スタンドバイミー
-69- stand by me (reprise)
「私、そろそろ人生の幕を閉めようと思うの」
いきなりバンドから脱退して会社も辞めたなんて聞いてから、しばらく音沙汰なくて。久しぶりに飲みに行ったら急にそんな話。
「もう、今転落が凄くて、本当に転がる石のよう」
「もう十分生きたから」
まったくボブディランかシナトラみたいな事、本当に言う奴がいるんだからビックリしたよ。
「分かった分かった、たまにこうやって話を聞くからそんな事言うなよ」
今度は別の日に久しぶりにKに逢ってメシを食ってたらさ。
「そろそろ書類送検されて前科が付くかもしれない」
スリランカ人のおでん屋のホムペやら広告を作ってたら、一銭も払わないままのらりくらりで。去年の震災と放射能を理由に国に帰って戻ってこなくて。しょうがないから店のあれこれを売って金に換えて、色々な業者に払ったりしてたんだけど。急に帰って来たら「震災で一時帰国している間に金庫から色々無くなった」って通報されて。
で、逮捕か、事情が分かってるから書類送検か。とにかくトラブって大変なんだって。
「分かったよ。ちゃんと留置所にお土産持って行くから心配するなよ」
大丈夫、ダーリン俺がそばに居てやるから。
夜になってお先真っ暗。
月明かりの中、世界中がヒロシマになっても大丈夫。
ダーリン、俺がそばに居てやるから。
世界中の何処まで行っても何も変わらなかった。町を離れて500マイル、10年とちょっと経ったけど、たとえば1000年経っても変わらないと思う。ずっとこんな調子。
大丈夫だって、全部。なんの心配もいらないぜ。知ってるかな、雨は止むし夜は明けるんだから。みんなそう歌ってる、だから大丈夫なんだ。
大丈夫、絶対に俺が側に居るから。
色々揉めて会社にバンバン電話が来たし、会社を辞めて逃亡する事になっても大丈夫、俺が側に居てやる。
外人に売り上げを騙されて腹が立つし、そいつの持ち物勝手に売って書類送検されても大丈夫、俺が側に居てやるから。
地震で家がぶっ壊れて、食べる物が無くなっても大丈夫、俺がなんか送ってやるし。
FXで逆張りナンピンを4円続けてえらいことなったし両建てする事になっても大丈夫。
何も心配なんていらないんだ。
ずっと追いかけられていて逃げていると思っていたけど違ったんだ。
俺が追って探してるほうなんだ。
ずっとそばに居て欲しいって思ってたけど。これからは俺がそばにいてやるから。 分かっていた事が分からなくなって、あの日から全部思い出した感じ。
殺したいほどむかつく奴なんてそうは居ないぜ、どっかのキチガイなんてどうなろうと知ったこっちゃない。
この間、電話が来たんだ「娘が車に轢かれてあなたの名刺をもらって、あとで電話してって言われて帰ってきた」って。俺の名刺なんて100枚しか無いし余ってるぐらいなんだけど、その100人のウチの誰かが相当なクズでさ。人を轢いておいて俺の名刺を出したみたい。
そんな奴、そこら中に居るんだろうな。構ってたらキリがないぜ。
そうだね、色々あったし、色々あるし。どうにも成らない絶望とか。
「最近全然飲まなくなった」
あぁ、そうなんだ。また寄ったら今度はクライミングに付き合うから。あぁ忘れてた。色々忘れてた。
なんか言わないといけない事が沢山あった気がしたんだけれど、鉄板の上のバターみたいに溶けて行った。頭をグルグル回しすぎて虎のバターみたいになっちまった。
そうだ、また遭う時までグチを貯めておくよ。それと色々な国や音楽の事。やり切れない事を貯めておくから。その後でまた笑えたらいい。
何も無くしたくない。もう十分持っている。俺が内野も外野もやってやるからもう死にたいなんて言うなよ。ピッチャーでもキャッチャーでも何でもやってやるから。
分かんなかった事とか、出なかった答えとか、意味とか、憤りとか。
どうでも良くなったかもしれない。それってどうでも良い事だったのかもしれない。
全部嘘だけど。
でもちょっとでも信じていてくれよ。そう言う嘘つきが居るんだって。そしたら気まぐれでひょっこりやって来るかもしれない。だからちょっとだけ思い出してくれたらいい。大丈夫。俺がstand by your sideしてやるから。
そんな事言ったら笑われるんだろ、嘘ばかりだって。でもいいんだ。信じてくれよ。
雨なんて降るはずがない。でかい当たりを掴んでしまった。世界を変えてしまうかもしれない。
この間、ライブの途中で山田さんに遭ったんだ。何回か、山田さんのお店に飲みに行った時に話した程度なんだけど、憶えてくれていた。ガンになっちゃって入院してたんだって。で、ちょっと出てきたんだけどまた戻ってしまって、でもまた出てきたから今度飲みに行くんだけど。
最近はクライミングばっかりしてる。越えられない壁を登るんだ。 今度は知らない町をバスで走ってた時の話をするよ。雲の中に突っ込んで雨の町に降りたんだ。あれは凄かった、思考がぶっ飛んで真っ白になった。そんな事をずっと探してる。そんな間に全部終わればいい。死ぬのが怖いから。でも俺だけは死ぬなんて思ってないし、あいつもひょっこりその辺で生きてる気がする。大分音沙汰ないけれどさ、Oとか。嘘が現実に。嘘を突き通すんだ。デタラメの途中でもしも死んでしまったら、志半ばで。
ずっと俺が守ってやるけど、もしも途中で死んでしまったらそれはしょうがないだろ。出来るだけ長生きするから。間に合わなくてもアセるなよ、人生は多分長いから。だから騙された振りでもいいから信じてよ。必らず守るから。その日までグチでも貯めておけよ。色々あるから。色々な話をしよう。
多分、出来るだけ時間を開けた方がいい。そんな気がする。
ダーリンスタンバイミー。
ノーノットアットオール。
きっとこの先も似たような事があって。でも俺にとっちゃあそのちょっと差は重要で、でもそれってあいつから聞いたのと似たような話だったり、何処にでもある話だったり。
この先の結末はテレビやなんかで見たことあるけれど、俺にとっては俺だけの特別製なんだ。それを待ってる。だまってても開く扉を、わざわざ開ける必要なんて無いし。出来るだけ楽しくやろうぜ、大丈夫。俺がいつだって、そばに居るんだから。
くどいからこの辺でやめておくよ。
どうせ、あんたにとっちゃあ、その辺の話さ。
誰だって一緒で、俺にだけ特別な話さ。
もしも何処かであったら、あんたの話を聞かせてくれよ。
似たような話なんだろうけど、俺ってそう言う話を聞くのが好きなのかもしれないな。少し話し過ぎた気もするけれど。
ちょっとそこのコンビニでボール買ってくるから待っといてよ。でも最近じゃあボール一つ買うのもままならない。ホントやんなっちゃう。ちょっと探してくるから待っててよ。
必ず行くから。人を集めてキャッチボールしよう。
思い切り遠くまでボールを投げるから。
お前ら全員キャッチャーにしてやるから。
その一番最初は、お前にまかせるから。
ーおわりー
「私、そろそろ人生の幕を閉めようと思うの」
いきなりバンドから脱退して会社も辞めたなんて聞いてから、しばらく音沙汰なくて。久しぶりに飲みに行ったら急にそんな話。
「もう、今転落が凄くて、本当に転がる石のよう」
「もう十分生きたから」
まったくボブディランかシナトラみたいな事、本当に言う奴がいるんだからビックリしたよ。
「分かった分かった、たまにこうやって話を聞くからそんな事言うなよ」
今度は別の日に久しぶりにKに逢ってメシを食ってたらさ。
「そろそろ書類送検されて前科が付くかもしれない」
スリランカ人のおでん屋のホムペやら広告を作ってたら、一銭も払わないままのらりくらりで。去年の震災と放射能を理由に国に帰って戻ってこなくて。しょうがないから店のあれこれを売って金に換えて、色々な業者に払ったりしてたんだけど。急に帰って来たら「震災で一時帰国している間に金庫から色々無くなった」って通報されて。
で、逮捕か、事情が分かってるから書類送検か。とにかくトラブって大変なんだって。
「分かったよ。ちゃんと留置所にお土産持って行くから心配するなよ」
大丈夫、ダーリン俺がそばに居てやるから。
夜になってお先真っ暗。
月明かりの中、世界中がヒロシマになっても大丈夫。
ダーリン、俺がそばに居てやるから。
世界中の何処まで行っても何も変わらなかった。町を離れて500マイル、10年とちょっと経ったけど、たとえば1000年経っても変わらないと思う。ずっとこんな調子。
大丈夫だって、全部。なんの心配もいらないぜ。知ってるかな、雨は止むし夜は明けるんだから。みんなそう歌ってる、だから大丈夫なんだ。
大丈夫、絶対に俺が側に居るから。
色々揉めて会社にバンバン電話が来たし、会社を辞めて逃亡する事になっても大丈夫、俺が側に居てやる。
外人に売り上げを騙されて腹が立つし、そいつの持ち物勝手に売って書類送検されても大丈夫、俺が側に居てやるから。
地震で家がぶっ壊れて、食べる物が無くなっても大丈夫、俺がなんか送ってやるし。
FXで逆張りナンピンを4円続けてえらいことなったし両建てする事になっても大丈夫。
何も心配なんていらないんだ。
ずっと追いかけられていて逃げていると思っていたけど違ったんだ。
俺が追って探してるほうなんだ。
ずっとそばに居て欲しいって思ってたけど。これからは俺がそばにいてやるから。 分かっていた事が分からなくなって、あの日から全部思い出した感じ。
殺したいほどむかつく奴なんてそうは居ないぜ、どっかのキチガイなんてどうなろうと知ったこっちゃない。
この間、電話が来たんだ「娘が車に轢かれてあなたの名刺をもらって、あとで電話してって言われて帰ってきた」って。俺の名刺なんて100枚しか無いし余ってるぐらいなんだけど、その100人のウチの誰かが相当なクズでさ。人を轢いておいて俺の名刺を出したみたい。
そんな奴、そこら中に居るんだろうな。構ってたらキリがないぜ。
そうだね、色々あったし、色々あるし。どうにも成らない絶望とか。
「最近全然飲まなくなった」
あぁ、そうなんだ。また寄ったら今度はクライミングに付き合うから。あぁ忘れてた。色々忘れてた。
なんか言わないといけない事が沢山あった気がしたんだけれど、鉄板の上のバターみたいに溶けて行った。頭をグルグル回しすぎて虎のバターみたいになっちまった。
そうだ、また遭う時までグチを貯めておくよ。それと色々な国や音楽の事。やり切れない事を貯めておくから。その後でまた笑えたらいい。
何も無くしたくない。もう十分持っている。俺が内野も外野もやってやるからもう死にたいなんて言うなよ。ピッチャーでもキャッチャーでも何でもやってやるから。
分かんなかった事とか、出なかった答えとか、意味とか、憤りとか。
どうでも良くなったかもしれない。それってどうでも良い事だったのかもしれない。
全部嘘だけど。
でもちょっとでも信じていてくれよ。そう言う嘘つきが居るんだって。そしたら気まぐれでひょっこりやって来るかもしれない。だからちょっとだけ思い出してくれたらいい。大丈夫。俺がstand by your sideしてやるから。
そんな事言ったら笑われるんだろ、嘘ばかりだって。でもいいんだ。信じてくれよ。
雨なんて降るはずがない。でかい当たりを掴んでしまった。世界を変えてしまうかもしれない。
この間、ライブの途中で山田さんに遭ったんだ。何回か、山田さんのお店に飲みに行った時に話した程度なんだけど、憶えてくれていた。ガンになっちゃって入院してたんだって。で、ちょっと出てきたんだけどまた戻ってしまって、でもまた出てきたから今度飲みに行くんだけど。
最近はクライミングばっかりしてる。越えられない壁を登るんだ。 今度は知らない町をバスで走ってた時の話をするよ。雲の中に突っ込んで雨の町に降りたんだ。あれは凄かった、思考がぶっ飛んで真っ白になった。そんな事をずっと探してる。そんな間に全部終わればいい。死ぬのが怖いから。でも俺だけは死ぬなんて思ってないし、あいつもひょっこりその辺で生きてる気がする。大分音沙汰ないけれどさ、Oとか。嘘が現実に。嘘を突き通すんだ。デタラメの途中でもしも死んでしまったら、志半ばで。
ずっと俺が守ってやるけど、もしも途中で死んでしまったらそれはしょうがないだろ。出来るだけ長生きするから。間に合わなくてもアセるなよ、人生は多分長いから。だから騙された振りでもいいから信じてよ。必らず守るから。その日までグチでも貯めておけよ。色々あるから。色々な話をしよう。
多分、出来るだけ時間を開けた方がいい。そんな気がする。
ダーリンスタンバイミー。
ノーノットアットオール。
きっとこの先も似たような事があって。でも俺にとっちゃあそのちょっと差は重要で、でもそれってあいつから聞いたのと似たような話だったり、何処にでもある話だったり。
この先の結末はテレビやなんかで見たことあるけれど、俺にとっては俺だけの特別製なんだ。それを待ってる。だまってても開く扉を、わざわざ開ける必要なんて無いし。出来るだけ楽しくやろうぜ、大丈夫。俺がいつだって、そばに居るんだから。
くどいからこの辺でやめておくよ。
どうせ、あんたにとっちゃあ、その辺の話さ。
誰だって一緒で、俺にだけ特別な話さ。
もしも何処かであったら、あんたの話を聞かせてくれよ。
似たような話なんだろうけど、俺ってそう言う話を聞くのが好きなのかもしれないな。少し話し過ぎた気もするけれど。
ちょっとそこのコンビニでボール買ってくるから待っといてよ。でも最近じゃあボール一つ買うのもままならない。ホントやんなっちゃう。ちょっと探してくるから待っててよ。
必ず行くから。人を集めてキャッチボールしよう。
思い切り遠くまでボールを投げるから。
お前ら全員キャッチャーにしてやるから。
その一番最初は、お前にまかせるから。
ーおわりー
ドブネズミの詩
-68- be nice
年末の二十九か三十に帰るんだけど、途中寄ったら都合どう?一泊しようかと思ってるんだけど」
来月のシフト出来たらメールするよ1日休み取るから観光案内するよ
三十日は仕事で東京行くので二十九日でお願いします。
家には流石に泊められないけど、ホテル取るなら夜飯おごるよ
「了解。懐かしいわー。城の売店でボンカレー喰って吐いたわ。また連絡します」
駅?空港?着く時間わかったら連絡下さい。お向かいに行きます。
我らのAが来年結婚するらしいよ
「駅だね。Aも偉くなったな。また連絡します」
「二十九日13時40分着で取ったしよろしく」
了解。13時まで仕事するから間に合わなかったら連絡するから駅で時間潰しててよろしく。

俺の大事な時間がボロボロとこぼれてく、でも気にする事は無いんだ、次から次へと溢れるんだから。大切な物がどんどん無くなっていくんだけど、ホラ、あれみたいだよ、ナイアガラじゃなくてさ、ブラジルとの国境にある奴。なんだっけな、滝の名前なんだけど。あれみたいに恵みの雨か、水だって枯れる訳じゃない。どんどん溢れるんだから気にする事なんて無いんだ。
一生忘れられない事なんて、あるのかな。いや、俺の事じゃなくて。
俺は何だって忘れちゃいない。何一つでさえも覚えてる、俺にとってはどんなささいな事だって「一生忘れられない」のさ。
だから、そんな大事なあれこれを忘れる奴なんて許せないんだ。
どんどん無くなって行くんだから。
いつまでもあるなんて思っちゃダメなんだ。
とにかく、あいつとの約束をさ。いや、あいつの彼女だったっけな、良い子だった。嫁の方じゃないよ、実の所嫁には何回かしか逢った事はないから。そう、あの子の約束だったっけ。でもあの約束はどうやら守れそうにもないんだ。
いつまで経っても進めやしない。壁か溝か、何を怖がってるんだか。進めなくなっていてさ、
後ろを見たらなんだか。あぁそうか。あれが足を引っ張ってるだけだったんだ。
あれ「あの頃」って奴さ。
そいつの首の根を押さえてさ。
実際、その後どうしようってのは考えてないんだ。首を折るのか、心臓を。弾丸を。とにかく前に進むんだ。
そのあとで、何をするんだろう。このあと。「今」の後。
あと何秒か後、明日は。一年後。三月のあの日とか、四月のあの日とか。
一体何をしてるんだろう。
やっぱり時間てのは果てがないんだ。俺が果てるまでさ。そこで全部終わりなんだ。
なんだか頭が回らなくて色々な物を忘れた。親父のためのパソコンも、ベトナムのお土産も、ハーモニカも。気がついたら服が裏返しだし、トイレで着直して。富士山を見た。いつもよりもちゃんと。列車からだといつも見逃してしまうけど。その後で東京で乗り換えをして、気がついたら福島だった。
二本松のあたり。別に変わり映えのない、ちょっと雪の普通の町だった。

やっぱりここは懐かしい。子供の頃に、最初に遠くまで来たのはここだった。その後で自転車で一番遠くまで来たのもここだ。でも全然覚えてもないけれど。なんて言うか、街並みが。ここも地震はあったんだろうけど、壊れて直したのか、ただ単にボロいのか。
とりあえずハーモニカが無いのは致命的なんだ。だから近所の楽器屋で一本「C」の奴を買う。飛び切りの一本を。一番オーソドックな奴。
こいつをぶち込んでやるのさ。

立体の歩道橋の下で十年振りに逢った。会社のだっていう大きい、六人ぐらい乗れる、家族っぽい車。スーツでメガネで、なんだかただのデブだって聞いていたけれど、全然変わらなかった。たぶん俺もだ。
とりあえず何処に行きたい?何処に行くって言っても、見る場所なんてそんなに無いだろ。ちょっと車で松島まで行ってみようか。昔、Yと電車で来た事があるよ。お前が余った18切符をくれてさ。それで。

途中の町はやけに平地が多い。この辺も家が流されてさら地にしたの?いや、たぶん海水で畑も田んぼも使えなくなってるだけだと思うよ。
あぁ、そうか。
で、どうだった。地震は。そう言えば社長になったらしいじゃない。
社長って言っても持ち回りで何年かずつ経験積むみたいなもんだし。うちの会社は一つ流されて無くなって、一つは原発の近くにあって近寄れない。店に中国人がトラックを着けてさ、中身を全部積んで行くんだ。そこを歩いてる警察に止めさせろって言っても聞いてくれない。それどころじゃないって。そりゃあそうなんだけど。
夜中に店が強奪されそうになるから、電気もみんな止まってる中、入口にバリケード作って、竹やり作って見回ってたよ。使わなかったけど。店を開けたら滅茶苦茶で、客がひどくて。この国とか、このエリアの人間は礼儀正しいとか真面目とか、美徳を語るけど、あれは嘘さ。はじめて客に「殺すぞ」って言った。それ以上近づいたら殺すって。

松島も人が居ないね、この年末にさ。
水族館は復旧したはずだよ、せっかくだし瑞巌寺とか蚶満寺(あれはこの辺じゃないか)とか、五大堂とか見て。なんだかパネルとか貼ってあるけど、凄い所まで津波が来てる。そりゃあそうだ。こんな綺麗な海の側なんだから。
お参りして、そこで売ってる牡蠣を食った。今年は魚も貝もやたらに大きいらしい。凄く美味かった。

原発のせいで立ち入り禁止になった店にさ、金を取りに行ったんだ。普通なら近付けないんだけど、迷彩柄の雨具が二着あってさ、それで会社のヤツと二人で、放射能のカウンターを持って。勘違いしたんだか、自衛隊が敬礼して道を開けてくれた。ゴーストタウンで、気味が悪かった、でもなんか凄かった。
金庫の金だけ集めに行ったんだけど、レジとか中身はもう盗られてた。その後で一時帰宅の時に他の社員が見に行ってさ。金庫も全部やられてましたって言うんだけど、いや、あれは俺が持って来たし大丈夫って。

石巻はあんまり来ないけど、まだ全然だね、まだ漁船が打ち上げられてるし、車があんなに。
壁みたいになってる。あれなんかもう、瓦礫のピラミッドみたいだぜ。
なんだか知らないけれど、やたらに烏が多い。

そういえばお前はピラミッド見た事あるんだろ?
そうだね、色々行ったし。地球を一周したから。
あの時に最後に逢ったんだっけ。
いや、あれは出発も迎えもお前は来なかったし。お前の結婚式以来だぜ、もう十年だ。
どうだった、旅行。
ムービーがあるからまた見せるよ。そうだ、あのライブハウスでライブもしたんだ、それも見せるよ。そう言えばハーモニカがあるしちょっと吹かせてよ。帰ったら向かいのお婆さんとセッションするんだ。お前は楽器も全部売ったんだろ?ギブソンもキーボードも。
「どうだった?世界一周」
「ただの観光だよ」
今思えばね。

お前はそう言えばアメリカで仕事してなかったっけ?いや、研修みたいなのがあるし行くだけだ。シスコとかあの辺。
このあいだ「町」に帰ったんだけどさ。あいつは結婚して、あいつは子供が出来て。あいつは離婚したんだって。子供が三人も居るのに。
あいつとは話が合ったけど、あいつは全然ダメだった。何が面白いんだか、変な話。
地震で、俺の会社は誰も死ななかったんだ。その家族は色々だけど、従業員は大丈夫で。家が流されたから本部の会議室に家族を住ませてやったりとか。知り合いも色々。でも泣いてさ、それだけの奴はもう駄目だと思う。もう無理だ。

お前が荷物を色々送ってくれてた時が一番モノが無かった。全部東京に持っていかれる。物流が全部東京で止まって盗られるんだ。値段が馬鹿みたいに上がるし、生まれたばかりの子供の食べ物がさ、ヨーグルトとか。だからありがたかった。

その礼で飯を奢ってくれるって言うから期待してたんだけど、リキューで牛タンの定食だった。普通の値段だぜ、ちょっと期待が外れたよ。だから持ち帰りのタンとか色々買わせてやった。それでも全部で一万円ぐらい。社長って儲かるんじゃないの?
こんなもんだぜ。
今さ、社長のうちに金をどうにか出来ないのかな、今なら横領して逃げたりとか。町にジムを作ったりとか。
お前の仕事をみんなで受け持ってキックにバックとか。
まぁ、色々出来そうだけど、いつまでやらせてもらえるか分からないし。横領して捕まってる奴も居たな。
「いつかなんかやろうよ、お前に金があるうちに。考えとくよ」

最近裁判ばかり。
夜中に馬鹿が駐車場に侵入しようとして、入り口のロープに躓いて転んで怪我したから慰謝料払えとか。それってどっちが悪いんだか。頭が可笑しいぜ、対応が悪いだとか。本当に色々。
駅のこんな近くにカセツがあっさ、どうかと思うぜ。絆だなんだって、ここでこの間トラブって人殺しとかあるし。壁に変な絵描きはじめて、誰も何も言えないし。勝手な奴も居るんだよな。
まぁ、あれだ。現実とか実態とか、テレビも雑誌も、みんなそれぞれだよ。
家は大丈夫だったんだけど、避難だ補助金だで訳の分からない奴が住みはじめてさ、結構なマンションなんだけど。治安も悪くなったし。
まぁ、なんとかやってる。
今日は楽しかった。次はAの結婚式かな、呼ばれて無いんだけど。
また。
そのままちょっと会社に行くみたいだった。
明日も仕事なんだって。

次の朝。
昔野宿をしてた所を見に行ったら、汚いしなんかそこだけ囲われてて笑えた。
こんな所で寝てたんだぜ。

夕方まで時間が空いたし、バスで青葉城。列車は線路が流されて不便らしい。

全然覚えてなかったけれど、城なんか無かった。

ハマースミス宮殿みたいだぜ、ハマースミスに行っても宮殿なんか無いんだ。そんな感じ。

雪が積もっていて。町が見渡せて。
寒くてすぐに戻ったけど。お土産を足して列車に乗って北。雪で遅れて着いたのは夜中だった。

親父もお袋も元気だった。
兄貴も姉さんも、子供たちも。
手紙を貰ったんだ。
「また一緒に遊ぼうね」
「こんどはいつ帰ってくるかな」
「またWiiしようね」
久しぶりにタワーに登ってみたけれど。
綺麗な町だった。

向かいのおばさんと、娘さんと子供が帰ってきていて、エレキドラムとハーモニカでセッションしたけど散々だった。

ひなたに妹が生まれてた。
飼ってた犬は星になっていた。
ひなたの手紙はこんなだった。
みえるとこはみえる
みんなでそらをみようね
そしてみんなでいます
なんでもできます
あいてはいいな
ほんとにいいな
ひなただいすきだよ
ひなたより
もう本当に参っちゃうよな、こんなの。ワケが分からないぜ、こんな小さな子供からさ。いつのまに字を書けるようになったんだか。泣いたり笑ったり忙しくてやんなっちゃう。





いつも通りの「町」から「街」へ。
年末の二十九か三十に帰るんだけど、途中寄ったら都合どう?一泊しようかと思ってるんだけど」
来月のシフト出来たらメールするよ1日休み取るから観光案内するよ
三十日は仕事で東京行くので二十九日でお願いします。
家には流石に泊められないけど、ホテル取るなら夜飯おごるよ
「了解。懐かしいわー。城の売店でボンカレー喰って吐いたわ。また連絡します」
駅?空港?着く時間わかったら連絡下さい。お向かいに行きます。
我らのAが来年結婚するらしいよ
「駅だね。Aも偉くなったな。また連絡します」
「二十九日13時40分着で取ったしよろしく」
了解。13時まで仕事するから間に合わなかったら連絡するから駅で時間潰しててよろしく。

俺の大事な時間がボロボロとこぼれてく、でも気にする事は無いんだ、次から次へと溢れるんだから。大切な物がどんどん無くなっていくんだけど、ホラ、あれみたいだよ、ナイアガラじゃなくてさ、ブラジルとの国境にある奴。なんだっけな、滝の名前なんだけど。あれみたいに恵みの雨か、水だって枯れる訳じゃない。どんどん溢れるんだから気にする事なんて無いんだ。
一生忘れられない事なんて、あるのかな。いや、俺の事じゃなくて。
俺は何だって忘れちゃいない。何一つでさえも覚えてる、俺にとってはどんなささいな事だって「一生忘れられない」のさ。
だから、そんな大事なあれこれを忘れる奴なんて許せないんだ。
どんどん無くなって行くんだから。
いつまでもあるなんて思っちゃダメなんだ。
とにかく、あいつとの約束をさ。いや、あいつの彼女だったっけな、良い子だった。嫁の方じゃないよ、実の所嫁には何回かしか逢った事はないから。そう、あの子の約束だったっけ。でもあの約束はどうやら守れそうにもないんだ。
いつまで経っても進めやしない。壁か溝か、何を怖がってるんだか。進めなくなっていてさ、
後ろを見たらなんだか。あぁそうか。あれが足を引っ張ってるだけだったんだ。
あれ「あの頃」って奴さ。
そいつの首の根を押さえてさ。
実際、その後どうしようってのは考えてないんだ。首を折るのか、心臓を。弾丸を。とにかく前に進むんだ。
そのあとで、何をするんだろう。このあと。「今」の後。
あと何秒か後、明日は。一年後。三月のあの日とか、四月のあの日とか。
一体何をしてるんだろう。
やっぱり時間てのは果てがないんだ。俺が果てるまでさ。そこで全部終わりなんだ。
なんだか頭が回らなくて色々な物を忘れた。親父のためのパソコンも、ベトナムのお土産も、ハーモニカも。気がついたら服が裏返しだし、トイレで着直して。富士山を見た。いつもよりもちゃんと。列車からだといつも見逃してしまうけど。その後で東京で乗り換えをして、気がついたら福島だった。
二本松のあたり。別に変わり映えのない、ちょっと雪の普通の町だった。

やっぱりここは懐かしい。子供の頃に、最初に遠くまで来たのはここだった。その後で自転車で一番遠くまで来たのもここだ。でも全然覚えてもないけれど。なんて言うか、街並みが。ここも地震はあったんだろうけど、壊れて直したのか、ただ単にボロいのか。
とりあえずハーモニカが無いのは致命的なんだ。だから近所の楽器屋で一本「C」の奴を買う。飛び切りの一本を。一番オーソドックな奴。
こいつをぶち込んでやるのさ。

立体の歩道橋の下で十年振りに逢った。会社のだっていう大きい、六人ぐらい乗れる、家族っぽい車。スーツでメガネで、なんだかただのデブだって聞いていたけれど、全然変わらなかった。たぶん俺もだ。
とりあえず何処に行きたい?何処に行くって言っても、見る場所なんてそんなに無いだろ。ちょっと車で松島まで行ってみようか。昔、Yと電車で来た事があるよ。お前が余った18切符をくれてさ。それで。

途中の町はやけに平地が多い。この辺も家が流されてさら地にしたの?いや、たぶん海水で畑も田んぼも使えなくなってるだけだと思うよ。
あぁ、そうか。
で、どうだった。地震は。そう言えば社長になったらしいじゃない。
社長って言っても持ち回りで何年かずつ経験積むみたいなもんだし。うちの会社は一つ流されて無くなって、一つは原発の近くにあって近寄れない。店に中国人がトラックを着けてさ、中身を全部積んで行くんだ。そこを歩いてる警察に止めさせろって言っても聞いてくれない。それどころじゃないって。そりゃあそうなんだけど。
夜中に店が強奪されそうになるから、電気もみんな止まってる中、入口にバリケード作って、竹やり作って見回ってたよ。使わなかったけど。店を開けたら滅茶苦茶で、客がひどくて。この国とか、このエリアの人間は礼儀正しいとか真面目とか、美徳を語るけど、あれは嘘さ。はじめて客に「殺すぞ」って言った。それ以上近づいたら殺すって。

松島も人が居ないね、この年末にさ。
水族館は復旧したはずだよ、せっかくだし瑞巌寺とか蚶満寺(あれはこの辺じゃないか)とか、五大堂とか見て。なんだかパネルとか貼ってあるけど、凄い所まで津波が来てる。そりゃあそうだ。こんな綺麗な海の側なんだから。
お参りして、そこで売ってる牡蠣を食った。今年は魚も貝もやたらに大きいらしい。凄く美味かった。

原発のせいで立ち入り禁止になった店にさ、金を取りに行ったんだ。普通なら近付けないんだけど、迷彩柄の雨具が二着あってさ、それで会社のヤツと二人で、放射能のカウンターを持って。勘違いしたんだか、自衛隊が敬礼して道を開けてくれた。ゴーストタウンで、気味が悪かった、でもなんか凄かった。
金庫の金だけ集めに行ったんだけど、レジとか中身はもう盗られてた。その後で一時帰宅の時に他の社員が見に行ってさ。金庫も全部やられてましたって言うんだけど、いや、あれは俺が持って来たし大丈夫って。

石巻はあんまり来ないけど、まだ全然だね、まだ漁船が打ち上げられてるし、車があんなに。
壁みたいになってる。あれなんかもう、瓦礫のピラミッドみたいだぜ。
なんだか知らないけれど、やたらに烏が多い。

そういえばお前はピラミッド見た事あるんだろ?
そうだね、色々行ったし。地球を一周したから。
あの時に最後に逢ったんだっけ。
いや、あれは出発も迎えもお前は来なかったし。お前の結婚式以来だぜ、もう十年だ。
どうだった、旅行。
ムービーがあるからまた見せるよ。そうだ、あのライブハウスでライブもしたんだ、それも見せるよ。そう言えばハーモニカがあるしちょっと吹かせてよ。帰ったら向かいのお婆さんとセッションするんだ。お前は楽器も全部売ったんだろ?ギブソンもキーボードも。
「どうだった?世界一周」
「ただの観光だよ」
今思えばね。

お前はそう言えばアメリカで仕事してなかったっけ?いや、研修みたいなのがあるし行くだけだ。シスコとかあの辺。
このあいだ「町」に帰ったんだけどさ。あいつは結婚して、あいつは子供が出来て。あいつは離婚したんだって。子供が三人も居るのに。
あいつとは話が合ったけど、あいつは全然ダメだった。何が面白いんだか、変な話。
地震で、俺の会社は誰も死ななかったんだ。その家族は色々だけど、従業員は大丈夫で。家が流されたから本部の会議室に家族を住ませてやったりとか。知り合いも色々。でも泣いてさ、それだけの奴はもう駄目だと思う。もう無理だ。

お前が荷物を色々送ってくれてた時が一番モノが無かった。全部東京に持っていかれる。物流が全部東京で止まって盗られるんだ。値段が馬鹿みたいに上がるし、生まれたばかりの子供の食べ物がさ、ヨーグルトとか。だからありがたかった。

その礼で飯を奢ってくれるって言うから期待してたんだけど、リキューで牛タンの定食だった。普通の値段だぜ、ちょっと期待が外れたよ。だから持ち帰りのタンとか色々買わせてやった。それでも全部で一万円ぐらい。社長って儲かるんじゃないの?
こんなもんだぜ。
今さ、社長のうちに金をどうにか出来ないのかな、今なら横領して逃げたりとか。町にジムを作ったりとか。
お前の仕事をみんなで受け持ってキックにバックとか。
まぁ、色々出来そうだけど、いつまでやらせてもらえるか分からないし。横領して捕まってる奴も居たな。
「いつかなんかやろうよ、お前に金があるうちに。考えとくよ」

最近裁判ばかり。
夜中に馬鹿が駐車場に侵入しようとして、入り口のロープに躓いて転んで怪我したから慰謝料払えとか。それってどっちが悪いんだか。頭が可笑しいぜ、対応が悪いだとか。本当に色々。
駅のこんな近くにカセツがあっさ、どうかと思うぜ。絆だなんだって、ここでこの間トラブって人殺しとかあるし。壁に変な絵描きはじめて、誰も何も言えないし。勝手な奴も居るんだよな。
まぁ、あれだ。現実とか実態とか、テレビも雑誌も、みんなそれぞれだよ。
家は大丈夫だったんだけど、避難だ補助金だで訳の分からない奴が住みはじめてさ、結構なマンションなんだけど。治安も悪くなったし。
まぁ、なんとかやってる。
今日は楽しかった。次はAの結婚式かな、呼ばれて無いんだけど。
また。
そのままちょっと会社に行くみたいだった。
明日も仕事なんだって。

