ラインアートストーリー 第1章

- LineArt Story - Chapter1
 
「第5話」
~時空振動~


ある日の昼下がり。
ここは中心街から少し外れた場所にある
小さなカフェ。
レトロ風のコジャレた雰囲気が好きで
ピクセルがよく通っているカフェである。

そこで、ピクセルはある人物と
待ち合わせをしていた。

しばらくすると
背の高いブロンドヘアーの
メガネをかけた若い女性が
やってきた。

「ピクセル、待たせたね」

「私も今来たところよ、プライマリィ」

彼女の名は
「プライマリィ=デヴァイス」

プライマリィは
ピクセルのプロハンター仲間で
「プロハンタークラス/レンジャー職」に

就いており

年齢はピクセルより

1つ年上の21歳。

 

13歳でレンジャー職に
そして、15歳で
プロハンタークラスに就いた凄腕で

ピクセルが尊敬する人物の1人である。


ピクセルがプロハンターになった4年前は
先輩として面倒を見ていたが

現在は完全なパートナー同士の

関係となっている。
 

プライマリィが席に座ると
ピクセルはウェイターに
コーヒーを2つ注文した。

「それで、例の話なんだけど」
ピクセルが話を始める。

僅かながらの沈黙があった後。

「ああ、私も以前から気になってたのさ。
この前、ビジュアルフォンで少し話したが
街の郊外にある工場跡から
時空振動を探知してな」

メガネをかけ直す仕草をしながら

プライマリィが続ける。

「それが通常では
あり得ないほどに高い数値で
お前から、時空の歪みの話を聞いたときに
ピンと来たんだよ」

と、怪訝な表情で言う。

 

「時空振動」は

空間と時間を統一した

四次元である「時空」が

何らかの影響を受けて

不安定になった状態になった時に

「揺らぎ」と言われる「振動」が起こる。

 

それにより

自然災害や災厄等が引き起こされる事が

ほぼ判明しているため

事前に調査する事も

プロハンターの任務の1つとなっている。

 

プライマリィは

時空振動の調査に精通しており

その事もあって

ちびぴくが過去から

遡ってきた要因とされる

時空の歪みの調査を

先日から依頼していたのだ。

 

ウェイターがコーヒーを2人分運んできて
テーブルに静かに置いて去っていく。

ピクセルが、プライマリィに
コーヒーを薦めながら
自身もコーヒーにミルクを入れている。

「それが関係しているか
まだ分からないけれど
調べてみる価値はありそうね」
ピクセルがコーヒーを口に運ぶ。

 
「それにしても
タイムスリップなんて
話を聞いた時は驚いたよ。
この科学の発展した世でも
まだ信じられないような事が起きるとはね」
コーヒーをブラックで飲みながら
プライマリィが半笑いな表情を浮かべた。

一旦、話を終えた2人は
カフェを出て
郊外にある廃工場に向かう事にする。

 

その廃工場は

昔はかなり盛んに稼働していたが

製造していた部品が

前時代的な物であり

時代の流れと共に

次第に生産量が減っていった。

そうして、廃業になったものの

建物だけはそのまま残っているようだ。

 

廃工場にやってきた2人は

早速、調査を開始する。


「このあたりだったはずだ」
そう言うと、プライマリィは
腰に付けてある小さな機械を手に取り
操作すると電子音を発し始めた。

ピッピッピッ

その機械は
プライマリィが所持している
小型のセンサーユニットで
プロハンターレンジャー職にのみ
所持が可能とされる
超高性能ユニットである。

主に敵の位置や
爆弾など危険物の場所を
あらかじめ知るための
ソナーとして使用される事が多いが

時空振動は稀にしか起きないため

それの使用頻度は低めとなっている。

 

ピーピーピー

センサーの音が
先ほどまでと変化した。

「ここか」
そう言うと、プライマリィは
自身のかけているメガネに付いてある
小さなボタンを数回押すと

メガネのレンズ面に

何かの情報が表示された。

プライマリィのかけている
メガネもまた
プロハンタークラスにしか
所持出来ないもので
センサーユニットと
無線通信でリンクし
メガネレンズ面に
ホログラムで詳しい情報が
映し出されるようになっている。

「今は落ち着いているが
10日ほど前に、高い頻度で

時空振動が起きた形跡が見られるな」
プライマリィが

ホログラムを見ながら険しい表情で言う。


10日前というと
初めて森でちびぴくと会った日と

ほぼ一致する。
やはり何らか関係しているのは
間違いないと、ピクセルは感じた。

その後、二人で手分けして
工場跡を調べてみたが
他に手がかりになりそうな
発見は出来なかった。

「今回は、ここまでのようね」

「そうだな」

と、撤収しようとした時
ピクセルの視界に何かが映った。

「あれは?」

2人が駆け寄ると
そこには、紋章のような模様が付いた
布切れが落ちていた。

「変わった模様だな」
プライマリィが言うと

ピクセルは黙って頷いた。

今までに見た事の無い模様で
気になったピクセルはその布切れを拾い

いつも携帯しているスマートユニットで
デジタルスキャンして
3D画像情報として保存した。

何か気持ちがざわつく・・・。
奇妙な感情を抱いたピクセルは
その模様が何か
詳しく調べてみる事にした。


~ラインアートストーリー 第6話に続く~