脳裏をかすめた。まさに起こったら大変だと言われていたことが現実に起こってしまったのだ。だが、もう終わってしまったことで今更とやかく言っても始まらない。。

 

手術での痛みも残る中、これ以上身体を傷つけたくないという思いしかなかった。抗がん剤治療といえば、髪が抜け落ち身体はやせ細るキツイ治療というイメージ。そんな治療はとても受ける気にならない。しかも、私の腫瘍は、抗がん剤が効きにくく、再発の可能性が高いタイプだった。それを聞いて即座に「抗がん剤治療は受けるつもりはありません。」と答えた。担当医からは「病院側では治療を推奨するが判断は本人次第です。」と、何の熱もない、ただ事実だけを言われた。結局、手術後1ヶ月以内に決めればよいということで一旦この話は持ち帰ることになった。

 

手術中の対応について(別の病院の婦人科医師による話)

たまたま別の大学病院の先生にお話を伺える機会があったので、疑問をすべて聞いてみた。

 

Q.のう腫が破れて悪性腫瘍が出てしまった。この事実だけを聞くと医療ミス?

A.どんなに上手な医師でも起こり得ること。袋の薄さやのう腫がある場所など人によって違うため、破れることも想定の範囲内。

 

Q.破れることが予測できたなら、そうならないように事前対処はできなかったのか。例えば掃除機のようなもので、一瞬で吸い込むことはできないのか。

A.そんなものを使えばどこにどのような影響がでるかわからないためその方が危険。

 

Q.右下腹部の痛み(大腸の痛み)は、手術前まで一度もなかった。手術によって起こる通常の症状なのか。もしくは、手術でなにか失敗したのか。

A.起こり得る症状。癒着による痛みや腸閉塞になるケースがある。

 

Q.この右下腹部の痛みは、これからも起こることなのか。

A.今後も十分起こる可能性があるので、痛みだしたら直ぐに病院へ行った方がよい。

 

質問は以上。

結局、破れてしまったためにお腹に悪性腫瘍が散り、本来不要だった抗がん剤治療も選択にあがることになった事実を考えると、回避できる術を一刻も早く取り入れて欲しいと切に願う。

 

治療の決断

手術から半月が過ぎ、順調に回復していたので、1つ目のクリニックにお礼をするため訪問した。お礼の品だけを受付で渡してすぐに帰るつもりだったが、なんと診察室まで通された。

せっかくなので、悪性腫瘍の種類と取り除いた範囲、抗がん剤治療は受けないことを先生に伝えた。すると渋い顔をされ「僕は抗がん剤治療を受けた方が絶対に良いと思うよ。相手が相手だけにね。やれることはやっておいた方が、後悔がないと思うんだ。」と言われた。私は沈黙した。受けないと決めていたのに・・。その場は、ただそうですかと言って帰宅した。

 

何日かにかけて抗がん剤治療を受けるかどうか考えた。とても親身になってくれる先生のありがたいお言葉が幾度となく浮かぶ。結局、治療を受けることにした。