次の朝。
昔野宿をしてた所を見に行ったら、汚いしなんかそこだけ囲われてて笑えた。
こんな所で寝てたんだぜ。

夕方まで時間が空いたし、バスで青葉城。列車は線路が流されて不便らしい。

全然覚えてなかったけれど、城なんか無かった。

ハマースミス宮殿みたいだぜ、ハマースミスに行っても宮殿なんか無いんだ。そんな感じ。

雪が積もっていて。町が見渡せて。
寒くてすぐに戻ったけど。お土産を足して列車に乗って北。雪で遅れて着いたのは夜中だった。

親父もお袋も元気だった。
兄貴も姉さんも、子供たちも。
手紙を貰ったんだ。
「また一緒に遊ぼうね」
「こんどはいつ帰ってくるかな」
「またWiiしようね」
久しぶりにタワーに登ってみたけれど。
綺麗な町だった。

向かいのおばさんと、娘さんと子供が帰ってきていて、エレキドラムとハーモニカでセッションしたけど散々だった。

ひなたに妹が生まれてた。
飼ってた犬は星になっていた。
ひなたの手紙はこんなだった。
みえるとこはみえる
みんなでそらをみようね
そしてみんなでいます
なんでもできます
あいてはいいな
ほんとにいいな
ひなただいすきだよ
ひなたより
もう本当に参っちゃうよな、こんなの。ワケが分からないぜ、こんな小さな子供からさ。いつのまに字を書けるようになったんだか。泣いたり笑ったり忙しくてやんなっちゃう。





いつも通りの「町」から「街」へ。
真昼の子供たち
-67- dancing in the moonlight
気がついたら九月どころか十月も十一月も終わっていてもう十二月だってさ、笑えない。いつものクリスマスネオンは地震からこっちの節電で大人しいし、日によっちゃあまだ暖かい日もあるけれど、まぁ冬らしくなってきた。眠くて眠くて、寒いし炬燵でコロコロしていたらさ、猫みたいに。あぁ、あの猫は前ほど遊びに来なくなったけれど。
とにかく、九月が終わった事をきっかけに俺は目覚めたんだ。目覚めてみたらなんだこの世界は。
あの頃のまっただ中から見たらもう完全に死んじまってるし、今振り返ってもやっぱり死んでしまった方がいいような奴なのさ。ラジオから流れる糞みたいな歌謡曲にウンザリしながら。いや、でもこれが今のロックって奴なんだ多分。俺が知ってるのはもうオールディーズで今はこれがロックなんだよ。変わって行くんだ、死んでしまったとかじゃなく。

そんな事分かってる、全部。内から外からの変化に板挟みで、ただしっくりこないだけ。テトリスのブロックを段違いに積んでるみたい。ジェンガを上から外していくみたい。グレーのオセロをヒックリ返してく。
分からない。全然意味が分からねぇよ。空っぽの日もあったり、普通に生きてるけれど、その普通ってのがもう、あの頃から見たら死んでるも同然なんだろうな。
捨てたハズのゴミで一杯、脚がもつれちまう。胸の中を探ってドル箱を漁ってる。これから何を探して行こう。

雨だってのとついでに、冬の間からずっと傷めてた指を完治させようってのでジムには行ってない。それでも指の運動でちょっとギターを弾いてみたらやっぱり違和感があって痛かったけど、週末には大分治って来てた。バレーコードはイケるけど、ローコードのDなんか押さえると窮屈で関節が痛いし。まぁ適当にデイトリッパーとか、COW5とか。なんとなく懐かしくてインマイライフなんか弾いてさ、色々思い出すよ。浮かんでは消える歌があるんだ、まるで夢みたいに最高で、でもすぐに忘れる。でも確かに最高で。

なんとなくテレビ。電話のCMにシドのマイウェイが使われてる。なんだこりゃ。アイアムレジェンドを見てたんだ、映画館にも見に行った、いつだか忘れたけれど。セントラルパークの横にある美術館ってなんだっけ。Momaじゃなかったような。あそこのエジプトゾーンで釣りしたり、ゴッホとか家に飾ったりしてる。ニューヨークが懐かしい。あれ、なんて美術館だっけ。行った事がある場所が流れると楽しいよ。
この間の旅行でパクられた電話の保険が九割おりた。はじめてWindowsで仕事してるけど無茶苦茶面倒臭い。慣れなくて。新しい事がしっくりこないんだ。バックミラーばっかり見てるから、危なくて前に進めやしない。

ふと、朝起きたら借金が全部無くなってた、うっすら覚えてるのはこの間のカイニューで全部チャラになったあげくお釣りが来たって事。でもなんだか白けちゃって宴会をやろうなんて感じではなかったけど。一晩でぶっ飛んだ百万円を回収するのに三ヶ月かかった。やっとだぜ、ここから金を貯めて、売り払った魂を買い戻すんだ、この星そっくり買い取る位な。最近はツキがさ、ついてる。この間はピルクルLife+2週間分プレゼントキャンペーンが当たった。この調子でどんどん儲けようってやってんだけど20万より稼いだら税金がかかるらしくて、中途半端でムカつくから途中でやめておいた。
弊社の社長がリースのBMWの値段を「ユーロ安」だから値切りはじめた。もう乗るなよな。ギリシャがクソすぎて半日で出国したけど、今じゃあ世界中が俺と同意見みたいだ。あのクソみたいな国のせいで儲かってしょうがないんだけど。

裏通りに猫が9匹いるらしい。遠い親戚の兄ちゃんのドラムがラジオから聞こえる。そうそう、親戚が、ドラム叩いてるんだ、メジャーなんだよ。そんな事言った事あったっけ。
ジョブズが死んでしまった。ガンだったんだって。
「残りの人生も砂糖水を売りつづけたいかい?それとも僕と一緒に世界を変えたいかい?」
どっちにしろあいつと一緒に仕事をする事は無かっただろうけど。金稼ぎのツールは全部あいつの会社のを使ってるから、世話にはなってた。最初のiMacを買った事をきっかけに今の仕事について、iPhoneをきっかけにFXを始めた。エジソンの発明品が俺にドアを見せてくれる。
BIG CATにG.loveを見に行く。スペシャルソースのベースが別の人だったけど良かった。Tシャツをゲット。この間の夜は酒蔵に竹中直人を見に行った。
忙しくて還暦祝いが危うかったけど、行けて良かった。赤いダウンにスニーカーで、バラを咥えて楽しそうだったよ。年末の麗蘭に行ってみたいけどいつも帰省するし。色々見てみたいけど。

とにかく煩わしい事で忙しくて、ペースが悪いし慣れないし、なんだか晴れないんだ、冬ってのはこんな感じだったかな。関取みたいなデブがチャリで走りながらなんか道路に捨てたと思って、後で見たらチーズ蒸しパン(半分)だった。意味が分からなかった。フルーツを沢山貰って面倒だからミキサーを買ってジュースにしてる。別に欲しい物なんてそんなに無いのさ。たまに思いついてミキサーなんて買うけれど、酒もタバコもやらないし。ギャンブルもしないし、でも世界を征服する程はまだ稼げてない。

チキショウ、カフェインが切れて仕事にならねぇ。この間、漫画を買ったらエレクトロニックタバコを貰ってさ、最近はタバコをやってるんだ。電子だけど。
気がついたらポストが取引の手紙で溢れてた。なんだかスッキリしない。全部あいつのせいだ。そう、全部誰かのせいなんだ。ブータンの王様が金閣寺に来てた。逢いに行けば良かった。なんだか分からないけれど。
俺の腐った目線を幸せにしてくれそうで。
そうだよ、考え方一つで何にでも成れるから。

----------------------------------------
下書きのまま放りだされた毎日を、書き直して、書き直して。それでもあんまり変わらない。そりゃあそうだけど。しっくりこない。同じ服をずっと着ていたら窮屈でもう身動き出来ない感じ。成長に追いついてないんだぜ、多分。知らないうちに脱皮が出来てないみたいだ。
クリスマスはどうでもいいけれど、年末の忘年会を去年みたいにやりたくて、そんな話をしてたらその前に、俺の誕生日があって。三十五歳だって。それにこの街に引っ越して十年なんだ。それでタコ焼きパーティーをしてくれる事になった。
「この間、D丸で神戸フェアでやってたカレーが美味しくて、セットで買ったからそれも持って行くよ」
あしたの喜多善男みたいにさ、粉を混ぜる奴だよ。この間繰り返して見てたらシンミリしちゃったけど、あれはやっぱりいいテレビだった。

ウキウキしてた。気持ちが晴れて、ビールでも引っかけようっていつものバンドを見に行ったら、時間になってもベースが出て来なくて、最近一緒にやってるみたいなもう一人のギターが、いつものベース位置に居てさ。ギターが二本とドラムだけでそのまま始まったんだけどまぁ、酷かった。ベースの居ないツインギターなんてカーターUSMしか知らないけれど、あれは多分サンプリングマシンかなんかが一緒だろ?締まりのない上にどっちかが低音を弾くわけでもないしさ、ていうかどっちかベースを弾けよ。二人してストラトだし。

今日、どうしたんですか?風邪でも引きました?
「いや、何日か前に電話で、会社辞めたんだって。それで調子も悪いし今日は出られないって言うからしょうがなくて三人で」

店長が寂しそうにしてた。
「これからもウチのバンドをよろしく」

あぁ、なんだよ。聞かなけりゃ良かった。
「いつも会社に手紙出していたから、自宅が分からなくて」
連絡が全然取れないんだって。でも後から連絡してみたら電話以外は繋がるし、なんだかまだ会社にも行ってるみたいだった。また飲みに行こうよって約束だけはしてるんだけど。

声もかけ辛くて放っておいたんだけど、ちょっと色々ありすぎて連絡を全部絶っているみたいだし、様子を伺ってた。
それよりもこっちは自分の生誕祭で一杯なんだ。また割烹が閉店してからみんなで集まってタコを焼いたんだけど、楽しかったよ。

ジム終わりにみんなでメシを食いに行った時に、色々話してたらドラムもベースも、みんな楽器が出来るみたいでパートが揃ったんだ。ちょっとみんなでバンド組もうって話もしてた。
「誰でも自作楽曲を販売可能、手数料25ドル」
この間ヤホーかゴーグルが音楽の販売を始めるって言ってた。5人で5ドルずつ出してページを作ったら誰でも曲を売れるんだって。これって凄い事だと思うんだ、とりあえずバンド名を決めようって出してたけどどれもダサイし全部却下してやった。とりあえず形から入らないとどうしようもないだろ?全部ダサかった。

競馬の三連単で1-2-5と、ガチガチの本命でトランセンドとエスポワールシチーとか言う奴の馬券を貰った。外れたけど。朝まで飲んで次の日、一応起きて見てたんだけど。馬券を持ってレースを見るなんてTと高崎競馬に行った時以来だぜ、あの競馬場ももう無いみたいだ、あんたがあそこの競馬場を知ってるなら教えてやるよ、あそこはもう無いんだ。今は場外の発券をしてるみたいだけど。
目の前を馬が、土を蹴り上げながら走って、ドスドスと重い足音が駆け抜けて行くのは見ていて楽しかった。もう無いけど。競馬で当てた事なんて無いんじゃないかな、競艇はあるけれど。パチンコはトントンって奴。別にギャンブル好きのキチガイってワケじゃないけれど。

FXは散々、18万儲かってあと2万って所で20万吹っ飛んでさ、半年やって1円も儲からないどころかマイナスだって。やってられねぇぜ。あぁ、今年ももう終わりだってのに。もう全部終わりだよ。

とにかく俺も三十五歳になったんだ。なんだっけな、あいつと何か約束があった気がしたんだけど。あいつってのはTの事なんだけど、なんだっけ、三十五歳になったらなんだかかんだか。もうそんな事はどうでもいいけれど、あいつって元気にやってんのか。最近連絡もないし。なんだかあいつの事を思い出すと調子が狂うのさ、全部あいつのせいだぜ、気が晴れなかったりスカっとしたり。あいつっていうか、あの頃の事さ。
あいつがさ、あの頃がいつまでも付き纏いやがるから、あの太陽がいつまでも輝いてるものだから、いつも「今」ってのが霞んでしまう。直視出来ないんだ、
終わらせてやる。

まるでチャップマンの気分さ、チャップマンって言ってもアルベルティン・アロルディス・チャップマンじゃないよ、いくら俺がピッチャーだって言っても、あのチャップマンじゃない。あれは仲間と言うかライバルだぜ、歴代最速の球を投げるんだから。
マーク・デイヴィッド・チャップマンの方さ。なんだか気持ちが分かるって言うか。幸せは暖かい銃なんだ。ハッピネス、ウォームガン。ポールアンドジョン。レノンマッカートニー。レノンとチャップマン。ストロベリーフィールズフォーエバー。
俺はあそこに行った事があるよ、全部懐かしい。バカでかい公園の中で、あそこだけ音楽で溢れてた。ピースでハッピーでラブ。
全部終わらせてやるんだ、全部俺のものだから。誰にもやらせやしない。ケリを付けてやる。
太陽が眩しすぎてもう何も見えないんだ。
俺ってやっぱり気が狂ってる。イカレちまってる。






気がついたら九月どころか十月も十一月も終わっていてもう十二月だってさ、笑えない。いつものクリスマスネオンは地震からこっちの節電で大人しいし、日によっちゃあまだ暖かい日もあるけれど、まぁ冬らしくなってきた。眠くて眠くて、寒いし炬燵でコロコロしていたらさ、猫みたいに。あぁ、あの猫は前ほど遊びに来なくなったけれど。
とにかく、九月が終わった事をきっかけに俺は目覚めたんだ。目覚めてみたらなんだこの世界は。
あの頃のまっただ中から見たらもう完全に死んじまってるし、今振り返ってもやっぱり死んでしまった方がいいような奴なのさ。ラジオから流れる糞みたいな歌謡曲にウンザリしながら。いや、でもこれが今のロックって奴なんだ多分。俺が知ってるのはもうオールディーズで今はこれがロックなんだよ。変わって行くんだ、死んでしまったとかじゃなく。

そんな事分かってる、全部。内から外からの変化に板挟みで、ただしっくりこないだけ。テトリスのブロックを段違いに積んでるみたい。ジェンガを上から外していくみたい。グレーのオセロをヒックリ返してく。
分からない。全然意味が分からねぇよ。空っぽの日もあったり、普通に生きてるけれど、その普通ってのがもう、あの頃から見たら死んでるも同然なんだろうな。
捨てたハズのゴミで一杯、脚がもつれちまう。胸の中を探ってドル箱を漁ってる。これから何を探して行こう。

雨だってのとついでに、冬の間からずっと傷めてた指を完治させようってのでジムには行ってない。それでも指の運動でちょっとギターを弾いてみたらやっぱり違和感があって痛かったけど、週末には大分治って来てた。バレーコードはイケるけど、ローコードのDなんか押さえると窮屈で関節が痛いし。まぁ適当にデイトリッパーとか、COW5とか。なんとなく懐かしくてインマイライフなんか弾いてさ、色々思い出すよ。浮かんでは消える歌があるんだ、まるで夢みたいに最高で、でもすぐに忘れる。でも確かに最高で。

なんとなくテレビ。電話のCMにシドのマイウェイが使われてる。なんだこりゃ。アイアムレジェンドを見てたんだ、映画館にも見に行った、いつだか忘れたけれど。セントラルパークの横にある美術館ってなんだっけ。Momaじゃなかったような。あそこのエジプトゾーンで釣りしたり、ゴッホとか家に飾ったりしてる。ニューヨークが懐かしい。あれ、なんて美術館だっけ。行った事がある場所が流れると楽しいよ。
この間の旅行でパクられた電話の保険が九割おりた。はじめてWindowsで仕事してるけど無茶苦茶面倒臭い。慣れなくて。新しい事がしっくりこないんだ。バックミラーばっかり見てるから、危なくて前に進めやしない。

ふと、朝起きたら借金が全部無くなってた、うっすら覚えてるのはこの間のカイニューで全部チャラになったあげくお釣りが来たって事。でもなんだか白けちゃって宴会をやろうなんて感じではなかったけど。一晩でぶっ飛んだ百万円を回収するのに三ヶ月かかった。やっとだぜ、ここから金を貯めて、売り払った魂を買い戻すんだ、この星そっくり買い取る位な。最近はツキがさ、ついてる。この間はピルクルLife+2週間分プレゼントキャンペーンが当たった。この調子でどんどん儲けようってやってんだけど20万より稼いだら税金がかかるらしくて、中途半端でムカつくから途中でやめておいた。
弊社の社長がリースのBMWの値段を「ユーロ安」だから値切りはじめた。もう乗るなよな。ギリシャがクソすぎて半日で出国したけど、今じゃあ世界中が俺と同意見みたいだ。あのクソみたいな国のせいで儲かってしょうがないんだけど。

裏通りに猫が9匹いるらしい。遠い親戚の兄ちゃんのドラムがラジオから聞こえる。そうそう、親戚が、ドラム叩いてるんだ、メジャーなんだよ。そんな事言った事あったっけ。
ジョブズが死んでしまった。ガンだったんだって。
「残りの人生も砂糖水を売りつづけたいかい?それとも僕と一緒に世界を変えたいかい?」
どっちにしろあいつと一緒に仕事をする事は無かっただろうけど。金稼ぎのツールは全部あいつの会社のを使ってるから、世話にはなってた。最初のiMacを買った事をきっかけに今の仕事について、iPhoneをきっかけにFXを始めた。エジソンの発明品が俺にドアを見せてくれる。
BIG CATにG.loveを見に行く。スペシャルソースのベースが別の人だったけど良かった。Tシャツをゲット。この間の夜は酒蔵に竹中直人を見に行った。
忙しくて還暦祝いが危うかったけど、行けて良かった。赤いダウンにスニーカーで、バラを咥えて楽しそうだったよ。年末の麗蘭に行ってみたいけどいつも帰省するし。色々見てみたいけど。

とにかく煩わしい事で忙しくて、ペースが悪いし慣れないし、なんだか晴れないんだ、冬ってのはこんな感じだったかな。関取みたいなデブがチャリで走りながらなんか道路に捨てたと思って、後で見たらチーズ蒸しパン(半分)だった。意味が分からなかった。フルーツを沢山貰って面倒だからミキサーを買ってジュースにしてる。別に欲しい物なんてそんなに無いのさ。たまに思いついてミキサーなんて買うけれど、酒もタバコもやらないし。ギャンブルもしないし、でも世界を征服する程はまだ稼げてない。

チキショウ、カフェインが切れて仕事にならねぇ。この間、漫画を買ったらエレクトロニックタバコを貰ってさ、最近はタバコをやってるんだ。電子だけど。
気がついたらポストが取引の手紙で溢れてた。なんだかスッキリしない。全部あいつのせいだ。そう、全部誰かのせいなんだ。ブータンの王様が金閣寺に来てた。逢いに行けば良かった。なんだか分からないけれど。
俺の腐った目線を幸せにしてくれそうで。
そうだよ、考え方一つで何にでも成れるから。

----------------------------------------
下書きのまま放りだされた毎日を、書き直して、書き直して。それでもあんまり変わらない。そりゃあそうだけど。しっくりこない。同じ服をずっと着ていたら窮屈でもう身動き出来ない感じ。成長に追いついてないんだぜ、多分。知らないうちに脱皮が出来てないみたいだ。
クリスマスはどうでもいいけれど、年末の忘年会を去年みたいにやりたくて、そんな話をしてたらその前に、俺の誕生日があって。三十五歳だって。それにこの街に引っ越して十年なんだ。それでタコ焼きパーティーをしてくれる事になった。
「この間、D丸で神戸フェアでやってたカレーが美味しくて、セットで買ったからそれも持って行くよ」
あしたの喜多善男みたいにさ、粉を混ぜる奴だよ。この間繰り返して見てたらシンミリしちゃったけど、あれはやっぱりいいテレビだった。

ウキウキしてた。気持ちが晴れて、ビールでも引っかけようっていつものバンドを見に行ったら、時間になってもベースが出て来なくて、最近一緒にやってるみたいなもう一人のギターが、いつものベース位置に居てさ。ギターが二本とドラムだけでそのまま始まったんだけどまぁ、酷かった。ベースの居ないツインギターなんてカーターUSMしか知らないけれど、あれは多分サンプリングマシンかなんかが一緒だろ?締まりのない上にどっちかが低音を弾くわけでもないしさ、ていうかどっちかベースを弾けよ。二人してストラトだし。

今日、どうしたんですか?風邪でも引きました?
「いや、何日か前に電話で、会社辞めたんだって。それで調子も悪いし今日は出られないって言うからしょうがなくて三人で」

店長が寂しそうにしてた。
「これからもウチのバンドをよろしく」

あぁ、なんだよ。聞かなけりゃ良かった。
「いつも会社に手紙出していたから、自宅が分からなくて」
連絡が全然取れないんだって。でも後から連絡してみたら電話以外は繋がるし、なんだかまだ会社にも行ってるみたいだった。また飲みに行こうよって約束だけはしてるんだけど。

声もかけ辛くて放っておいたんだけど、ちょっと色々ありすぎて連絡を全部絶っているみたいだし、様子を伺ってた。
それよりもこっちは自分の生誕祭で一杯なんだ。また割烹が閉店してからみんなで集まってタコを焼いたんだけど、楽しかったよ。

ジム終わりにみんなでメシを食いに行った時に、色々話してたらドラムもベースも、みんな楽器が出来るみたいでパートが揃ったんだ。ちょっとみんなでバンド組もうって話もしてた。
「誰でも自作楽曲を販売可能、手数料25ドル」
この間ヤホーかゴーグルが音楽の販売を始めるって言ってた。5人で5ドルずつ出してページを作ったら誰でも曲を売れるんだって。これって凄い事だと思うんだ、とりあえずバンド名を決めようって出してたけどどれもダサイし全部却下してやった。とりあえず形から入らないとどうしようもないだろ?全部ダサかった。

競馬の三連単で1-2-5と、ガチガチの本命でトランセンドとエスポワールシチーとか言う奴の馬券を貰った。外れたけど。朝まで飲んで次の日、一応起きて見てたんだけど。馬券を持ってレースを見るなんてTと高崎競馬に行った時以来だぜ、あの競馬場ももう無いみたいだ、あんたがあそこの競馬場を知ってるなら教えてやるよ、あそこはもう無いんだ。今は場外の発券をしてるみたいだけど。
目の前を馬が、土を蹴り上げながら走って、ドスドスと重い足音が駆け抜けて行くのは見ていて楽しかった。もう無いけど。競馬で当てた事なんて無いんじゃないかな、競艇はあるけれど。パチンコはトントンって奴。別にギャンブル好きのキチガイってワケじゃないけれど。

FXは散々、18万儲かってあと2万って所で20万吹っ飛んでさ、半年やって1円も儲からないどころかマイナスだって。やってられねぇぜ。あぁ、今年ももう終わりだってのに。もう全部終わりだよ。

とにかく俺も三十五歳になったんだ。なんだっけな、あいつと何か約束があった気がしたんだけど。あいつってのはTの事なんだけど、なんだっけ、三十五歳になったらなんだかかんだか。もうそんな事はどうでもいいけれど、あいつって元気にやってんのか。最近連絡もないし。なんだかあいつの事を思い出すと調子が狂うのさ、全部あいつのせいだぜ、気が晴れなかったりスカっとしたり。あいつっていうか、あの頃の事さ。
あいつがさ、あの頃がいつまでも付き纏いやがるから、あの太陽がいつまでも輝いてるものだから、いつも「今」ってのが霞んでしまう。直視出来ないんだ、
終わらせてやる。

まるでチャップマンの気分さ、チャップマンって言ってもアルベルティン・アロルディス・チャップマンじゃないよ、いくら俺がピッチャーだって言っても、あのチャップマンじゃない。あれは仲間と言うかライバルだぜ、歴代最速の球を投げるんだから。
マーク・デイヴィッド・チャップマンの方さ。なんだか気持ちが分かるって言うか。幸せは暖かい銃なんだ。ハッピネス、ウォームガン。ポールアンドジョン。レノンマッカートニー。レノンとチャップマン。ストロベリーフィールズフォーエバー。
俺はあそこに行った事があるよ、全部懐かしい。バカでかい公園の中で、あそこだけ音楽で溢れてた。ピースでハッピーでラブ。
全部終わらせてやるんだ、全部俺のものだから。誰にもやらせやしない。ケリを付けてやる。
太陽が眩しすぎてもう何も見えないんだ。
俺ってやっぱり気が狂ってる。イカレちまってる。






流星
-66- wake me up when september ends

これはスリーピングバスの中。

途中で寄ったドライブイン。

朝になって、エッグコーヒーを飲みに行った所。でも無かったから普通のコーヒー。

これはタンロン城の北門で、下の方がちょっと撃たれてる。

これは中だけど良く分からない。

それで、戦争の時に池に突っ込んだB52を見に行こうと思ったんだけど、

もの凄いローカルな所でさ、本拠地って感じでもの凄い怖かった。なんかね、巣窟って感じだぜ、まさに路地裏って感じ。どうなったって可笑しくない。

でも池自体は汚くて普通で、おっさんが釣りしてた。
飛行機は鉄クズで売られてちょっとしか残ってないらしい。

ホーチミンの家。

大体の路地はバイクで溢れていて面倒くさい。怖いからって立ち止まったら逆に危なくて、普通に歩いてるのが一番避けてくれる。ぶつかってるのも見たけど。

これは水上人形劇なんだけど、チープな感じがコミカルで楽しかった。なんか水中で棒につけて操ってるみたい。人力だったよ。

晩ご飯。ゲッコーって言う店。ビールはバーバーバーとかタイガーとか色々変えてみたけど、あんまり違いが解らなかった。これはビアハノイ。

ブルースとかソウルとか、アメリカな感じだったな。

ここでお土産のコーヒーを買って、変な果物を貰った。どうしたらいいか分からないから今は冷凍庫で凍らせてある。小さい堅いモモみたい。今度見せるよ。

これが例の警察の隣にあったホテル。あの世話になった警察官には、最後まで逢えなかった。

友達に写真を見せたり。電話はもう新しいのを買って携帯品損害の保険手続きをしてる所、面倒臭くて辟易しちまった、アメックスの自動付帯の奴。万が一で作っておいたカードだったけど、ようやく活用してやったよ、チキショウ。やっぱりこの電話は便利だよ、タッチパネルをするする捲ってスライドさせながら、改めて盗まれたのに怒りが満ちてくるけど。もうどうしようもないぜ。
一週間なんてアッと言う間だ。結局ベトナム以外の国には行けなかった。時間を作るのが一番大変かもしれない。って思ったけどそんな事ないか。一番簡単だ、全部投げたらいいんだから。時間以外のものをさ。一回やってみたら解るけど、簡単な事だったぜ、後なんか考えなければ。
ジム員にお土産を配っていたら、女の子がシンカフェのTシャツを着ていて、聞いたら青年海外協力隊で二年住んでたんだって。ベトナム語が読めるから、面白くてコーヒーのパッケージを読ませてた。でもコーヒーは甘ったるくて好きじゃないんだって。
「私の第二の故郷ですよ」
電話盗られちゃった。鈍くさいですね。持ってるってのも解らせたらダメですよ。
そう聞いたら五年前はちゃんとしてた気もするけど。ただラッキーだっただけかもしれないな、あの頃とは違うんだよ、きっと。
見慣れない子が居るな、って思ってたら英語で話しかけられて、そのまま英語で返事してた。多分チャイナかコリアの子なんだけど。自分の発音がちょっと海外仕様で笑っちまった、この間帰って来た所だから。
徐々に抜けて行くんだろうけど。
911が来てあいつに電話してみようと思ったけど止めておいた。なんだか出来すぎな気がして。あれから十年で、あれから半年だ。実感が全然無い、福島にも仙台にも行ったし、グラウンドゼロにも行った事があるけれど、それよりもこの間の台風の方がよっぽどだったぜ、また雨漏りして壁がビチョビチョになったし。
やっぱり目の前で起きてる事。それに過去でも未来でもない「今」だって事。それしか俺には手が出せないみたいだ。
もどかしいって言うかなんて言うか。
ちょっと前にテオヤンセンのミニリノセロスが売っていたから買っておいて、台風に合わせて外に出したら傘は折れるしあおられてビーストが飛んで行くし散々だった。ライブハウスにもお土産を持って行って電話を盗られた話だとか、まぁ酒の話にちょっと出してみたり。河豚屋のマスターって言うかおじいちゃんが顔を覚えてくれて声をかけてくれたんだ、初めて。ここの知り合いはみんな大人げないけれど、ちゃんと俺よりは歳も上だし、大人だ。歳なんてどうでもいいけれど。
イラクディナールが紙クズになるらしい。国からなんか一万円ぐらい貰って全部変えたんだけど、何処かに行ったしまた宝クジを外した気分だ。
旅行で知り合った女の子はその後も順調に旅をしてるみたい。荷物を全部買い直して、今は中国とかチベットあたり。
ジム員がイースター島に行っていて、帰ってきてたから話かけたら「強盗に遭ってさ」だって。
島から帰りにバルパライソってチリの世界遺産に寄ったらしいんだけど、三人に囲まれて財布にカメラに、ボコボコにされたって。島自体はさ、ラノララクにゲートが出来て60ドル盗られるんだって、味気ないし柵だなんてもう、どうしようもないぜ。どうせ全員行くんだろうし空港税にでも入れておけよな、金じゃなくてさ、柵がさ。なんだか。
バーが出来てたり、スーパーとか、コンビニに寿司屋も出来てるんだって、話を聞いたら俺の知ってる島じゃないんだ、全然。日本人宿もあるらしいぜ、俺なんか初日はテントだったのに。変わっちまったんだ、見てないからそれがいいのか悪いのか。今度写真を見せてもらうんだ。
旅行の金を計算してたら、円高のおかげで一週間で三万円ぐらいだった。
この間の連休は金沢に行って来た。
庭にマタタビを撒いて猫を集めてる。
今日、朝起きて庭に出たら、縁側の上の透明な屋根にたたんだダンボールが乗ってた。どこかから飛んで来たのか、イタズラだったら塀に登るか手裏剣みたいに投げないといけないし、どっちにしろ怖い。大家に電話してみたら、台風の時じゃないですか?だって。でも台風の後に屋根の修理をしてるんだから、あったら気づくだろ?
この間はアメリカの衛星がぶっ壊れて落ちてくるし、空から隕石か、そんな感じか、でも段ボールだぜ、ロマンチックでもなんでもない。願いをかける星でも無いし、一昨日のスーパームーンは新月で見えなかったし。今日はまだ屋根に乗せたまま出かけて来たんだけど。まぁいい、その後の話は今度するよ。
最近は庭に猫が来るから、ちょっとした物音でもどうせ猫だし、気にしてないんだ。昨日も来てたと思うよ、マタタビを撒いてるから。
明日は久しぶりにMと焼き肉に行こうとしてたら「居酒屋でいいじゃん」だって、俺そうゆうのって本当につまらないと思うんだよね、来月からは生レバもユッケも無くなっちまうかバカ高く値上がりするんだから、その前に行こうよって意味だったんだけどさ。
どうしてもって事じゃなくて、そうゆう「キッカケ」って奴だと思うんだ、俺は。別にこれ、今じゃなくてもいいしもう一生どうでもいい事かもしれないんだけど、思いついちゃったんだもの。それが「キッカケ」でタイミングなんだよきっと。
そう、俺の旅も多分そんな感じだったんだ、思いついてしまっただけ。それで気になってしょうがなくて。それだけの事さ、きっと。
うん、そうだよ、これってきっといい線行ってる。
まぁ、また今度話すよ。あんたには話さないといけない事が沢山あって困っちまう。
とりあえず明日が楽しみなウチが華って奴。
毎日が流れ星みたいにぶっ飛んで行く。一方通行の片道切符。もう九月も終わりだぜ、明日もあるし、来年も来るけれど。あれはなんて詩だっけ、九月が終わったら起こしてくれって詩。戦争の話だった気もするけれど。
思い出したら話すよ。でもまったくあんな気分なんだ、この十年はあっと言う間に過ぎてしまった。
そろそろ起きないと。
九月の終わりぐらいに。
それまでは起こしてくれなくていいけれど。
九月は気が滅入るから嫌いなんだ。

