Pityman 傑作選 Ⅰ
『ハミング・イン・ウォーター』
全日程無事終了いたしました!!
ご来場下さいまして、誠にありがとうございました!
公演の最後にあとがきとして、作者の山下由のインタビューをお伝えしていきます。
(こちらは公演終了後のあとがきなので、若干のネタバレを含みます。ご了承下さいませ。)
大和田:まず最初に、作品の着想はどこで得たんですか?
山下:初演の時の俳優さんと一緒に喋ったことと、自分の父親が僕に話してくれた人生遍歴みたいな所からですね
大和田:劇中ではミドリ、アキラ、ハルの、3人のきょうだいが登場しますが、なぜこのようにキャラクター設定されたんでしょうか?
山下:初演はあてがきだったので、当時の俳優さんのキャラクターがかなり反映されてると思います。父親と分かり合えず関係が断裂してしまった人たちが、もし父親と断裂されずに、同じ場所にいたらどうなったかなってことを考えてました
大和田:それは、父親とその断裂された人たちの後日談みたいなことなんでしょうか
山下:後日談ではないです。仮想、ですね。仮想の物語だからできる面白いことってあると思うんです。出会うはずがなかった人が出会えたり、そういうところに夢があると思います
大和田:劇中では登場しない、父親と母親について聞かせて下さい。また、登場させない理由があったら教えて下さい
山下:父親については、父親としては登場してないですけどもきょうだいの中の一人としては登場してるんですね
大和田:きょうだいの中で?
山下:そう。主人公のハル君が、実は父親なんですね
大和田:ハルは実は父親なんですか?
山下:父親をモデルにしています。彼は本当は父親なんだけど、父親としてじゃなくきょうだいとしてあそこにいたらどうだったのかという。なのでそういう意味では登場してます。
母に関しては「いないからこそ大きい」というのがあると思ってて、重要だから登場するんじゃなくて、重要だからこそ登場させずにイメージだけをどんどん付けていくことで、逆に強く印象的になるみたいなことをやろうとしてました
大和田:なるほど。リアルな生活の描写がすごく多いですよね
山下:それは母親というのもあるし、もう一つは、いわゆる貧困というのも入ってたいなと思ったんです。初任給でやっと買ったものが電子レンジだとか、それを使えなくなっても捨てられずにいたりとか、あと穴が開いたパンツもずっと使ってるみたいなこととか。貧困の問題にしたいわけではないですけども、そういうことも入れたかったんですよね
大和田:貧困がこのきょうだいに与えている影響はかなり大きいですよね
山下:そう。例えばハル君が高校卒業してすぐ就職するシーンで、お姉ちゃんが「大学に行きたかったんじゃないのか」って聞いたり、妹は専門学校に行きたかったけど学費がなくて行けなかったりとか。お金がないから選択できない人生があるというのは、人生において影響力は少なくないなと思います
大和田:題名の『ハミング・イン・ウォーター』の由来はなんですか?
山下:短大の時にやった芝居で、竹取物語のおじいさんが竹の中から子供拾ってきたって言うんだけど、きっとそれは嘘で、みんなには言えない事情だけど育てなくちゃいけない子供を嘘ついて連れてきたらしくて、その子供を抱きかかえるまでを描く、みたいな作品があったんです。それを、卒業後に再演したいなって考えてた時に『ハミング・イン・バンブー』みたいなことを考えてて
大和田:『ハミング・イン・バンブー』?
山下:はい。ハミングの登場人物たちは生まれてきてすごく大変だって話をしてるんですけど、生まれてくる前の子供はそんなことは分からないじゃないですか。『ハミング・イン・ウォーター』という題名の由来ですが、ウォーターは羊水という意味で、お母さんのお腹の中で子どもは気楽にハミングしてるっていう意味です。気楽でもないんだろうけど、安心してリラックスしていて、大変な状況からは遠い場所にいるという意味
大和田:なるほど。ちなみに、役名の由来はなんですか?
山下:役名は春夏秋冬です。ハル君は春、ミドリは夏、アキラは秋、ユキは冬だから。統一感があるけどみんなバラバラで綺麗だなと思ったから
大和田:では、一人一人のキャスティングについて聞かせて下さい
山下:ハル役の辻さんは、静かそうに見えるけど中では色んなことが起こっていて、派手に何かをするわけではないけど、やるときは大きいこともできるという感じがした。
ミドリ役の阿波屋さんは、単純に立ってるだけで凛としてて、ただずまいが綺麗だし、かつ自分の中には強い意志がありそうという印象でした
大和田:役柄にも随所にそういうシーンがありますよね。アキラについてはどうですか?
山下:アキラ役の藤田は、初演の時ミドリだったんだよね。彼女は物静かな印象の人でめったに声を荒げたりはしないんだけど、その分内に秘めた感情の強さを持ってて、そういう所がナチュラルに出てくれれば良いなと思った
大和田:役者の内面を信じたキャスティングなんですね
山下:あと、ユキ役の東澤さんは、雰囲気の柔らかさですよね。すらっとしてて無駄な所がなくて、風がそよいでいたり、日に照らされるような柔らかさです
大和田:このユキという役ですが、唯一きょうだいの外にいる存在ですよね
山下:そうですね。ユキちゃんはまだ家族じゃないけど、これから家族になりえるし、ハル君に大きく影響を与える存在です。ハル君が自分と親との問題をどういう風に受け入れて、これからどういう家族を作っていくかっていうのに繋がる人だと思う
大和田:この作品のメッセージがあれば教えて下さい
山下:仕方がないっていうのは悪いことじゃない。仕方がなくても生きていかなくちゃだし。何もかも上手くいかなくても人生はあるんだよっていうことですかね
大和田:すごく前向きですね
山下:うん、前向きだなって思った
大和田:作家としては、これからどのようにしたいですか
山下:色んなジャンルの書きたい作品がものすごくたくさんあるので、それをどういう形ででも発表したいです。とにかくやりたいことはいっぱいあるんですけど、時間とか予算がない。でもいつか発表したいですね
大和田:最後に何か一言ありますか?
山下:作品を見てくれた人は、どうもありがとうございました。これからもよろしくお願いします。次のPitychanは今回大事にしてたことを嘲笑うようなことをやるので、是非見に来て下さい
「ハミング・イン・ウォーター」ブログ企画は、
今回で最後になります。
ご覧いただきましてありがとうございました!
今後ともPitymanの活動にご期待下さいませ。
それではまた!