これはスリーピングバスの中。

途中で寄ったドライブイン。

朝になって、エッグコーヒーを飲みに行った所。でも無かったから普通のコーヒー。

これはタンロン城の北門で、下の方がちょっと撃たれてる。

これは中だけど良く分からない。

それで、戦争の時に池に突っ込んだB52を見に行こうと思ったんだけど、

もの凄いローカルな所でさ、本拠地って感じでもの凄い怖かった。なんかね、巣窟って感じだぜ、まさに路地裏って感じ。どうなったって可笑しくない。

でも池自体は汚くて普通で、おっさんが釣りしてた。
飛行機は鉄クズで売られてちょっとしか残ってないらしい。

ホーチミンの家。

大体の路地はバイクで溢れていて面倒くさい。怖いからって立ち止まったら逆に危なくて、普通に歩いてるのが一番避けてくれる。ぶつかってるのも見たけど。

これは水上人形劇なんだけど、チープな感じがコミカルで楽しかった。なんか水中で棒につけて操ってるみたい。人力だったよ。

晩ご飯。ゲッコーって言う店。ビールはバーバーバーとかタイガーとか色々変えてみたけど、あんまり違いが解らなかった。これはビアハノイ。

ブルースとかソウルとか、アメリカな感じだったな。

ここでお土産のコーヒーを買って、変な果物を貰った。どうしたらいいか分からないから今は冷凍庫で凍らせてある。小さい堅いモモみたい。今度見せるよ。

これが例の警察の隣にあったホテル。あの世話になった警察官には、最後まで逢えなかった。

友達に写真を見せたり。電話はもう新しいのを買って携帯品損害の保険手続きをしてる所、面倒臭くて辟易しちまった、アメックスの自動付帯の奴。万が一で作っておいたカードだったけど、ようやく活用してやったよ、チキショウ。やっぱりこの電話は便利だよ、タッチパネルをするする捲ってスライドさせながら、改めて盗まれたのに怒りが満ちてくるけど。もうどうしようもないぜ。
一週間なんてアッと言う間だ。結局ベトナム以外の国には行けなかった。時間を作るのが一番大変かもしれない。って思ったけどそんな事ないか。一番簡単だ、全部投げたらいいんだから。時間以外のものをさ。一回やってみたら解るけど、簡単な事だったぜ、後なんか考えなければ。
ジム員にお土産を配っていたら、女の子がシンカフェのTシャツを着ていて、聞いたら青年海外協力隊で二年住んでたんだって。ベトナム語が読めるから、面白くてコーヒーのパッケージを読ませてた。でもコーヒーは甘ったるくて好きじゃないんだって。
「私の第二の故郷ですよ」
電話盗られちゃった。鈍くさいですね。持ってるってのも解らせたらダメですよ。
そう聞いたら五年前はちゃんとしてた気もするけど。ただラッキーだっただけかもしれないな、あの頃とは違うんだよ、きっと。
見慣れない子が居るな、って思ってたら英語で話しかけられて、そのまま英語で返事してた。多分チャイナかコリアの子なんだけど。自分の発音がちょっと海外仕様で笑っちまった、この間帰って来た所だから。
徐々に抜けて行くんだろうけど。
911が来てあいつに電話してみようと思ったけど止めておいた。なんだか出来すぎな気がして。あれから十年で、あれから半年だ。実感が全然無い、福島にも仙台にも行ったし、グラウンドゼロにも行った事があるけれど、それよりもこの間の台風の方がよっぽどだったぜ、また雨漏りして壁がビチョビチョになったし。
やっぱり目の前で起きてる事。それに過去でも未来でもない「今」だって事。それしか俺には手が出せないみたいだ。
もどかしいって言うかなんて言うか。
ちょっと前にテオヤンセンのミニリノセロスが売っていたから買っておいて、台風に合わせて外に出したら傘は折れるしあおられてビーストが飛んで行くし散々だった。ライブハウスにもお土産を持って行って電話を盗られた話だとか、まぁ酒の話にちょっと出してみたり。河豚屋のマスターって言うかおじいちゃんが顔を覚えてくれて声をかけてくれたんだ、初めて。ここの知り合いはみんな大人げないけれど、ちゃんと俺よりは歳も上だし、大人だ。歳なんてどうでもいいけれど。
イラクディナールが紙クズになるらしい。国からなんか一万円ぐらい貰って全部変えたんだけど、何処かに行ったしまた宝クジを外した気分だ。
旅行で知り合った女の子はその後も順調に旅をしてるみたい。荷物を全部買い直して、今は中国とかチベットあたり。
ジム員がイースター島に行っていて、帰ってきてたから話かけたら「強盗に遭ってさ」だって。
島から帰りにバルパライソってチリの世界遺産に寄ったらしいんだけど、三人に囲まれて財布にカメラに、ボコボコにされたって。島自体はさ、ラノララクにゲートが出来て60ドル盗られるんだって、味気ないし柵だなんてもう、どうしようもないぜ。どうせ全員行くんだろうし空港税にでも入れておけよな、金じゃなくてさ、柵がさ。なんだか。
バーが出来てたり、スーパーとか、コンビニに寿司屋も出来てるんだって、話を聞いたら俺の知ってる島じゃないんだ、全然。日本人宿もあるらしいぜ、俺なんか初日はテントだったのに。変わっちまったんだ、見てないからそれがいいのか悪いのか。今度写真を見せてもらうんだ。
旅行の金を計算してたら、円高のおかげで一週間で三万円ぐらいだった。
この間の連休は金沢に行って来た。
庭にマタタビを撒いて猫を集めてる。
今日、朝起きて庭に出たら、縁側の上の透明な屋根にたたんだダンボールが乗ってた。どこかから飛んで来たのか、イタズラだったら塀に登るか手裏剣みたいに投げないといけないし、どっちにしろ怖い。大家に電話してみたら、台風の時じゃないですか?だって。でも台風の後に屋根の修理をしてるんだから、あったら気づくだろ?
この間はアメリカの衛星がぶっ壊れて落ちてくるし、空から隕石か、そんな感じか、でも段ボールだぜ、ロマンチックでもなんでもない。願いをかける星でも無いし、一昨日のスーパームーンは新月で見えなかったし。今日はまだ屋根に乗せたまま出かけて来たんだけど。まぁいい、その後の話は今度するよ。
最近は庭に猫が来るから、ちょっとした物音でもどうせ猫だし、気にしてないんだ。昨日も来てたと思うよ、マタタビを撒いてるから。
明日は久しぶりにMと焼き肉に行こうとしてたら「居酒屋でいいじゃん」だって、俺そうゆうのって本当につまらないと思うんだよね、来月からは生レバもユッケも無くなっちまうかバカ高く値上がりするんだから、その前に行こうよって意味だったんだけどさ。
どうしてもって事じゃなくて、そうゆう「キッカケ」って奴だと思うんだ、俺は。別にこれ、今じゃなくてもいいしもう一生どうでもいい事かもしれないんだけど、思いついちゃったんだもの。それが「キッカケ」でタイミングなんだよきっと。
そう、俺の旅も多分そんな感じだったんだ、思いついてしまっただけ。それで気になってしょうがなくて。それだけの事さ、きっと。
うん、そうだよ、これってきっといい線行ってる。
まぁ、また今度話すよ。あんたには話さないといけない事が沢山あって困っちまう。
とりあえず明日が楽しみなウチが華って奴。
毎日が流れ星みたいにぶっ飛んで行く。一方通行の片道切符。もう九月も終わりだぜ、明日もあるし、来年も来るけれど。あれはなんて詩だっけ、九月が終わったら起こしてくれって詩。戦争の話だった気もするけれど。
思い出したら話すよ。でもまったくあんな気分なんだ、この十年はあっと言う間に過ぎてしまった。
そろそろ起きないと。
九月の終わりぐらいに。
それまでは起こしてくれなくていいけれど。
九月は気が滅入るから嫌いなんだ。
ハイウェイ
-65- 一号線を北上せよ
なんだかちょっと忙しくなってきた。今日の夜にはホイアンに居たいって事になると、昼にはバスに乗らないといけないみたい。それじゃあ他の遺跡を回れない。
「大丈夫、午前中のハーフツアーがあるから、昼飯もついているし、食べ終わったらホテルに戻ってそのままバスに乗ればいい」
上手いこと出来てるもんだ。
早くにチェックアウトしてどうせ来ないバスを待とうと思ったら、この国は意外に時間通りに進むらしい。
昨日の王宮の他に「帝廟」ってのがいくつかあって午前中はそれを見に行く。俺以外は午後に王宮に行くらしいから都合が良かった。とにかくツアーってのは楽で効率がいいけれど、それ以外に何か良いことってあるのかな。ガイドの説明なんか最初から聞いちゃいないし。


ミンマン帝廟は古びたチャイナで、入り口に石の兵隊とか馬とか象が置いてある。兵馬俑っていうか、狛犬みたいなもんかな、階段の両脇は龍がうねうねと手すりみたいで。柱も龍で、池には蓮がピンクでびっしり。仏教っていうかやっぱり中国みたい。これがベトナムの文化なのか、微妙すぎて分からないけど。日本と中国も似てて違うから、慣れたら分かるのかも。奥に墓があるみたいだけど、一番奥の扉は開けないみたいだった。何層かの区切りで結構広かった。


カイディン帝廟は平泉の中尊寺みたいで気に入った。外側は黒く沈んだ石で、尖がった感じが悪魔の城みたいで格好いいんだ。どこかモダンだし、ディテイルがさっきょりも凝ってる気がする。ミンマンは敷地が広かったけど、ここは階段で上にもでかい。要塞みたいで、中は一部屋全部金ピカ。壁はタイルのモザイクが綺麗で、天井には睨み龍みたいなのもある。





その後でどこか、村みたいな所に着いたと思ったらカンフーだった。バスにはコリアがバラバラで三人乗ってたんだけど、カンフーはお気に召さないみたいで一人も降りてこなかったな。
赤い獅子舞みたいなので出迎えられて剣とか槍で模擬してる。頭でブロックを割ったかと思ったら喉に槍を押し付けて体重をかけて折ろうとするんだけど、勢いを付けるのに背中にブロックを置いたり。それをハンマーで叩いたり。見なきゃわかんないだろうけど、結局折れなかった。

その後でやっぱりお土産の村に連れていかれる。これはもうツアーにはセットだな、絶対。線香とかみんなが被ってる傘を作ってた。


ちょっと休憩みたいな感じで最後にトゥドゥック帝廟。この間行った桂離宮みたいだったよ。庭に池に、東屋って感じ。ここが一番広かった。広いから人もまばらに感じるし。一番おごそかで、誰も居ない所に一人で、なんとなくスタンドスティルしてた。

なんて言うか。
普段の生活から何キロ離れてる。何時間離れてる。何カ国。何が違うんだろう。

答えとか、問いなんてものでも無いんだけど、立ちつくしていて、振り返って、眺めてる景色がゆったりで。
ギャップにはまってちょっと動けなかったんだ。



町に戻って美味くもないバイキングを詰め込んで、ホテルに戻ったらすぐにバスが来る。
この国は嫌ってほど正確にバスが出るみたい。嫌になるぜ、本当に。

バスは途中、休憩を挟んでダナンを経由する。植木の形が悪フザケしてて変だ。どこかに五行山があったはずなんだけど、どれだか分かりゃしなかった。孫悟空が閉じ込められてた場所じゃなかったかな。本当はそこだとか、国境を越えてラオスに移動するかもなんて思っていたけれど、結局行けそうにもない。出発は正確なのにさ、列車と言いこのクソバスと言い、到着が倍ぐらいズレやがる。
昼にはホイアンに着くと思っていたけれど。やっとどこかのホテルに着いたと思ったら、辺りはもう暗くなっていた。

スロープの階段に腰掛けてブックを眺めてみても、ここが何処なんだか分からなかった。ホテルの女の子が話しかけてきて、値段も気にする程じゃないし、街の地図を見せて貰ったら場所も悪くない。部屋につれてってもらって、シャワーが出るのを確かめて、そのままチェックインする事にした。
明後日の夜にはハノイから飛行機に乗らないといけないし、何で移動しようか、さっきの女の子に色々聞いてたらスリーピングバスってのがあって。要は寝台のバスなんだけど、足を伸ばして寝れるんだって。
ちょっと半信半疑だったけど、面白そうだしそれが一番スケジュールに合ってたから決めたんだ。南米をブラブラしてた時はカマとかセミカマとか、フルフラットの高級(今となっちゃあタカが知れてる)シートなんかあったけど、こんなアジアであるとも思えない。クラシコじゃなけりゃあ何でもいいや。

完全に暗くなる前にちょっと街を歩いてみる。多分飯は遅くなってもどうにかなりそう。
地図を把握したら、ここは歴史的な街並みが残る通りの東端にあるらしい。シルクの服屋とかバーとか。ここの名物料理もあるみたいだし、相変わらずバイクは多いけどそんなに気にならなくなってきた。

歩いてみたら観光の出来る所ってのは大分小さいみたいだ、自転車をレンタルしようと思ったけどそれほどでもない。
一度部屋に戻って風呂に入って、散歩がてらもう一度外を歩く。

一軒だけ、この国じゃああまり見かけない店があってさ、ちゃんとした店。英語も綺麗だし、他の店みたいにしつこくないし。黄色の制服もいい感じだし。とりあえずその店に居て、もう麵は飽きてたからチャーハンと、名物みたいなホワイトローズっていうワンタンみたいな奴。それに豆腐があったから頼んでみたら、小さく切ったのを揚げてあった。

ビールを飲みながらゆっくりしてたんだけど、さっきから店の子が健気に頑張ってるのを見てさ、本当にいい子なんだぜ、ちょっと感動するぐらいだよ。多分日本だったらこれが普通な感じなんだろうけど、このクソみたいな国にあってさ、クソ白人にどんだけ無視されようが、丁寧にさ。質問されても知っている言葉で一生懸命に答えるんだ、なんか凄い。
若い子の方が食事を運んでくれるんだけど、イチイチ笑顔で「おいしー」って言いながら置いてくれる。つまみの豆を食べながら、あぁなんかいいなぁって。

その間に店の前で白人の子供がセパタクローみたいなのをはじめやがってさ。それはそれで可愛いんだけど、これ絶対邪魔なんだって思ってたら「ソーリー」って言いながらちょっとどかして、自分もちょっと加わったりしながら上手に向こうにやっちゃうんだけど、感心したね、俺ならケツを蹴り上げそうになるけど。
アイスが自慢みたいで、ニュージーランドかオーストラリアって書いてたけど、それをみんなに勧めてた。この町じゃあ結構な値段なんだけど、観光で来てる先進国からしてみたら別にどうって事ない。多分輸入してるから高いんだけど、もうボラれてるとしか思わないんだろうな、みんな。あんまり売れてなかったから自分らで食ってた。

「来遠橋、日本橋に行きたいんだけど、どのくらいかかる?」って聞いたら10キロだって。
絶対に間違ってるんだけど、多分1キロか。3ブロック先からどうのこうの言ってたけどなんだか分からなくて。とりあえずクッキーアンドクリームをコーンで一つ貰って、歩いてみる。

そんなに遅い時間じゃなかったんだけど、明かりも落ち着いていて町並みも古い感じで良かった。軒先に提燈がぶら下がってほのかで、そこに籠をヤジロベーみたいに担いでおばあちゃんが歩いてたりしていてさ。時間が400年ぐらいぶっ飛んだ感じだった。お祭りみたいなんだけど騒がしくなくて。こんな懐かしいような景色、見た事が無い、初めてなんだけど。やっぱり懐かしくてさ。
本当に綺麗だったんだ。

ここには日本人町があって、それで日本橋ってのを誰かがかけたみたいなんだけど、屋根がかかってここも提燈がかかってて、中にはお堂もあった。サルとイヌが祭られててお供えがあったり。
とりあえず明日もう一回来る事にして、溶けたアイスをボタボタと落としながら来た道を帰って、女の子に「おやすみ」って言いながら部屋へ。
この旅で初めてベトナム語を調べたんだ。ちょっと誰かに話しかけてみたくなって。

ホイアンは本当に良かった。古い感じがクスコみたいで、貿易で港な感じがバーリみたい。
でも夜と昼間のギャップはラスベガスみたいで、ちょっと明るすぎる町に昨日の雰囲気は薄れていたけれど。
観光チケットってのがあって、綴ってあるのを一枚ずつ渡して見て歩くみたい。とりあえず十枚分買ってちょっと歩いてみる。


潮洲會館から始まって、クアンコン、ホイクアンハイナム、福建會館あたりで土砂降りになって隣のイエローリバーでカオラウって饂飩みたいなのを食べてやりすごす。


陶磁器の博物館からクアンタンの家に行ってみたけど、普通の家を開放してるみたいで面白かった。タンキーとかフーンフンとか。陳祠堂って所は中でお菓子をくれるし。でもみんなグッズとか売って暮らしてるみたいで、中は売店みたいでもあるけれど。

廣肇會館、サーフィン博物館あたりでとうもろこしを食べて、日本橋でチケットを使ったら調度無くなった。一度川の方に出たり、市場に紛れ込んだりしながら昨日の「Bee's knees cafe」ビーズニーズカフェでアイスコーヒー。ここでは練乳が入った珈琲をホワイトって言うらしい。

春巻きとフォーを頼んで「カムオン」って言ってみたら「おいしー」だって。
「昨日、あなたが帰ったあと、ママがルックソーナイスって言ってたよ」
だって。なんだよ、今日ママは?今日はまだだけど、夜には来るよ。
そうか、今日はもうバスに乗って移動なんだ。オーノーって感じだったけど、冴えないよな。こんな所でもう帰り道だよ。夕前にはバスに乗って帰るだけさ。
最後に握手だけして分かれたんだ。

「さよならベトナム」
って感じで。

そこからは完全に帰り道だった。スリーピングバスは二段ベットの三列で、小さいアジア人には調度かもしれないけど余裕は無い。行きでも寄った休憩所でベトナムのコインを交換してくれるって言うから五円とか出したら五百円玉じゃないとダメだって。それってもう交換じゃないぜ、完全に価値の違いを分かってて言ってるんだ。
ちょっと寄ったフエで「わたし、あなたをみた事あります」って言われた。フエの駅で逢った客引きの子だったんだけど、全然気付かなかったんだ。全部日本語で話していたな。物覚えがいいみたい。
アルゼンチンが、信用出来ないからチケットを渡さないってゴネてた。でもそれじゃあバスに乗れないんだぜ。ずっとやりあってて面倒臭かった。

夜には雨で、ドブみたいなハノイに下ろされて、とりあえずカフェフォーコーでエッグ珈琲とか言う名物があるって言うから寄ってみたんだけど、エッグがないから普通の珈琲だって。朝食はBLTにした。
宿が無いから適当に歩いて、一応世界遺産のタンロン遺跡に行ってみるけどしょぼかった。北門は戦争の時に船舶から大砲で撃たれた跡があったけど、どこの海から撃たれたんだか。

マンゴーマニアを飲みながらホーチミンの家まで行って、B52が落ちてる池も見に行ったけど、ローカルすぎて怖いしもうさらわれそうな路地で。
時間を持てあましてついに水上人形劇を見たけれど意外に良かったよ。

お土産を漁りながらゲッコーで、クラシックなソウルかブルーズを聞いて晩飯。最後までプリンを探してたけど、全然ありつけなかった。絶対に流行ってないぜ、ハノイでは。

最後に、泊ってたホテルに戻ってみたんだ。
隣の警察にはあいつは居なかった。
「ドゥーユーリメンバーミー?」
覚えてるよ。空港までタクシーで行きたいんだけ頼めるかな。いいよ。座ってて。
「この二、三日どこに行ってたの?」
南の方。フエとホイアン。スリーピングバスで帰ってきたんだ。
良かった?

バス?バスは最悪だった。煩いし狭いし。
電話はどうしたの?レシープは貰えた?よく分からないけどなんとかなりそう。
「そうだ、ベトナムのコインが欲しいんだけど、あるかな?」

無いけどちょっと待って、探してくる。
そう言ってちょっと外に行って戻ってきたけれど、やっぱり流通してないみたいでさ。変わりに、見た事ないぐらいに小額の紙幣をくれたから、五円玉と五十円玉をあげたんだ。
見たこと無いって、穴から覗き込んでたよ。全然価値は違うんだけど、途中のアイツとは違うんだから。

そこからタクシーで運転手と、町の看板を見ながらあれは日本だ、日本の会社は素晴らしいって話。
この川は中国からずっと続いているけど、中国はクソで最低だって。なんだか話がはずんだんだけど、向こうは英語の練習をしてるみたいだった。

最後までカムオン以外のベトナム語を覚えなかったけど、まぁいいか。
お土産屋で貰った見たこと無いフルーツを齧ってみたけれど、カスカスで味も無くて、匂いも無いしさ。とりあえずリュックの脇ポケットに突っ込んで。
ちょっと名残惜しい感じで国境を戻ったんだけど。
また何年かは日本だね。

なんだかちょっと忙しくなってきた。今日の夜にはホイアンに居たいって事になると、昼にはバスに乗らないといけないみたい。それじゃあ他の遺跡を回れない。
「大丈夫、午前中のハーフツアーがあるから、昼飯もついているし、食べ終わったらホテルに戻ってそのままバスに乗ればいい」
上手いこと出来てるもんだ。
早くにチェックアウトしてどうせ来ないバスを待とうと思ったら、この国は意外に時間通りに進むらしい。
昨日の王宮の他に「帝廟」ってのがいくつかあって午前中はそれを見に行く。俺以外は午後に王宮に行くらしいから都合が良かった。とにかくツアーってのは楽で効率がいいけれど、それ以外に何か良いことってあるのかな。ガイドの説明なんか最初から聞いちゃいないし。


ミンマン帝廟は古びたチャイナで、入り口に石の兵隊とか馬とか象が置いてある。兵馬俑っていうか、狛犬みたいなもんかな、階段の両脇は龍がうねうねと手すりみたいで。柱も龍で、池には蓮がピンクでびっしり。仏教っていうかやっぱり中国みたい。これがベトナムの文化なのか、微妙すぎて分からないけど。日本と中国も似てて違うから、慣れたら分かるのかも。奥に墓があるみたいだけど、一番奥の扉は開けないみたいだった。何層かの区切りで結構広かった。


カイディン帝廟は平泉の中尊寺みたいで気に入った。外側は黒く沈んだ石で、尖がった感じが悪魔の城みたいで格好いいんだ。どこかモダンだし、ディテイルがさっきょりも凝ってる気がする。ミンマンは敷地が広かったけど、ここは階段で上にもでかい。要塞みたいで、中は一部屋全部金ピカ。壁はタイルのモザイクが綺麗で、天井には睨み龍みたいなのもある。





その後でどこか、村みたいな所に着いたと思ったらカンフーだった。バスにはコリアがバラバラで三人乗ってたんだけど、カンフーはお気に召さないみたいで一人も降りてこなかったな。
赤い獅子舞みたいなので出迎えられて剣とか槍で模擬してる。頭でブロックを割ったかと思ったら喉に槍を押し付けて体重をかけて折ろうとするんだけど、勢いを付けるのに背中にブロックを置いたり。それをハンマーで叩いたり。見なきゃわかんないだろうけど、結局折れなかった。

その後でやっぱりお土産の村に連れていかれる。これはもうツアーにはセットだな、絶対。線香とかみんなが被ってる傘を作ってた。


ちょっと休憩みたいな感じで最後にトゥドゥック帝廟。この間行った桂離宮みたいだったよ。庭に池に、東屋って感じ。ここが一番広かった。広いから人もまばらに感じるし。一番おごそかで、誰も居ない所に一人で、なんとなくスタンドスティルしてた。

なんて言うか。
普段の生活から何キロ離れてる。何時間離れてる。何カ国。何が違うんだろう。

答えとか、問いなんてものでも無いんだけど、立ちつくしていて、振り返って、眺めてる景色がゆったりで。
ギャップにはまってちょっと動けなかったんだ。



町に戻って美味くもないバイキングを詰め込んで、ホテルに戻ったらすぐにバスが来る。
この国は嫌ってほど正確にバスが出るみたい。嫌になるぜ、本当に。

バスは途中、休憩を挟んでダナンを経由する。植木の形が悪フザケしてて変だ。どこかに五行山があったはずなんだけど、どれだか分かりゃしなかった。孫悟空が閉じ込められてた場所じゃなかったかな。本当はそこだとか、国境を越えてラオスに移動するかもなんて思っていたけれど、結局行けそうにもない。出発は正確なのにさ、列車と言いこのクソバスと言い、到着が倍ぐらいズレやがる。
昼にはホイアンに着くと思っていたけれど。やっとどこかのホテルに着いたと思ったら、辺りはもう暗くなっていた。

スロープの階段に腰掛けてブックを眺めてみても、ここが何処なんだか分からなかった。ホテルの女の子が話しかけてきて、値段も気にする程じゃないし、街の地図を見せて貰ったら場所も悪くない。部屋につれてってもらって、シャワーが出るのを確かめて、そのままチェックインする事にした。
明後日の夜にはハノイから飛行機に乗らないといけないし、何で移動しようか、さっきの女の子に色々聞いてたらスリーピングバスってのがあって。要は寝台のバスなんだけど、足を伸ばして寝れるんだって。
ちょっと半信半疑だったけど、面白そうだしそれが一番スケジュールに合ってたから決めたんだ。南米をブラブラしてた時はカマとかセミカマとか、フルフラットの高級(今となっちゃあタカが知れてる)シートなんかあったけど、こんなアジアであるとも思えない。クラシコじゃなけりゃあ何でもいいや。

完全に暗くなる前にちょっと街を歩いてみる。多分飯は遅くなってもどうにかなりそう。
地図を把握したら、ここは歴史的な街並みが残る通りの東端にあるらしい。シルクの服屋とかバーとか。ここの名物料理もあるみたいだし、相変わらずバイクは多いけどそんなに気にならなくなってきた。

歩いてみたら観光の出来る所ってのは大分小さいみたいだ、自転車をレンタルしようと思ったけどそれほどでもない。
一度部屋に戻って風呂に入って、散歩がてらもう一度外を歩く。

一軒だけ、この国じゃああまり見かけない店があってさ、ちゃんとした店。英語も綺麗だし、他の店みたいにしつこくないし。黄色の制服もいい感じだし。とりあえずその店に居て、もう麵は飽きてたからチャーハンと、名物みたいなホワイトローズっていうワンタンみたいな奴。それに豆腐があったから頼んでみたら、小さく切ったのを揚げてあった。

ビールを飲みながらゆっくりしてたんだけど、さっきから店の子が健気に頑張ってるのを見てさ、本当にいい子なんだぜ、ちょっと感動するぐらいだよ。多分日本だったらこれが普通な感じなんだろうけど、このクソみたいな国にあってさ、クソ白人にどんだけ無視されようが、丁寧にさ。質問されても知っている言葉で一生懸命に答えるんだ、なんか凄い。
若い子の方が食事を運んでくれるんだけど、イチイチ笑顔で「おいしー」って言いながら置いてくれる。つまみの豆を食べながら、あぁなんかいいなぁって。

その間に店の前で白人の子供がセパタクローみたいなのをはじめやがってさ。それはそれで可愛いんだけど、これ絶対邪魔なんだって思ってたら「ソーリー」って言いながらちょっとどかして、自分もちょっと加わったりしながら上手に向こうにやっちゃうんだけど、感心したね、俺ならケツを蹴り上げそうになるけど。
アイスが自慢みたいで、ニュージーランドかオーストラリアって書いてたけど、それをみんなに勧めてた。この町じゃあ結構な値段なんだけど、観光で来てる先進国からしてみたら別にどうって事ない。多分輸入してるから高いんだけど、もうボラれてるとしか思わないんだろうな、みんな。あんまり売れてなかったから自分らで食ってた。

「来遠橋、日本橋に行きたいんだけど、どのくらいかかる?」って聞いたら10キロだって。
絶対に間違ってるんだけど、多分1キロか。3ブロック先からどうのこうの言ってたけどなんだか分からなくて。とりあえずクッキーアンドクリームをコーンで一つ貰って、歩いてみる。

そんなに遅い時間じゃなかったんだけど、明かりも落ち着いていて町並みも古い感じで良かった。軒先に提燈がぶら下がってほのかで、そこに籠をヤジロベーみたいに担いでおばあちゃんが歩いてたりしていてさ。時間が400年ぐらいぶっ飛んだ感じだった。お祭りみたいなんだけど騒がしくなくて。こんな懐かしいような景色、見た事が無い、初めてなんだけど。やっぱり懐かしくてさ。
本当に綺麗だったんだ。

ここには日本人町があって、それで日本橋ってのを誰かがかけたみたいなんだけど、屋根がかかってここも提燈がかかってて、中にはお堂もあった。サルとイヌが祭られててお供えがあったり。
とりあえず明日もう一回来る事にして、溶けたアイスをボタボタと落としながら来た道を帰って、女の子に「おやすみ」って言いながら部屋へ。
この旅で初めてベトナム語を調べたんだ。ちょっと誰かに話しかけてみたくなって。

ホイアンは本当に良かった。古い感じがクスコみたいで、貿易で港な感じがバーリみたい。
でも夜と昼間のギャップはラスベガスみたいで、ちょっと明るすぎる町に昨日の雰囲気は薄れていたけれど。
観光チケットってのがあって、綴ってあるのを一枚ずつ渡して見て歩くみたい。とりあえず十枚分買ってちょっと歩いてみる。


潮洲會館から始まって、クアンコン、ホイクアンハイナム、福建會館あたりで土砂降りになって隣のイエローリバーでカオラウって饂飩みたいなのを食べてやりすごす。


陶磁器の博物館からクアンタンの家に行ってみたけど、普通の家を開放してるみたいで面白かった。タンキーとかフーンフンとか。陳祠堂って所は中でお菓子をくれるし。でもみんなグッズとか売って暮らしてるみたいで、中は売店みたいでもあるけれど。

廣肇會館、サーフィン博物館あたりでとうもろこしを食べて、日本橋でチケットを使ったら調度無くなった。一度川の方に出たり、市場に紛れ込んだりしながら昨日の「Bee's knees cafe」ビーズニーズカフェでアイスコーヒー。ここでは練乳が入った珈琲をホワイトって言うらしい。

春巻きとフォーを頼んで「カムオン」って言ってみたら「おいしー」だって。
「昨日、あなたが帰ったあと、ママがルックソーナイスって言ってたよ」
だって。なんだよ、今日ママは?今日はまだだけど、夜には来るよ。
そうか、今日はもうバスに乗って移動なんだ。オーノーって感じだったけど、冴えないよな。こんな所でもう帰り道だよ。夕前にはバスに乗って帰るだけさ。
最後に握手だけして分かれたんだ。

「さよならベトナム」
って感じで。

そこからは完全に帰り道だった。スリーピングバスは二段ベットの三列で、小さいアジア人には調度かもしれないけど余裕は無い。行きでも寄った休憩所でベトナムのコインを交換してくれるって言うから五円とか出したら五百円玉じゃないとダメだって。それってもう交換じゃないぜ、完全に価値の違いを分かってて言ってるんだ。
ちょっと寄ったフエで「わたし、あなたをみた事あります」って言われた。フエの駅で逢った客引きの子だったんだけど、全然気付かなかったんだ。全部日本語で話していたな。物覚えがいいみたい。
アルゼンチンが、信用出来ないからチケットを渡さないってゴネてた。でもそれじゃあバスに乗れないんだぜ。ずっとやりあってて面倒臭かった。

夜には雨で、ドブみたいなハノイに下ろされて、とりあえずカフェフォーコーでエッグ珈琲とか言う名物があるって言うから寄ってみたんだけど、エッグがないから普通の珈琲だって。朝食はBLTにした。
宿が無いから適当に歩いて、一応世界遺産のタンロン遺跡に行ってみるけどしょぼかった。北門は戦争の時に船舶から大砲で撃たれた跡があったけど、どこの海から撃たれたんだか。

マンゴーマニアを飲みながらホーチミンの家まで行って、B52が落ちてる池も見に行ったけど、ローカルすぎて怖いしもうさらわれそうな路地で。
時間を持てあましてついに水上人形劇を見たけれど意外に良かったよ。

お土産を漁りながらゲッコーで、クラシックなソウルかブルーズを聞いて晩飯。最後までプリンを探してたけど、全然ありつけなかった。絶対に流行ってないぜ、ハノイでは。

最後に、泊ってたホテルに戻ってみたんだ。
隣の警察にはあいつは居なかった。
「ドゥーユーリメンバーミー?」
覚えてるよ。空港までタクシーで行きたいんだけ頼めるかな。いいよ。座ってて。
「この二、三日どこに行ってたの?」
南の方。フエとホイアン。スリーピングバスで帰ってきたんだ。
良かった?

バス?バスは最悪だった。煩いし狭いし。
電話はどうしたの?レシープは貰えた?よく分からないけどなんとかなりそう。
「そうだ、ベトナムのコインが欲しいんだけど、あるかな?」

無いけどちょっと待って、探してくる。
そう言ってちょっと外に行って戻ってきたけれど、やっぱり流通してないみたいでさ。変わりに、見た事ないぐらいに小額の紙幣をくれたから、五円玉と五十円玉をあげたんだ。
見たこと無いって、穴から覗き込んでたよ。全然価値は違うんだけど、途中のアイツとは違うんだから。

そこからタクシーで運転手と、町の看板を見ながらあれは日本だ、日本の会社は素晴らしいって話。
この川は中国からずっと続いているけど、中国はクソで最低だって。なんだか話がはずんだんだけど、向こうは英語の練習をしてるみたいだった。

最後までカムオン以外のベトナム語を覚えなかったけど、まぁいいか。
お土産屋で貰った見たこと無いフルーツを齧ってみたけれど、カスカスで味も無くて、匂いも無いしさ。とりあえずリュックの脇ポケットに突っ込んで。
ちょっと名残惜しい感じで国境を戻ったんだけど。
また何年かは日本だね。

Good Morning Vietnam
-64- おはようベトナム
「イースター島に行った事があるんだって?」
今度行くから、なんか話聞かせてよ。

ジムでダラダラしていたら顔見知りに声をかけられる。遺跡が好きで沢山旅してる奴。アフリカとか、俺なんかと違って危ないとこにも行っちゃってる。
郵便局に行ったらパスポートにハンコついてくれるから行ってきなよ。後、俺が行ってた後に寿司屋が出来てたはずだから見てきて。
俺は今年ベトナムなんだけど。
そんな会話で思い出したけど、あと一週間で出発だ。流石にガイドの一冊も買ってペラペラ捲ってみた。ベトナム航空はリコンファームが必要だって言うから電話してみたんだけど、全然繋がらなくて。でも、日本の代理店に聞いたら必要なのは帰りの予約だけだって言うから現地で取る事にした。
別に帰りなんてどうでもいいし。
気づいたら今日は8月6日だ。
なんとなく会社で。
仕事があるわけでもないし。
旅行の準備があるわけでもない。
Yから「お盆はどうするの?」って。ごめん今年は帰らない。
「ひなたが楽しみにしてたから残念だね」
だってさ、参っちゃうよ、本当に。
介入が入った日にはNZ君から電話が来てた。介入おめでとう!だって。いくら儲かった?18万儲かって6万負けた。でもトータルだと全然。儲かったら俺のライブのチケット買ってよ。
儲かったらね。
NZ君はFXよりも株で生計を建ててたらしい。今度また飯でも行こうって約束してたんだけど、そんな約束沢山していて、全然行けてない気がする。FXは危ないからね、5秒もあったら元金が全額飛んでも可笑しくないだろ?それが意味分からなかったんだけどやっと分かってさ。凄い話だよこれ、ぶっ飛んでる。
あぁ、やばいぜこれ。寿命測定器ってのがあって、それによると俺はあと大体2万日と6万秒しか生きられない、なんでだか、89歳で死んでしまうらしい。タバコは蒸すか、運転はするか、運動はするか、そんな質問にイチイチ真面目に答えてたんだけど参った。
あと数十年のウチに寿命が千歳ぐらいまで延びるってゆう事実を計算に入れてないんだろうけど、それにしても短すぎるぜ、もう死ぬのが不安で夜も眠れない。あと55年しか生きられないんだからそろそろお終いさ。
なんでだか、昔お前が言っていた事を思い出してたんだ。
「人生は長い、アセらずな」
「たかだか二十五年だ。お前が小中高と教育を受けて十二年だろ?一年休んでもう一回振り出しから始めたらそれで二十五だ。百まで生きる気なら同じ事を後三回は出来るって事だ。人生は長い。歳を重ねる事にアセるなよ」
お前に言ったら信じるかな。俺たちあれから、もう十年も生きてるんだって。
今日は生まれてから何回目の朝だろう、全然覚えていない。なんでもかんでも忘れちまう。息の仕方を覚えている事が奇跡だぜってやつだ。 物語もカキョーって奴。
ベトナムにグッモーニンする前に、あの映画を見るかどうが迷ってたんだ。グッドモーニングベトナム。恋するベトナムは見たんだけど全然覚えてない。ロビンウィリアムスが戦場DJの役で出ていてイカしてるみたいなんだけど、どうせシンミリしちゃうから。
例えばロケ地を巡ろうだとか、戦場痕を見に行くなんて気は全然無いんだ。グラウンドゼロもカタコンベも、戦場にかけてある橋も見たけれど、そんなのってみんな一緒さ。シンミリしちまう。広島でダイインした事もあるけれど。とりあえず見るなら帰って来てからにするよ。
でもディエンビエンフーには行ってみてもいいな。あの漫画は好きなんだ。ジムの本棚に置いてあってたまに読んでるから。上手く言えないけどあの漫画は好きだ。
あの漫画というか、あぁゆう感じの漫画は。
残り少ない人生って奴をどう過ごそうか、とりあえず何かって時に旅に出るのは悪くない。いや、むしろいいんじゃないかってさえ思えてくる。普段のダラダラが祟って着ていく服がない。慌てて二週分洗濯したら、たったの数時間でパリパリに乾いてしまった。ちょっとバイクも走らせてみたけど、ここ数日の内では最高に暑い日だった。ヤンなっちまう。
例のロードショーで硫黄島の話を見たんだ。どうして盆休ってなるとこうも毎年、しみったれたドラマチックばかりやるんだか。ただ、パサデナで逢ったあの娘のさ、お兄さんが出てるなんて話をしていたから見てたんだよ、ラストサムライにも出てたみたいだけど。まぁ、戦争の話。
この犠牲が俺の暮らしに影響してるのは確かなんだけど、良かったのか、悪かったのか。ただ、何一つ、生きる事さえ選べなかった時代より、億千万倍も幸せだってのは確かなんだ。
関係ないけど、今夜は綺麗な満月だ。
エアコンをフルパワーで回しながら、明日は何処で寝てるんだろうなんて。こんな幸せな寝床とは、ちょっと間さようならかもしれないから。
どうせ上手く眠れない。明日からの準備はすぐに終わって、やっぱりちょっと慣れてるし、思い出したり、染み付いちまっていたり。忘れていたり。
でもこの楽しみで夜が更けていく感じは、多分何度繰り返したって変わらないんじゃないかって思う。
やっぱり眠れなくて、でも色々な夢を見た気もするし覚えてない。とりあえずKIXに向かって守備良く、二時間前にはパスポートにハンコを押されてるんだから、相変わらず行儀がいいこと。
どれだけ暇があるのか分からないけど、とりあえず本を一冊。なんの本かなんてのは別にいいけど、エロ本じゃないことだけは確かだ。それと、日本円でコーヒーを一杯。
多分、あと数時間後はバンコクで飲んでた、お茶に砂糖が入ってた感じ。やたらに甘ったるい奴。
ちょっと間こんな苦い珈琲とはさようならなんだから。

久しぶりの主食は和食か洋食かで選べたんだけど、別にフォーでも春巻きでもないし、そもそもあれは洋食でもないか。大体6時間のフライトで、一回前の旅行で降りたマニラみたいな景色に雰囲気が広がって来た。HONDAの工場が見える。やっぱりこの辺りは似たようなものなのか、土が赤っぽくて、どこか埃っぽくて。

荷物はすぐに出て来た。とりあえずどうしようか、市内までの運賃を調べながらウロウロしていたらミニバスに声をかけられる。2ドルだって。ガイド本の通りだし、それが3ドルだって4ドルだってあまり変わらない。
くっついて行って2ドルを渡そうとしたら「違う、2ドルは40,000ドン」だって。
ちょっと待って、そう言えばそれぐらい0の数が増えたような気もするけれど、そんなのチリ以来じゃないかな、でも本で見たらそう変わらない。じゃぁドルしか持ってないし、この先いくら要るか、とりあえずCitiBankのキャッシャーにおろしに行って、色々弄ってたら、いつの間にかさっきの呼び込みが後ろに立っててゾッとした。6,000,000か8,000,000がとりあえずデフォルトで選べる高額な選択種だったんだけど、6,000,000を押そうとしたら、
「それじゃスモールすぎる」
って勝手にデカい方を押される。
あぁなんだか不味いぜこれ。
ミニバスに戻って40,000を渡そうとしたらまた「ノー」だって。何が?400,000?2,000?2,000足りないとか、いや400,000だとか、レートを計算してみろって言うからiPhoneを出して弄ったり。そしたら金を触ってくるしもの凄い怪しい。
もうダメだこれ、って言うかお前今俺の金を盗っただろ?
「盗ってない。数えてみろよ」
大丈夫だ、金は盗られてない。もう降りよう。
待てよ、前のバスが2ドルだ、別れ際にピースするそいつが、2ドルなのか、グッドバイなのか。今思えばどっちだったのか。
どうでもいいか。
バスはスグに走り出して、しばらくして落ち着いてからもう一回金を数えてみたんだけど、やられたよ。金はあるんだけど、電話を盗られてたんだ。
あーぁ、もう絶対に戻ってこないぜ、全然気付かなかった。
ようこそ、ベトナムへ!って感じさ、チキショウ。
幸先のいい朝だぜ。
とりあえずハノイの街に着いたけどここが何処か分からない。適当に歩いていたらでかい池が見えて、地図を見る限りこの北が旧市街でホテルとか。多分カオサンみたいな安宿もあるはずで歩いていく。
裸足に直接スニーカーを履いてたら踵が靴擦れしてるし。とりあえず警察を探して歩いてさ、小一時間話し混んでたんだけど、英語の訛りがキツいし、そもそも英語もそんなに分からないし。でも電話を貸してくれたり、日本語の分かるツアコンに繋いでくれたり親切ではある。
ちょっと待って、とりあえずネットを探して回線を止めないと。その前にmobilemeのfind iPhoneで所在地を確かめないと。
ネットカフェを探して歩くけど、最近はそこら中でWifiが飛んでるし流行らないみたい。なんとか探してみたけれど、電話も繋がらないし、検索も出来ないし。もうお手上げで回線だけ切っておいた。
交番に戻るとさっきの奴は居なくて、代わりの変なのが居たんだけど英語があんまり伝わらなくて近くのホテルに連れていかれた。
受付と英語で通訳してもらう。
さっきの奴は?
もう帰ったよ。明日の朝は来るけど。
電話盗られたし空港かミニバスの会社に電話してくれよ。
無駄だね、空港なんか管理してないしミニバスだって幾らあるか分かったもんじゃない。
警察で盗難届けを貰って、保険を降ろすのが一番さ。
とりあえずお前はもういいし、明日あいつにまた話すから。
それで警察は返したんだけど。
「ところでここ一泊いくら?」
今日はもうここでビバークだ。
とりあえずだ、ハロン湾には行きたい。ここに居たってどうしょうもないけれどある程度の事はしないと。何度か警察だとか大使館にも行かないといけない気もするし、とりあえずハロン湾には先に行こう。
「ハロン湾に行きたいんだけど幾ら?」
湾で一泊とか、食事が良いのとか、カヤックで移動するのとかあるけれど。
日帰りでいいや。後、フォーを喰うからどこかいい店があれば。
荷物を置いて外に出ると暗かった。昼にはもうハノイの街に着いていたんだから、大分時間を使った。何かを見て歩くでも無く雰囲気を確かめていたけれど、雑多な感じがカイロとか、バンコクあたりと変わらない。目新しいのは食べ物だけかも。露天でイスに座って食べるのも良かったけれど、今日は中で。ちょっと警戒していた。
あぁ、馬鹿みたい。星も見えないし。バイクは五月蠅いし。
「明日、帰って来てから何処に行くの?」
「ポリスかな?」
「サパがいいよ、民族が沢山住んで居て、みんな行って良かったって言う」
「いや、でもポリスに」
「ポリスは24時間開いてるから、行くなら今行けばいい」

考えとくよ。
とりあえずフォーを喰おうと思ったら麺が米じゃないみたいで黄色だった。普通に美味しいラーメンみたい。足も皮膚が染みる感じだし。あぁ冴えない。とりあえず時差って程じゃないけど眠い。全部明日だ。
こんな所に来てまで手続きに追われるなんてチキショウ。
次の日、いつもは電話で起きてたんだけど無いから、しょうがなく時計のタイマーで起きた。注意深く聴いてないと小さくてさ。起きやしないし眠れてるんだか。
同じホテルからもう一人ツアーに参加するみたいで、一緒に歩きながら聞いたらロシアからで、デュマって名前らしい。そう言えば南米とかヨーロッパじゃあロシア人に会わなかったけど、ここらじゃあ良く見かける。それにチャイナとコリア。
派手なクラクションを鳴らしながら細い道を走ってく。まったく、もう何に鳴らしてるのか分かりゃしないぜ、常に鳴ってるから慣れちゃってるし。途中、でかいお土産屋で休憩して、湾までは特に何も無く。
名簿に名前を書いていたら日本語の名前があって声をかけてみる。
なんとなく一緒で。 ワザとらしく古びた船に乗って、沖に出たらマチュピチュが海に沈んでるみたいだった。中国の山水画の世界。放射能で育った松島みたいだ。


ガイドがなんか言ってるけど相変わらず分からない。ビールが30,000だって。日本とそんなに変わらない値段だけどみんな普通に飲んでる。あまり停泊する事もなく、広大な岩の間をスルスルと。風が気持ち良くて、夕立もあったけど涼しいぐらい。そう言えば雨期のはずだ。

途中、途中で家が浮かんでいてさ、何か漁業の小屋なのか住んでいるのか、そのウチの一個に上陸したら生け簀に見た事がない魚とか蟹とか。ボートでフルーツを売りに来る子供とか、ここでカヤックをやるみたいだった。
デュマも俺も別に乗りたくもなかったんだけど、日本人の男の子が乗りたそうで、二人乗りだから乗ってやっても良かったんだけど、その子は荷物を預かってるみたいで乗らなかった。
ドイツ人の可愛い子が二人、水着でカヤックに乗ってはしゃいでた。それを口説こうとしてたアメリカ人がフクシマで働いてるんだか働いてたんだか、自慢げにしてる。昼飯は他に中国のビジネスマンのおっさんと喰ったけど、いかにもな奴だった。

むちゃくちゃ広い。似たようなマチュピチュがボコボコ立っていて、これをクライミング出来る場所があるはずなんだけど見あたらなかった。神秘的でカンフーな感じ。ボーッとしてるのが一番いいんだけど、ここに一泊はやっぱりやめておいて良かった。

山の一つの中に洞窟があってさ、それを歩くんだけど変なライトアップが笑える。人工的な噴水があったりして、なんかカルチャーが合わなくて。
何時間か漂って、日が暮れる前にお土産屋に寄ってトンボ帰り。
「ご飯でも行こうよ」
知り合った子と飯に行く約束をして、バスから降りたらデュマにも誘われる。ちょっと約束があるから三人で行こうよ。それでロビーで待ってたんだけど、なんか知らないけれど宿のスタッフの賄いをデュマが喰ってるし、良く分からないから置いて行った。

ウロウロとベトナムっぽい食べ物を探して歩いてたんだけど、出てきた麺は昨日と一緒だった。なんか、スイーツが色々あるみたいだし探そうよ。それでまたウロウロして見つけたのはタピオカに氷を混ぜて食べる奴と、紫芋に練乳みたいな奴。サトウキビのお茶がやけに旨かった。
「プリンが美味しいみたいなんだけど」
探して歩いたんだけどもう見つからなくて。見つけたら喰ってみるよ。
「明日の朝にホーチミンに飛ぶんです」
何日か前に着いて明日は移動するんだって。水上劇は見た?僕はああゆうエンターテイメント興味ありますから。そんな事言われたら俺も見てみようかなんて。
ちょっと間だったけど連絡先を交換して別れた。


サパはどうする?
「明日の夜にフエに移動したいからやめておくよ」
「テレフォンはどうしたの?」
「明日の昼に警察行ってみるけど」
「警察は今行って、昼はサパに行きなよ。帰って来てから電車も間に合うし」
どうせ行くならゆっくり行きたいし、ここには戻ってくると思う。とりあえず明日はやめておくよ。
「おやすみ」
また明日。
チェックアウトして荷物を預ける。やっと落ち着いて歩ける気がするけど、とりあえず一昨日の警察の前を歩いてもアイツは居なかった。もう電話なんてどうでも良くなってきたんだけどお礼を言いたくて。
でかい警察を探して地図を見ていたらH.I.S.の支店を見つけてさ。行ってみる事にして歩いたら今日もスコールで蒸し暑い。

「第三者証明書なら出せますけど」
警察に行ってもラチがあかないし、そもそもあいつら分かってんの?って事だけど多分全然分かっちゃない。これって大使館とか行くものですか。いや、良くある話だし、多分完全に売り飛ばされてますね、こちらで書類を作ってあげて、保険に交渉するのが一番話しになると思いますけど。
って良く分からなかったけどとりあえず証明書ってのを作ってもらって、警察はまた考えておくよ、アイツがどうにかしてるかもしれないし。
書類はタダだったしそこで売ってた春巻きキューピーとアオザイキューピーを(片方)買って、そう言えばアオザイの綺麗な子なんて全然見てないな。傘を被った婆ばっかり。
近所にベトナム航空があったからリコンファームをして、そのまた近所のハノイ大教会を見に行こうとしてちょっと道に迷って。
レーニン広場の像の下で腰掛けてたら声をかけられる。

「すみません、日本の方ですか」
そうだけど。一瞬良くある苦学生がお金をせびってお香か爪楊枝でも売ってるのかと思ったけど、やけに日本語が上手でちゃんと見てみたら日本の子だった。
「ここどこですか」
え?地図持ってるだろ、磁石までさ。教会を探して歩いて道を外れたんだけど、これがレーニンだからここかな。
ありがとうございます。
「ところでちょっと聞いて貰っていいですか?」
なんだか訳が分からなかったけど別にキチガイって感じでもないし、要するに話を聞いて欲しかっただけみたいで、こんな話。「私、馬鹿なんです」
世界一周をしてるんです、今日で25日目なんですけど、ハノイに着いて、タクシーにガイドブックを見せて、ゲストハウスに行ってって。それで普通に着いてチェックインして、出かけて、ガイドブックを見ながら戻って来たら、違うゲストハウスだったんです、チェックインしたの。

よく分からなかったけど、昨日チェックインしたのはガイドブックに乗ってた場所じゃなかった。そのまま一泊して出かけたら何処だか分からないその宿に戻れなくなった。そして荷物がごっそり無くなった。というかそこにあるんだけど。
「ずっと、一件ずつ宿を巡ってるんだけど見つからなくて」
あぁ、そう言う事か。宿を見失う事は二回ぐらいあったけど、なんとか戻れたよ。雰囲気で。そういうゲストハウスなら旧市街にあるんじゃないかな。
中国のビザを取ろうとしてタクシーですぐだったから、この辺りだと思うけど。大使館にも行ったけど、そんな話初めてだからどうしていいか分からないって。でもイロイロ電話してくれていて、でももう多分無理。あぁ、カンボジアで子供に貰ったアクセサリーが。
パスポートとか、お金とカメラもあるし、服とパソコンが無くなったって。
あぁ、俺一昨日iPhone盗られたけど、なんだかどうでもいいぐらい可哀想になってきた。
もう、どうしたらいいか分からなくて。このまま日本に帰るのか。お金はあるからもう一度揃えて続けるか。
ステイオアゴーナウ!って感じだね、まさしく。
「自分だったらどうしますか?」
そうだなぁ。俺も一周してた事があるけど。どうしたかなぁ。
なんか話が長くなりそうだし、そこの旅行代理店で相談乗ってくれるかもしれないから連れて行ってあげるよ。ていうかメシ食った?「食べました」
じゃあ珈琲でもいい?奢るし。

いいんですか?何日居るんですか?一週間だけど、今日は夜に電車に乗るだけで時間があるから。
陽を避けてお店に。言っておくけどやっぱり今だに、旅先の女の子に声をかけるなんてしないんだけど。世界一周なんてしてる女の子に初めて会ったから。華奢で、小さくて、真っ黒に焼けていて。
自分ならどうしたか分からないけど、一度引き返したらさ。
次のスタートはもの凄い体力を使うと思うよ。女の子だし、もう出してもらえないんじゃない?
そう、一周じゃないと意味無いんです。
俺はそうは思わなかったけど、後半は多分こだわってた。危なかったら帰ろうとは思ってた。生きて帰るのが一番の条件だったから。どこがよかった?南米とか。アジアは全然行ってなかったから、今になって歩いてる。
「色々あるから、行った方がいいよ」
言おうとしてやめた。女の子だし。死んだらどうする?でもそれだけの価値はある。でも決めるのは本人だし。行っちまえよ。答えは決まってるんだろ。聞いてほしかっただけなんだ。いつだってそうなんだろ?
全部言おうとしたけど、やめておいたんだ。色々ってなんだ。
話していたら近所に住んでた時があったみたいでそんな話。うまい中華屋の話とか。旅のアドバイスみたいな事も話したけれど、空港でいきなり電話の盗難にあうような奴のアドバイスなんてどうだよ。
その後どうしたのかが気になって、連絡先をまた聞いておいた。ひとしきり話したらスッキリしたみたいで。
「今日はいい人に会った。良かった」

だって。誰でも良かったんだろうけど。
旅行の代理店まで着いていこうとしてやめた。やっぱり苦手なんだ、それにさ、決断するって言う時にあまり関わりたくなかったというか。自分でやらせてあげたいって言うか。でも、心の中ではさ。分かるかな。
その後の事はもう知らない。俺は俺でウロウロして、ホーチミン廟のKEEPOUTに三回ぐらい引っかかって怒られて。

なんだかメキシコシティの中央広場みたい。でも軍人が多いし愛想もないし、

一柱寺は恐ろしくショボイし。チェーン店のフォー屋に寄ったり。文廟に寄ったり。リュックが無いから身軽でいいけど。






電車に間に合わなそうでタクシーに乗ったら、セミオートみたいなレバーをカチカチやってメーターを上げていくからすぐに降りた。数百円だけど、どうなんだろう。毎日そんな事して暮らしてるんだぜ、死ねばいいのに。
ホテルの用意してくれたタクシーは安心で、そのままリュックをピックアップして駅まで。

寝台は三段だけどカーテンなんか無くて。空港で買った本をずっと読んでたんだ、多分携帯があったらそいつをずっといじくり回してたんだろうけど。
白人の高笑いを聞きながら、いつの間にか寝てた。

起きたら雨が降っていた。どれぐらいかってのは窓ガラスに打ち付ける感じで分かりそうなもんだけど、何しろ走ってるんだから強いのか弱いのか。イタリアのクシェットって程快適じゃないし、エジプトの寝台もこれよりは良かったし、とにかく今までで一番狭くて五月蠅い。
窓から眺める家がボロすぎて、作ってる所なのか、壊してるのか、廃墟なのか住んでいる人が居るのか、全然分からないし鉛筆みたいに細長いし。そう言えばエジプトの寝台からの眺めもこんなだったな。あれはいつの時だっけ。すっかり忘れちまったけど。
たまに停車すると白人が酔っぱらって外のベトナム人に声をかけてる。それが茶化してるようにしか見えない。言葉が通じてないから向こうは笑って手を振るだけなんだけど。
こういう奴らがどっかのビーチのカフェで爆破されたりするんだぜ、きっと。
時間になっても全然着かないし、駅ごとにアナウンスがあるわけでもないから、ここが何処だか分からない。たまにフエはまだか?って誰かに聞くんだけど、その度に「あと一時間」とか二時間とか、その何時間かもとっくに過ぎちゃってるんだけど、昼を回ってようやっと着いた。

客引きがゲストハウスの安い値段を言ってくるんだけど、今日はシャワーの着いた部屋が良かったから少し歩いて自分で探す事にした。
川の向こうが旧市街、王宮とかがあるんだろうけど伝って歩いてみても代わり映えのしない景色。一人だけ熱心に日本語で話しかけてくる若い子がいて、でもほとんど無視してた。いつも関心するけれど、多分こいつらってイロイロな言葉で会話が出来るんだぜ、たまに中国とか韓国語でも話しかけられる。バイリンガルどころじゃないんだ。
少しお店が出てきて、宿を縫って歩くと市場とか、裏路地みたいな感じになってくる。鶏とか犬がペタペタ歩いていて、見上げたらけっこう大きいホテルだった。
「フエクイーンホテル」
星が三つ並んでたけど、そうゆうデザインなのか本当になんかのランクなのか良くわからなかった。小さいプールもあるし、レセプションが制服を着てるからそれなりって感じだ。三十ドルで一泊だって。今のレートなら二千円とちょっとだし。今日はここにする事にした。

とりあえず風呂だ。その後で飯を食ってちょっと観光をして。
部屋は七階の眺めがいいところで、曇っているけれどかなり見渡せる。なんだか奥の方はビルも建っているしそこそこ文明もある感じ。軽く汗を流して服を変えて、自転車を借りて近所のHanhハーンって店に行ってみる。バインセオってお好み焼きみたいな奴を良くベトナム料理屋で食べてたんだけど、その小さい奴でバインコアイってのがあるらしい。それって王宮料理なんだけど、行ってみたら薄汚い、似ても似つかないボロ店だった。

とりあえずそれを頼んで寛いでる。客は他に居なくて、店の女の子が愛想よく運んでくれてさ。笑顔で葉っぱをつまんで皿に盛って、メインを一口分よそってタレをかけて見本を作ってくれる。ニョクマムかなんか。ピーナッツみたいなソースで美味しかった。それとネムルイって言う豚肉のつくねだって。茎みたいなのに巻きつけられて出てくるんだけど、この茎も食べるらしい。ちょっと試してみたけれどただの植物で食えたもんじゃなかったよ。硬いし。つくね自体は美味しかった。

だまって本を読みながらダラリしてたらスコールで。ちょっとま雨で宿ってたけど、時間も無いしとりあえず川を渡ってみた。
向こう岸は一帯が遺跡みたいでかなり広い。碁盤目に区切られて建物があったり。もう整備もされてない廃墟だったり。その割りに植木は亀の形にカッティングされてたり。コスプレで写真をとってくれたり色々。




なんだか中国みたいだった。それかズレた日本か。日本も古い建物は中国っぽかったりするけれど、もっともっと濃くて。ほとんど漢字だし、龍とか鳳凰とか。



時々スコールが激しく降るけれど、ちょっと待ってたらすぐに止む。象にも乗れるし。蓮の池に良く似合う。


そんなにゆっくりしてた訳じゃないけれど時間も無くて、とりあえずちょっと遠くのティエンムー寺って奴を見て帰ろうと思ってさ。ずっと漕いでるんだけどどうも遠すぎて。それにチャリがやたらに遅い。次第に心細くて、もう通り過ぎたんじゃないかって思えてきてさ。ジュースを買いながら店の小さい子に聞いたらあと一キロだって。
これはもう十キロはあるなって思って休憩していた。
その子を写真に撮ろうとしたら恥ずかしくて逃げてしまって。
パラパラと雨が降って。

結構な距離を覚悟してたら本当に一キロぐらいで着いたけど、どうもしょぼい。
子供の僧侶が変なカンフーの髪型でサッカーをしてたり、セパタクローみたいだったり。とにかく今まで見たどの僧侶よりもアクティブだった。色々落胆して、来た時と違う道、列車の線路のわき道を自転車で走る事にして後悔。

一本道で結構長いし。両脇はクソみたいな手すりで、後ろから原付が煽ってくるしさ。やんなっちまう。
フエ大教会を横目に、でかいイオンみたいなのに行ってみた。

フォンフープラザって言うらしい。三階建てで作りはオーストラリアで見たことあるような無いような。でも中身は笑っちゃうような異世界でさ。フードコートでカンフーの子供がゲームに熱中してるところなんか、特に面白かったよ。馬鹿にしてる訳じゃないけど、あまりにイオンで。あまりに異質でさ。
日用品の広いコーナーに入ろうとしたら入り口でミニバックを透明な袋に入れられてパウチされた。万引き防止みたい。
アメリカみたいに業務スーパーサイズもあるし、アジアサイズも。日本のお菓子がそのままのパッケージで売られていたり。中国のも。

しばらく居たけれど、ここでご飯を食べるのも味気ないから、なんとなく外に出てみたんだけど。
やたらに交通量が多くて参った。もう暗いし。ゆっくり走っても横から突っ込まれそうになるし、止ったら止ったで危ないし、もう気が気じゃないんだぜ、本当に。歩いてたほうがよっぽど安全さ。

薄汚い近所に帰ってきて、二三本奥に行ったらお店なんかも沢山あった。
全然違うけど、さっきのイオンといいこんな感じといい、ケアンズを思い出していたんだ。
ただ単にあの町が俺にとってはじめての海外で、ここが久しぶりの海外だってだけかもしれないけれど。
なんとなく似てる気がして。
スアンチャンって店で春巻きを頼んだらやたらに美味かった。あまりに美味くて半分テイクアウトしたぐらい。ビールとフォーも頼んで、他にもメニューはあったけど、なんだか知らないけどこの春巻きだけは別格に美味かった。
ケロンパに似たおかみさんがさ、なんだか知らないけど俺のテーブルに座って。放っておいたらいつの間にか俺のガイドブックを熟読してた。

言葉も文字も分からないはずなのにフエのページを開いて自分の店をみつけてさ。ライバル店もみつけて、なんでこの店は写真が載ってるのに、うちは無い訳?って言ってた。

あと、メニューとガイドブックを照らし合わせてこれはある。これもある。なんでもある。何を食べる?ってアピールされるんだけど、もう腹も十分で。
何本か包んでもらった春巻きを持って宿までフラフラと。それにしてもケロンパに似てた。
とりあえず明日の旅程を組まないと。

「イースター島に行った事があるんだって?」
今度行くから、なんか話聞かせてよ。

ジムでダラダラしていたら顔見知りに声をかけられる。遺跡が好きで沢山旅してる奴。アフリカとか、俺なんかと違って危ないとこにも行っちゃってる。
郵便局に行ったらパスポートにハンコついてくれるから行ってきなよ。後、俺が行ってた後に寿司屋が出来てたはずだから見てきて。
俺は今年ベトナムなんだけど。
そんな会話で思い出したけど、あと一週間で出発だ。流石にガイドの一冊も買ってペラペラ捲ってみた。ベトナム航空はリコンファームが必要だって言うから電話してみたんだけど、全然繋がらなくて。でも、日本の代理店に聞いたら必要なのは帰りの予約だけだって言うから現地で取る事にした。
別に帰りなんてどうでもいいし。
気づいたら今日は8月6日だ。
なんとなく会社で。
仕事があるわけでもないし。
旅行の準備があるわけでもない。
Yから「お盆はどうするの?」って。ごめん今年は帰らない。
「ひなたが楽しみにしてたから残念だね」
だってさ、参っちゃうよ、本当に。
介入が入った日にはNZ君から電話が来てた。介入おめでとう!だって。いくら儲かった?18万儲かって6万負けた。でもトータルだと全然。儲かったら俺のライブのチケット買ってよ。
儲かったらね。
NZ君はFXよりも株で生計を建ててたらしい。今度また飯でも行こうって約束してたんだけど、そんな約束沢山していて、全然行けてない気がする。FXは危ないからね、5秒もあったら元金が全額飛んでも可笑しくないだろ?それが意味分からなかったんだけどやっと分かってさ。凄い話だよこれ、ぶっ飛んでる。
あぁ、やばいぜこれ。寿命測定器ってのがあって、それによると俺はあと大体2万日と6万秒しか生きられない、なんでだか、89歳で死んでしまうらしい。タバコは蒸すか、運転はするか、運動はするか、そんな質問にイチイチ真面目に答えてたんだけど参った。
あと数十年のウチに寿命が千歳ぐらいまで延びるってゆう事実を計算に入れてないんだろうけど、それにしても短すぎるぜ、もう死ぬのが不安で夜も眠れない。あと55年しか生きられないんだからそろそろお終いさ。
なんでだか、昔お前が言っていた事を思い出してたんだ。
「人生は長い、アセらずな」
「たかだか二十五年だ。お前が小中高と教育を受けて十二年だろ?一年休んでもう一回振り出しから始めたらそれで二十五だ。百まで生きる気なら同じ事を後三回は出来るって事だ。人生は長い。歳を重ねる事にアセるなよ」
お前に言ったら信じるかな。俺たちあれから、もう十年も生きてるんだって。
今日は生まれてから何回目の朝だろう、全然覚えていない。なんでもかんでも忘れちまう。息の仕方を覚えている事が奇跡だぜってやつだ。 物語もカキョーって奴。
ベトナムにグッモーニンする前に、あの映画を見るかどうが迷ってたんだ。グッドモーニングベトナム。恋するベトナムは見たんだけど全然覚えてない。ロビンウィリアムスが戦場DJの役で出ていてイカしてるみたいなんだけど、どうせシンミリしちゃうから。
例えばロケ地を巡ろうだとか、戦場痕を見に行くなんて気は全然無いんだ。グラウンドゼロもカタコンベも、戦場にかけてある橋も見たけれど、そんなのってみんな一緒さ。シンミリしちまう。広島でダイインした事もあるけれど。とりあえず見るなら帰って来てからにするよ。
でもディエンビエンフーには行ってみてもいいな。あの漫画は好きなんだ。ジムの本棚に置いてあってたまに読んでるから。上手く言えないけどあの漫画は好きだ。
あの漫画というか、あぁゆう感じの漫画は。
残り少ない人生って奴をどう過ごそうか、とりあえず何かって時に旅に出るのは悪くない。いや、むしろいいんじゃないかってさえ思えてくる。普段のダラダラが祟って着ていく服がない。慌てて二週分洗濯したら、たったの数時間でパリパリに乾いてしまった。ちょっとバイクも走らせてみたけど、ここ数日の内では最高に暑い日だった。ヤンなっちまう。
例のロードショーで硫黄島の話を見たんだ。どうして盆休ってなるとこうも毎年、しみったれたドラマチックばかりやるんだか。ただ、パサデナで逢ったあの娘のさ、お兄さんが出てるなんて話をしていたから見てたんだよ、ラストサムライにも出てたみたいだけど。まぁ、戦争の話。
この犠牲が俺の暮らしに影響してるのは確かなんだけど、良かったのか、悪かったのか。ただ、何一つ、生きる事さえ選べなかった時代より、億千万倍も幸せだってのは確かなんだ。
関係ないけど、今夜は綺麗な満月だ。
エアコンをフルパワーで回しながら、明日は何処で寝てるんだろうなんて。こんな幸せな寝床とは、ちょっと間さようならかもしれないから。
どうせ上手く眠れない。明日からの準備はすぐに終わって、やっぱりちょっと慣れてるし、思い出したり、染み付いちまっていたり。忘れていたり。
でもこの楽しみで夜が更けていく感じは、多分何度繰り返したって変わらないんじゃないかって思う。
やっぱり眠れなくて、でも色々な夢を見た気もするし覚えてない。とりあえずKIXに向かって守備良く、二時間前にはパスポートにハンコを押されてるんだから、相変わらず行儀がいいこと。
どれだけ暇があるのか分からないけど、とりあえず本を一冊。なんの本かなんてのは別にいいけど、エロ本じゃないことだけは確かだ。それと、日本円でコーヒーを一杯。
多分、あと数時間後はバンコクで飲んでた、お茶に砂糖が入ってた感じ。やたらに甘ったるい奴。
ちょっと間こんな苦い珈琲とはさようならなんだから。

久しぶりの主食は和食か洋食かで選べたんだけど、別にフォーでも春巻きでもないし、そもそもあれは洋食でもないか。大体6時間のフライトで、一回前の旅行で降りたマニラみたいな景色に雰囲気が広がって来た。HONDAの工場が見える。やっぱりこの辺りは似たようなものなのか、土が赤っぽくて、どこか埃っぽくて。

荷物はすぐに出て来た。とりあえずどうしようか、市内までの運賃を調べながらウロウロしていたらミニバスに声をかけられる。2ドルだって。ガイド本の通りだし、それが3ドルだって4ドルだってあまり変わらない。
くっついて行って2ドルを渡そうとしたら「違う、2ドルは40,000ドン」だって。
ちょっと待って、そう言えばそれぐらい0の数が増えたような気もするけれど、そんなのチリ以来じゃないかな、でも本で見たらそう変わらない。じゃぁドルしか持ってないし、この先いくら要るか、とりあえずCitiBankのキャッシャーにおろしに行って、色々弄ってたら、いつの間にかさっきの呼び込みが後ろに立っててゾッとした。6,000,000か8,000,000がとりあえずデフォルトで選べる高額な選択種だったんだけど、6,000,000を押そうとしたら、
「それじゃスモールすぎる」
って勝手にデカい方を押される。
あぁなんだか不味いぜこれ。
ミニバスに戻って40,000を渡そうとしたらまた「ノー」だって。何が?400,000?2,000?2,000足りないとか、いや400,000だとか、レートを計算してみろって言うからiPhoneを出して弄ったり。そしたら金を触ってくるしもの凄い怪しい。
もうダメだこれ、って言うかお前今俺の金を盗っただろ?
「盗ってない。数えてみろよ」
大丈夫だ、金は盗られてない。もう降りよう。
待てよ、前のバスが2ドルだ、別れ際にピースするそいつが、2ドルなのか、グッドバイなのか。今思えばどっちだったのか。
どうでもいいか。
バスはスグに走り出して、しばらくして落ち着いてからもう一回金を数えてみたんだけど、やられたよ。金はあるんだけど、電話を盗られてたんだ。
あーぁ、もう絶対に戻ってこないぜ、全然気付かなかった。
ようこそ、ベトナムへ!って感じさ、チキショウ。
幸先のいい朝だぜ。
とりあえずハノイの街に着いたけどここが何処か分からない。適当に歩いていたらでかい池が見えて、地図を見る限りこの北が旧市街でホテルとか。多分カオサンみたいな安宿もあるはずで歩いていく。
裸足に直接スニーカーを履いてたら踵が靴擦れしてるし。とりあえず警察を探して歩いてさ、小一時間話し混んでたんだけど、英語の訛りがキツいし、そもそも英語もそんなに分からないし。でも電話を貸してくれたり、日本語の分かるツアコンに繋いでくれたり親切ではある。
ちょっと待って、とりあえずネットを探して回線を止めないと。その前にmobilemeのfind iPhoneで所在地を確かめないと。
ネットカフェを探して歩くけど、最近はそこら中でWifiが飛んでるし流行らないみたい。なんとか探してみたけれど、電話も繋がらないし、検索も出来ないし。もうお手上げで回線だけ切っておいた。
交番に戻るとさっきの奴は居なくて、代わりの変なのが居たんだけど英語があんまり伝わらなくて近くのホテルに連れていかれた。
受付と英語で通訳してもらう。
さっきの奴は?
もう帰ったよ。明日の朝は来るけど。
電話盗られたし空港かミニバスの会社に電話してくれよ。
無駄だね、空港なんか管理してないしミニバスだって幾らあるか分かったもんじゃない。
警察で盗難届けを貰って、保険を降ろすのが一番さ。
とりあえずお前はもういいし、明日あいつにまた話すから。
それで警察は返したんだけど。
「ところでここ一泊いくら?」
今日はもうここでビバークだ。
とりあえずだ、ハロン湾には行きたい。ここに居たってどうしょうもないけれどある程度の事はしないと。何度か警察だとか大使館にも行かないといけない気もするし、とりあえずハロン湾には先に行こう。
「ハロン湾に行きたいんだけど幾ら?」
湾で一泊とか、食事が良いのとか、カヤックで移動するのとかあるけれど。
日帰りでいいや。後、フォーを喰うからどこかいい店があれば。
荷物を置いて外に出ると暗かった。昼にはもうハノイの街に着いていたんだから、大分時間を使った。何かを見て歩くでも無く雰囲気を確かめていたけれど、雑多な感じがカイロとか、バンコクあたりと変わらない。目新しいのは食べ物だけかも。露天でイスに座って食べるのも良かったけれど、今日は中で。ちょっと警戒していた。
あぁ、馬鹿みたい。星も見えないし。バイクは五月蠅いし。
「明日、帰って来てから何処に行くの?」
「ポリスかな?」
「サパがいいよ、民族が沢山住んで居て、みんな行って良かったって言う」
「いや、でもポリスに」
「ポリスは24時間開いてるから、行くなら今行けばいい」

考えとくよ。
とりあえずフォーを喰おうと思ったら麺が米じゃないみたいで黄色だった。普通に美味しいラーメンみたい。足も皮膚が染みる感じだし。あぁ冴えない。とりあえず時差って程じゃないけど眠い。全部明日だ。
こんな所に来てまで手続きに追われるなんてチキショウ。
次の日、いつもは電話で起きてたんだけど無いから、しょうがなく時計のタイマーで起きた。注意深く聴いてないと小さくてさ。起きやしないし眠れてるんだか。
同じホテルからもう一人ツアーに参加するみたいで、一緒に歩きながら聞いたらロシアからで、デュマって名前らしい。そう言えば南米とかヨーロッパじゃあロシア人に会わなかったけど、ここらじゃあ良く見かける。それにチャイナとコリア。
派手なクラクションを鳴らしながら細い道を走ってく。まったく、もう何に鳴らしてるのか分かりゃしないぜ、常に鳴ってるから慣れちゃってるし。途中、でかいお土産屋で休憩して、湾までは特に何も無く。
名簿に名前を書いていたら日本語の名前があって声をかけてみる。
なんとなく一緒で。 ワザとらしく古びた船に乗って、沖に出たらマチュピチュが海に沈んでるみたいだった。中国の山水画の世界。放射能で育った松島みたいだ。


ガイドがなんか言ってるけど相変わらず分からない。ビールが30,000だって。日本とそんなに変わらない値段だけどみんな普通に飲んでる。あまり停泊する事もなく、広大な岩の間をスルスルと。風が気持ち良くて、夕立もあったけど涼しいぐらい。そう言えば雨期のはずだ。

途中、途中で家が浮かんでいてさ、何か漁業の小屋なのか住んでいるのか、そのウチの一個に上陸したら生け簀に見た事がない魚とか蟹とか。ボートでフルーツを売りに来る子供とか、ここでカヤックをやるみたいだった。
デュマも俺も別に乗りたくもなかったんだけど、日本人の男の子が乗りたそうで、二人乗りだから乗ってやっても良かったんだけど、その子は荷物を預かってるみたいで乗らなかった。
ドイツ人の可愛い子が二人、水着でカヤックに乗ってはしゃいでた。それを口説こうとしてたアメリカ人がフクシマで働いてるんだか働いてたんだか、自慢げにしてる。昼飯は他に中国のビジネスマンのおっさんと喰ったけど、いかにもな奴だった。

むちゃくちゃ広い。似たようなマチュピチュがボコボコ立っていて、これをクライミング出来る場所があるはずなんだけど見あたらなかった。神秘的でカンフーな感じ。ボーッとしてるのが一番いいんだけど、ここに一泊はやっぱりやめておいて良かった。

山の一つの中に洞窟があってさ、それを歩くんだけど変なライトアップが笑える。人工的な噴水があったりして、なんかカルチャーが合わなくて。
何時間か漂って、日が暮れる前にお土産屋に寄ってトンボ帰り。
「ご飯でも行こうよ」
知り合った子と飯に行く約束をして、バスから降りたらデュマにも誘われる。ちょっと約束があるから三人で行こうよ。それでロビーで待ってたんだけど、なんか知らないけれど宿のスタッフの賄いをデュマが喰ってるし、良く分からないから置いて行った。

ウロウロとベトナムっぽい食べ物を探して歩いてたんだけど、出てきた麺は昨日と一緒だった。なんか、スイーツが色々あるみたいだし探そうよ。それでまたウロウロして見つけたのはタピオカに氷を混ぜて食べる奴と、紫芋に練乳みたいな奴。サトウキビのお茶がやけに旨かった。
「プリンが美味しいみたいなんだけど」
探して歩いたんだけどもう見つからなくて。見つけたら喰ってみるよ。
「明日の朝にホーチミンに飛ぶんです」
何日か前に着いて明日は移動するんだって。水上劇は見た?僕はああゆうエンターテイメント興味ありますから。そんな事言われたら俺も見てみようかなんて。
ちょっと間だったけど連絡先を交換して別れた。


サパはどうする?
「明日の夜にフエに移動したいからやめておくよ」
「テレフォンはどうしたの?」
「明日の昼に警察行ってみるけど」
「警察は今行って、昼はサパに行きなよ。帰って来てから電車も間に合うし」
どうせ行くならゆっくり行きたいし、ここには戻ってくると思う。とりあえず明日はやめておくよ。
「おやすみ」
また明日。
チェックアウトして荷物を預ける。やっと落ち着いて歩ける気がするけど、とりあえず一昨日の警察の前を歩いてもアイツは居なかった。もう電話なんてどうでも良くなってきたんだけどお礼を言いたくて。
でかい警察を探して地図を見ていたらH.I.S.の支店を見つけてさ。行ってみる事にして歩いたら今日もスコールで蒸し暑い。

「第三者証明書なら出せますけど」
警察に行ってもラチがあかないし、そもそもあいつら分かってんの?って事だけど多分全然分かっちゃない。これって大使館とか行くものですか。いや、良くある話だし、多分完全に売り飛ばされてますね、こちらで書類を作ってあげて、保険に交渉するのが一番話しになると思いますけど。
って良く分からなかったけどとりあえず証明書ってのを作ってもらって、警察はまた考えておくよ、アイツがどうにかしてるかもしれないし。
書類はタダだったしそこで売ってた春巻きキューピーとアオザイキューピーを(片方)買って、そう言えばアオザイの綺麗な子なんて全然見てないな。傘を被った婆ばっかり。
近所にベトナム航空があったからリコンファームをして、そのまた近所のハノイ大教会を見に行こうとしてちょっと道に迷って。
レーニン広場の像の下で腰掛けてたら声をかけられる。

「すみません、日本の方ですか」
そうだけど。一瞬良くある苦学生がお金をせびってお香か爪楊枝でも売ってるのかと思ったけど、やけに日本語が上手でちゃんと見てみたら日本の子だった。
「ここどこですか」
え?地図持ってるだろ、磁石までさ。教会を探して歩いて道を外れたんだけど、これがレーニンだからここかな。
ありがとうございます。
「ところでちょっと聞いて貰っていいですか?」
なんだか訳が分からなかったけど別にキチガイって感じでもないし、要するに話を聞いて欲しかっただけみたいで、こんな話。「私、馬鹿なんです」
世界一周をしてるんです、今日で25日目なんですけど、ハノイに着いて、タクシーにガイドブックを見せて、ゲストハウスに行ってって。それで普通に着いてチェックインして、出かけて、ガイドブックを見ながら戻って来たら、違うゲストハウスだったんです、チェックインしたの。

よく分からなかったけど、昨日チェックインしたのはガイドブックに乗ってた場所じゃなかった。そのまま一泊して出かけたら何処だか分からないその宿に戻れなくなった。そして荷物がごっそり無くなった。というかそこにあるんだけど。
「ずっと、一件ずつ宿を巡ってるんだけど見つからなくて」
あぁ、そう言う事か。宿を見失う事は二回ぐらいあったけど、なんとか戻れたよ。雰囲気で。そういうゲストハウスなら旧市街にあるんじゃないかな。
中国のビザを取ろうとしてタクシーですぐだったから、この辺りだと思うけど。大使館にも行ったけど、そんな話初めてだからどうしていいか分からないって。でもイロイロ電話してくれていて、でももう多分無理。あぁ、カンボジアで子供に貰ったアクセサリーが。
パスポートとか、お金とカメラもあるし、服とパソコンが無くなったって。
あぁ、俺一昨日iPhone盗られたけど、なんだかどうでもいいぐらい可哀想になってきた。
もう、どうしたらいいか分からなくて。このまま日本に帰るのか。お金はあるからもう一度揃えて続けるか。
ステイオアゴーナウ!って感じだね、まさしく。
「自分だったらどうしますか?」
そうだなぁ。俺も一周してた事があるけど。どうしたかなぁ。
なんか話が長くなりそうだし、そこの旅行代理店で相談乗ってくれるかもしれないから連れて行ってあげるよ。ていうかメシ食った?「食べました」
じゃあ珈琲でもいい?奢るし。

いいんですか?何日居るんですか?一週間だけど、今日は夜に電車に乗るだけで時間があるから。
陽を避けてお店に。言っておくけどやっぱり今だに、旅先の女の子に声をかけるなんてしないんだけど。世界一周なんてしてる女の子に初めて会ったから。華奢で、小さくて、真っ黒に焼けていて。
自分ならどうしたか分からないけど、一度引き返したらさ。
次のスタートはもの凄い体力を使うと思うよ。女の子だし、もう出してもらえないんじゃない?
そう、一周じゃないと意味無いんです。
俺はそうは思わなかったけど、後半は多分こだわってた。危なかったら帰ろうとは思ってた。生きて帰るのが一番の条件だったから。どこがよかった?南米とか。アジアは全然行ってなかったから、今になって歩いてる。
「色々あるから、行った方がいいよ」
言おうとしてやめた。女の子だし。死んだらどうする?でもそれだけの価値はある。でも決めるのは本人だし。行っちまえよ。答えは決まってるんだろ。聞いてほしかっただけなんだ。いつだってそうなんだろ?
全部言おうとしたけど、やめておいたんだ。色々ってなんだ。
話していたら近所に住んでた時があったみたいでそんな話。うまい中華屋の話とか。旅のアドバイスみたいな事も話したけれど、空港でいきなり電話の盗難にあうような奴のアドバイスなんてどうだよ。
その後どうしたのかが気になって、連絡先をまた聞いておいた。ひとしきり話したらスッキリしたみたいで。
「今日はいい人に会った。良かった」

だって。誰でも良かったんだろうけど。
旅行の代理店まで着いていこうとしてやめた。やっぱり苦手なんだ、それにさ、決断するって言う時にあまり関わりたくなかったというか。自分でやらせてあげたいって言うか。でも、心の中ではさ。分かるかな。
その後の事はもう知らない。俺は俺でウロウロして、ホーチミン廟のKEEPOUTに三回ぐらい引っかかって怒られて。

なんだかメキシコシティの中央広場みたい。でも軍人が多いし愛想もないし、

一柱寺は恐ろしくショボイし。チェーン店のフォー屋に寄ったり。文廟に寄ったり。リュックが無いから身軽でいいけど。






電車に間に合わなそうでタクシーに乗ったら、セミオートみたいなレバーをカチカチやってメーターを上げていくからすぐに降りた。数百円だけど、どうなんだろう。毎日そんな事して暮らしてるんだぜ、死ねばいいのに。
ホテルの用意してくれたタクシーは安心で、そのままリュックをピックアップして駅まで。

寝台は三段だけどカーテンなんか無くて。空港で買った本をずっと読んでたんだ、多分携帯があったらそいつをずっといじくり回してたんだろうけど。
白人の高笑いを聞きながら、いつの間にか寝てた。

起きたら雨が降っていた。どれぐらいかってのは窓ガラスに打ち付ける感じで分かりそうなもんだけど、何しろ走ってるんだから強いのか弱いのか。イタリアのクシェットって程快適じゃないし、エジプトの寝台もこれよりは良かったし、とにかく今までで一番狭くて五月蠅い。
窓から眺める家がボロすぎて、作ってる所なのか、壊してるのか、廃墟なのか住んでいる人が居るのか、全然分からないし鉛筆みたいに細長いし。そう言えばエジプトの寝台からの眺めもこんなだったな。あれはいつの時だっけ。すっかり忘れちまったけど。
たまに停車すると白人が酔っぱらって外のベトナム人に声をかけてる。それが茶化してるようにしか見えない。言葉が通じてないから向こうは笑って手を振るだけなんだけど。
こういう奴らがどっかのビーチのカフェで爆破されたりするんだぜ、きっと。
時間になっても全然着かないし、駅ごとにアナウンスがあるわけでもないから、ここが何処だか分からない。たまにフエはまだか?って誰かに聞くんだけど、その度に「あと一時間」とか二時間とか、その何時間かもとっくに過ぎちゃってるんだけど、昼を回ってようやっと着いた。

客引きがゲストハウスの安い値段を言ってくるんだけど、今日はシャワーの着いた部屋が良かったから少し歩いて自分で探す事にした。
川の向こうが旧市街、王宮とかがあるんだろうけど伝って歩いてみても代わり映えのしない景色。一人だけ熱心に日本語で話しかけてくる若い子がいて、でもほとんど無視してた。いつも関心するけれど、多分こいつらってイロイロな言葉で会話が出来るんだぜ、たまに中国とか韓国語でも話しかけられる。バイリンガルどころじゃないんだ。
少しお店が出てきて、宿を縫って歩くと市場とか、裏路地みたいな感じになってくる。鶏とか犬がペタペタ歩いていて、見上げたらけっこう大きいホテルだった。
「フエクイーンホテル」
星が三つ並んでたけど、そうゆうデザインなのか本当になんかのランクなのか良くわからなかった。小さいプールもあるし、レセプションが制服を着てるからそれなりって感じだ。三十ドルで一泊だって。今のレートなら二千円とちょっとだし。今日はここにする事にした。

とりあえず風呂だ。その後で飯を食ってちょっと観光をして。
部屋は七階の眺めがいいところで、曇っているけれどかなり見渡せる。なんだか奥の方はビルも建っているしそこそこ文明もある感じ。軽く汗を流して服を変えて、自転車を借りて近所のHanhハーンって店に行ってみる。バインセオってお好み焼きみたいな奴を良くベトナム料理屋で食べてたんだけど、その小さい奴でバインコアイってのがあるらしい。それって王宮料理なんだけど、行ってみたら薄汚い、似ても似つかないボロ店だった。

とりあえずそれを頼んで寛いでる。客は他に居なくて、店の女の子が愛想よく運んでくれてさ。笑顔で葉っぱをつまんで皿に盛って、メインを一口分よそってタレをかけて見本を作ってくれる。ニョクマムかなんか。ピーナッツみたいなソースで美味しかった。それとネムルイって言う豚肉のつくねだって。茎みたいなのに巻きつけられて出てくるんだけど、この茎も食べるらしい。ちょっと試してみたけれどただの植物で食えたもんじゃなかったよ。硬いし。つくね自体は美味しかった。

だまって本を読みながらダラリしてたらスコールで。ちょっとま雨で宿ってたけど、時間も無いしとりあえず川を渡ってみた。
向こう岸は一帯が遺跡みたいでかなり広い。碁盤目に区切られて建物があったり。もう整備もされてない廃墟だったり。その割りに植木は亀の形にカッティングされてたり。コスプレで写真をとってくれたり色々。




なんだか中国みたいだった。それかズレた日本か。日本も古い建物は中国っぽかったりするけれど、もっともっと濃くて。ほとんど漢字だし、龍とか鳳凰とか。



時々スコールが激しく降るけれど、ちょっと待ってたらすぐに止む。象にも乗れるし。蓮の池に良く似合う。


そんなにゆっくりしてた訳じゃないけれど時間も無くて、とりあえずちょっと遠くのティエンムー寺って奴を見て帰ろうと思ってさ。ずっと漕いでるんだけどどうも遠すぎて。それにチャリがやたらに遅い。次第に心細くて、もう通り過ぎたんじゃないかって思えてきてさ。ジュースを買いながら店の小さい子に聞いたらあと一キロだって。
これはもう十キロはあるなって思って休憩していた。
その子を写真に撮ろうとしたら恥ずかしくて逃げてしまって。
パラパラと雨が降って。

結構な距離を覚悟してたら本当に一キロぐらいで着いたけど、どうもしょぼい。
子供の僧侶が変なカンフーの髪型でサッカーをしてたり、セパタクローみたいだったり。とにかく今まで見たどの僧侶よりもアクティブだった。色々落胆して、来た時と違う道、列車の線路のわき道を自転車で走る事にして後悔。

一本道で結構長いし。両脇はクソみたいな手すりで、後ろから原付が煽ってくるしさ。やんなっちまう。
フエ大教会を横目に、でかいイオンみたいなのに行ってみた。

フォンフープラザって言うらしい。三階建てで作りはオーストラリアで見たことあるような無いような。でも中身は笑っちゃうような異世界でさ。フードコートでカンフーの子供がゲームに熱中してるところなんか、特に面白かったよ。馬鹿にしてる訳じゃないけど、あまりにイオンで。あまりに異質でさ。
日用品の広いコーナーに入ろうとしたら入り口でミニバックを透明な袋に入れられてパウチされた。万引き防止みたい。
アメリカみたいに業務スーパーサイズもあるし、アジアサイズも。日本のお菓子がそのままのパッケージで売られていたり。中国のも。

しばらく居たけれど、ここでご飯を食べるのも味気ないから、なんとなく外に出てみたんだけど。
やたらに交通量が多くて参った。もう暗いし。ゆっくり走っても横から突っ込まれそうになるし、止ったら止ったで危ないし、もう気が気じゃないんだぜ、本当に。歩いてたほうがよっぽど安全さ。

薄汚い近所に帰ってきて、二三本奥に行ったらお店なんかも沢山あった。
全然違うけど、さっきのイオンといいこんな感じといい、ケアンズを思い出していたんだ。
ただ単にあの町が俺にとってはじめての海外で、ここが久しぶりの海外だってだけかもしれないけれど。
なんとなく似てる気がして。
スアンチャンって店で春巻きを頼んだらやたらに美味かった。あまりに美味くて半分テイクアウトしたぐらい。ビールとフォーも頼んで、他にもメニューはあったけど、なんだか知らないけどこの春巻きだけは別格に美味かった。
ケロンパに似たおかみさんがさ、なんだか知らないけど俺のテーブルに座って。放っておいたらいつの間にか俺のガイドブックを熟読してた。

言葉も文字も分からないはずなのにフエのページを開いて自分の店をみつけてさ。ライバル店もみつけて、なんでこの店は写真が載ってるのに、うちは無い訳?って言ってた。

あと、メニューとガイドブックを照らし合わせてこれはある。これもある。なんでもある。何を食べる?ってアピールされるんだけど、もう腹も十分で。
何本か包んでもらった春巻きを持って宿までフラフラと。それにしてもケロンパに似てた。
とりあえず明日の旅程を組まないと。

64928
-63- キャサディ・キャサディ
サングラスを買った、バイクに乗る時の奴。OLYMPO RH751って言うZerorh+ってブランドみたい。なんだか新しい奴みたいで調べてもあまり何も分からなかったけれど、ヘリコプターの素材だとか、防弾だとか、明るさでレンズの色が変わったりなんだかハイテク。
サマーセールでTシャツとか、FREDRIK PACKERSのBIKE PACKとか。偶然逢ったジム員と鰻を喰いに行ったり、とにかく楽しくやってる。すき焼きとか、寿司とか。この間はMetroにTahiti80を見に行って来た、久しぶりのメトロで最高だった。儲けが半分飛んで行ったけどまぁいい。
多分俺とか、あんたとか、全然知らない世界が溢れてるんだろうけど、その何かってのを沢山見たくて。結構前の方で手すりにもたれて。いい夜だった。
金がある時ぐらいこんなもんだ。いつどうなるかなんて分かりゃしないし。
映画も見に行ったり。スーパー8。ハートウォーミングなエイリアンが人を捕まえて食べたりしてて笑えた。最高だった。

5日の夜は久しぶりに飲みに出た。俺にとっては特別な日だから、7/5。あのバンドのベースと飲んでいて、前の会社の雇われ社長の話。中卒で社長に拾われて二十年ぐらい雇われで社長して、子供が二人大きくて、でも何も出来ない偉そうな奴。出来なさ具合では群を抜いてる、唯一の営業の癖に二年で一つも仕事が取れなかったんだって。それでやっとクビさ。どうしようもないぜ。
ライブハウスの店長にも逢ったんだ、春ぐらいからこの辺の店には顔を出せてなくて本当に久しぶりだった。
ウッドベースのあの人が近所に住んでいて、初めて言葉を交わした。ユーガッタフレンズを歌ってた、あの片方。幽体離脱の話とか、不思議な話。なんだかみんな自信に溢れていて、ハッタリで生きてるというか。それもあるんだろうけど、それを現実に変えていける力ってのはすごいんだ。世界中でウッドベースを弾いてる。
久しぶりに夜に出て、ギターを背負った子が多くてさ、ビックリするぐらい。こんな世界も楽しいよ、夢がある。ベトナムの話をしたり、西遊記のゴダイゴをBGMに。お店の常連のバンドが東京のでかいバンドに入ったんだ。あんまり言わないけど、そのどっちも見た事があるしビッグドリームだよ。本当に。チャンスってのは探してたらあるものなんだ、多分。探すって言うか、なんて言うんだろうな。
ハッタリかまして信じてたらさ。自信ってのは凄いんだと思う。病は気からのその反対の病気だぜ、きっと。
くだらない話ばかりだった。ただ、みんな元気そうで良かったんだ本当。可愛い女の子の話ししかしない。年をとったらそんなもんかもな、久しぶりだ。
もう会社が面倒でやってられない。儲かりもしないし、忙しくってなんにもなりゃあしない。入れ歯の話とかさ、そんなしみったれた話よしてくれよ。
それで金儲けのギャンブルに走ってたんだけど、面白いように負けた。儲けた分の二倍負けて、危うく資金が全部ぶっ飛ぶ所だった、結構な額だぜ、これ庶民には。
それで二週間ぐらいテンパッテさ、俺ってこんなに金に執着があったのかってビックリした。一晩で二円ぐらい円高になったのをモロに被ったんだ。しばらくウンコが力なく、白くなってビックリした。
何してんだよ本当。

仕事も面倒だし、家に居たらギターをずっと弾いてた。自分に何が出来るのか確かめるみたいに。そんな時、一番のブルーズには手を出さないんだからさ。出来なくなっちまってたら嫌だから。
後は俺が誘ったジム員とギャンブルの会議。飲み屋で二人、どっちがどんだけ負けたかって話。三週間ぐらいジムにも行かなかったし、賭けもしなかった。ただ本は五冊ぐらい読んだ。勉強は怠らないのさ。
全然負ける気もしなかったし、順調で儲かりまくってたんだけど、草野球がいきなり第一金曜日のメジャーリーグに出てボロ負け。現実見てない。バカみたいな感じ。でも時間が経ったらただの笑い話さ、作戦を練ってる。
この馬鹿加減がちょっと面白かったんだけど、俺ってそんな時でも守備だけは万全なんだよな、いきなり破産とか借金とか、そこまでぶっ飛べない。だから中途半端なんだけど、ピッチャーと言うよりは外野の方が向いてるぜ、実際。たかが金だぜ、どうにどもなれよ。

テレビで見たんだけど、毎日ボンバーマンばっかりしてる婆が居るんだって。孫がやってるのが羨ましくて、それから毎日二時間で全面クリアするらしいぜ、二十年ぐらいぶっ飛んでる。目先しか見てない。馬鹿な事に真剣になれるのが羨ましいし、心地よかったりするんだから。
好きだったピッチャーが死んだんだ。デブのジェイクみたいな、繊細な奴。ロスでうどんを売ってたのを聞いた事があったけど、残念だった。
まぁ生きていりゃあいいんだぜ。
絶対に死んでしまう運命なのに、なんでリタイヤする奴は悲しいんだろう。あれもこれも出来たのに、なんで死んでしまうなんて勿体ないって。
でもさ、メジャーのピッチャーなんて誰でもなれるわけでもないのに、人生の途中で成しちゃったらその後って。
密度って言うか。
全てを成したらいつでもリタイヤ出来るってのも可笑しいし。何も成さずに寿命だけ全うするのもゴメンだし。
難しいけど。

月末からちょくちょくジムに行ってる。髪も短くしたし、ちょっとまた身軽。
バンドも見に行ったよ、俺がブルーズで入った後はこの間はピアノだったし、今回はギターがゲストだった。またブルーズが必要だったら呼んでくれよな。
逢う人に
「だから言ったじゃないか、絶対に大損するって」
ってそればっかり。当然だろ?だって俺って馬鹿なんだから。それが気に入っちゃってるんだから。
「まだ続ける気?」
そうだね、どっちに転ぶか判らないけど、どっちにも転ばないのが一番タチが悪いぜ。
なんだかんだ言って仲間と馬鹿言ってるのが一番楽しいかもしれない。
どうなっちまってもさ。
「俺は路上を歩いてく。いつもと変わらぬ歩幅で」
カムオンレッツゴー
ビーバップアルーラを歌いながら。
どっちだっていいんだ。どっちかにぶっ飛びたい。片方は地獄かもしれないけれど、きっと地獄の方が安くて美味い飯が食えるんだって。
もしかして首尾よく行ったら女なんかハベらせて。飲んで打って買って。残りをコンビニエンスに募金して。
どっちか。でもどっちだって俺にとっちゃあ、それなりに最高って奴だ。毎日が。
病は気からだよ、なんか。変な病気だぜ、きっと。
ウンコが白くなっちまうぐらい。

サングラスを買った、バイクに乗る時の奴。OLYMPO RH751って言うZerorh+ってブランドみたい。なんだか新しい奴みたいで調べてもあまり何も分からなかったけれど、ヘリコプターの素材だとか、防弾だとか、明るさでレンズの色が変わったりなんだかハイテク。
サマーセールでTシャツとか、FREDRIK PACKERSのBIKE PACKとか。偶然逢ったジム員と鰻を喰いに行ったり、とにかく楽しくやってる。すき焼きとか、寿司とか。この間はMetroにTahiti80を見に行って来た、久しぶりのメトロで最高だった。儲けが半分飛んで行ったけどまぁいい。
多分俺とか、あんたとか、全然知らない世界が溢れてるんだろうけど、その何かってのを沢山見たくて。結構前の方で手すりにもたれて。いい夜だった。
金がある時ぐらいこんなもんだ。いつどうなるかなんて分かりゃしないし。
映画も見に行ったり。スーパー8。ハートウォーミングなエイリアンが人を捕まえて食べたりしてて笑えた。最高だった。

5日の夜は久しぶりに飲みに出た。俺にとっては特別な日だから、7/5。あのバンドのベースと飲んでいて、前の会社の雇われ社長の話。中卒で社長に拾われて二十年ぐらい雇われで社長して、子供が二人大きくて、でも何も出来ない偉そうな奴。出来なさ具合では群を抜いてる、唯一の営業の癖に二年で一つも仕事が取れなかったんだって。それでやっとクビさ。どうしようもないぜ。
ライブハウスの店長にも逢ったんだ、春ぐらいからこの辺の店には顔を出せてなくて本当に久しぶりだった。
ウッドベースのあの人が近所に住んでいて、初めて言葉を交わした。ユーガッタフレンズを歌ってた、あの片方。幽体離脱の話とか、不思議な話。なんだかみんな自信に溢れていて、ハッタリで生きてるというか。それもあるんだろうけど、それを現実に変えていける力ってのはすごいんだ。世界中でウッドベースを弾いてる。
久しぶりに夜に出て、ギターを背負った子が多くてさ、ビックリするぐらい。こんな世界も楽しいよ、夢がある。ベトナムの話をしたり、西遊記のゴダイゴをBGMに。お店の常連のバンドが東京のでかいバンドに入ったんだ。あんまり言わないけど、そのどっちも見た事があるしビッグドリームだよ。本当に。チャンスってのは探してたらあるものなんだ、多分。探すって言うか、なんて言うんだろうな。
ハッタリかまして信じてたらさ。自信ってのは凄いんだと思う。病は気からのその反対の病気だぜ、きっと。
くだらない話ばかりだった。ただ、みんな元気そうで良かったんだ本当。可愛い女の子の話ししかしない。年をとったらそんなもんかもな、久しぶりだ。
もう会社が面倒でやってられない。儲かりもしないし、忙しくってなんにもなりゃあしない。入れ歯の話とかさ、そんなしみったれた話よしてくれよ。
それで金儲けのギャンブルに走ってたんだけど、面白いように負けた。儲けた分の二倍負けて、危うく資金が全部ぶっ飛ぶ所だった、結構な額だぜ、これ庶民には。
それで二週間ぐらいテンパッテさ、俺ってこんなに金に執着があったのかってビックリした。一晩で二円ぐらい円高になったのをモロに被ったんだ。しばらくウンコが力なく、白くなってビックリした。
何してんだよ本当。

仕事も面倒だし、家に居たらギターをずっと弾いてた。自分に何が出来るのか確かめるみたいに。そんな時、一番のブルーズには手を出さないんだからさ。出来なくなっちまってたら嫌だから。
後は俺が誘ったジム員とギャンブルの会議。飲み屋で二人、どっちがどんだけ負けたかって話。三週間ぐらいジムにも行かなかったし、賭けもしなかった。ただ本は五冊ぐらい読んだ。勉強は怠らないのさ。
全然負ける気もしなかったし、順調で儲かりまくってたんだけど、草野球がいきなり第一金曜日のメジャーリーグに出てボロ負け。現実見てない。バカみたいな感じ。でも時間が経ったらただの笑い話さ、作戦を練ってる。
この馬鹿加減がちょっと面白かったんだけど、俺ってそんな時でも守備だけは万全なんだよな、いきなり破産とか借金とか、そこまでぶっ飛べない。だから中途半端なんだけど、ピッチャーと言うよりは外野の方が向いてるぜ、実際。たかが金だぜ、どうにどもなれよ。

テレビで見たんだけど、毎日ボンバーマンばっかりしてる婆が居るんだって。孫がやってるのが羨ましくて、それから毎日二時間で全面クリアするらしいぜ、二十年ぐらいぶっ飛んでる。目先しか見てない。馬鹿な事に真剣になれるのが羨ましいし、心地よかったりするんだから。
好きだったピッチャーが死んだんだ。デブのジェイクみたいな、繊細な奴。ロスでうどんを売ってたのを聞いた事があったけど、残念だった。
まぁ生きていりゃあいいんだぜ。
絶対に死んでしまう運命なのに、なんでリタイヤする奴は悲しいんだろう。あれもこれも出来たのに、なんで死んでしまうなんて勿体ないって。
でもさ、メジャーのピッチャーなんて誰でもなれるわけでもないのに、人生の途中で成しちゃったらその後って。
密度って言うか。
全てを成したらいつでもリタイヤ出来るってのも可笑しいし。何も成さずに寿命だけ全うするのもゴメンだし。
難しいけど。

月末からちょくちょくジムに行ってる。髪も短くしたし、ちょっとまた身軽。
バンドも見に行ったよ、俺がブルーズで入った後はこの間はピアノだったし、今回はギターがゲストだった。またブルーズが必要だったら呼んでくれよな。
逢う人に
「だから言ったじゃないか、絶対に大損するって」
ってそればっかり。当然だろ?だって俺って馬鹿なんだから。それが気に入っちゃってるんだから。
「まだ続ける気?」
そうだね、どっちに転ぶか判らないけど、どっちにも転ばないのが一番タチが悪いぜ。
なんだかんだ言って仲間と馬鹿言ってるのが一番楽しいかもしれない。
どうなっちまってもさ。
「俺は路上を歩いてく。いつもと変わらぬ歩幅で」
カムオンレッツゴー
ビーバップアルーラを歌いながら。
どっちだっていいんだ。どっちかにぶっ飛びたい。片方は地獄かもしれないけれど、きっと地獄の方が安くて美味い飯が食えるんだって。
もしかして首尾よく行ったら女なんかハベらせて。飲んで打って買って。残りをコンビニエンスに募金して。
どっちか。でもどっちだって俺にとっちゃあ、それなりに最高って奴だ。毎日が。
病は気からだよ、なんか。変な病気だぜ、きっと。
ウンコが白くなっちまうぐらい。

通報されるくらいに
-62- 通報されるくらいに
あと一つ、ど真ん中で輝く太陽のような物が欲しいんだ、シミったれた生活の中でさ。そんな事言い始めたら毎日体育館で寝起きしてる人達に怒られるかもしれないけれど、そんな人だってストリートのチルドレンよりはマシなはずなんだから。茶柱が立っても見通しが立たない。天井裏はもうすっかり抜け落ちてなんにもないし、何処に居たって変わりやしないし。
100万本のバラの花みたいに華やかに真っ赤に、枯れた後でも心に消えないって奴。ひねもすのたり、とりあえず種を集めてはそこら中に植えてる。毎日スコップを片手にいつもと変わらない歩幅で、汗ビッショリな俺をクツワムシが励ましてくれるんだ、泣けてくるよ。
思い出なんか何にもなりやしないけど、とりあえずもう一発の弾丸を探してる。一発目は眼球に、二発目は鼓膜を突き破って心のど真ん中に。
「このまんまじゃあ世界中がヒロシマになっちまう」
そんな歌を聞いてた。プルトニウムの風に吹かれながら。

本当にどうなっちまうんだろう。すぐ西の海辺じゃあ「もんじゅ」が燻ってるしさ、その割には円が馬鹿みたいに高くて。アメリカンドリームもとっくに打ち止めって感じだしラチがあかない。そこら中から喧嘩をふっかけられてるし。あいつら(ノースとかサウスとかシーナとか)はビートルズもジョンレノンも知らないのかな、イマジンオールザピープル、国境なんかねぇんだって。そんなものただの金儲けの道具だよ。
いまさらコックになんかなれやしないって思ってたけど、板さんに知合いが出来てからはもしかしたらなんて。いや多分無理だけど。
ほら、そこでまた無理だなんて悪い癖だぜチキショウ。なんにも変わりやしない。前よりはグチも少なくなったような気もするけどさ、なんだか馬鹿に慣れたんだクズばっかりに。

一々目クジラ立ててたんだけどもうスッカリ慣れちまったよ、またこのパターンかなんて。馬鹿とかクズにはある程度パターンがあるからね、だから慣れた。たまに救い様のない心底馬鹿に逢ったりするとちょっと怯むけど、だいたいは同じさ。
そう、それで俺は何になりたいんだろうって奴。知り合いは大分増えて、色々やっちゃってる。K察とか、建築とか、カメラとか、研究員とか。そのどれかに成りたい訳じゃないし、俺だってその辺のサラリーマンみたいな仕事じゃないし。誰かは「すごい」「成りたい」って言ってた。転職したいってよりも、もっと何か、満足ってのがさ、足りないんだ。だからって職能をフルパワーで生かして懸賞に応募してたんだけど全部スベった。月3つをノルマにして3月まではやってたんだけど、そこからさ。
分かるだろ?3月。
よし、そんなの関係ないぜ、なんか始めよう、それで心底頑張ったのに文殊ちゃんがいきなりボンなんてありえる話さ。ゾッとしないぜ、ホントに。
水の泡さ、全部。泡になって消えちまうんだ。

俺は自分の事、ただのインチキ野郎だって思ってる。何かしらに理由を押しつけて終日のたりさ。その自覚はあるんだけど、たまに居る自分よりクズを見つけたら愕然として。もうちょっと頑張らないとこんなクズには成りたくないなんて思うんだけどね、そう言う奮い立たせてくれるクズが結構多くて参っちまう。あまり変わらないのかもしれないけれど。
俺みたいなクズには世界中のコンビニにある募金箱を一杯にする事も出来ないし。世界中の貧困にバナナ一本渡してやれないし。誰かが大変だって叫んでも、眠たくなったら寝ちまうし。腹が減ったら満足いくまで食っちまう。
「いっそ、人間なんて残らず居なくなっちまったほうが一番のエコだ」って誰でも思う事なんだろうけど。
犬猫が人間より権力が無くて本当に良かったぜ。
立派な人間に成りたいなんてこれっぽっちも思わないけど、もう一つさ。何か、何かって感じだ。
ただ俺が思うのはね、そいつを捕まえてしまったらまたある種の空しさって言うのかな、また無くなっちまったって感じになるのはもう完全に明らかなんだ。よく言うだろ、過程が楽しいんだから。それだけじゃあないなんてもうとっくに承知なんだけど、そいつをキャッチしてしまったら次が欲しくなるってのは凄く当たり前の事なんだ。そう、心底満足いく事を捕まえた事もあったのさ。でも今はまたその後の、その課程で、それが楽しくもあるけれど、じれったくもある。
そういうものなんだ。
ゴールしかないレースなんてやっぱりちっとも面白くもない。
ちょっと例えが違う気もするけれど。

とにかく俺がこの後何になろうが何をヤっちまおうが、これだけは言っておくよ。俺はずっと球を放っていたいんだ、それだけは言っておく。頼むからそれだけは信じてくれ、俺がいくら嘘つきでインチキ野郎だとしても、下手くそなピッチャーだとしてもさ、これが馬鹿げてるなんてちっとも思わない。それだけは言っておくよ。
誰か、すっかり禿げ上がって腹がブヨブヨのデブが居たとしてさ、しかもそいつが毎日家と仕事かバイトの往復だけ、そういう生活をしているとしてだよ。
いやそんな奴俺の周りには一人だって居やしないけど、とにかくそんな見た目も中身も最悪に悪い奴が居て、でも変えられるとしたら中身だし、万が一気に入られるとしたら外身じゃないし。とにかくそんなどうしようもない奴にでさえ。
俺は球を放っていたいんだ、たまにはキャッチボールでもしようぜって。最高の仲間を集めたり、誰かと二人だったり。
そこで俺は野球でもしようって、そんな時俺はピッチャーなんだよ。上手く投げられるかどうかなんて全然問題が無い、嘘を突き通すんだ。
俺は思いきり遠くまで球を投げるから。意地を張り通すんだから。
そんなのくだらないなんて言っちゃう奴にでさえ、構わず放り続けるんだから、時にはそれが鬱陶しいなんて事は百も承知さ、でもね。そう言う事を忘れたらお終いなんだ。毎日バットにグローブを通して歩いてる訳じゃあないけど。全員が全員、そうだなんて言うつもりは無いんだよ、でも少なくても俺の周りぐらいは。
直球でも、変化球でも、ど真ん中にジャストで届く奴をさ。
魔球を考案してる所なんだ。

ラリった馬鹿が十字路を、ヘッドバンギングしながらチャリでぶっ飛ばしてく。頭のオカシイ奴が多くてさ、面倒だから知らない振りしてるんだけど。
雨の日で、傘を差しながら駅に歩いていたんだ、歩道の左をさ。そしたら正面からスーツが歩いてきて避けもしないしスピードもそのまま、止まりもしないし。それでコッチはアタフタしてたら
「避けろっつーの」
なんて言いながら素通りしていくから思わず回し蹴りしちまったんだ、失敗した。先に手出したらダメって良く言われてたんだけど、その日はイライラしていて。
何かって言ったらその週は月曜の朝から雨で、起きたら後頭部にシコリがあって痛くて。またリンパが腫れたかなって三日放っておいたら水曜日に左目が腫れて真っ赤になってた。
ヤバイかな、兄貴の腫瘍が転移したか遺伝か何か、場所が場所だし、これはまた何かなっちまったと思って病院に行ったら、毛根からブドウ球菌が入って腫れたんだって。目は結膜炎で偶然だって。
毛嚢炎って言うらしいんだけど久し振りだぜ、ブドウ球菌って懐かしい。尿膜管が遺残してるのにビンゴして以来だ、アレは凄い大変だしかなり凹んだけど。
構わないで三日放っておいたら治るって言われてそのまま仕事してた。でもなんか腫れぼったいし、振り向くと痛いしでなんだかシンミリしちゃって。オマケに仕事のアポイントをすっぽかされたりでちょっとイライラしていて、話が逸れたけどそんなこんなでキックしちまったんだけど。

知らない振りして立ち去ろうとしたんだけどなんか追いかけてくるし。しょうがないから回れ右して
「言い方ってあるでしょ?」
そしたら
「こっちは脚が悪くて避けられないのになんで蹴られないといけないの?」
だってさ。なんでってクソみたいな口聞くからなんだけど、脚が悪いって聞いて咄嗟に、あぁ、俺は障がい者のケツを蹴り上げるようなクズになっちまったかって素直に謝ったんだ。
「知らなかったんだ、御免なさい」
そりゃそうさ、初めてすれ違うスーツ野郎が障がい者かどうかなんて解りゃしないだろ、無視して行こうとするから腕を掴んで
「本当に知らなかったんだ、御免なさい」
そしたらもう良いよって感じで去って行った。一部始終を見ていた同僚になんだよ、蹴ったらダメだろなんて言われて。脚が悪いから避けられなかったんだって。悪い事したよ。
「それって多分嘘だよ」
普通にスタスタ歩いて行ったもの。だってさ、チキショウ。
なんだよあのクズ野郎がさ、本当に頭に来た、なんでそんな嘘を付くんだかサッパリ分からない、こっちは心底謝ったのになんだってんだ。
でも良かった、最近じゃあちょっとした事でボコボコにされたり刺殺されたりするんだから、迂闊な事したぜ、反省してる。でもケツを蹴り上げられてるのに嘘ついて謝らせて、それが一体なんだったんだかサッパリ分からない。二発目を予防したのか、厄介ごとを避けたのか。それとも本当に障がいなのか、どっちにしろ「がい」があろうが無かろうが、そんなクズ蹴られて当然だぜ、口ばかり。
あのまま歩いてたら色んな奴に蹴られてケツが腫れ上がると思うんだけど、なんてハートが強いんだ、そこだけは一目置くけど。
どんなにトラブったって道を突き進むんだから。見上げたクズだった。本当に口ってのは災いの元だせ、ちょっと気をつけるよ。
「あわてんなよ雨が上がったからっていきなり晴れるわけはないさ」
あれはなんて歌だっけ。
六月、すっかり梅雨なんだ。

天気も良くないし、たまに近所の本屋で珈琲を飲みながらイスでダラダラしてるんだけど、この間は凄いのを見つけたんだ、FXの本なんだけど。エフエックス自体はNZ君もそれだけで暮らしていたぐらいだし、儲かるけどやばい感じで知ってはいたんだけど。俺みたいな馬鹿が手を出したらそこでアウトさ。
でも本を読んでたらなんだかイケル感じでさ、デモの口座で練習が出来るとか言うし、一千万の10倍(の値段で取引できるレバレッジとか言う奴)から始めたんだけど、二、三十万儲けたところでレバレッジを50に上げたらいきなり四十万吹っ飛んでビビった。
でもなんだかイケちゃうんだよな。負けたのなんてその一回だけでさ、とりあえず69の日に本番の口座を作ってみたんだけど。色々あって一週間は入金出来なくて、でもそのまた一週間ぐらい後には元金の20%ぐらい儲かってた。
なんだこれ、俺的にはもの凄い革命的なんだけど。
あまりに馬鹿みたいに儲かっちゃって寿司を食いに行ったり、ステテコをもう一本追加したりさ。
その話をジムでしてたら
「もう一ヶ月後でも同じ話が出来てたらいいな」
「馬鹿じゃないの」

って。それがなんだかさ、久しぶりな感じなんだ。
基本的にはダメ人間だからこんなものに手を出すんだけど。
HFってのが色々操っていて、俺たちみたいな馬鹿から金を巻き上げてるんだって聞いた。でもこいつに群がる馬鹿の一割はHFみたいに儲かるんだって、後の九割はただの鴨さ。
普通の世界ならトップ一割に入れる気もしないんだけど、馬鹿の中でなら俺でも行ける気がするよ、そんな事みんな思っていて身ぐるみ剥がされるんだろうけどさ。
とりあえずこんな合法なギャンブルがこの国に存在するなんて、もっとやばいんだと思ってたけどそうでもない。
ヴァーチャルで現実感が無いなんて言う奴も居るけれど、そんな事ないぜ、一回の取引事にさ、脳内のディーラーに10万ドルずつ渡すんだ、ロングかショートか、どっちに賭けるんだ?って。
とりあえず金を稼いでみるのも悪くない。数ヶ月後には路頭でキャンプファイヤーでもしながら暮らしてるかも。
とりあえずさ、儲けたらその金で、もう一つ太陽でも買うよ。
とびきりでかくて、目がくらむ奴。
眠りたくないんだ。
「あわてんなよ雨が上がったからっていきなり晴れるわけはないさ」

そろそろ雨もやんだかな。
それにしても儲かるからスラックスでも買おうと思ってるんだ。ちょっとフォーマルに、マカオのカジノでも行こうかと思って。ベガスもオークランドもカジノは一回も勝った事無いけど。
今年もなんだかイケル感じだ。もう半分終わっちゃってるけどさ、どうかしてるぜ。本当に早い。
ふと思い出した、本当にふと。メキシコシティーで逢った、宿の主みたいな日本人。たまに金が無くなったら市立か国立の図書館でトレーディングして、その収入で暮らしてるんだって。
その時はただのクズ野郎ぐらいにしか思ってなかったけどさ。ちょっと思い出したんだ。
そんな暮らし、俺にも出来るかもしれない。でもこんなのただのあぶく銭だよ。だからすぐに弾けて消えるような事に使ってるんだけど。
全部自分のためさ。誰かと飯を食いに行ったりするのも自分の為さ。自分がしたくてする誰かのためなんて、全部自分のためなんだ。
とりあえず狸の皮を数えてる。

6月の最後の日、久しぶりに泣いた。いつ以来なんだろう。はっきり覚えていないけど。
理由は分からない。きっかけは覚えているけど。
今はあまり言いたくないからまた今度話すよ。
ただ一瞬生きる希望も何もかも失って、一晩泣いたらスッキリしたってだけ。





あと一つ、ど真ん中で輝く太陽のような物が欲しいんだ、シミったれた生活の中でさ。そんな事言い始めたら毎日体育館で寝起きしてる人達に怒られるかもしれないけれど、そんな人だってストリートのチルドレンよりはマシなはずなんだから。茶柱が立っても見通しが立たない。天井裏はもうすっかり抜け落ちてなんにもないし、何処に居たって変わりやしないし。
100万本のバラの花みたいに華やかに真っ赤に、枯れた後でも心に消えないって奴。ひねもすのたり、とりあえず種を集めてはそこら中に植えてる。毎日スコップを片手にいつもと変わらない歩幅で、汗ビッショリな俺をクツワムシが励ましてくれるんだ、泣けてくるよ。
思い出なんか何にもなりやしないけど、とりあえずもう一発の弾丸を探してる。一発目は眼球に、二発目は鼓膜を突き破って心のど真ん中に。
「このまんまじゃあ世界中がヒロシマになっちまう」
そんな歌を聞いてた。プルトニウムの風に吹かれながら。

本当にどうなっちまうんだろう。すぐ西の海辺じゃあ「もんじゅ」が燻ってるしさ、その割には円が馬鹿みたいに高くて。アメリカンドリームもとっくに打ち止めって感じだしラチがあかない。そこら中から喧嘩をふっかけられてるし。あいつら(ノースとかサウスとかシーナとか)はビートルズもジョンレノンも知らないのかな、イマジンオールザピープル、国境なんかねぇんだって。そんなものただの金儲けの道具だよ。
いまさらコックになんかなれやしないって思ってたけど、板さんに知合いが出来てからはもしかしたらなんて。いや多分無理だけど。
ほら、そこでまた無理だなんて悪い癖だぜチキショウ。なんにも変わりやしない。前よりはグチも少なくなったような気もするけどさ、なんだか馬鹿に慣れたんだクズばっかりに。

一々目クジラ立ててたんだけどもうスッカリ慣れちまったよ、またこのパターンかなんて。馬鹿とかクズにはある程度パターンがあるからね、だから慣れた。たまに救い様のない心底馬鹿に逢ったりするとちょっと怯むけど、だいたいは同じさ。
そう、それで俺は何になりたいんだろうって奴。知り合いは大分増えて、色々やっちゃってる。K察とか、建築とか、カメラとか、研究員とか。そのどれかに成りたい訳じゃないし、俺だってその辺のサラリーマンみたいな仕事じゃないし。誰かは「すごい」「成りたい」って言ってた。転職したいってよりも、もっと何か、満足ってのがさ、足りないんだ。だからって職能をフルパワーで生かして懸賞に応募してたんだけど全部スベった。月3つをノルマにして3月まではやってたんだけど、そこからさ。
分かるだろ?3月。
よし、そんなの関係ないぜ、なんか始めよう、それで心底頑張ったのに文殊ちゃんがいきなりボンなんてありえる話さ。ゾッとしないぜ、ホントに。
水の泡さ、全部。泡になって消えちまうんだ。

俺は自分の事、ただのインチキ野郎だって思ってる。何かしらに理由を押しつけて終日のたりさ。その自覚はあるんだけど、たまに居る自分よりクズを見つけたら愕然として。もうちょっと頑張らないとこんなクズには成りたくないなんて思うんだけどね、そう言う奮い立たせてくれるクズが結構多くて参っちまう。あまり変わらないのかもしれないけれど。
俺みたいなクズには世界中のコンビニにある募金箱を一杯にする事も出来ないし。世界中の貧困にバナナ一本渡してやれないし。誰かが大変だって叫んでも、眠たくなったら寝ちまうし。腹が減ったら満足いくまで食っちまう。
「いっそ、人間なんて残らず居なくなっちまったほうが一番のエコだ」って誰でも思う事なんだろうけど。
犬猫が人間より権力が無くて本当に良かったぜ。
立派な人間に成りたいなんてこれっぽっちも思わないけど、もう一つさ。何か、何かって感じだ。
ただ俺が思うのはね、そいつを捕まえてしまったらまたある種の空しさって言うのかな、また無くなっちまったって感じになるのはもう完全に明らかなんだ。よく言うだろ、過程が楽しいんだから。それだけじゃあないなんてもうとっくに承知なんだけど、そいつをキャッチしてしまったら次が欲しくなるってのは凄く当たり前の事なんだ。そう、心底満足いく事を捕まえた事もあったのさ。でも今はまたその後の、その課程で、それが楽しくもあるけれど、じれったくもある。
そういうものなんだ。
ゴールしかないレースなんてやっぱりちっとも面白くもない。
ちょっと例えが違う気もするけれど。

とにかく俺がこの後何になろうが何をヤっちまおうが、これだけは言っておくよ。俺はずっと球を放っていたいんだ、それだけは言っておく。頼むからそれだけは信じてくれ、俺がいくら嘘つきでインチキ野郎だとしても、下手くそなピッチャーだとしてもさ、これが馬鹿げてるなんてちっとも思わない。それだけは言っておくよ。
誰か、すっかり禿げ上がって腹がブヨブヨのデブが居たとしてさ、しかもそいつが毎日家と仕事かバイトの往復だけ、そういう生活をしているとしてだよ。
いやそんな奴俺の周りには一人だって居やしないけど、とにかくそんな見た目も中身も最悪に悪い奴が居て、でも変えられるとしたら中身だし、万が一気に入られるとしたら外身じゃないし。とにかくそんなどうしようもない奴にでさえ。
俺は球を放っていたいんだ、たまにはキャッチボールでもしようぜって。最高の仲間を集めたり、誰かと二人だったり。
そこで俺は野球でもしようって、そんな時俺はピッチャーなんだよ。上手く投げられるかどうかなんて全然問題が無い、嘘を突き通すんだ。
俺は思いきり遠くまで球を投げるから。意地を張り通すんだから。
そんなのくだらないなんて言っちゃう奴にでさえ、構わず放り続けるんだから、時にはそれが鬱陶しいなんて事は百も承知さ、でもね。そう言う事を忘れたらお終いなんだ。毎日バットにグローブを通して歩いてる訳じゃあないけど。全員が全員、そうだなんて言うつもりは無いんだよ、でも少なくても俺の周りぐらいは。
直球でも、変化球でも、ど真ん中にジャストで届く奴をさ。
魔球を考案してる所なんだ。

ラリった馬鹿が十字路を、ヘッドバンギングしながらチャリでぶっ飛ばしてく。頭のオカシイ奴が多くてさ、面倒だから知らない振りしてるんだけど。
雨の日で、傘を差しながら駅に歩いていたんだ、歩道の左をさ。そしたら正面からスーツが歩いてきて避けもしないしスピードもそのまま、止まりもしないし。それでコッチはアタフタしてたら
「避けろっつーの」
なんて言いながら素通りしていくから思わず回し蹴りしちまったんだ、失敗した。先に手出したらダメって良く言われてたんだけど、その日はイライラしていて。
何かって言ったらその週は月曜の朝から雨で、起きたら後頭部にシコリがあって痛くて。またリンパが腫れたかなって三日放っておいたら水曜日に左目が腫れて真っ赤になってた。
ヤバイかな、兄貴の腫瘍が転移したか遺伝か何か、場所が場所だし、これはまた何かなっちまったと思って病院に行ったら、毛根からブドウ球菌が入って腫れたんだって。目は結膜炎で偶然だって。
毛嚢炎って言うらしいんだけど久し振りだぜ、ブドウ球菌って懐かしい。尿膜管が遺残してるのにビンゴして以来だ、アレは凄い大変だしかなり凹んだけど。
構わないで三日放っておいたら治るって言われてそのまま仕事してた。でもなんか腫れぼったいし、振り向くと痛いしでなんだかシンミリしちゃって。オマケに仕事のアポイントをすっぽかされたりでちょっとイライラしていて、話が逸れたけどそんなこんなでキックしちまったんだけど。

知らない振りして立ち去ろうとしたんだけどなんか追いかけてくるし。しょうがないから回れ右して
「言い方ってあるでしょ?」
そしたら
「こっちは脚が悪くて避けられないのになんで蹴られないといけないの?」
だってさ。なんでってクソみたいな口聞くからなんだけど、脚が悪いって聞いて咄嗟に、あぁ、俺は障がい者のケツを蹴り上げるようなクズになっちまったかって素直に謝ったんだ。
「知らなかったんだ、御免なさい」
そりゃそうさ、初めてすれ違うスーツ野郎が障がい者かどうかなんて解りゃしないだろ、無視して行こうとするから腕を掴んで
「本当に知らなかったんだ、御免なさい」
そしたらもう良いよって感じで去って行った。一部始終を見ていた同僚になんだよ、蹴ったらダメだろなんて言われて。脚が悪いから避けられなかったんだって。悪い事したよ。
「それって多分嘘だよ」
普通にスタスタ歩いて行ったもの。だってさ、チキショウ。
なんだよあのクズ野郎がさ、本当に頭に来た、なんでそんな嘘を付くんだかサッパリ分からない、こっちは心底謝ったのになんだってんだ。
でも良かった、最近じゃあちょっとした事でボコボコにされたり刺殺されたりするんだから、迂闊な事したぜ、反省してる。でもケツを蹴り上げられてるのに嘘ついて謝らせて、それが一体なんだったんだかサッパリ分からない。二発目を予防したのか、厄介ごとを避けたのか。それとも本当に障がいなのか、どっちにしろ「がい」があろうが無かろうが、そんなクズ蹴られて当然だぜ、口ばかり。
あのまま歩いてたら色んな奴に蹴られてケツが腫れ上がると思うんだけど、なんてハートが強いんだ、そこだけは一目置くけど。
どんなにトラブったって道を突き進むんだから。見上げたクズだった。本当に口ってのは災いの元だせ、ちょっと気をつけるよ。
「あわてんなよ雨が上がったからっていきなり晴れるわけはないさ」
あれはなんて歌だっけ。
六月、すっかり梅雨なんだ。

天気も良くないし、たまに近所の本屋で珈琲を飲みながらイスでダラダラしてるんだけど、この間は凄いのを見つけたんだ、FXの本なんだけど。エフエックス自体はNZ君もそれだけで暮らしていたぐらいだし、儲かるけどやばい感じで知ってはいたんだけど。俺みたいな馬鹿が手を出したらそこでアウトさ。
でも本を読んでたらなんだかイケル感じでさ、デモの口座で練習が出来るとか言うし、一千万の10倍(の値段で取引できるレバレッジとか言う奴)から始めたんだけど、二、三十万儲けたところでレバレッジを50に上げたらいきなり四十万吹っ飛んでビビった。
でもなんだかイケちゃうんだよな。負けたのなんてその一回だけでさ、とりあえず69の日に本番の口座を作ってみたんだけど。色々あって一週間は入金出来なくて、でもそのまた一週間ぐらい後には元金の20%ぐらい儲かってた。
なんだこれ、俺的にはもの凄い革命的なんだけど。
あまりに馬鹿みたいに儲かっちゃって寿司を食いに行ったり、ステテコをもう一本追加したりさ。
その話をジムでしてたら
「もう一ヶ月後でも同じ話が出来てたらいいな」
「馬鹿じゃないの」

って。それがなんだかさ、久しぶりな感じなんだ。
基本的にはダメ人間だからこんなものに手を出すんだけど。
HFってのが色々操っていて、俺たちみたいな馬鹿から金を巻き上げてるんだって聞いた。でもこいつに群がる馬鹿の一割はHFみたいに儲かるんだって、後の九割はただの鴨さ。
普通の世界ならトップ一割に入れる気もしないんだけど、馬鹿の中でなら俺でも行ける気がするよ、そんな事みんな思っていて身ぐるみ剥がされるんだろうけどさ。
とりあえずこんな合法なギャンブルがこの国に存在するなんて、もっとやばいんだと思ってたけどそうでもない。
ヴァーチャルで現実感が無いなんて言う奴も居るけれど、そんな事ないぜ、一回の取引事にさ、脳内のディーラーに10万ドルずつ渡すんだ、ロングかショートか、どっちに賭けるんだ?って。
とりあえず金を稼いでみるのも悪くない。数ヶ月後には路頭でキャンプファイヤーでもしながら暮らしてるかも。
とりあえずさ、儲けたらその金で、もう一つ太陽でも買うよ。
とびきりでかくて、目がくらむ奴。
眠りたくないんだ。
「あわてんなよ雨が上がったからっていきなり晴れるわけはないさ」

そろそろ雨もやんだかな。
それにしても儲かるからスラックスでも買おうと思ってるんだ。ちょっとフォーマルに、マカオのカジノでも行こうかと思って。ベガスもオークランドもカジノは一回も勝った事無いけど。
今年もなんだかイケル感じだ。もう半分終わっちゃってるけどさ、どうかしてるぜ。本当に早い。
ふと思い出した、本当にふと。メキシコシティーで逢った、宿の主みたいな日本人。たまに金が無くなったら市立か国立の図書館でトレーディングして、その収入で暮らしてるんだって。
その時はただのクズ野郎ぐらいにしか思ってなかったけどさ。ちょっと思い出したんだ。
そんな暮らし、俺にも出来るかもしれない。でもこんなのただのあぶく銭だよ。だからすぐに弾けて消えるような事に使ってるんだけど。
全部自分のためさ。誰かと飯を食いに行ったりするのも自分の為さ。自分がしたくてする誰かのためなんて、全部自分のためなんだ。
とりあえず狸の皮を数えてる。

6月の最後の日、久しぶりに泣いた。いつ以来なんだろう。はっきり覚えていないけど。
理由は分からない。きっかけは覚えているけど。
今はあまり言いたくないからまた今度話すよ。
ただ一瞬生きる希望も何もかも失って、一晩泣いたらスッキリしたってだけ。





明日も今日の夢の続きを
-61- 明日も今日の夢の続きを
久しぶりにKから連絡が来た。
去年ぐらいから何度かあったんだ、でもイチイチ言ってる事が変わるから相手にしてなかったんだ。あれに成りたい、コレに成りたい。あそこに行きたい。帰りたいって。
「仕事を辞めて街に戻るよ、伝統工芸の職人になりたい」
あぁそうなの、勿体ないけど頑張ってよ。何の職人?
決めてない、何でもいい。
原発が危なくなった時には
「もうダメだ、被爆が恐いし東京はもうダメだよ。街に戻る」
大袈裟だぜ、って思ったけどそんなに簡単に仕事を辞めたり引っ越したりなんて短絡だよ。それからしばらく間が空いたけど。
「街に帰って来たよ、就職も決まった」
本当に戻って来ていてちょっとビックリした。何の職人?
「前と同じ仕事」
だって。

関係ないけどMも引っ越していて、久しぶりに飯でも行こうって誘われてる。前からの同僚がシャングリラに行っていてまた職を変えたみたいだった。あまりにポンポン変わるから、今は何をやっちゃってるかなんてもう知らなくて。昔の俺みたいだぜ。
別の同僚は転職をしようとして学校に通い始めたり。俺はなんだか安定してる。軽率な奴らには頭が下がるって奴。
とある友達がさ、なんだか急にオープンになっちゃって苦手だ。心をまるで、ポテトチップスの袋をパーティー開けするみたいに開いてさ、丸見えで。あんなのは欲しい奴が手を伸ばして突っ込むぐらいで丁度いいと思うんだけど。何かの宗教みたいだぜ、いや言い過ぎた。ただ、何かを信じすぎる程信じていて、他に目も向かないようじゃあ、ちょっと気をつけて生きた方がいいと思うんだ。
ただ、今までに無いぐらいに信じて頑張っているから。
成功するようにって、心から願ってるんだぜ。
俺が単に失敗を怖がるようになっちまっただけかもしれないけど。

休みが長くなるとだんだんに、昼と夜が逆転しがちで困っちまう。夜を更かして散歩したり。ユックリ寝ようと思ったらもう夕だったり。
あまりにダラダラしていたらスっと時間が過ぎるから、谷間の月曜日には一人で町歩きをしていた。黄砂が酷くて街が霞んでる。
あんな所に店が出来てる。アレが無くなった。テナントが。変わりやすい町をクルクルと目を回しながらさ。予定は無かったんだけど、暖かくなってきたから服を入れ替えて、後は一泊だけ四国に行く事にしてた、またうどんを食べに。
珍しく高速バスを予約していたんだけど、目が覚めたら出発の40分前だった。
久しぶりに焦ったというか、全然間に合わない。着替えだけしてカメラを持って、タクシーに飛ばしてもらって間に合わせて。でもいざバスに乗ったらこれが渋滞で2時間ぐらい遅れちゃって。
珍しく宿も予約していたし良かったんだけど、その日はもう駅の近辺で自転車をレンタルしてうどんを梯子してた。そうそう、途中でバイクが炎上してるのを見たよ。始めて見たんだけどさ、高速の上をウロウロ歩いてる奴がいたからそいつのなんだろうけど、どうやったらああなるんだか。渋滞もするし、まぁ何にしたって初めてってのは新鮮だけど。生きていて良かったな。お前。
この街には二回目だ、三年前だね、三年も経っちまってるあれから。今の会社が決まって時間があったからバイクでウロウロしてた、それから三年も勤めてる。
一番長く勤めたのが三年と半分だからこれ、結構長くいるんだぜ、完全に飽きてるけど。
そろそろ辞めるぜ、いつもなら。それで新しい会社で新しい仲間が出来て、安定してきた頃に辞めてさ、つまらなくなって。それを死ぬまで繰り返すんだと思っていたけど。何処で勤めたって今の仕事だったら大差ないのさ、だからまだまだ居ると思う。早く社長が死んで仕事だけゴッソリ俺の所に来ないかなと思ってるんだけど、それも宝くじみたいなものだ。
そろそろ下克上を狙ってるんだけど。

I'm free to be whatever I
もしかしたら俺は何にでも成れて、その気になればブルースだって歌えるんじゃないかって。お前が何をしたって、何を言ったって、そうさ、全く構わない。
Yeah I know it's alright
周りが色々動き始めてたからちょっと俺も思う所があったんだ。本当に頭が下がるぜ、ここからもっともっとって攻め続けるって姿勢がさ。軽率だろうが向こう見ずだろうが、なんだか羨ましくもあるし。でも俺もそうだったんじゃないかって。
もしも今誰かが地球一周に出るって言ったら向こう見ずだなって思うよ、羨ましくもあるし。ただ単に年を取って変わっただけなのか。
それにお前の事。なんだか心配で。長く逢ってないからなおさらだぜ、関係ないっちゃ無いけどさ、そんな責任とか立場に潰されるんじゃないの?大丈夫?どうなんだろう。金の話だけなら羨ましいぜ、そりゃあ嫌らしいぐらい稼ぐんだろうけど、付き纏う請求書の事を考えたらもうウンザリだぜ、身動きも取れないし。
もう決まっちゃってる奴も、先が楽しみなのも、どっちも羨ましい。俺はどっちだ。
別にどっちでもいいんだけどさ。
だからと言って全てに満足してるわけもないんだろ。

結局、うどんを五杯食べて帰った。祝日だから休みの店も多いし思ったように行かなかったり。たった数百円のうどんを食いにスゲー人だぜ、他にする事も無いし。琴電に揺られて公園に行ったり。町歩きをしたり。小麦の畑で捕まえてって感じ。もうしばらく見たくも無いけど。
帰りの高速は渋滞が酷いから、途中で下道を走るみたいだった。淡路を抜けて高速に戻って兵庫。夜景が綺麗で。グネグネと入組んだ都会の体内を、jetコースターで走るみたい。
この街がぶっ飛んだ時は俺、中学生だったと思う。今じゃこれだぜ、どうなってんだか。
これからどうなるんだか。
とにかく綺麗な街だった。

とある映画を見たんだ。それを見ていたらさ、考えなんてやっぱり変わって行くものなんだなって思う。俺も大分変わったと、思う。
産まれた時に年寄りで、日に日に若返って行く話。だんだんと老衰して行く友人を見送りながら、自分だけは若者になってく。それで心境なんかを見ていても、人ってやっぱり心が変わってくんだなって。
誰かのセリフでit's never too lateって言うんだ。それが良かった。遅過ぎるなんて事は無いんだぜ。その通りさ。あんたには何度だって言うぜ、遅過ぎるなんて事は無いんだ。年寄りなんだか、若いんだか分からない奴なんだけど、だからなおさら関係が無い。
「小説なんて全部作りものだから」
そう思うと何も感動しないなんて言葉を思い出してた。誰かなんて憶えてないぐらいどうしょうも無い奴だった。作り物って言うかそれって例え話だと思うぜ、何か本質を例えた話だよ。それを作り話なんて言ったらお仕舞いだぜ、なぁベンジャミン。
でも良かったよ。

「久しぶり」
去年にリードクライミングに連れてってくれた人に久し振りに逢ったんだ。なんだか久し振りに来たみたいだった。俺もまぁまぁ久し振りだったんだけど、向こうは調子が悪くて長く休んでたみたい。
そしたら心がちょっと弱くて会社も休んでるんだって。そんな事を急に言い出してさ。なんだか何をしても楽しめないだって。
休職中って何しててもいいの?
「そうだけど、遊んでる場合でも無いし。この間は仕事に戻りたくて医者と面接したんだけど、まだ無理だって言われて。早く戻りたい」
震災の時は家で、ニュースをずっと見ていて参った。
そうか、何しててもいいのか。旅行もいいの?旅に出たらいい。世界を一周したりさ。子供も小さいのに大変だぜ。
また行きましょうって言ったらその週末の朝に「急にだけど、行かないか?」って電話が来た。まだ寝てたんだけど。用事があるって断ったら「明日も行くからどう?」ごめん、明日も無理だ。タイミングが逢えば行きましょう。
長く休んでたみたいだから、人の都合とか、タイミングなんてものから離れてたんだと思うけど。なんだかな。別に行きたくない訳じゃあないんだぜ。ただ、今思えばって奴だけど、急に叫んだり怒ったりが気を使ってた。時間が逢えば行くんだけど、急なタイミングじゃあちょっと。
ただの面倒な言い訳だぜ、きっと。

NZ君からも電話が来てた。今年は都大作戦には出ないらしい。代わりにヤクザが仕切ってるピースフルなイベントに出るらしくて誘われたんだけど、ややこしいそうだから濁してた。
新聞社のカメラマンになったって聞いてたけど、まだ続いてるみたい。親父がカメラマンなんだ、あいつ。
今度飯でも喰いながら写真見せてよ。
いいよ。
色々会いたい人が溜まって来たし、暖かくも成ってきたし。
「C、久し振りだ、どうしてた?元気?」
たまにジムに行くと顔見知りに声をかけられる。心配してたぜなんて。
そんなに時間を空けたつもりもないんだけど。なんだか心地良かったり悪かったり。
あの人知ってる?鬱で会社行ってないんだってさ。同じ会社じゃなかったっけ?
そうだけど、俺が入社した頃からずっとだぜ、もう無理だよ多分。急に良くなんかなるかよ。あまり関わりあわないほうがいいぜ、変わってるし。そうかな、そう言う時もあるみたいだけど、いいよ。人との関わりは自分で決めるから。
そう言えば俺が飲んでた「デパス」って薬は超初級みたいだぜ、精神不安定の玄人に言わせれば。大変みたいだけど、また遊べたらってちょっとは思う。面倒だけどさ、正直。話が通じないからさ、でも病気ならしょうがない。
「逢いたい気持ちがあれば逢えるものですよ」

そうだね、今度誰かに電話してみるよ。逢いたい誰かに。あんたもしてみろよ、きっと喜ぶぜ、あいつ。それとも俺が待ってるのかな、チキショウ。
「もう放っておいた方がいいぜ、だって鬱の人って一緒に遊んでたりしたら俺らの発言一つで引きこもったりするんだぜ?荷が重いよ」
「でも、言葉一つで救われたりって無いのかな」
無いよ多分。救われたって一瞬さ、だって病気だもの。あぁゆうのって世界に冷たくされるから鬱になるのか、鬱になったから冷たくされるのかどっちなんだろう。付き合うのが面倒だってのも分かるぜ、実際。でもそれがナチュラルに嫌な奴なのか、病気になったから嫌な奴になっちまったのか分からないものな、付き合いが浅いから。まぁ、暇があったら遊びに行こうよ。
板前さんも来てた。
「この間、タクシーの運転手に聞いたんだ。ウチの店の前でさ、腹にナイフか包丁刺さった奴が乗り込んで来て、何処でも良いから逃げてくれって言うんだって。もう車が血まみれになっちゃったって。でも新聞にも載らないしそういう事ってあるんだね」
そうだね、世界が全部テレビかモニターの向こうにあるなんて思っちゃないけど。
知らない世界ってあるんだ。 大体テレヴィジョンには規制なんてものがあるんだから綺麗な物しか写らないし、そんなもの信じたってダメさ。大体のモノって裏表があるのに、そのどちらかしか見れないなんて不確かだから。
この間モニターの向こうでホーキングが言ってたぜ「天国も来世も存在しない」って。そんなの闇を恐れる奴のおとぎ話なんだって。でもそれを言ったらお終いって奴さ。
まぁ、未来さえあれば十分だけど。未来まで無くしちまったらそれこそお終いだぜ。


それにしても腹が減る。さっき喰ったばかりなのに、運動をして腹が減るなんて子供みたいだよ可愛いもんだぜ。心もそうだと思うよ、使ったら補給をしないと。あいつ、使うばかりだったんだろうな。これが可愛い子だったらどこかに連れ出すのにさ、俺より年上のおっさんなんだから声をかけるのもちょっと。奥さんも子供も居るんだからいいか。
休んだって会社から金も貰えるみたいだし。いい身分だぜ。
いいのは身分だけなんだろうけど。どいつもこいつも。俺もかも。
「この間ライブで義援金集めたら40万ぐらい集まってさ、使い込んでやろうとしたけど流石にやめたよ」
普通にライブやるより儲かるんじゃない?
そうだけど、流石に使えない。俺たち、素敵な音を届けて金稼ぐんだから。詐欺じゃない。
それを聞いて笑っちまったよ、サーチアンドデストロイなんて歌いながら被災地に金を送るんだからさ、根はいい奴らなんだろうと思うよ。
あぁ腹が減る、一体何のためにこんな事してるんだか、ずっとジムに通ってるんだ。なんだかずっと飢えた犬みたいだ。喰っても喰っても足りやしない。なんか食わせろそんなもんじゃねぇ。
でも全然上手くなりやしない。
「三回ミスったら脳が記憶して、同じミスをしやすくなるから他の事した方がいいよ」
そう、ずっとミスってるんだ。
気分を変えようって最近はSteteco.com、ステテコ研究所でニューパンツを買った。ただの下着だからスケスケでペラペラで、身軽ったらありゃしない。動きやすいし上りやすくて。ステテコクライミングとかステテコボルダリングが流行ったら是非、先駆者として崇めてほしいね、昔から居るのかもしれないけれど。
あと、ノーパンクライミング。

気に入ってもう一本買いに、また別の日歩いていたら兄貴から着信があって気が滅入った。こんな珍しいってのは大体いい知らせじゃないから。また親父がらみの何かだぜ、きっと。そう思って電話してみたらさ
「姪ちゃんの同級生の子のお母さんの、内縁の夫がお前の同級生らしいんだけど知ってる?」
名前は知ってたし何人かで遊んだ事はあったけど、やたらに体がでかくて、ちょっとしたヤンキみたいだし怖いんだけど、別に実害はない奴。でも同窓会で逢ったらチンピラみたいになってた。
「そいつが街に友達と行くから、お前に連絡取りたいんだって、面倒なら別にいいけど」
そのもう一人の友達ってのがさ、一時期「親友」だった奴なんだ。
そう言う表現もどうかと思うけどね、実際。それって俺がそう思ってたとか向こうがどうとか、定義なんかの話になるともうどうでもいいけど、小学生ぐらいの時に毎日遊んでいて、家族も交流があって、本当に仲良くやってた、でも中学の時にグレちゃってからもうプッツリ。凧が糸を切らしたり、衛星が軌道を離れて何処かに行ってしまうみたいに途切れたんだけど。
Tなんかとはまた違う感じなんだ。あいつらはどんなに疎遠になっても凧みたいにはならないと思うけど、もう完全に、この間の同窓会まで会話が無くて。
だからちょっと嬉しい再会ではあるんだけど、もう一人の奴だよ、面倒は。
とりあえずそんなに仲良くなんて記憶が無いし、暴れたら多分殺されるぜ、あんなプロレスみたいな奴。どんなに手懐けたってサーカスのライオンにかみ殺されたりするものさ。知らないんだ、何も。
とりあえず姉から姪ちゃんの同級生のお母さんに、メールアドレスだけ教えておいてって言っておいた。
またベトナムに旅行していて忙しいから、電話は無理って理由。なんだかな。

「あぁ、生きていて良かった」
昨日夢の中で死んでしまって、凄い悲しい思いをしたから、今日は生きていてくれてなんだか嬉しい。夢なんだけど。また動いていて、また言葉を交わせて嬉しい。本当に良かった。
そんな理由で焼き肉を食べに行った。夢の中で死んだみたいだったけど、本当だったら食えやしないし、鶴橋の「吉田」に行ったんだけど旨かったよ。生のユッケとかレバーは無かった、食べたかったんだけど。死ぬほど食いたいかって言ったらそうじゃないんだぜ、本当に死んでしまう事もあるみたいだし。死んでしまったらそれまでさ「死ぬほど」なんて、よっぽどだって事。

この間は健康診断を受けて、またバリウムでウンコが白くなった、二回目だぜ、鳩みたい。
俺の悩みってそんな程度。死ぬ前にあれが食べたい、何かしたい事は?悩みは?いたって軽やかで。
だんだんと季節も穏やかに、みずみずしい、ウンコも白から色づいて。そんな頃。
梅雨で雨。もっととんでもねぇもんが降ってるから、気になりやしないけど。
俺の魂というか、思考、気持ち、とにかく「思い」ってのは何処にあるんだろう。脳なのか、心臓なのか、それとも細胞の一つ一つか。
移植なんかをしたらドナーのあれこれが一緒にコピーされたりってあるみたいだけど、そう思えばやっぱり細胞にあるのかな。そういうのって結論なんか出やしないと思うけど。

「天国も来世も存在しない」
あれを考えてたんだ、ぼんやりと。
「脳は、諸部品が壊れれば動かなくなるコンピューターのようなものだ。そして、壊れたコンピューターにとっては、天国も来世もない」
例えばハードが壊れたとかCPUが逝ったとか、大事なマイクロチップが溶けたりで起動しなくなったら、脳も何も動かなくなってお終いって事。でも部品を移植出来たら来世ってあるのか。部品にデータがバックアップされていたり。
それが何処にあるかってのは別にして「何かしたい」って思いが体を動かしているんだとしてだよ、動かす体が無くなった「思い」だけが、何か何かって彷徨うってのは可笑しい事なのかな。
何処にあるかも分からない「思い」なんだから。
それが死んだその後にまた、何処か分からない所をウロウロしてるなんて事は、やっぱり無いのかなって。誰かに乗っかったり、誰かの体をハッキングしてまるで目の前に居るみたいなデータを送ったり。コップに乗っかって動かしたり壊したり、ハチソンエフェクトみたいに。
まぁ、無いか。それはそれで落ち着かないかもね。

昨日のニュース、あんたは見たかな、エジプトでピラミッドが十七も見つかったって。あれだけ死後に執着した奴らも居やしないけど、盗掘されてなかったらかなりのニュースさ。結構楽しみにしてる。
アメリカじゃあハリケーンで家がぶっ飛んだり。何所かじゃあ戦争が爆発したり。
ミックジャガーが新しいバンドを始めるんだって言ってたぜ。
生きてるだけで幸せだったり、それだけじゃあ満足出来なかったり。
ホント、可笑しなものだよ。
ちょっと喉が乾いたからジュースを買ってくる。昨日はあんなに喰ったのにやっぱり腹が減るぜ、雨だけど傘はいいか、すぐそこの自動のアレで。
たったそれだけの事だったり。
それだけが物凄い重要だったりして。
最近は特に思うんだ、何がって、時間を好きに使える奴が一番幸せなんじゃあないかって。金なんかより。物なんかより。今、何かしたくてそれが出来る。何所か行きたくてそこに行ける。そのためには生きていかなくちゃ。あぁやっぱり金もいるか、金じゃない事も沢山出来るだろ、今誰かに逢いたい。それが出来るって。
今、今って。
どんなに偉くたって缶コーヒー一つ、自由に休めないなら。死んだ方がマシだぜ。


久しぶりにKから連絡が来た。
去年ぐらいから何度かあったんだ、でもイチイチ言ってる事が変わるから相手にしてなかったんだ。あれに成りたい、コレに成りたい。あそこに行きたい。帰りたいって。
「仕事を辞めて街に戻るよ、伝統工芸の職人になりたい」
あぁそうなの、勿体ないけど頑張ってよ。何の職人?
決めてない、何でもいい。
原発が危なくなった時には
「もうダメだ、被爆が恐いし東京はもうダメだよ。街に戻る」
大袈裟だぜ、って思ったけどそんなに簡単に仕事を辞めたり引っ越したりなんて短絡だよ。それからしばらく間が空いたけど。
「街に帰って来たよ、就職も決まった」
本当に戻って来ていてちょっとビックリした。何の職人?
「前と同じ仕事」
だって。

関係ないけどMも引っ越していて、久しぶりに飯でも行こうって誘われてる。前からの同僚がシャングリラに行っていてまた職を変えたみたいだった。あまりにポンポン変わるから、今は何をやっちゃってるかなんてもう知らなくて。昔の俺みたいだぜ。
別の同僚は転職をしようとして学校に通い始めたり。俺はなんだか安定してる。軽率な奴らには頭が下がるって奴。
とある友達がさ、なんだか急にオープンになっちゃって苦手だ。心をまるで、ポテトチップスの袋をパーティー開けするみたいに開いてさ、丸見えで。あんなのは欲しい奴が手を伸ばして突っ込むぐらいで丁度いいと思うんだけど。何かの宗教みたいだぜ、いや言い過ぎた。ただ、何かを信じすぎる程信じていて、他に目も向かないようじゃあ、ちょっと気をつけて生きた方がいいと思うんだ。
ただ、今までに無いぐらいに信じて頑張っているから。
成功するようにって、心から願ってるんだぜ。
俺が単に失敗を怖がるようになっちまっただけかもしれないけど。

休みが長くなるとだんだんに、昼と夜が逆転しがちで困っちまう。夜を更かして散歩したり。ユックリ寝ようと思ったらもう夕だったり。
あまりにダラダラしていたらスっと時間が過ぎるから、谷間の月曜日には一人で町歩きをしていた。黄砂が酷くて街が霞んでる。
あんな所に店が出来てる。アレが無くなった。テナントが。変わりやすい町をクルクルと目を回しながらさ。予定は無かったんだけど、暖かくなってきたから服を入れ替えて、後は一泊だけ四国に行く事にしてた、またうどんを食べに。
珍しく高速バスを予約していたんだけど、目が覚めたら出発の40分前だった。
久しぶりに焦ったというか、全然間に合わない。着替えだけしてカメラを持って、タクシーに飛ばしてもらって間に合わせて。でもいざバスに乗ったらこれが渋滞で2時間ぐらい遅れちゃって。
珍しく宿も予約していたし良かったんだけど、その日はもう駅の近辺で自転車をレンタルしてうどんを梯子してた。そうそう、途中でバイクが炎上してるのを見たよ。始めて見たんだけどさ、高速の上をウロウロ歩いてる奴がいたからそいつのなんだろうけど、どうやったらああなるんだか。渋滞もするし、まぁ何にしたって初めてってのは新鮮だけど。生きていて良かったな。お前。
この街には二回目だ、三年前だね、三年も経っちまってるあれから。今の会社が決まって時間があったからバイクでウロウロしてた、それから三年も勤めてる。
一番長く勤めたのが三年と半分だからこれ、結構長くいるんだぜ、完全に飽きてるけど。
そろそろ辞めるぜ、いつもなら。それで新しい会社で新しい仲間が出来て、安定してきた頃に辞めてさ、つまらなくなって。それを死ぬまで繰り返すんだと思っていたけど。何処で勤めたって今の仕事だったら大差ないのさ、だからまだまだ居ると思う。早く社長が死んで仕事だけゴッソリ俺の所に来ないかなと思ってるんだけど、それも宝くじみたいなものだ。
そろそろ下克上を狙ってるんだけど。

I'm free to be whatever I
もしかしたら俺は何にでも成れて、その気になればブルースだって歌えるんじゃないかって。お前が何をしたって、何を言ったって、そうさ、全く構わない。
Yeah I know it's alright
周りが色々動き始めてたからちょっと俺も思う所があったんだ。本当に頭が下がるぜ、ここからもっともっとって攻め続けるって姿勢がさ。軽率だろうが向こう見ずだろうが、なんだか羨ましくもあるし。でも俺もそうだったんじゃないかって。
もしも今誰かが地球一周に出るって言ったら向こう見ずだなって思うよ、羨ましくもあるし。ただ単に年を取って変わっただけなのか。
それにお前の事。なんだか心配で。長く逢ってないからなおさらだぜ、関係ないっちゃ無いけどさ、そんな責任とか立場に潰されるんじゃないの?大丈夫?どうなんだろう。金の話だけなら羨ましいぜ、そりゃあ嫌らしいぐらい稼ぐんだろうけど、付き纏う請求書の事を考えたらもうウンザリだぜ、身動きも取れないし。
もう決まっちゃってる奴も、先が楽しみなのも、どっちも羨ましい。俺はどっちだ。
別にどっちでもいいんだけどさ。
だからと言って全てに満足してるわけもないんだろ。

結局、うどんを五杯食べて帰った。祝日だから休みの店も多いし思ったように行かなかったり。たった数百円のうどんを食いにスゲー人だぜ、他にする事も無いし。琴電に揺られて公園に行ったり。町歩きをしたり。小麦の畑で捕まえてって感じ。もうしばらく見たくも無いけど。
帰りの高速は渋滞が酷いから、途中で下道を走るみたいだった。淡路を抜けて高速に戻って兵庫。夜景が綺麗で。グネグネと入組んだ都会の体内を、jetコースターで走るみたい。
この街がぶっ飛んだ時は俺、中学生だったと思う。今じゃこれだぜ、どうなってんだか。
これからどうなるんだか。
とにかく綺麗な街だった。

とある映画を見たんだ。それを見ていたらさ、考えなんてやっぱり変わって行くものなんだなって思う。俺も大分変わったと、思う。
産まれた時に年寄りで、日に日に若返って行く話。だんだんと老衰して行く友人を見送りながら、自分だけは若者になってく。それで心境なんかを見ていても、人ってやっぱり心が変わってくんだなって。
誰かのセリフでit's never too lateって言うんだ。それが良かった。遅過ぎるなんて事は無いんだぜ。その通りさ。あんたには何度だって言うぜ、遅過ぎるなんて事は無いんだ。年寄りなんだか、若いんだか分からない奴なんだけど、だからなおさら関係が無い。
「小説なんて全部作りものだから」
そう思うと何も感動しないなんて言葉を思い出してた。誰かなんて憶えてないぐらいどうしょうも無い奴だった。作り物って言うかそれって例え話だと思うぜ、何か本質を例えた話だよ。それを作り話なんて言ったらお仕舞いだぜ、なぁベンジャミン。
でも良かったよ。

「久しぶり」
去年にリードクライミングに連れてってくれた人に久し振りに逢ったんだ。なんだか久し振りに来たみたいだった。俺もまぁまぁ久し振りだったんだけど、向こうは調子が悪くて長く休んでたみたい。
そしたら心がちょっと弱くて会社も休んでるんだって。そんな事を急に言い出してさ。なんだか何をしても楽しめないだって。
休職中って何しててもいいの?
「そうだけど、遊んでる場合でも無いし。この間は仕事に戻りたくて医者と面接したんだけど、まだ無理だって言われて。早く戻りたい」
震災の時は家で、ニュースをずっと見ていて参った。
そうか、何しててもいいのか。旅行もいいの?旅に出たらいい。世界を一周したりさ。子供も小さいのに大変だぜ。
また行きましょうって言ったらその週末の朝に「急にだけど、行かないか?」って電話が来た。まだ寝てたんだけど。用事があるって断ったら「明日も行くからどう?」ごめん、明日も無理だ。タイミングが逢えば行きましょう。
長く休んでたみたいだから、人の都合とか、タイミングなんてものから離れてたんだと思うけど。なんだかな。別に行きたくない訳じゃあないんだぜ。ただ、今思えばって奴だけど、急に叫んだり怒ったりが気を使ってた。時間が逢えば行くんだけど、急なタイミングじゃあちょっと。
ただの面倒な言い訳だぜ、きっと。

NZ君からも電話が来てた。今年は都大作戦には出ないらしい。代わりにヤクザが仕切ってるピースフルなイベントに出るらしくて誘われたんだけど、ややこしいそうだから濁してた。
新聞社のカメラマンになったって聞いてたけど、まだ続いてるみたい。親父がカメラマンなんだ、あいつ。
今度飯でも喰いながら写真見せてよ。
いいよ。
色々会いたい人が溜まって来たし、暖かくも成ってきたし。
「C、久し振りだ、どうしてた?元気?」
たまにジムに行くと顔見知りに声をかけられる。心配してたぜなんて。
そんなに時間を空けたつもりもないんだけど。なんだか心地良かったり悪かったり。
あの人知ってる?鬱で会社行ってないんだってさ。同じ会社じゃなかったっけ?
そうだけど、俺が入社した頃からずっとだぜ、もう無理だよ多分。急に良くなんかなるかよ。あまり関わりあわないほうがいいぜ、変わってるし。そうかな、そう言う時もあるみたいだけど、いいよ。人との関わりは自分で決めるから。
そう言えば俺が飲んでた「デパス」って薬は超初級みたいだぜ、精神不安定の玄人に言わせれば。大変みたいだけど、また遊べたらってちょっとは思う。面倒だけどさ、正直。話が通じないからさ、でも病気ならしょうがない。
「逢いたい気持ちがあれば逢えるものですよ」

そうだね、今度誰かに電話してみるよ。逢いたい誰かに。あんたもしてみろよ、きっと喜ぶぜ、あいつ。それとも俺が待ってるのかな、チキショウ。
「もう放っておいた方がいいぜ、だって鬱の人って一緒に遊んでたりしたら俺らの発言一つで引きこもったりするんだぜ?荷が重いよ」
「でも、言葉一つで救われたりって無いのかな」
無いよ多分。救われたって一瞬さ、だって病気だもの。あぁゆうのって世界に冷たくされるから鬱になるのか、鬱になったから冷たくされるのかどっちなんだろう。付き合うのが面倒だってのも分かるぜ、実際。でもそれがナチュラルに嫌な奴なのか、病気になったから嫌な奴になっちまったのか分からないものな、付き合いが浅いから。まぁ、暇があったら遊びに行こうよ。
板前さんも来てた。
「この間、タクシーの運転手に聞いたんだ。ウチの店の前でさ、腹にナイフか包丁刺さった奴が乗り込んで来て、何処でも良いから逃げてくれって言うんだって。もう車が血まみれになっちゃったって。でも新聞にも載らないしそういう事ってあるんだね」
そうだね、世界が全部テレビかモニターの向こうにあるなんて思っちゃないけど。
知らない世界ってあるんだ。 大体テレヴィジョンには規制なんてものがあるんだから綺麗な物しか写らないし、そんなもの信じたってダメさ。大体のモノって裏表があるのに、そのどちらかしか見れないなんて不確かだから。
この間モニターの向こうでホーキングが言ってたぜ「天国も来世も存在しない」って。そんなの闇を恐れる奴のおとぎ話なんだって。でもそれを言ったらお終いって奴さ。
まぁ、未来さえあれば十分だけど。未来まで無くしちまったらそれこそお終いだぜ。


それにしても腹が減る。さっき喰ったばかりなのに、運動をして腹が減るなんて子供みたいだよ可愛いもんだぜ。心もそうだと思うよ、使ったら補給をしないと。あいつ、使うばかりだったんだろうな。これが可愛い子だったらどこかに連れ出すのにさ、俺より年上のおっさんなんだから声をかけるのもちょっと。奥さんも子供も居るんだからいいか。
休んだって会社から金も貰えるみたいだし。いい身分だぜ。
いいのは身分だけなんだろうけど。どいつもこいつも。俺もかも。
「この間ライブで義援金集めたら40万ぐらい集まってさ、使い込んでやろうとしたけど流石にやめたよ」
普通にライブやるより儲かるんじゃない?
そうだけど、流石に使えない。俺たち、素敵な音を届けて金稼ぐんだから。詐欺じゃない。
それを聞いて笑っちまったよ、サーチアンドデストロイなんて歌いながら被災地に金を送るんだからさ、根はいい奴らなんだろうと思うよ。
あぁ腹が減る、一体何のためにこんな事してるんだか、ずっとジムに通ってるんだ。なんだかずっと飢えた犬みたいだ。喰っても喰っても足りやしない。なんか食わせろそんなもんじゃねぇ。
でも全然上手くなりやしない。
「三回ミスったら脳が記憶して、同じミスをしやすくなるから他の事した方がいいよ」
そう、ずっとミスってるんだ。
気分を変えようって最近はSteteco.com、ステテコ研究所でニューパンツを買った。ただの下着だからスケスケでペラペラで、身軽ったらありゃしない。動きやすいし上りやすくて。ステテコクライミングとかステテコボルダリングが流行ったら是非、先駆者として崇めてほしいね、昔から居るのかもしれないけれど。
あと、ノーパンクライミング。

気に入ってもう一本買いに、また別の日歩いていたら兄貴から着信があって気が滅入った。こんな珍しいってのは大体いい知らせじゃないから。また親父がらみの何かだぜ、きっと。そう思って電話してみたらさ
「姪ちゃんの同級生の子のお母さんの、内縁の夫がお前の同級生らしいんだけど知ってる?」
名前は知ってたし何人かで遊んだ事はあったけど、やたらに体がでかくて、ちょっとしたヤンキみたいだし怖いんだけど、別に実害はない奴。でも同窓会で逢ったらチンピラみたいになってた。
「そいつが街に友達と行くから、お前に連絡取りたいんだって、面倒なら別にいいけど」
そのもう一人の友達ってのがさ、一時期「親友」だった奴なんだ。
そう言う表現もどうかと思うけどね、実際。それって俺がそう思ってたとか向こうがどうとか、定義なんかの話になるともうどうでもいいけど、小学生ぐらいの時に毎日遊んでいて、家族も交流があって、本当に仲良くやってた、でも中学の時にグレちゃってからもうプッツリ。凧が糸を切らしたり、衛星が軌道を離れて何処かに行ってしまうみたいに途切れたんだけど。
Tなんかとはまた違う感じなんだ。あいつらはどんなに疎遠になっても凧みたいにはならないと思うけど、もう完全に、この間の同窓会まで会話が無くて。
だからちょっと嬉しい再会ではあるんだけど、もう一人の奴だよ、面倒は。
とりあえずそんなに仲良くなんて記憶が無いし、暴れたら多分殺されるぜ、あんなプロレスみたいな奴。どんなに手懐けたってサーカスのライオンにかみ殺されたりするものさ。知らないんだ、何も。
とりあえず姉から姪ちゃんの同級生のお母さんに、メールアドレスだけ教えておいてって言っておいた。
またベトナムに旅行していて忙しいから、電話は無理って理由。なんだかな。

「あぁ、生きていて良かった」
昨日夢の中で死んでしまって、凄い悲しい思いをしたから、今日は生きていてくれてなんだか嬉しい。夢なんだけど。また動いていて、また言葉を交わせて嬉しい。本当に良かった。
そんな理由で焼き肉を食べに行った。夢の中で死んだみたいだったけど、本当だったら食えやしないし、鶴橋の「吉田」に行ったんだけど旨かったよ。生のユッケとかレバーは無かった、食べたかったんだけど。死ぬほど食いたいかって言ったらそうじゃないんだぜ、本当に死んでしまう事もあるみたいだし。死んでしまったらそれまでさ「死ぬほど」なんて、よっぽどだって事。

この間は健康診断を受けて、またバリウムでウンコが白くなった、二回目だぜ、鳩みたい。
俺の悩みってそんな程度。死ぬ前にあれが食べたい、何かしたい事は?悩みは?いたって軽やかで。
だんだんと季節も穏やかに、みずみずしい、ウンコも白から色づいて。そんな頃。
梅雨で雨。もっととんでもねぇもんが降ってるから、気になりやしないけど。
俺の魂というか、思考、気持ち、とにかく「思い」ってのは何処にあるんだろう。脳なのか、心臓なのか、それとも細胞の一つ一つか。
移植なんかをしたらドナーのあれこれが一緒にコピーされたりってあるみたいだけど、そう思えばやっぱり細胞にあるのかな。そういうのって結論なんか出やしないと思うけど。

「天国も来世も存在しない」
あれを考えてたんだ、ぼんやりと。
「脳は、諸部品が壊れれば動かなくなるコンピューターのようなものだ。そして、壊れたコンピューターにとっては、天国も来世もない」
例えばハードが壊れたとかCPUが逝ったとか、大事なマイクロチップが溶けたりで起動しなくなったら、脳も何も動かなくなってお終いって事。でも部品を移植出来たら来世ってあるのか。部品にデータがバックアップされていたり。
それが何処にあるかってのは別にして「何かしたい」って思いが体を動かしているんだとしてだよ、動かす体が無くなった「思い」だけが、何か何かって彷徨うってのは可笑しい事なのかな。
何処にあるかも分からない「思い」なんだから。
それが死んだその後にまた、何処か分からない所をウロウロしてるなんて事は、やっぱり無いのかなって。誰かに乗っかったり、誰かの体をハッキングしてまるで目の前に居るみたいなデータを送ったり。コップに乗っかって動かしたり壊したり、ハチソンエフェクトみたいに。
まぁ、無いか。それはそれで落ち着かないかもね。

昨日のニュース、あんたは見たかな、エジプトでピラミッドが十七も見つかったって。あれだけ死後に執着した奴らも居やしないけど、盗掘されてなかったらかなりのニュースさ。結構楽しみにしてる。
アメリカじゃあハリケーンで家がぶっ飛んだり。何所かじゃあ戦争が爆発したり。
ミックジャガーが新しいバンドを始めるんだって言ってたぜ。
生きてるだけで幸せだったり、それだけじゃあ満足出来なかったり。
ホント、可笑しなものだよ。
ちょっと喉が乾いたからジュースを買ってくる。昨日はあんなに喰ったのにやっぱり腹が減るぜ、雨だけど傘はいいか、すぐそこの自動のアレで。
たったそれだけの事だったり。
それだけが物凄い重要だったりして。
最近は特に思うんだ、何がって、時間を好きに使える奴が一番幸せなんじゃあないかって。金なんかより。物なんかより。今、何かしたくてそれが出来る。何所か行きたくてそこに行ける。そのためには生きていかなくちゃ。あぁやっぱり金もいるか、金じゃない事も沢山出来るだろ、今誰かに逢いたい。それが出来るって。
今、今って。
どんなに偉くたって缶コーヒー一つ、自由に休めないなら。死んだ方がマシだぜ。


Whatever
-60- Whatever
チキショウ、クソみたいだ嘘ばかり。もうウンザリ。こんなに嘘が下手でどうしようも無い奴は、全員残らず死刑にした方がよっぽどいいぜ、俺の国なら絶対にそうするよ。

だから言ったぜ、俺あんたには。何かを盲目的に信じるには覚悟が必要なんだ「あれ」が無けりゃあ「これ」が無いならって、欲しがってばかりで手に入らないなら生きていくのが大変なんだって。あまり求めないで、生きてりゃあ幸せで、五体が満足で六感が冴えてたなら他に何を望む?
その上家族がさ、あんたの仲間が生きていたら十分なんだから。家も車も会社も流されたらもうやってられねぇぜ、実際。だからそう言うものは極力手に入れない事、一人で生きて行くんだ。死ぬ時は一人で。俺が総理大臣なら絶対にそうする。
一つの仕事に固執し始めたら三年で転職。十年以上同じ土地に住むのも禁止。昨日は会社の重役でも、三年経ったら清掃員かドアマン。その方が絶対にいい。
家はアマゾンのフローティングハウスを参考にする事、アマゾンじゃなくてもいいけれど雨期になったら浮かぶ奴。と言うかもう海沿いに住むのは禁止だ。しょうがなく建てる学校とか、漁業の建物なんかは十階建てだろうと全部フローティングにしないと。
これからはみんな庭に林檎の木でも植えるんだな、南の町ならマンゴでもいい。とびきり太くて丈夫な木を植えて、いざとなったら食べられる奴。そういうのを義務にしたらいいと思うんだ。

そう、それに全員、全員だぜ、三十に成る前に一度は世界を一周する事。これは義務だ。高校でのギターバンドも義務。それで自分の中で何が必要なのか、何が恵まれているのかを確かめるのが義務だ、全員俺にレポートを送って来いよ。
「私が神様だったらこんな世界は創らなかった」
俺がもしそうなら絶対にこんな世界は創らなかった、国なんてもっての他だ。そんなもの、何にもなりゃしない。大体、土地だの海だの、誰のものでも無いのにいつの間にか値段が付きやがって、もうウンザリ。
もう、色々な事を投げたいよ。

「三十五歳になったら会社をしよう」
俺は覚えてたんだ、一緒にやろうって。いや、真に受けてたんじゃあなくて、その頃には何をしてるかなって楽しみにしてたんだ、でもあいつはアナガチ冗談でも無かったのかもしれない。
俺と一緒って言うよりも、あいつは自分の会社を持ちたかったのかもしれない。
「一緒にバンドを組もう」
「三十五歳になったら会社をしよう」
「帰ったら一緒にチャリで堤防を走りましょう」

色々あったけど、お前が「何かしたい」って言ってた事がさ。
「何か面白い事ないかな」って言ってた内にちゃんと候補にあがっていて、それが夢の内の一つだったのなら、夢が叶ったって事だぜ、凄いと思う。嫉妬でも冷やかしでも無くてさ、お前は凄いよ。
会社の社長ってのは何処までローカルルールを創れるんだろう。今度言ってみるよ。お前の店は全部フローティングハウスにするべきだって。
でも分かってるんだぜ、俺だって。そう言う、絶対に無くせない、守らないといけない大事な物が無けりゃあ生きて行くのが大変なんだって。
そう言うものが一気に無くなっちまったんだろ?
やってられねぇよ、実際。

そんな事を考えながら眠っていたら久しぶりに嫌な夢を見た。最悪だった、両親ともが何でだか死んでしまっていた。話しかけても応えは無いし。最後に話したのはいつだっけ。俺にとって誰かが死んでしまう以上に悲しい事って何があるだろう。これ以上に取り返せない物って多分無い。正月に逢ったのが最後だ。聞きたい事があるんだ、伝えたい事が。
悲しくて、でも涙は出なくて叫んでた。
夢で良かった。全部醒めてくれよ。

「何か面白い事ないかな」
犬が足を上げてションベンしたりって誰にも教わっていないのに不思議だ、全員だぜ、全犬のオスは足をあげるしメスはしゃがんじゃう。
俺は記憶もある程度遺伝するんじゃないかって思ってるんだ。生まれたばかりの子犬がさ、ウチの犬はメスで片親だったんだけど、それでも教えなくても子犬は足をあげてたぜ、だから分かるんだと思う。
雨が降ったり風が強かったり散々で桜が散ってしまって。ギリギリで近所の大きな公園に行ったんだけど、毎年露天で賑わってるはずなのに今年は時化てる。お化け屋敷が無いんだぜ、信じられない。想像してみてくれよ、お化け屋敷の無い花見なんてゾッとする。
それはどうでもいいんだけど、桜が綺麗とか、そう言う事って素直に遺伝していると思うんだ。だから国なんて知らないけれど、この国で生まれて、育って。そう言う事が素直に良かった。地球のこの辺の島に生まれて。
だから感情には素直に従わないと、俺の遺伝子に変な事を吹き込んでしまっても悪いから。
綺麗な物は綺麗だし。
悲しい事は悲しい。
怖くて、許せなくて、その後で多分雨が止んで嬉しくて、何か面白い事を探すよ。そうしようと思う。
でもそうじゃあ無い奴が多くて本当に参っちまうぜ。
キチガイみたいな奴がさ。
知らないけど。
理由なんて無い、これが本能だ。
*************************
返信遅れてすいません。
だいぶ物資が揃いお店もやって来たので大丈夫です。
本当にありがとう。今度帰る時でも寄ってください。
PS なんであんなに「おにせん」好きなの?
「おにせん町で売ってなかったから珍しくて。こないだローソンでPONTAポイント10000円当たったし、また何かおごってあげるわ」
ありがとう嫁がヒットしてた。
「年末帰るし。ここに行きたい。鍛えておいて
http://www.zi-box.net/access.hm」
へえー津波が来たギリギリラインだな・・・無くなったかも知れないから確認してから来た方が良いよ。
家から近いからいつでも来て下さい。年末は海外の可能性もあるから早めに教えて。
「大丈夫、もう再開してるから。12/29か30に帰るし嫁にも登れって言っておいて。あんま知らんけど嫁」
*************************
指が痛くてしばらく登ってなかったんだけど全然する事が無い。ほんと、暇な奴だぜ。5/30から始めて次で二年なんだけど、それまでに三級を全部制したい。だからちょっと二週間ほど休んでた、新しい靴が嬉しくてウズウズしてたんだけど。週末の度に「空に星が綺麗」を見るのに会社で、家にネットが無いから。
別に無くても生きていけるんだぜ、そう言う話じゃないけど便利だよ。全く、この暮らしって何処まで便利になるんだか、あの地震からこっち、そんな事ばかり考えてる。

追加頼めるかな?
低脂肪プレーンヨーグルト、ベビーダノン、ひきわり納豆、をクールで頼めればお願い出来ますか?
娘の離乳食でこっちで売って無い
二、三日したらまたメールが来た、もう大丈夫だって言ってたけどまだ不安定な事には変わらない。発見したけどどれぐらいいる?
3~5個で頼みます。
日持ちで計算するし、一日三つ?ヨーグルト大きいのだと多くない?
全部で3個~5個
ヨーグルトは大きくて大丈夫です。
ありがとうございます
低脂肪プレーンヨーグルト×2ベビーダノン×2ひきわり納豆×2ぐらいかな?多分今晩送ります。
それにしてもあいつのオーダーって面倒臭い。土砂降りの雨でさ、近所のフレスコに行ったらヨーグルトが低脂肪じゃないし、ダノンがベビーじゃないし。ひきわりじゃないし、そんなこんなで色々な店を探してたら持ち込みに間に合わなくて。どれぐらい困ってるのか分からなくて。
ごめん、間に合わなかった。
大丈夫ありがとう
でも俺たちがこんなに連絡を取り合うなんて、ここ十年で初めてなんだ。お互い、利用出来るほどにタフになったんだろ。
昨日、物資が届きました
本当にありがとう
結局次の日に仕事ついでに集荷で引き取ってもらった。それにしてもあいつのメールを見る度に、クソみたいな敬語にウンザリするぜ、あいつが素直に礼を言うなんて、もう俺の知ってるあいつじゃあないのかも。
それか、本当に困っちまったか。しばらくは送る事にした。いつか返すなんて言ってるけど、お前から金を取ろうなんて思っちゃないのさ。
金でどうにかするなんて、一番ダサいかもしれない。だって、金でどうにかなる事って本当に多いもの。そんな分かり切ったやり方なんてちっとも面白くない。現金でも送られて来たら家に火を付けに行ってやる。コッソリ。

「今年の盆休は十三日から」
チキショウ!忘れてた、六日から十四日までベトナムの航空券を抑えてたのに、なんてこった、本当にクソみたいな会社だぜ。どうしようかってまたチケットを見ていたら安いのがあって、キャンセル料を払っても全部で四千円の払いで次の週の席がとれるみたいで、もうすぐに抑えた。
これでなんとか行けそうだし、アヤフヤな予定がハッキリしてむしろセーセーしたぜ、良かったのかもしれない。でも旅程が一日減って、また七泊八日になった、タイとカンボディアの時と一緒だ、毎回規模が小さくなってる気もするけれど。まぁ良かった。
仕事が忙しい。CIってのをやっていてこれがやっかいで。それも途中からダサイのを引き継いだから乗り気でもなくてさ、ただ面倒で時間がかかるだけ。時化てる。世界が湿気て湿り出したらさ、火薬がダメになって戦争が出来なくならないかな。全ての火力は時化たら平和になるかも。それなら毎日が雨降りでも誰も文句は言わないぜ、それで発電なんかも水力が行けそうだし。あんたは雨を見た事があるかい?晴れの日にも降る雨があるんだって。ここんとこ雨が多くて嫌にもなるけれど。
面倒な仕事で、そりゃあるだけラッキーだけど。忙しくしてジムにも二週行けなくて、久しぶりに行ったら泣きそうなぐらい登れなかった、でも指の具合は調子がいい。
誰と約束する訳でも無くて行くと誰かが居る。
そう言うのが良くて。顔見知りも増えたし、楽しくて。

あの頃俺は、全部投げ出して無くして、0からだって思ってた、でも全然違うじゃないか。
もしもあの頃、借家も空けてリュック一つで旅立ったけど、その間に俺の国に何かあったらって。それだけ考えても0なんかじゃあ絶対に無い。多分普通の大人が本当に0になんてそうそうなれないぜ、誰かが側に居るだろうし、何かしら持ち物が、物質的じゃあなくてもあるだろうし。遠く離れて疎遠で、二度と会うことが無いような奴でも、気にかけてるなら0じゃないと思う。
子供のうちに家も親もなんて事になったらそりゃあ0だろうけど。考えただけでもゾッとする。あの時でさえ色々で満たされていたし、そこからも満ちてきた。これから何を望んでも贅沢に感じるけれど、ボッと誰かの事を気にかけてるだけじゃあさ。
なんだかなって感じだぜ、そろそろ。
「誰も悪くはないさ、きっとそういうもんさ」

たまに空を見上げてみるけれど、星なんかチラホラとあるだけさ。イースター島とかカイコウラ、ウユニなんかは何も無くて星も綺麗だったけど、今頃、地震の辺はどうなってんだろう、停電とかで。町が暗くなったら夜空も普段と違うんだろうか。それがどう見えるんだろう。
ベトナム行きが多分決まってきたから色々調べ始めたんだ。とりあえず何処に行こうか。一日目はハノイ。二、三日でフエとホイハン。四、五日でフエからバスでヴィエンチャン。残った二日で上手く移動して、気に入った所で少し長く居てもいいし、最初か最後かどっちかでハロン湾にも行きたい。
初日にいきなり中部に行ってもいいしさ、そこは気分次第だよ。
なんだか楽しみになっていて。
ラオスあたりは星が綺麗だぜ、きっと。
そうそう、この間は「桂離宮」に行ってきたよ、この国でも最高峰の庭園があってさすがに綺麗だった。俺が外国からのツーリストだったら外せない場所なんだけど、長く住んでいると全然ありがたくもなくて。
宮内庁に申請が必要で、そしたら人気で全然、これいつ許可が出たんだか忘れてたけど。良かった。センスがいいね「粋」で。簡素なんだけど贅沢な作りでさ。
品がいいんだ、なんて褒めたらいいんだか分からないけど。とっても日本的ではあるよ、ワビサビって奴。外人が見たらチンプンかもしれないけれど、俺は日本育ちだから。また俺の遺伝子を調教してたんだ。

庭で猫を見かけてからこっち、縁側にずっと餌を出してる。
俺ってそういう、犬猫の事情には二十年ぐらいウトイからやんなっちまうけど。恥ずかしい話、小学の時から犬も猫も飼ってはいなくて。最近のコンビニにはスナック菓子みたいに100円で食べ物がぶら下がってるんだな、この間気がついて「モンプチ」を一つ買ってきたんだ。
それで大きめの箱にバスタオルを敷いてあげてさ、帰ってくる度に覗いてみるんだよ、でも中々鉢合わせるってのは難しいみたいだ。食べてはいるんだけど。
クライミングシューズが痛くて、色々調べていたらお湯にリンスをジャブジャブ入れて、履いたまま漬けてたら伸びるんだって。
でも家にはリンスが無くて。旅行の時の戦利品を漁ってたんだけどコンディショナーしか無くて、とりあえず二晩に分けて二回ずつ浸かってみたんだけど。それでずっと履いてたら足がますます痛くて結局まだ履いてないんだ。
今月はあんまり行けてないからウズウズしてる。

とりあえず14日の夜にフエ。夜七時発の寝台バスで15日の朝十時着。そこからホイアンへは四時間。朝八時か昼の一時発だから、行くなら一泊して16日の朝。列車で行くなら夜七時か十一時発で次の日の朝八時か十一時、逆向きでハノイに戻るのは夕五時ぐらいに二本あって半日かかる。
17日にハノイに戻ってビエンチャンへのバスは夜七時発で十八時間、帰りは火、木、土しかないから俺の場合たぶん18日(木)で19日の朝に帰ってきて、20日の深夜、21日になったら飛行機だ。
フエからビエンチャンならバスで朝十時発か夜六時発で二十三時間。これなら16日の夜に乗れるけど時間がかかりすぎで悩む所。
14ハノイ→15フエ→16ホイアン→17ハノイ→18ラオス→19ハノイ→20ハノイ
か、14ハノイ→15フエ→16ホイアン→17ラオス→18ラオス→19ハノイ→20ハノイ

でもどっちにしろバスでラオスを往復したらほぼ二日間はバスの中で、いくらなんでも勿体ないし、これはついに一度の旅行で一カ国しか回れない時が来たかなって感じ。単純に世界一周の時もラオスなんて候補にも上らなかったし、近所だから行ってみようかって。スレてないから面白いよだって。
どうしようか。飛行機か。移動に時間がかかるって、本当にウンザリするものだから。
それよりもGWが来るだろ?楽しみにしてるような事も無いんだけど、連休に谷間って奴があってどうしてもこれが好きになれなくて。谷間っていう響き自体は最高にあれなんだけど、こいつに挟まれるのがどうも。それで前の金曜日に出勤して代休を取る事にしたんだ、快晴の休日に仕事なんてどうも冴えないけれど。
誰も居ない会社に一人で、前の日に仕事は大体片付いているから別にする事も無かったんだけど。鞄にDVDとブルース、ガイドブックを詰め込んでバイクにまたがったら、単身赴任で普段は居ない大家さんが外で家を眺めてた。天気が良かったからただ単に陽を浴びてただけかもしれないけれど。
ただ、そういうのって良いよね。天気の良い日に外でさ、自分の家を眺めるみたいな事。
「おはようございます」
そしたらちょっと神妙な顔で近づいてきて
「地震は、実家の方は大丈夫でしたか」
あぁ、そうですね、ウチはちょっとズレてるんで大丈夫でした。ありがとうございます。
「ウチの会社もボランティアで休暇を取れる制度が出来て、何人か行ってます。どこかに泊まってツアーみたいな感じで。大丈夫なら良かった」
「余震とか、停電とかあるみたいですけどね」
心なしか道路は空いて普段よりも早く着いた、チキショウ、連休の初日にさ、こんな普通の朝から車なんて、遠くに出かける家族か友達ぐらいしか居ないんだよきっと。そういう奴だってこんな町中は走っちゃないんだからそりゃあ早くもなるぜ。
一人でお湯を沸かして、とりあえずコーヒーを飲んで。
冷凍庫には昨日から凍らせてあるチョコレートも入ってるし、好きな曲をしっとりとかけてさ、それだけなんだけどこれが最高にいいんだ。
ちょっとした仕事が残っていたからそんな感じでやってたんだけど、これが最高に楽しくて。
普段と同じ事をしてるだけなのに、アイデアもキーボードも、やりやすいったらありゃしないんだ。大体仕事なんて、誰かや世界と関わるためにやるものなんだろうけど、これが一人で楽だなんてどうかしちまってるぜ、でもこれが実際にはいい感じで、一段落したしちょっとブルースを、What a Wonderful World! なんか吹いたり。

なんだか色々がデリケートな毎日だったけど、その反動っていうか。もう世界が素晴らしくてしょうがなかったんだよ。もう、本当に良かった。世界って本当はそんなもんだと思う。
ベランダに住み着いた鳩がポロポロ鳴いてるのを、静かに聴いてたんだ。
アイムフリートゥービーファットエヴァーアイ
I'm free to be whatever I
もしかしたら俺は何にでも成れて、その気になればブルースだって歌えるんじゃないかって思えてきた。
それが間違っていようが、何だって構わないんだって。
お前が何をしたって、何を言ったって、そうさ、全く構わない。
Yeah I know it's alright!!!!!!!!!!!!

チキショウ、クソみたいだ嘘ばかり。もうウンザリ。こんなに嘘が下手でどうしようも無い奴は、全員残らず死刑にした方がよっぽどいいぜ、俺の国なら絶対にそうするよ。

だから言ったぜ、俺あんたには。何かを盲目的に信じるには覚悟が必要なんだ「あれ」が無けりゃあ「これ」が無いならって、欲しがってばかりで手に入らないなら生きていくのが大変なんだって。あまり求めないで、生きてりゃあ幸せで、五体が満足で六感が冴えてたなら他に何を望む?
その上家族がさ、あんたの仲間が生きていたら十分なんだから。家も車も会社も流されたらもうやってられねぇぜ、実際。だからそう言うものは極力手に入れない事、一人で生きて行くんだ。死ぬ時は一人で。俺が総理大臣なら絶対にそうする。
一つの仕事に固執し始めたら三年で転職。十年以上同じ土地に住むのも禁止。昨日は会社の重役でも、三年経ったら清掃員かドアマン。その方が絶対にいい。
家はアマゾンのフローティングハウスを参考にする事、アマゾンじゃなくてもいいけれど雨期になったら浮かぶ奴。と言うかもう海沿いに住むのは禁止だ。しょうがなく建てる学校とか、漁業の建物なんかは十階建てだろうと全部フローティングにしないと。
これからはみんな庭に林檎の木でも植えるんだな、南の町ならマンゴでもいい。とびきり太くて丈夫な木を植えて、いざとなったら食べられる奴。そういうのを義務にしたらいいと思うんだ。

そう、それに全員、全員だぜ、三十に成る前に一度は世界を一周する事。これは義務だ。高校でのギターバンドも義務。それで自分の中で何が必要なのか、何が恵まれているのかを確かめるのが義務だ、全員俺にレポートを送って来いよ。
「私が神様だったらこんな世界は創らなかった」
俺がもしそうなら絶対にこんな世界は創らなかった、国なんてもっての他だ。そんなもの、何にもなりゃしない。大体、土地だの海だの、誰のものでも無いのにいつの間にか値段が付きやがって、もうウンザリ。
もう、色々な事を投げたいよ。

「三十五歳になったら会社をしよう」
俺は覚えてたんだ、一緒にやろうって。いや、真に受けてたんじゃあなくて、その頃には何をしてるかなって楽しみにしてたんだ、でもあいつはアナガチ冗談でも無かったのかもしれない。
俺と一緒って言うよりも、あいつは自分の会社を持ちたかったのかもしれない。
「一緒にバンドを組もう」
「三十五歳になったら会社をしよう」
「帰ったら一緒にチャリで堤防を走りましょう」

色々あったけど、お前が「何かしたい」って言ってた事がさ。
「何か面白い事ないかな」って言ってた内にちゃんと候補にあがっていて、それが夢の内の一つだったのなら、夢が叶ったって事だぜ、凄いと思う。嫉妬でも冷やかしでも無くてさ、お前は凄いよ。
会社の社長ってのは何処までローカルルールを創れるんだろう。今度言ってみるよ。お前の店は全部フローティングハウスにするべきだって。
でも分かってるんだぜ、俺だって。そう言う、絶対に無くせない、守らないといけない大事な物が無けりゃあ生きて行くのが大変なんだって。
そう言うものが一気に無くなっちまったんだろ?
やってられねぇよ、実際。

そんな事を考えながら眠っていたら久しぶりに嫌な夢を見た。最悪だった、両親ともが何でだか死んでしまっていた。話しかけても応えは無いし。最後に話したのはいつだっけ。俺にとって誰かが死んでしまう以上に悲しい事って何があるだろう。これ以上に取り返せない物って多分無い。正月に逢ったのが最後だ。聞きたい事があるんだ、伝えたい事が。
悲しくて、でも涙は出なくて叫んでた。
夢で良かった。全部醒めてくれよ。

「何か面白い事ないかな」
犬が足を上げてションベンしたりって誰にも教わっていないのに不思議だ、全員だぜ、全犬のオスは足をあげるしメスはしゃがんじゃう。
俺は記憶もある程度遺伝するんじゃないかって思ってるんだ。生まれたばかりの子犬がさ、ウチの犬はメスで片親だったんだけど、それでも教えなくても子犬は足をあげてたぜ、だから分かるんだと思う。
雨が降ったり風が強かったり散々で桜が散ってしまって。ギリギリで近所の大きな公園に行ったんだけど、毎年露天で賑わってるはずなのに今年は時化てる。お化け屋敷が無いんだぜ、信じられない。想像してみてくれよ、お化け屋敷の無い花見なんてゾッとする。
それはどうでもいいんだけど、桜が綺麗とか、そう言う事って素直に遺伝していると思うんだ。だから国なんて知らないけれど、この国で生まれて、育って。そう言う事が素直に良かった。地球のこの辺の島に生まれて。
だから感情には素直に従わないと、俺の遺伝子に変な事を吹き込んでしまっても悪いから。
綺麗な物は綺麗だし。
悲しい事は悲しい。
怖くて、許せなくて、その後で多分雨が止んで嬉しくて、何か面白い事を探すよ。そうしようと思う。
でもそうじゃあ無い奴が多くて本当に参っちまうぜ。
キチガイみたいな奴がさ。
知らないけど。
理由なんて無い、これが本能だ。
*************************
返信遅れてすいません。
だいぶ物資が揃いお店もやって来たので大丈夫です。
本当にありがとう。今度帰る時でも寄ってください。
PS なんであんなに「おにせん」好きなの?
「おにせん町で売ってなかったから珍しくて。こないだローソンでPONTAポイント10000円当たったし、また何かおごってあげるわ」
ありがとう嫁がヒットしてた。
「年末帰るし。ここに行きたい。鍛えておいて
http://www.zi-box.net/access.hm」
へえー津波が来たギリギリラインだな・・・無くなったかも知れないから確認してから来た方が良いよ。
家から近いからいつでも来て下さい。年末は海外の可能性もあるから早めに教えて。
「大丈夫、もう再開してるから。12/29か30に帰るし嫁にも登れって言っておいて。あんま知らんけど嫁」
*************************
指が痛くてしばらく登ってなかったんだけど全然する事が無い。ほんと、暇な奴だぜ。5/30から始めて次で二年なんだけど、それまでに三級を全部制したい。だからちょっと二週間ほど休んでた、新しい靴が嬉しくてウズウズしてたんだけど。週末の度に「空に星が綺麗」を見るのに会社で、家にネットが無いから。
別に無くても生きていけるんだぜ、そう言う話じゃないけど便利だよ。全く、この暮らしって何処まで便利になるんだか、あの地震からこっち、そんな事ばかり考えてる。

追加頼めるかな?
低脂肪プレーンヨーグルト、ベビーダノン、ひきわり納豆、をクールで頼めればお願い出来ますか?
娘の離乳食でこっちで売って無い
二、三日したらまたメールが来た、もう大丈夫だって言ってたけどまだ不安定な事には変わらない。発見したけどどれぐらいいる?
3~5個で頼みます。
日持ちで計算するし、一日三つ?ヨーグルト大きいのだと多くない?
全部で3個~5個
ヨーグルトは大きくて大丈夫です。
ありがとうございます
低脂肪プレーンヨーグルト×2ベビーダノン×2ひきわり納豆×2ぐらいかな?多分今晩送ります。
それにしてもあいつのオーダーって面倒臭い。土砂降りの雨でさ、近所のフレスコに行ったらヨーグルトが低脂肪じゃないし、ダノンがベビーじゃないし。ひきわりじゃないし、そんなこんなで色々な店を探してたら持ち込みに間に合わなくて。どれぐらい困ってるのか分からなくて。
ごめん、間に合わなかった。
大丈夫ありがとう
でも俺たちがこんなに連絡を取り合うなんて、ここ十年で初めてなんだ。お互い、利用出来るほどにタフになったんだろ。
昨日、物資が届きました
本当にありがとう
結局次の日に仕事ついでに集荷で引き取ってもらった。それにしてもあいつのメールを見る度に、クソみたいな敬語にウンザリするぜ、あいつが素直に礼を言うなんて、もう俺の知ってるあいつじゃあないのかも。
それか、本当に困っちまったか。しばらくは送る事にした。いつか返すなんて言ってるけど、お前から金を取ろうなんて思っちゃないのさ。
金でどうにかするなんて、一番ダサいかもしれない。だって、金でどうにかなる事って本当に多いもの。そんな分かり切ったやり方なんてちっとも面白くない。現金でも送られて来たら家に火を付けに行ってやる。コッソリ。

「今年の盆休は十三日から」
チキショウ!忘れてた、六日から十四日までベトナムの航空券を抑えてたのに、なんてこった、本当にクソみたいな会社だぜ。どうしようかってまたチケットを見ていたら安いのがあって、キャンセル料を払っても全部で四千円の払いで次の週の席がとれるみたいで、もうすぐに抑えた。
これでなんとか行けそうだし、アヤフヤな予定がハッキリしてむしろセーセーしたぜ、良かったのかもしれない。でも旅程が一日減って、また七泊八日になった、タイとカンボディアの時と一緒だ、毎回規模が小さくなってる気もするけれど。まぁ良かった。
仕事が忙しい。CIってのをやっていてこれがやっかいで。それも途中からダサイのを引き継いだから乗り気でもなくてさ、ただ面倒で時間がかかるだけ。時化てる。世界が湿気て湿り出したらさ、火薬がダメになって戦争が出来なくならないかな。全ての火力は時化たら平和になるかも。それなら毎日が雨降りでも誰も文句は言わないぜ、それで発電なんかも水力が行けそうだし。あんたは雨を見た事があるかい?晴れの日にも降る雨があるんだって。ここんとこ雨が多くて嫌にもなるけれど。
面倒な仕事で、そりゃあるだけラッキーだけど。忙しくしてジムにも二週行けなくて、久しぶりに行ったら泣きそうなぐらい登れなかった、でも指の具合は調子がいい。
誰と約束する訳でも無くて行くと誰かが居る。
そう言うのが良くて。顔見知りも増えたし、楽しくて。

あの頃俺は、全部投げ出して無くして、0からだって思ってた、でも全然違うじゃないか。
もしもあの頃、借家も空けてリュック一つで旅立ったけど、その間に俺の国に何かあったらって。それだけ考えても0なんかじゃあ絶対に無い。多分普通の大人が本当に0になんてそうそうなれないぜ、誰かが側に居るだろうし、何かしら持ち物が、物質的じゃあなくてもあるだろうし。遠く離れて疎遠で、二度と会うことが無いような奴でも、気にかけてるなら0じゃないと思う。
子供のうちに家も親もなんて事になったらそりゃあ0だろうけど。考えただけでもゾッとする。あの時でさえ色々で満たされていたし、そこからも満ちてきた。これから何を望んでも贅沢に感じるけれど、ボッと誰かの事を気にかけてるだけじゃあさ。
なんだかなって感じだぜ、そろそろ。
「誰も悪くはないさ、きっとそういうもんさ」

たまに空を見上げてみるけれど、星なんかチラホラとあるだけさ。イースター島とかカイコウラ、ウユニなんかは何も無くて星も綺麗だったけど、今頃、地震の辺はどうなってんだろう、停電とかで。町が暗くなったら夜空も普段と違うんだろうか。それがどう見えるんだろう。
ベトナム行きが多分決まってきたから色々調べ始めたんだ。とりあえず何処に行こうか。一日目はハノイ。二、三日でフエとホイハン。四、五日でフエからバスでヴィエンチャン。残った二日で上手く移動して、気に入った所で少し長く居てもいいし、最初か最後かどっちかでハロン湾にも行きたい。
初日にいきなり中部に行ってもいいしさ、そこは気分次第だよ。
なんだか楽しみになっていて。
ラオスあたりは星が綺麗だぜ、きっと。
そうそう、この間は「桂離宮」に行ってきたよ、この国でも最高峰の庭園があってさすがに綺麗だった。俺が外国からのツーリストだったら外せない場所なんだけど、長く住んでいると全然ありがたくもなくて。
宮内庁に申請が必要で、そしたら人気で全然、これいつ許可が出たんだか忘れてたけど。良かった。センスがいいね「粋」で。簡素なんだけど贅沢な作りでさ。
品がいいんだ、なんて褒めたらいいんだか分からないけど。とっても日本的ではあるよ、ワビサビって奴。外人が見たらチンプンかもしれないけれど、俺は日本育ちだから。また俺の遺伝子を調教してたんだ。

庭で猫を見かけてからこっち、縁側にずっと餌を出してる。
俺ってそういう、犬猫の事情には二十年ぐらいウトイからやんなっちまうけど。恥ずかしい話、小学の時から犬も猫も飼ってはいなくて。最近のコンビニにはスナック菓子みたいに100円で食べ物がぶら下がってるんだな、この間気がついて「モンプチ」を一つ買ってきたんだ。
それで大きめの箱にバスタオルを敷いてあげてさ、帰ってくる度に覗いてみるんだよ、でも中々鉢合わせるってのは難しいみたいだ。食べてはいるんだけど。
クライミングシューズが痛くて、色々調べていたらお湯にリンスをジャブジャブ入れて、履いたまま漬けてたら伸びるんだって。
でも家にはリンスが無くて。旅行の時の戦利品を漁ってたんだけどコンディショナーしか無くて、とりあえず二晩に分けて二回ずつ浸かってみたんだけど。それでずっと履いてたら足がますます痛くて結局まだ履いてないんだ。
今月はあんまり行けてないからウズウズしてる。

とりあえず14日の夜にフエ。夜七時発の寝台バスで15日の朝十時着。そこからホイアンへは四時間。朝八時か昼の一時発だから、行くなら一泊して16日の朝。列車で行くなら夜七時か十一時発で次の日の朝八時か十一時、逆向きでハノイに戻るのは夕五時ぐらいに二本あって半日かかる。
17日にハノイに戻ってビエンチャンへのバスは夜七時発で十八時間、帰りは火、木、土しかないから俺の場合たぶん18日(木)で19日の朝に帰ってきて、20日の深夜、21日になったら飛行機だ。
フエからビエンチャンならバスで朝十時発か夜六時発で二十三時間。これなら16日の夜に乗れるけど時間がかかりすぎで悩む所。
14ハノイ→15フエ→16ホイアン→17ハノイ→18ラオス→19ハノイ→20ハノイ
か、14ハノイ→15フエ→16ホイアン→17ラオス→18ラオス→19ハノイ→20ハノイ

でもどっちにしろバスでラオスを往復したらほぼ二日間はバスの中で、いくらなんでも勿体ないし、これはついに一度の旅行で一カ国しか回れない時が来たかなって感じ。単純に世界一周の時もラオスなんて候補にも上らなかったし、近所だから行ってみようかって。スレてないから面白いよだって。
どうしようか。飛行機か。移動に時間がかかるって、本当にウンザリするものだから。
それよりもGWが来るだろ?楽しみにしてるような事も無いんだけど、連休に谷間って奴があってどうしてもこれが好きになれなくて。谷間っていう響き自体は最高にあれなんだけど、こいつに挟まれるのがどうも。それで前の金曜日に出勤して代休を取る事にしたんだ、快晴の休日に仕事なんてどうも冴えないけれど。
誰も居ない会社に一人で、前の日に仕事は大体片付いているから別にする事も無かったんだけど。鞄にDVDとブルース、ガイドブックを詰め込んでバイクにまたがったら、単身赴任で普段は居ない大家さんが外で家を眺めてた。天気が良かったからただ単に陽を浴びてただけかもしれないけれど。
ただ、そういうのって良いよね。天気の良い日に外でさ、自分の家を眺めるみたいな事。
「おはようございます」
そしたらちょっと神妙な顔で近づいてきて
「地震は、実家の方は大丈夫でしたか」
あぁ、そうですね、ウチはちょっとズレてるんで大丈夫でした。ありがとうございます。
「ウチの会社もボランティアで休暇を取れる制度が出来て、何人か行ってます。どこかに泊まってツアーみたいな感じで。大丈夫なら良かった」
「余震とか、停電とかあるみたいですけどね」
心なしか道路は空いて普段よりも早く着いた、チキショウ、連休の初日にさ、こんな普通の朝から車なんて、遠くに出かける家族か友達ぐらいしか居ないんだよきっと。そういう奴だってこんな町中は走っちゃないんだからそりゃあ早くもなるぜ。
一人でお湯を沸かして、とりあえずコーヒーを飲んで。
冷凍庫には昨日から凍らせてあるチョコレートも入ってるし、好きな曲をしっとりとかけてさ、それだけなんだけどこれが最高にいいんだ。
ちょっとした仕事が残っていたからそんな感じでやってたんだけど、これが最高に楽しくて。
普段と同じ事をしてるだけなのに、アイデアもキーボードも、やりやすいったらありゃしないんだ。大体仕事なんて、誰かや世界と関わるためにやるものなんだろうけど、これが一人で楽だなんてどうかしちまってるぜ、でもこれが実際にはいい感じで、一段落したしちょっとブルースを、What a Wonderful World! なんか吹いたり。

なんだか色々がデリケートな毎日だったけど、その反動っていうか。もう世界が素晴らしくてしょうがなかったんだよ。もう、本当に良かった。世界って本当はそんなもんだと思う。
ベランダに住み着いた鳩がポロポロ鳴いてるのを、静かに聴いてたんだ。
アイムフリートゥービーファットエヴァーアイ
I'm free to be whatever I
もしかしたら俺は何にでも成れて、その気になればブルースだって歌えるんじゃないかって思えてきた。
それが間違っていようが、何だって構わないんだって。
お前が何をしたって、何を言ったって、そうさ、全く構わない。
Yeah I know it's alright!!!!!!!!!!!!

